前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第183回国会 衆議院財務金融委員会2013/06/19

前原委員 民主党の前原です。
 きょうは、財務金融委員会で質問の機会をいただきまして、同僚議員また委員会の皆さん方に感謝を申し上げたいと思います。前半が黒田総裁に主に質問させていただき、後半は麻生財務大臣に質問させていただければ、こう思っております。
 まず、黒田総裁にお伺いいたします。
 六月の十一日の政策決定会合につきましては、さまざまな意見があるということは、総裁が一番御承知だろうと思います。
 主要新聞の見出しを若干御紹介いたしますと、朝日新聞「黒田緩和正念場 日銀、長期金利抑制策見送り」と書いてあります。日経新聞「決定会合、評価割れる」、毎日新聞「日銀、市場と対話難航」、こう書かれているわけであります。市場の催促に反応して一々対応していては、市場は次から次へと要求を重ねて、切りがない面もあるのは事実でございます。
 そこで、根本的な質問を黒田総裁にさせていただきたいと思いますが、四月四日に発表された量的・質的緩和というもの、これは向こう二年間の方向性を示されたわけでありますけれども、この方向性以外のことはやらないのか、つまりは、今後二年程度の期間は、発表されたこと以外の追加緩和というのはしないおつもりなのか。その点をまず確認させていただきたいと思います。

 

黒田参考人 金融政策の非常に重要なメリットというか利点は、その機動性、弾力性にあるわけでございますので、当然のことながら、経済あるいは金融の状況が変化すれば、それに対応した措置はとる、調節、調整は行うということでございます。
 ただ、四月四日に決定した量的・質的金融緩和は極めて大規模なものでありまして、二年程度の期間を念頭に置いて、二%の物価安定目標を達成するために必要かつ十分であると思われたものを採用したわけでございますが、実体経済、市場が大きく変わっていけば、当然、必要な調整は行うということでございます。

前原委員 もう一点、再確認でございますけれども、機動的な対応が必要だというのは、それは当然のことだと思いますけれども、今おっしゃったのは、この二年の、例えばマネタリーベース二倍、二百七十兆ですか、そういうものプラスアルファというものを考えられるのか、それとも、その二百七十兆という枠の中で月々の対応というものを弾力的、機動的に考えられるのか、どちらですか。

黒田参考人 四月四日に量的・質的金融緩和を決定した際の、発表した文書にも示されておりますとおり、四月四日に決定した政策自体の中にも一定の弾力的なオペの可能性というものが含まれているわけでございまして、当然、これまでの二カ月強の間も、市場との対話を通じてオペの手法はより弾力的にして、長期金利のボラティリティーを抑制するように努力をしてきております。
 それとともに、四月四日に決めたもの自体、一切二年間動かさないということではなくて、経済や金融の状況が大きく変化して、四月四日に決めたものでは不十分であるとか、あるいは過剰であるとか、そういうことになれば、必要な上下方向の調整は考えられると思います。

前原委員 それを伺って安心をいたしました。
 まず、きょうお配りをしている資料の三(配布資料)というものをごらんいただけるでしょうか。これが日経平均の推移。日経平均はきのうのものまででありますけれども、ドルも、きのうの午後の三時半でございます。先ほど日経平均を見ますと、きのうの終わり値よりは百四、五十円ぐらい今の段階では高目で推移をしている。ドルにつきましては九十五円台、こういうことでございますので、若干、そういう意味では、戻しているというか、下がった分については上がっているということであります。
 これを見ていただきますと、四月四日に異次元の金融緩和というものが発表されて、株価そして為替というものが基本的には上昇してきたわけでありますけれども、急激に下がる中でまた調整が行われている。
 株は、上がったり下がったり、また、これだけの異次元の金融緩和でありますので、市場が落ちついていくのは時間がかかるということについては私も理解をしているわけであります。ただ、一つだけ私どもが気になっているのは何かというと、一番下の長期金利でございます。
 長期金利の、国債、十年債の推移というものの中で、四月四日にどういう発表をされるかということで期待が先行し、織り込んだというものもあるかもしれませんが、〇・八、〇・九、こういったところで今推移をしているということにつきましては、問題ないと考えておられるのか、あるいは、問題があるとすれば、どこに問題、原因があると考えておられるのか、総裁のお考えをお聞かせください。

