前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第198回国会 衆議院財務金融委員会2019/05/15

 ○坂井委員長 次に、前原誠司君。

○前原委員 国民民主党の前原です。

まず、委員長と与党の筆頭の理事に申し上げておきたいと思いますが、かなり与党側の欠席が多いですし、定足数に満たなくなったら質疑をすぐやめますので、その点はしっかりと留意していただきたいというふうに思います。

さて、まず、麻生大臣に、財政のことについて議論をする前提として少し定義を議論させていただきたいんですが、財政破綻ですね、財政が破綻するというのは、どういうことをいうんでしょうか。

 

○阪田政府参考人 お答え申し上げます。財政破綻とは、一般に、財政状況が著しく悪化し、その運営が極めて困難となる状況をいうものと考えております。

財政破綻に至る要因を具体的に申し上げるのは困難でございますが、何らかの理由で財政の持続可能性への信頼が損なわれた場合には、金利が急激に上昇し、経済、財政、国民生活に大きな影響が及ぶことになると考えております。

 

○前原委員 今のことをまとめると、要は、政府が行った負債というものが返済できなくなる、運営ができなくなるとか金利の上昇ということを個別におっしゃいましたけれども、要は、政府が抱える負債の返済不能、若しくは利払いが不能になること、いわゆる債務不履行ということでいいんでしょうか。

 

○阪田政府参考人 今ほど御答弁申し上げましたように、財政破綻そのものがこういう事象であると具体的に申し上げるのはちょっと困難なんでございますが、大きく言いますと、まず、財政の持続可能性への信頼が損なわれているということ、その結果、財政運営が極めて困難となる状況全般ということかと考えております。

 

○前原委員 英語で言うと、デフォルトでいいですね。

 

○阪田政府参考人 国債が返済できなくなることは、デフォルトということかと思います。

 

○前原委員 それでは、今まで財政破綻、デフォルトを起こした国の例を幾つでもいいので挙げていただけますか。具体的にどの国かということを答えてくれと言っていたわけじゃないので、私の方から申し上げると、例えば、ドミニカとか、それからエクアドルとか、それからコートジボワール、ウクライナ、最近ですとギリシャ、こういったところが挙げられるのではないかというふうに思います。

これらは、いずれも、外貨建ての国債や社債、あるいは外貨建ての銀行借入れなどを行っていて返済が滞った例なんですね。アジア通貨危機やメキシコ通貨危機もそうかもしれませんが。

さて、これからは大臣にお答えいただきたいというふうに思いますけれども、通貨発行権がある限り自国通貨建ての負債の返済不能に陥ることはないとの主張がありますが、これはどのように考えられますでしょうか。

 

○麻生国務大臣 最近、与党でもよく話題になっておるお話で、通称MMT、モダン・マネタリー・セオリー、現代通貨理論と訳すのかな、そういうようなものなんだと思っておりますが、いろいろな方がしゃべっておられるのは理解をしておりますが、これについて、今言われたように、自国通貨というものを持っている国では、貨幣を際限なく発行ができるから、早い話がデフォルトに陥ることはない、簡単にはそういうことを言っておられるんだと思いますが、政府債務残高というものがどれだけ増加しても問題はないという考え方として、最近、いろいろな方が言われているように思っております。

今言われたような国々というのは、そうですね、ほかにも、私、まさにハイパーインフレーションの真っただ中のブラジルに、五十年ぐらい前に、年率一八〇〇%だったかな、あのころは伸び率が。デルフィン・ネット率いるブラジルに一年住んでいましたので、そのときの朝のパンの値段と夕飯のパンの値段が違うという事態のところに住んでいましたので、そういうものだというのはわかっておるつもりなんですけれども、少なくとも、そういったような状況になり得るという現場にいると、これは、ハイパーインフレーションというのは恐ろしいものだというのはよくわかるんですが。

少なくとも、このMMTというような話というのは、外貨の場合でありますけれども、日本の場合はそれは外貨でいわゆる国債を売っておりませんから、外国人が買ってもらっている日本の国債というのは今は十何%はあろうかと思いますが、その中、それはいずれも全部円建てでありますから、少なくとも、いわゆる、今言われたような国々の状況のような、外貨でやっているわけではありませんから、それは全然状況は違っておるんだというのは確かにあります。

しかし、現実問題として、この種の話はよく言われるところではありますけれども、日本の場合、GDPと言われるものの約二倍に達する累積の債務というものを抱えておりますので、今は、御存じのように、個人金融資産が一千八百六十兆とか巨大なものがありますので、預金等の潤沢なものが、国内の家計、金融資産の中に存続をしておりますから、そういった意味では、いわゆる、外から見た場合は、バランスシートの上でいけば債務超過になっているわけではないではないかとか、いろいろな表現があるんだと思いますので、結果として、極めて低い金利水準で事がずっと安定的に、自国通貨建てだけで国債というものが賄われているという極めて幸運な状態が続いているんだと思います。

しかし、これは、いずれにしても、少子高齢化という避けがたい問題が目の前にありますし、経済とかその他の社会構造が変化してまいりますので、こういった状況がいつまでも続いていくとは限らぬというように覚悟しておかなきゃいかぬのであって、少なくとも、財政運営に対する信頼というものがなくなってくれば、これはマーケットがどう判断、反応するかというのは極めて大事なところなのであって、借換債の発行というようなものが困難になってくるとか、それには多額の金利が要るようになるとか、いろいろなことが考えられますので、財政の対応力ということが失われていくということも十分に考えておかねばなりませんので。

このMMTの話というのは、よく最近、何とかというアメリカの下院議員がこれをえらく言って当選したというのも一つのネタになったんだという話をアメリカ人から聞いたことがありますが、そういった意味で、私どもとしては、今この種の話に乗っかって、これに対しては、コリン、サマーズとか、ミッチェルとか、みんなこれはいずれも、とんでもないと言って反論をしている著名な経済学者もいっぱいおられますので、私どもとしては、この種の新しい話に関して、日本は、この実験場にしてやってみようじゃないかという気は私は全くありません。

 

○前原委員 質問は違うんですよ。つまり、MMTの話は、そこから、この前提を聞いた上で、その次にしようと思っていた話で、今、MMTの話はまだしていないんです。質問を一切していない。私が聞いているのは、要は、通貨発行権がある国が自国建て通貨で負債の返済不能に陥ることはないという主張があるわけですね、それについてはどうお考えなのかと聞いているわけです。つまりは、自国建て通貨で通貨発行権のある場合は返済不能になることはないという人はいるけれども、どう考えますかということを聞いて、その後の質問でMMTに行こうと思っているんです。だから、私の質問通告、大分先に答弁されているんですよ。

 

○麻生国務大臣 御質問は、このMMTの紙を最初に頂戴していましたので、そちらの話かと思って伺っておりましたが。

いわゆる、いろいろな状況になりますけれども、今の御意見ですけれども、少なくとも、日本の場合、少子高齢化などいわゆる社会構造とかまた経済の情勢が変化していく中で、これがいつまでも続いていくというわけではないということを考えましたときには、財政運営というものに対する信頼というのが、これはずっと続きますかねと、ずっと赤字発行のままで。バランスシートでいえば資産の方がないわけですから、そういった意味で

は、借換債の発行というのをやろうとしたときにはなかなか、資産が何もないじゃないかという話になりますので、そういった意味では、今度は国債の償還というものにも支障を生じることになりますので、そういった意味では、財政の対応力というものが基本的に失われることになるんだろうと。これははっきりしているんじゃないかと思いますので。したがって、経済財政とか国民生活に非常に大きな影響を与えるということになるおそれが非常に大きなことになるだろうというのは想像できます。それでよろしいですか。

 

○前原委員 いやいや、端的にお答えいただきたいんです。通貨発行権がある限り自国通貨建ての負債の返済不能に陥ることはないということについては、いや、違うということを今おっしゃったんですね。

違うということでよろしいですね。それをお答えください。

 

○麻生国務大臣 それは違いますよ、なかなか返済できなくなりますから。

 

○前原委員 私も同じ考えなんですね。ただ、こういう主張があって、それがMMTの基盤になっておりますので、今の御答弁は物すごく大事なんです。つまりは、今の議論をする前提として、自国通貨が発行できれば幾ら自国通貨建てで借金しても大丈夫なんだという議論は違いますよということをまず明確におっしゃったということ、それは共通認識で議論をスタートしたいと思うんですね。

MMTの議論を始める前に、少し違う議論で使用しようと思っていた資料なんですが、七という資料をごらんいただけますか。これは、よく財務省が使われる資料なんですけれども、かなり昔から使われる資料で、戦前それから戦後の対名目GDP比の債務残高、比率をあらわすものでございまして、今は戦前よりもひどくなっていますねということによく使われるわけでありますが。