黒田参考人 五月に入りまして十年債の金利が上昇しました背景には、幾つかの要素があったと思いますが、一番端的には、御案内のとおり、米国で量的緩和からの出口論が盛んになりまして、米国の十年物の国債の金利が二%を超えて、その後も上昇しているわけでございますが、そういったことがやはり、金融資本市場が国際化している中で、ある程度の影響を及ぼすということはあったと思います。その他、ボラティリティーが日本の国内でも上昇していたということは好ましくないことであります。
 そこで、御承知のとおり、五月に再度、市場関係者と対話をいたしまして、オペの手法をさらに弾力化すると。毎月毎月のオペの額も、別に五十兆円の十二分の一ずつきっちりやるという必要はないわけでして、その前後でいいわけですし、また、平均残存期間についても、全ての期間の国債について買い入れを行えるようにはなっていますが、マーケットの状況に応じて、より短期の、三年から五年のものを少し厚目に買って、その辺が一番振れていましたので、そのボラティリティーを下げるというようなこともやっております。
 その結果、ある程度、長期金利は落ちつきを取り戻してはいると思うんですが、引き続き二つの面で、一つは、そのボラティリティーを極力下げるということ、それから、今後とも、いずれにせよ、年間五十兆円のペースで長期国債を買い入れていきますので、その金利に対する下方圧力というのは、いわば累積的にきいてくるというふうに思っておりますので、何としても長期金利の安定、高騰を避けるということについては最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。

前原委員 二つのことについて注視をし、しっかりと取り組んでいきたいとおっしゃいました。ボラティリティーを下げるということと、金利の下方圧力をしっかり政策的にかけていきたい、こういう御発言だったと思います。
 総裁もいろいろとマーケットとお話をされていると思いますけれども、私もいろいろと金融関係者の方と話をしていて、一つ共通して、総裁の真意というものについてどこにあるのかと、今から申し上げることでありますけれども、そういう御指摘がかなり多いんです。
 何かといいますと、四月四日にはこういう発言をされているわけですね。リスクプレミアムに働きかけて、イールドカーブ全体の押し下げを目指す、こういうことをおっしゃっている。他方で、これは五月二十二日でありますけれども、株価の上昇が経済成長期待を反映しているとすれば、それに反応する国債利回りもファンダメンタルな動きとなってしまうということで、四月には、イールドカーブ全体を押し下げるということをおっしゃっているにもかかわらず、五月の二十二日の発言というのは、いわば金利上昇はやむを得ない、こういうふうにもとれる発言をされているということで、どちらが真意なのかといったところが大きなポイントだと私は思うんです。
 これは実は私自身も、この強力な金融緩和をやっていくに当たって、我々の政権のときは二%以下のプラスの領域で当面一%めどということでやってきましたけれども、CPIがプラスになれば当然ながら金利も上がってくるということの中で、引きずられるわけですね。
 そういうところの、言ってみれば、イールドカーブ全体の押し下げを目指すということと、しかし、株価の上昇が経済成長期待を反映しているとすればファンダメンタルな動きとなってしまうということで、金利上昇もやむを得ないという発言、これの整合性をやはりマーケットの方々はいぶかしげに思っておられるということなんですね。
 この点について、総裁の意図はどこにあるのか、わかりやすく説明していただけますか。

黒田参考人 量的・質的金融緩和の意図は、まさに大量の国債を購入し続けることによって、国債を保有することのリスクプレミアムを押し下げて、全体として金利に対する下方圧力を累積的に強化していくということであることは間違いありません。
 他方で、米国の場合のように、二%程度で物価上昇期待が安定しているというところでは、いわば名目金利が下がらないと実質金利も下がらないわけですが、日本の場合は、マイナスの、デフレ期待から、徐々にですが、二%の物価上昇に向けて物価上昇期待が上がっていくという局面では、必ずしも、常に名目金利が下がらないと実質金利が下がらないということではなくて、実質金利は、先ほど申し上げたように下がっていると思います。
 経済に一番重要な点は、もちろん、実質金利がどうかということでございますので、その面では効果を持っているというふうに思っておりますが、御指摘のように、若干、それぞれの御質問に対してそれぞれのお答えをしたことが、やや、日本銀行の量的・質的金融緩和の意図について誤解というか混乱を招いた面があったとすれば、大変遺憾であるし、反省をしております。
 これからは、十分、市場関係者を含めてよく説明をし、特に、引き続き、長期金利全体について下方圧力を毎月毎月加えていく、そして、ボラティリティーについてはできる限りそれが拡大しないように、さまざまなオペの手法の改善によって対応していきたいというふうに思っております。