今、麻生大臣から御答弁いただいたことで私が申し上げたいのは、日本は自国通貨建てだったんですね。だけれども、戦争に負けたという要因はあるにしろ、一九四五年のところでハイパーインフレーションが発生して、預金封鎖、新円切りかえ、財産税、そして戦時特別補償税などなどの債務調整をやっているということで、自国通貨を発行しても、言ってみればデフォルトを起こしているわけですよ。つまりは、日本で起こしているわけですね。ということを、我々はまず認識しておかなきゃいけないということなんだろうというふうに思います。

さて、そこでMMTの議論に入りたいと思いますし、主に黒田総裁にお話を伺いたいというふうに思うわけであります。

まず、MMTの定義ということで、これはいろいろな方がおっしゃっていることで、まとめさせていただきました。最後の三行がポイントでございまして、独自の通貨を持つ国は、債務返済に充てる貨幣を無限に発行できるため、インフレ率が一定の水準に達するまでは財政支出をしても問題はないとする経済理論、こういうことなんですね。

ポイントが、ずるいのは、インフレ率が一定の水準に達するまでということが逃げ口上で書かれているわけでございますが、これについては後々話をしていきたいというふうに思います。

先日の五月九日の参議院の財務金融委員会で、黒田総裁がこうおっしゃっているんですね。

MMTについては、必ずしも体系化された理論でなくて、全貌の把握が容易でないためにこれを評価するのは難しいが、その上で申し上げると、MMTの基本的な考え方は、自国通貨建て政府債務はデフォルトすることがないということで、財政政策は、財政赤字や債務残高などを考慮せずに、景気安定化に専念すべきであるということだと理解しております。こうした財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張だと思いますし、実際、米国の学会でも非常に少数の意見にとどまっており、広く受け入れられた考え方ではないというふうに認識しております。こういうことを答弁されている。

資料のお配りした二においては、一々見ませんが、先ほど麻生財務大臣もおっしゃったし、また黒田総裁もお答えをされているように、メジャーな方々は、このMMTに対しては極めて否定的だということであります。

先ほど申し上げたように、この理論のポイントは、インフレにならない限りということなんですね。ということは、逆に言うと、この議論をしている人たちも、インフレになるとの懸念を持っているわけですよ。つまりは、この政策をやっているといつかはインフレになるということで、逆に言うと、インフレにならない限りというずるい逃げを設けているわけですね。

そこで、黒田総裁にお伺いしたいんですが、黒田総裁は、同日の財金の委員会で、MMTの議論で言われているのは、いわば財政赤字とか債務残高を全然考慮しないで、いわば大量にというか無制限に国債を発行して減税や公共事業に充てると、その国債を中央銀行に全部引き受けさせてやっていくという議論でして、そうなったら当然ハイパーインフレーションのおそれがあるということで、到底米国の学会でも受け入れられないわけであり

ます、こう御答弁されていますね。そこで、お伺いします。

当然ハイパーインフレーションのおそれがあると発言をされましたけれども、どのようなメカニズムでハイパーインフレーションになるとお考えでこの答弁をされたんでしょうか。

 

○黒田参考人 まず、MMTの議論の前提が、委員も御指摘のとおり、自国通貨建て国債であれば償還資金を中央銀行による国債引受けで必ず調達できるのでデフォルトは起こらないということを前提にして、そういうもとで、したがって、財政赤字や債務残高を全く気にせずにどんどん財政の拡張をし、それを中央銀行で引き受けてもらっていたら大丈夫ですと。ただ、そういうことを一旦始めますと際限がなくなって結局インフレになる、あるいはハイパーインフレになるというのが、いわば我が国のみならず各国の経験でありまして、そういうことから、こうしたいわゆる財政ファイナンスというものは、結局、大幅なインフレが生じて国民が多くの負担を負うということになるということの、いわば内外の歴史の教訓ということかと思いますけれども、我が国を含めて、先進各国では、中央銀行による財政ファイナンスは認められていないということかと思います。

したがいまして、委員御指摘のとおり、インフレにならないところで財政拡張をとめるのでというのはよくわかる、理屈としてはわかるんですけれども、過去の例を見ますと、一旦、国債の中央銀行引受けという形で財政ファイナンスを始めるとこういうことになってしまう例が非常に多いということは、日本を含めた各国の歴史の教訓ではないかというふうに思っております。

 

○前原委員 黒田総裁、そのメカニズムを伺っているんです。同じ認識ですので、やゆするとかそういうことではなくて、では、どういうメカニズムでインフレ、そして取り返しのつかないハイパーインフレーションになるかというメカニズムを伺っているわけです。

では、私がまず申し上げるので、それが同じ認識かどうかという御答弁をいただきたいと思います。この議論、理論に基づくと、国債を発行しても中央銀行に引き受けさせるということなんですね、結局は。そうすると、当面、金利も抑えられるし、金利上昇になることはないということなんでしょうが、私は、そういうことをやっていれば、恐らく自国通貨に対する信認が失われると思うんですね。

私は、やはり、一番初めに反応するのは為替じゃないかと思うんですね。金利は、中央銀行が国債を引き受けるので抑えられるとして、しかし、通貨に対する信認というものが失われた場合には、これは、日本でいうと円安、通貨安、為替が安くなるということで、そこから始まってくるのではないか。そして、そうなると、日本のように、輸入、例えば資源なんかは輸入に頼っていますね、あるいは食料なんかも輸入に頼っているというところで、輸入物価が上がってくるということの中でインフレが始まってくるというのが、私はメカニズムの初めの取っかかりかと思うんですけれども、インフレ、ハイパーインフレになるということをおっしゃっているそのいわゆるメカニズムの、私と同じ認識なのか、あるいは違う御認識なのか、お聞かせいただけますか。

 

○黒田参考人 そこはなかなか、経済学でいうアイデンティフィケーションの難しいところでありまして。

例えば、ほかの国の例を出すのもちょっと失礼かもしれませんが、アルゼンチンを見ますと、委員御指摘のとおり、まずアルゼンチンの通貨が大幅に下落して、それがインフレになる、それでまたインフレが通貨の下落を招くという悪循環になっているということで、為替安が先導したように見えるわけです。

ただ、どうして為替安になったかと言われれば、それは、通貨の信認、つまり、将来インフレになると思ったので通貨を売っているわけですので、この両者がどういう因果関係でどういう順で起こるかというのはなかなか一概には言えない。

ただ、為替が、通貨安になるということがハイパーインフレの原因となり、結果となる大きな要素であることには間違いないと思います。

ただ、そうした為替、通貨の影響が起こる一つのきっかけというのは、やはり、財政赤字とか債務残高を全く気にしないでどんどん財政を拡張する、それを中央銀行がどんどん引き受けてファイナンスするということになれば、明らかに実態を超えた需要超過になり得るわけですね。

ですから、典型的なマクロ経済学の標準的なシナリオでいっても、需要超過でインフレになる、あるいはそれがまた通貨安を招くということもあり得るので、御指摘の、通貨の信認が失われ、為替が安くなってインフレ、ハイパーインフレになる、そういうメカニズムもあるし、それが重要な要素であることは事実なんですけれども、先ほど申し上げたように、為替安とインフレとの間には、相互に原因となり結果となることもあるし、それから、そのもっと背景には、無制限の財政拡張が需要超過で国内物価を引き上げていくというメカニズムも働いている。

だから、そのいわば三者が、通貨安、国内インフレ、それから需要超過という、典型的なマクロ経済学の議論のとおりなんですが、確かに、非常なハイパーインフレというところを見ると、通貨安というのが非常に大きな要素になっているということは、最近のアルゼンチンの例などを見ましても、そのとおりだと思います。

 

○前原委員 それに加えて、そのメカニズムを少し、もうちょっと進めていきたいというふうに思うんですが、インフレが発生をするということになったときに、日銀はどちらを優先させるんですかね。

例えば、日銀はそんな政策はとりませんと、ですから日銀としてお答えするのはということであれば、一般論で結構ですよ。中央銀行として、一般論で結構なんですが、景気を刺激するために、例えば国債を買って、そして金利を抑えている、しかし、いわゆる需要と供給のバランスがとれた形で、いい形でのインフレではなくて、先ほど言われたような形での、私が申し上げた輸入物価の上昇も含めて、あるいは国内物価の上昇も含めて、悪いインフレが起きてきたということの中で、インフレを抑えなきゃいけないということになれば、当然ながら中央銀行は、今度はまた、それに伴って上昇するインフレを抑制するために金利を上げるというようなポジションもとらなきゃいけないと思うんですけれども。

スタグフレーションみたいな形になるわけですね。景気が悪くて、だけれどもインフレになりますということなんですが、こういう場合の金融政策、もちろん、ぱんと単純に言えるわけではないというふうに思いますけれども、ある方が、財務省の幹部の方ですけれども、糖尿病患者にどう対応するかと同じように難しい、複合的なことになるということでありますが、このようなスタグフレーションのような状況になったときは、中央銀行あるいは日本銀行の総裁としての黒田総裁のお考え方としては、景気を大事にされるのか、それよりは物価安定を大事にされるのか、どちらを大事にされるんですか。