前原委員 先ほど上田委員とのやりとりの中で、実質金利は下がっている、その理由としては期待インフレ率が高まっているからだという話をされておりましたけれども、資料四(配布資料)をごらんいただけますか。
 これは、市場から算出される期待インフレ率ということでありまして、一つの目安になると思うんですけれども、長期金利の上昇というものと合わせるように、このブレーク・イーブン・インフレ率というものについても足元では下がっているんですね。つまりは、期待インフレ率というのが下がっているということでありまして、私は、今、実質金利がどうなっているかということを、詳しい資料は持ち合わせておりません。これについてはまた日銀から説明を求めたいと思いますけれども、こういう統計もあるわけです。
 それからもう一つ、あわせて、時間の関係で申し上げておきましょうか。資料の二(配布資料)、これがイールドカーブでございますけれども、四月の三日が黒の実線、四月四日が灰色、黒の破線、それから赤が六月十七日ということであって、四月三日、四月四日と比べればということでありますけれども、イールドカーブは上がっているんですね。下がっていないということで、先ほどからお話をされていることについては、もともと総裁になられたときから、期待に働きかけることは極めて重要だ、特にゼロ金利政策のもとにおいては期待に働きかけることは物すごく重要なんだということを繰り返しおっしゃってきました。
 それが、資料四を見ていただくと、ブレーク・イーブン・インフレ率は下がり始めている。これからどうなるかわかりません。これについてどういう見解をお持ちなのかということと、イールドカーブ全体を押し下げるということをおっしゃっておりましたけれども、四月三日、四日と比べると、これはむしろ上がっていますね。そして、先ほど資料三(配布資料)でお示しをしたように、長期金利十年債の推移につきましては〇・八、〇・九のところでとまっているという状況を考えると、意図されたことについてはなかなかそれが実現できていない面もあるのではないか、その原因をどういうふうに受けとめておられて、どうすべきと考えておられるのか、その点についてお答えいただけますか。

黒田参考人 委員よく御承知のことと思いますが、このブレーク・イーブン・インフレ率というのは、マーケットで成立する物価に連動する国債の金利から算出されるものでございまして、非常に参考になるものであることは事実でございます。
 ただ、これは一つの指標であって、そのほか、エコノミストとか企業とか一般の消費者などに対するいわゆるアンケート調査その他によって、インフレ予想、インフレ期待がどう動いているかというのもまた重要な指標でございまして、それらは、全体として見ると、やはり期待インフレ率は上昇はしていると。ただ、一つ一つの指標で見ますと、区々の動きをしていることはそのとおりだと思います。
 このところの長期金利、名目金利がやや上昇したということは、いろいろな要素はあると思いますが、一つはやはりボラティリティーの問題、それからもう一つは、米国の量的緩和からの出口論が盛んになって、米国の長期金利がかなり顕著に上がってきたということが一定の影響をもたらしているんだろうというふうに思っております。
 しかしながら、外国の金融政策は外国がそれぞれの経済に最も適切なことをやっているわけでして、日本銀行としては、日本経済に最も適切な金融政策を実行しなければならない。そのためには、ボラティリティーを圧縮するとともに、リスクプレミアムを引き続き圧縮して、長期金利全体に対する下方圧力を続けていく、さらには毎月毎月のオペによってそれをいわば累積させていくということが、迂遠なようかもしれませんが、一番適切な対応策ではないかというふうに思っております。

前原委員 日銀の事務方で結構でありますので、実質金利、期待インフレ率、いろいろな指標があるというのは総裁のおっしゃるとおりでありまして、そういったものの目下の推移、こういったものを資料としてぜひ提出していただくように、委員長にお願いをしたいというふうに思います。