 

○黒田参考人 中央銀行はどこでも、やはり物価の安定というのが最大の使命であるということを旨としておりますので、当然、日本銀行も物価の安定を第一に考えるということであります。

なお、対外的な理由で、例えば原油価格が大幅に上がった、第一次石油ショック、第二次石油ショックとありましたね。そういう場合の対応として、第一次石油ショックの教訓から、第二次石油ショックのときに日銀も含めて各国の中央銀行がわかったことは、石油価格の大幅な上昇というのは、外的な一種のサプライショックというか輸入コスト上昇、それを一切物価上昇に反映させないように徹底的に引き締めるということは適切でない。

ただ、石油価格が上昇して、それによって一定の範囲で消費者物価が上がったことは認めるけれども、それが二次的に賃金とか将来のインフレ率に反映していくことは防圧するということが適切だったというのが第一次石油ショックの教訓で、第二次石油ショックを、各国とも、その結果、第一次石油ショックのようなインフレにもならなかったし、また、第一次石油ショックのときのようなスタグフレーションの厳しいことにもならなか

った。

ですから、石油価格の暴騰のような全く外的な要因で輸入価格が上がり、それが国内の物価に反映していくときの対応策というのは、それが一切物価安定目標を超えていけないというふうにすることが適切だとは言えないと思うんです。

それはそうだと思うんですが、ですから、一時的な、純粋に外的なショックに対しては、その内容、影響存続度、見通しを見きわめて適切な対応をとって、やはり物価安定目標を中長期的に実現するということが正しいと思うんですが、為替の場合は、外的な要因で動くこともありますし、先ほども委員御指摘のように、一種の、財政とか通貨に対する信認が失われて、それが将来のインフレを予想させて為替が下落するというような場合には、これは国内的な要因で為替が下落しているわけですから、それによる輸入物価の上昇を受け入れる、認めるというわけにはいかないと思うんですね。

ですから、物価はいろいろな状況、いろいろな要素によって影響されますので、中央銀行としては常に、その内容、影響の持続の度合いとか、そういうことを丁寧に見きわめて適切な対応をとると。

ただ、あくまでも、中央銀行の使命というのは物価の安定であるということには全く変わりないと思います。

 

○前原委員 よくわかりました。MMTの危険性というのは、ハイパーインフレーションを起こす可能性がある、自国通貨建て、自国通貨の通貨発行権があってもそれはデフォルトする可能性があるんだということの中で、そして、そういうものが起きれば、中央銀行としては非常に難しい対応をしなくてはいけないということを、原則が物価の安定と、内的な要因と外的な要因に分けて今御説明をいただいたわけでありますが。

加えて、私が申し上げますと、このMMTの怖いところは、当然ながら、金融機関も、金利が上昇するということは国債価格が下落しますので売りますよね。そうすると更に下落をする。金融機関の損が確定をしたりしますし、また、当然ながら、いわゆる、今まではほぼゼロ金利でお金を借りて経営をしていた企業が、今、日本の場合はほとんどですから、そういったところが少しでも金利が上がったら、もうとてもじゃないけれども経営ができないということになる。そうなると、金融機関も、あるいは企業も経営が行き詰まるという、言ってみれば、連鎖的なシステミックリスクを起こす可能性が極めて高い、こういうことだと思いますし。

日本の場合は外準がどれぐらいあるかというと、一兆ドルぐらいですか、今一兆ドルぐらいですから、これを抑えるにしても限界があるということでありまして、自民党の中でMMTを殊さら声高におっしゃっている方はおられますけれども、私は極めて、これについては日本を破綻に導く考え方だということは申し上げておきたいというふうに思います。

その上で、この政策が出てきている背景は、日本がモデルだと言っているわけです。ここはちょっと黒田総裁とは違う立場で議論をさせていただきますが、今までの委員会等々で、いや、全然違うんだということをおっしゃっているわけでありますが、ただ、日本をモデルにしているという点では、それはいろいろな方々が、これだけ日本は、千百兆ですか、今、国の借金が。だけれども、金利も低いし、そして、円も為替も極めて安定的に推移をしている。しかも、日本は、債務残高は、名目対GDP比でいうと世界最悪の水準ですよね。

それでも大丈夫じゃないかと。

先ほど七で見ていただいたように、デフォルトを起こした日本が、終戦直後よりもひどい状況になっているのに大丈夫なんですね。そこは、先ほどまさに麻生大臣がお答えになったように、外国の保有割合が一〇%程度ですね、国債。約九割が国内で持たれている。そして、その半分が日銀ですよね。今、四四%ぐらいじゃないですか、四四%ぐらい持っている。

確かに、これも何度も黒田総裁とは議論させていただいているように、イールドカーブコントロールに変更されて、そして、国債のネット増加率は鈍化をして、また、国債の保有残高も、ふえ方がこれも鈍化しているということで、これについて、私は、うまく切りかえられたということは従来から申し上げているとおりなんですけれども。

しかし、裏返せば、今のままの金融政策を当面続けるとおっしゃっているわけですよ。続けるとおっしゃっているということは、言ってみれば、どこかで円に対する信認が失われる可能性がなきにしもあらずですよね。それはそういうものを注意しながら運営するんだということをおっしゃいますけれども。

ここにおられる同僚議員の方々の支持者の、例えば経営者や資産を持っている方々にお話を聞かれた方々も多いと思うんですけれども、少なくとも私の支持者の方々の中では、やはり将来を見据えて資産を例えば外貨建ての運用に変えたりとか、あるいは現物資産にかえている方々がおられますよ。これだけ借金していて日本は大丈夫かということの中で、そういう方々がいる。

ということは、逆に言うと、一部でも、資産を持っている方々が、将来、日本の財政というのは持続可能ではないんじゃないかということの中で、今でもキャピタルフライトというものがある程度起きているわけですね。つまりは、外貨建てにする、円やあるいは自国内での資産運用はしない、こういうようなことですね。

さて、そこで少し建設的な意見として議論させていただきたいんですが、うまく運用しますよということなんだろうと思いますけれども、日本はうまく安定的にちゃんとマネジメントしていきますよということの何らかの定性的あるいは定量的な、日銀として、ここをごらんください、ここをごらんいただければ大丈夫ですよ、こういうようなものが、日銀総裁、何かないですかね。

つまりは、私は建設的な提案で申し上げております。このまま千百兆円の借金があって、そして人口が減っていく、働きが減っていく、それはAIとかロボットとかで生産性が急に上がればそれはいい話ですよ、いい話ではありますけれども、生産年齢人口が減っていく、そして二〇二五年問題、つまりは団塊の世代が全て七十五歳以上の後期高齢者になって医療や介護にかかる費用が非常にふえていくということですよね。

六ページ、ごらんいただきたいと思いますが、これは財務省からいただいた厚生労働省の資料でございますけれども、当然ながら人間というのは年をとるとどこか悪くなっていきますから、そういう意味では医療費あるいは介護にかかわる費用というのはふえていくし、やはり七十五歳以上になると急激にここは伸びていくわけですね。そして、当然ながら公費負担も大きくなっていくということになったときに、果たして日本の財政というものは持続可能なのか。

それがまさに通貨の信認にもつながってくるということでありますが、何らかの定量的、定数的指標、これは黒田総裁で変えられましたけれども、日銀として前は銀行券ルールというのがありましたよね。何かそういうものですよ、イメージとしては。何かそういう定数的、定量的な指標の中で、これさえ守っていれば大丈夫なんです、だから皆様方、通貨の信認については安心してください、こういうものがあればお答えをいただきたいと思

います。

 

○黒田参考人 これはなかなか難しい問題でありまして、一言で言えることはないと思うんですが、最もオーソドックスに申し上げれば、やはり財政そのものの持続可能性を高めるということが最も重要であろう。

政府もそういった観点から、一方で経済に応じた適時適切な機動的な財政運営に努めるとともに、中長期的に財政の持続可能性を高める、いわゆる財政再建といいますか、そういうことを目標にされておられまして、過去六年の間に財政赤字も減ってきています。財政赤字が減るということは新規の国債発行額も減っているということですが、ただ、まだ新規の国債発行をしていますので、国債発行残高はふえていますし、国債発行残高のG

DP比も伸びはだんだん落ちてきていますけれども、まだGDP比が下がるというところまで来ていないということであります。引き続き、そういった政府債務のGDP比を下げていく、あるいはその大前提としてプライマリーバランスを回復する、プライマリーバランスを黒字にするということを政府は目標にして取り組んでおられますけれども、これはぜひしっかりと達成していただきたい。それがやはり一番重要な点ではないかと思います。

それとともに、日本銀行として、やはり信認が失われることのないようにということが、何といっても物価安定の目標に対するコミットメントを明確にし、決してハイパーインフレとかあるいはインフレの高進を許さないということが一番重要であり、最もキーになることであると思いまして。