金田委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

前原委員 よろしくお願いいたします。
 ボラティリティーの話をされておりますので、私自身の若干懸念も含めて、このボラティリティーについてお話をしたいというふうに思います。
 では、なぜこういう状況、変動幅が高くなっているのかということの理由の一つが、やはり、日銀が新規発行国債の約七割に当たる国債を購入しているということが私はあると思うんですね。つまりは、市場流動性がこれによって大幅に低下したわけです。そうすると、ちょっとした材料で金利上昇ペースが高くなり、ボラティリティーが高くなると国債保有リスクを減らさざるを得ず、あるいは減らそうという方向に動いて、国債の売却、つまり売却ということは金利上昇に動く、そういった金融機関があらわれて、それによりさらに金利上昇が加速をするというスパイラルにつながる可能性があると思うんですね。
 つまり、七割近くの新規国債発行の引き受け手になっていることによって、市場流動性が低下をし、マーケットが小さくなって、外的なインパクトに対して極めて脆弱な市場構造に陥ったからボラティリティーが高くなっているんじゃないですか。

黒田参考人 市場の流動性につきましては、さまざまな指標が考えられるわけでございますが、確かに、四月四日に新しい金融政策を発表した直後はかなりボラティリティーが上がりまして、そのときは、やや市場の取引も薄く、いわばビッドとオファー、ビッド、アスクのスプレッドが拡大したというような状況があったわけですが、その後、オペの弾力化によって、そこはおおむねおさまったわけでございます。
 最近の状況を見ますと、国債の市場での売買の取引はかなりの量がございます。それから、オファーとビッドのビッド・アスク・スプレッドもそんなに大きくなく、むしろ縮んでおりまして、それらの指標から見る限りでは、流動性が非常に不足して、それでボラティリティーが上がっているという感じは、少なくとも五月に入ってからの状況としては、余り観測をされておりません。
 ただ、流動性につきましてはいろいろな指標があり得ますので、御指摘の点は十分注視して、オペの弾力化によって適切に対応して、ボラティリティーが拡大しないようにしてまいりたいというふうに思っております。

前原委員 どのような御答弁をされたって、それは、マーケットの新規国債発行額の七割を日銀が買うわけですから、マーケットが狭くなってくる。そういう意味においては市場流動性が低下するというのは当たり前の話なんですね。
 そういったところで、今どういう動きが出てきているかというと、国債の保有残高について国内銀行が減らす動きが出てきているということなんです。これについて、総裁は是とするか非とするかということを最終的にはお伺いしたいと思うんです。
 これはどういう観点から伺おうとしているかというと、つまりは、先ほど市場流動性が非常に低下しているということを申し上げたわけでありますけれども、そのことによってリスクが高くなってきているわけであります。日銀は、いや、それでいいんだ、もうちょっと違うリスク資産というものを買ってもらうために、国内の金融機関、それは都市銀行であれ地域銀行であれ、国債の引き受けを減らしてもらって結構なんだ、むしろほかのリスク資産というものの運用に回してもらった方がいいというお考えなのか。あるいは、そうではなくて、要は、自分たちが新規発行国債の七割を買っているがゆえに、私が先ほど申し上げたような、流動性が大幅に低下して、結果として、国内銀行が、言ってみれば国債を持てなくなってきているということについてはマイナスと捉えるのか。どちらが、今の、総裁、日銀としてのお考えですか。

黒田参考人 年間五十兆円のペースで長期国債を市場から購入していきますので、当然、金融機関であれそのほかの市中の国債保有額というのは、その分だけは、そうでない場合と比べると減少する。そこは他のポートフォリオに移っていかなければならないわけですので、その先が社債であるのか株式その他なのか、あるいは貸し出しなのか、そこは金融機関のそれぞれの経営判断というかリスク管理のもとで判断されることだとは思いますが、基本的に年間五十兆円のペースで国債を買い入れるということは、その分だけは当然ポートフォリオリバランスが進んでいく。
 ただ、ボラティリティーが高まることによって国債に対する需要が、そうでない場合と比べて減少して、その結果として、国債価格が下落する、あるいは国債金利が上がるということは確かに好ましくないことですので、その点は、市場との対話を通じて、適切なオペの弾力化等をこれまでもやってまいりましたし、今後とも十分考えていきたいというふうに思っております。

前原委員 今のお話を伺った背景の一つとして、六月の十一日の政策決定会合で、新たな長期金利安定化策の導入について、メリット、デメリットを議論されたと思います。現時点では必要がないというような結論になったわけでありますけれども、ただ、住宅ローン金利は二カ月連続、長期金利に連動する企業向け貸出金利は三カ月連続で上昇しております。
 デメリットは何かということで、これは報道されていることで、それが是か非かということは御答弁いただきたいんですけれども。
 要は、金融機関が国債よりもリスクが高い融資などに資金を移すことが、七割に相当する国債を購入する目的の一つである。したがって、長期金利安定化策というのは、金融機関に超低金利資金を貸し出す期間を延長してより国債を買いやすい環境を整えるというのが議論されたと思うんですけれども、それをやらなかった理由というのは、国債購入を進めるための超低金利貸し出しの期間延長をやると、先ほど申し上げた、国債よりもむしろリスクが高い融資などに資金を移す目的との整合性が問われるということで、メリット、デメリットの中のデメリットにカウントされたという話であります。
 これについて、つまりは、六月の十一日の政策決定会合で議論された中身、今私が申し上げたことについては、これでよろしいですか。

黒田参考人 御指摘の論点は、これまで一年までの固定金利オペ、共通担保をベースにした固定金利オペというのを何度か打ちまして、それが金利のボラティリティーを減らすのに一定の効果を持った。ただ、常に効果を持つのか、今後とも必ず効果を持つのかというのはいろいろ議論があると思いますけれども、一定の効果を持ったことは事実でございまして、今後とも必要があればそれは行えるわけですが、それを一年と言わず二年までできるというようなことをしてはどうかという議論が民間の市場関係者との対話の中であったわけでございます。それについて政策委員会で議論したことは、そのとおりでございます。
 ですから、一定のメリットが一年以下でもあったわけですので、二年以下にまで延長すれば、いわばオプションも広がって、調節手段も広がるわけですから、ボラティリティーの抑制にはより効果的な場合があり得るということは、そのとおりなのだと思います。したがって、こういったことを一切、今後、未来永劫絶対してはいけないとか、やらないとかいうことではないと思うんです。
 他方で、これまでの措置によってボラティリティーも大分おさまってきて、二十年物の長期金利も比較的安定を取り戻し、それより短いのはむしろ下がってきているわけですね。そういう中でこういったことをやった場合に、デメリットとしては、いろいろな議論があったわけですが、これはあくまでも四月四日に決定した量的・質的金融緩和の範囲内での議論でありまして、あれを変えるという話ではないわけです。ただ、〇・一%で二年のオペをするということが、どのようにとられるのか。
 それから、他方で、先ほどもちょっと御説明いたしましたが、貸し出し支援の仕組みを講じて今やっているわけですが、これは〇・一%で三年の貸し出しを金融機関に対して行う、それは金融機関が貸し出しを増加した分一〇〇%まで認めるということで、相当大量にそういった短期から中期の資金を固定金利で供給しているわけですね、一方で。ですから、そういったこととの兼ね合いをどう考えるかとか、さまざまな議論がございました。
 その中で一番決定的だったのは、現在いわば執行部が与えられているマンデートの中でそれなりの効果を持ってきているわけですので、その中で引き続き努力していく、それで安定を図っていく。もちろん、将来的に何かそういう必要性が出てくれば、政策委員会で審議して、賛成が得られれば、当然それを一つのツールにするということになろうかと思いますが、前回の時点では、さまざまなデメリットというか懸念を考慮すると、メリットはあることはあると思われるけれども、今それをあえてやる必要はないのではないかという結論になったわけでございます。