日本銀行法の法律自体も、昔は、御承知のように、日銀の当座預金に対する、こちら側の資産側の内容についていろいろ量とか質について条件があったんですね。そういうものはもう新日銀法でなくなっているわけです。それはもう各国の中央銀行ともそういうものはもう全くなくして、むしろ、物価安定の目標、今のグローバルスタンダードでいえば二%の物価安定の目標というものを掲げて、それを達成する、あるいは達成するという

コミットメントを明確にするということによって物価の安定を達成し、委員の御懸念のような、例えば通貨の大幅な下落とか、あるいはハイパーインフレになるというようなことは防止するということでありますので。

今の管理通貨制度のもとで、何かシンプルなルールでこちらを抑えるとか、あるいはこれとこれのバランスをとるとか、そういうもので物価の安定、通貨の信認を確保するということにはやはり各国ともなっていないわけでして、そこは新日銀法のもとでそうなって、それから、御指摘の日銀券ルールも、実は前の総裁時代に日銀券ルールとかあったんですけれども、それは今、こういう大幅な金融緩和を、強力な金融緩和をするという観点から停止しているわけですけれども、今の時点で何かシンプルなルールをつくって、これで通貨の信認、ハイパーインフレの防止ということに役立つような、そういうものというのはなかなか難しいというふうに思います。

 

○前原委員 今までの金融政策を踏まえてのこれからの金融政策については引き続きこれからも議論をさせていただきたいと思うんですが、その中にあって、きょうも議論になっていますけれども、米中の経済摩擦というものの不透明さが出てきているということの中でどう考えるかということであります。

これについては、前回あるいは前々回も議論をさせていただきました。日本は金融政策を続けてきた、FRBあるいはECBは、少し、いわゆるテーパリングのみならず、利上げもFRBは行ってきた、ECBはいわゆる国債の買入れというものの、いわゆる、ふえないという形にした、こういったこと。しかし、日銀はそうじゃなかったために、これからなかなか日銀としてはその対比の中で厳しい状況にあるのではないかという議論はしてまいりました。

それも踏まえてですが、まず一つ、麻生大臣に事実関係としてお伺いしたいんですが、四月二十六日に、ムニューシン米財務長官とお会いされていますね。そのときに、為替条項を貿易協定に盛り込むよという話があった、しかし麻生大臣は、貿易の問題と切り離すべきだ、こういう主張をされたというふうに報道になっておりますが、確認です。貿易協定には為替条項は盛り込ませないが、為替に関する何らかの二国間の合意の可能性はあるということなんですか。それとも、それも含めて二国間で為替についての何らかの合意を与えるものはない、こういう御趣旨ですか。

 

○麻生国務大臣 為替をいわゆる貿易の交渉の中に入れろというのは、これは、アメリカの議会を代表する形でUSTRがよく言うせりふであります。アメリカ財務省は、それに対して、特に、言われているのは知っているけれども、USTRほど激しく言ってはこない。

なぜ言ってこないかといえば、それは、この数年間、いわゆる百二十円から七十九円まで、この十年間ぐらいで見ますと、円の差というのは、御党のときに七十九円まで円高で行き、一番安いときで百二十円ぐらい、これは、プラザ合意のときに二百四十円から百二十円まで行きました、あのときが最近では一番円安の比率なんですけれども、きょうで、百九円、百十円、そんなところですけれども。そのときに、円が急激に八十円から百十何円まで、まあ、ドルが暴落して円が上がったということにもなるのかもしれませんが、そういったときと日本の対米貿易額というものの利幅を見ますと、円が上がっても安くなっても貿易収支の差はほとんど変わっていないという数字があります。

これは、アメリカ側に見せた資料で、これで反論があるなら言ってみろと言って、全くそれ以後反論はありませんけれども。

それは、基本的に、円が安く、八十円から百十何円まで円がどっと安く、円安になっていっていたときのこの六年間の間、間違いなく、輸出をやっております各社は、値段を据え置いてシェアをとらなかった、そして利益をとったという形になって、トヨタが一番いい例かもしれませんが、トヨタのシェアは、ほとんど日本からの輸出車のシェアはふえておりません。しかし、トヨタは、御存じのように、膨大な利益を得ましたから、それは間違いないんだと思いますので、日本の産業界は極めて賢く立ち回ったというのが事実としてあります。これを政策的に、戦略性にやったかどうか、それほど頭が回ったのか知りません。そこは、私は、こちらは想像でしかありませんから。ただ、数字としてはそうなっておりますので。