前原委員 私が質問したことについて直接お答えになっていないかもしれませんが、いずれにしても、六月の政策決定会合で、現時点では、長期金利安定化導入についての必要がないとの結論となったということでありますが、今後、動向を見ながら適切に対応する、そういうことでございますね。
 資料の一(配布資料)をごらんいただきたいと思います。
 日銀の政策目的の大きなものは物価の安定であります。そしてまた、黒田総裁率いる今の日銀の体制では、二年で二%ということをおっしゃっているわけであります。この資料一を見ますならば、上の青い線がコアのCPIです。そして、下がコアコア、つまりは食料とエネルギーを除いたものであります。四月で、コア、マイナス〇・四、コアコアでマイナス〇・六ということであります。
 端的に伺いますが、二年で二%の物価上昇というもの、今までやられている中で、これは可能であるというふうに思われるか、今のこの状況を見てですね。それと、その道筋についてどう描いていくのか。これについてお答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 まず、二%の物価安定目標については、二年程度を念頭に置いて量的・質的金融緩和を決定したわけでございますので、当然のことながら、そのくらいの期間で二%程度に消費者物価の対前年比が到達するというふうに、今でも考えております。
 そこで、その道筋でございますが、今足元で、生鮮食品を除いて全国でマイナス〇・四であることは事実ですが、初めに申し上げたとおり、東京では五月にプラスの〇・一になっておりまして、東京がいつも一カ月先まで出るわけですが、東京と全国とは比較的類似した動きをいたしますので、恐らく全国の五月もゼロ前後になり、そして六月、七月とだんだんプラスになっていく、そのプラスも、トレンドとしては少しずつ上昇していくというふうに思っております。
 物価上昇率が二%程度に達するまでの道筋でございますけれども、今年度、来年度、再来年度と、実質経済成長率の見通しを政策委員会の九人のメンバーの中央値と幅で示してございますが、その中央値を見ますと、今年度は三%近い成長で、来年度、再来年度と、消費税増税の影響を考慮しても、一%台の半ば程度になるのではないかということでございまして、いずれも、現在の日本の潜在成長率は一%を相当下回っているわけですから、それをかなり上回った水準でいくということで、GDPギャップが縮んで、さらに若干プラスになるという効果が期待できるわけです。
 そのもとでは、当然ですけれども、物価上昇率は次第に上昇していく、それと、期待物価上昇率が上がることによって、いわばGDPギャップと物価上昇率との関係を示す曲線自体が若干上方にシフトするということで、双方相まって、GDPギャップが減ってプラスになっていくということと、期待物価上昇率によってその関係自体がシフトしていくということで、二%程度の物価上昇率になるだろうと。
 ちなみに、政策委員会のメンバーの中央値では、二〇一五年度の消費者物価上昇率について、消費税二%、二〇一五年度にさらに上昇するわけですけれども、その直接的効果を除いたところで、一・九%ぐらいの上昇になるのではないかという見通しでございます。

前原委員 これから数字がどういう推移をしていくかということはしっかりチェックをさせていただきたいと思います。
 一つ、我々、三年三カ月政権にいる中で、数字を申し上げれば、GDPもかなり実質は拡大をいたしました。そして、今おっしゃった需給ギャップというのは、三十五兆円から十五兆円まで縮小して、やはり一番大きかったのは、有効求人倍率が〇・四三から〇・八二になった。失業率が五・四から四・〇まで下がったということで、金融政策だけではなかなか難しいと思うんですね。やはり雇用の問題とか、さまざまな施策をミックスさせる中でやらなきゃいけないということで、政府との連携をぜひ強めていただく中で、いい形で、おっしゃっていることは実現するということは我々望ましいことでありますから、こういう機会でしっかりと問題点をチェックさせていただきながら、しっかりとこれからも金融政策のかじ取りをしていただきたい、こう思っております。
 麻生大臣に御質問いたします。
 G8サミットが終わりまして、日本の財政健全化への取り組みというものが注文として突きつけられたわけであります。
 二つ、前提として伺った上で、このG8サミットでの宣言を受けて、どのような財政健全化をやられようとしているのかということをお聞きしたいと思います。
 まずは、二〇一五年の二〇一〇年比PB赤字半減、二〇二〇年のPB黒字化というのは国際公約でありますが、これはやり遂げられるのか。あるいは、今の経済というものを前提とするのであれば、十月には消費税引き上げというものを決められるのか。その二つをお示しいただいた上で、今後の財政健全化への大臣としての心構えをお話しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 G8サミットで、いろいろ報道されておりますけれども、この長い英語の文章の最後のところにハウエバーという、そこの二行だけが指摘されたところで、あとのところは総じてポジティブ、極めて好感を持って迎えられたというのが事実。日本だとこの二行の方だけが大きく書かれていますけれども、現実はかなり違っておる。違っているという点だけ……(前原委員「そんなこと、言っていない。質問にだけ答えてください」と呼ぶ)G8の話をされたから、そこのところだけ頭に入れておいてもらわないと、ちょっと話が、えらく違ったようなことになるんだと思っております。
 それから、今の御質問ですけれども、財政健全化の目標というのは、これは、今回のG8に限らず、私どもの出ましたG20でも、それからG7の蔵相会議でも同様の質問が出て、同様の答えをしておりますので、私どもとしてはその方向で、例の二〇一五年、二〇二〇年というあの数字を申し上げ続けてきておりますので、その方向で事を進めていきたいと思っております。
 消費税の話につきましては、私どもずっと申し上げておりますとおりに、これは三党の合意でこれをここまでやってきたんですから。今の指標を見るにおきましては、少なくとも、一月当時と比べて今の方がはるかに、物価等々のことを考え、また、GDPの伸びを考え、少なくとも、マイナス三・五がプラスの四・一まで上がってきているということは、状況としては、この十月に物を判断するときには、我々の、三党で合意した方向のものが出しやすいものになりつつある状況にあるとは思っておりますが、いずれにしても、まだ三カ月、四カ月ありますので、その段階で、さらにこういったものが上がっていく、きちんとそういった判断ができるような方向で動かしてまいりたいと考えております。

前原委員 麻生大臣に、歳出改革の主要分野についてお話を伺いたいと思います。
 これは、時間がなくなってきたので私の意見を申し上げます。そこでポイントを幾つかお答えいただきたいんですが。
 やはり一般歳出の中身で今五四%を占めている社会保障、ここは聖域では全くないと私は思っておりまして、社会保障をどのような観点から効率化させていくのかということが一つだと思います。
 二つ目は、私は、権限、財源をできるだけ地方に移譲した上で、地方交付税交付金の額はやはり圧縮していく。そして、足りないものについては地域で、自前で財源というのを見つけてもらうようにしむけていくということが大事だと思っています。
 それから三つ目につきましては、公務員の人件費。国家公務員の方々がたくさんおられる中でなかなか言いにくいんですが、復興財源として七・八%の引き下げを御了解いただきました。一年間で約二千九百億円、そして二年間で五千八百億円ということであります。今の財政状況を考えるならば、国会議員は一四%程度の削減を今でもやっているわけでありますけれども、いわゆる復興財源ではあるけれども、全体の財政状況を考えたときに、七・八という数字にこだわるかどうかは全く別の話でありますけれども、やはり我々のような特別職も含めた国家公務員の給与カット。
 私は、社会保障の効率化、それから地方交付税交付金をあり方を見直す中で圧縮していくということ、そして公務員の給与というものの見直し、この三点はやはり必須だと思うんですが、これについての財務大臣のお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 今何点か言われたんですが、社会保障の分野につきましては、社会保障国民会議等々で今いろいろな議論をなされておるところです。こういう一般歳出のかなりの部分を占めるこの分野が下がらない限りは、全体として毎年一兆円に上る社会保障というものが今後続いていくという前提でこういうものをやっていたら、とてもではありませんけれども財政としてはもたぬ、そう思っておりますので、この点につきましては、今いろいろな案がプロの方で、何回かその会議に出ましたけれども、実に細目にわたっていろいろ議論がされておりますので、そういったものをきちんとと思っております。
 地方財政につきましては、私どもも基本的には同じようなことを考えておりますが、地方も、前原先生、やはり経営能力のある知事とない知事じゃえらい差が出るのはもう御存じのとおりですから、もうこれ以上言う必要はないと思いますので。そういった意味で、ここのところを見ながら、できるところの方にはぜひというような形で、何かすれば俺のところはもっと使い前がふえるんだというようなやり方を何か考えないといかぬものだと思っております。
 公務員の人件費の引き下げは、これは二年間の限定措置ということになっておりますので、現時点で決まっているわけではありませんけれども、今後この問題は、物価が仮に上がってきたときに、このまま下げ続けるとか、さらに下げるとかというような話はなかなかそれは現実論としては難しい、そう思います。安易に引き上げるというつもりはございませんけれども、少なくとも物価が仮に二%上がってくるというようなことになったときにおきましては、これはこちらの方だけを下げるというのはなかなか現実的ではない、そのような感じはいたしております。

金田委員長 時間が参りました。

前原委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、社会保障については、御持論の終末期医療の問題とか、あるいは、参議院選挙前には見送られました、七十歳から七十四歳までの窓口負担を本則二割に戻すという話も含めてやはりしっかりやっていただかないと、財務省が出された慎重シナリオでは、消費税が五%上がっても五年ぐらいでその分がなくなってしまいますので、そこは我々も、ただ単に文句を言うだけではなくて、なお具体的な案を出させていただき、また、財政健全化に対する法案も提出をしておりますので、この点についてはいい方向でしっかりと折り合えるように議論をさせていただきたいと思います。
 質問を終わります。

(国立国会図書館ウェブサイトより)

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