したがって、我々としては、いわゆる金利若しくは為替等々というものが貿易に直接影響していないという事実の数字を見せて、これは大統領にも直接見せましたし、ライトハイザーにももちろん、もちろんムニューシンにも全部この数字を見せておりますので、このところ、その種のことに関して、少なくとも、我々財務省に対して向こうの財務省から言われたということはほとんどありません。

いろいろ対話しているときにも、もうあの数字を、皆、向こうも知っていますからこの話を特に言うつもりはないけれども、我々もアメリカの民主党からわんわんわんわん言われるから、言う。

それは当然だろう。こっちだって同じようなものだ、どこだってそういうことになるんだ、現実問題はそうだという話はお互いに理解はできておるというけれども、立場があろうかと思いますので、そこの、だから、対話と記者にしゃべる話とはかなり差が出てくるというのは、日本でも似たような話はいっぱいありますから驚くことはないので、そういったものだと思っておりますが、いずれにいたしましても、現場は極めて現実的に事は動い

ておると思っております。

 

○前原委員 御説明いただきまして、ありがとうございます。

私がお聞きしたかったのは、今御答弁、全く外れてはいないんですが、要は、貿易にかかわる合意の中に為替は何らかの形では入れない、しかし、もっと言えば、プラザ合意みたいな違う形での為替の合意というのがあり得るのかということを私は聞いているわけです。

 

○麻生国務大臣 これは、基本的に、今、そのような激しい状況になってきているという状況に全くありませんので、今の状況でそういうことがあり得るかといえば、今の状況では考えられませんとお答え申し上げます。

 

○前原委員 わかりました。その上で、黒田総裁に、今後の米中経済摩擦が世界経済、日本に与える影響の中で、さらなる緩和という議論も出てくるかもしれませんが、その前提として、いろいろな、今までの金融緩和に対する副作用というのがあるわけですね。それについて、きょうは地方銀行の状況について少し問題意識を共有できればというふうに思っています。

まず、九ページ、九の図表をごらんいただけますか。これは、各地方銀行、第二地方銀行の、どこかわからないようにしていますけれども、これの公開資料を、少し四捨五入もしていますので、これは私の事務所が作成したということで御理解をいただきたいと思いますけれども、ただ、公開資料をもとにしておりますので、ほぼ事実の、もちろん数字でありますが。

左を見ていただくと、やはりこの六年間で貸出金利はすごく低くなっているわけですね。これだけ低下をしているということであります。異次元の金融緩和で金利を抑えるということの中で、貸出金利がこれだけ低くなっています。

その中で、右を見ていただくと、では、いわゆる金利が低くなったためにどれだけ利息収入が減ったかということについて書かれているわけであります。当然ながら、金利が低くなって、利ざやが少なくなっていて、この部分についてはほとんどの地方銀行がマイナスになっているということはおわかりいただけるんではないかと思います。

次、十をごらんいただきたいんですね。ただし、地方銀行にとってはマイナスばかりではないわけですね、この黒田総裁がやられた異次元の金融緩和というのは。何かというと、まず金利を下げる、結果として円安になる、企業のいわゆる株価が上がるということの中で、六年間で株価が上昇するということの中で、真ん中が株式の含み益、そして右側が債券その他の含み益ということで、あくまでも含み益ですよ、真ん中と右側を足したものが一番左になっているわけでありますけれども、含み益としては、やはりどの金融機関も多くなっていますねということで、金利が下がって、利ざやが狭くなって、そして、その点については厳しいけれども、しかし、持っている有価証券など、そういった資産の価値はふえましたと。例えば、いい企業の株を持っている銀行であれば、その配当金というものは、当然ながら株高でふえているというプラス面もありますということであります。

問題は最後の十一なんですが、この十一というのは一体何なのかと申しますと、コア業務純益と言われるものでございまして、コア業務純益というのは何なんだということなんですけれども、これは、収益から国債の売却益、つまりは、身を削っているわけですよ。身を切っているわけですよ。

つまり、先ほど申し上げたように、本業で損しています、だけれども配当金なんかではプラスになっています、でも、それでも経営が苦しいから、いわゆる資産を売っているわけですね。そういうことの中で、コア業務純益がどうなっているかということのものが十一なんです。

プラスになっているところもあるじゃないというふうに見られるかもしれませんし、そうなんですが、実は、これは株の配当収入が含まれているんですよ。含まれている。含まれていてプラスになっていて、でも、それを入れても、マイナスになっているところがあるんです、これだけ。

六年間で株価が上がりました。資産の含み、株も含めて含み益が上がりました。配当金もふえました。しかし、本業は大赤字です。そして、いわゆる資産の切り売りしてもまだ大変なところがこれだけあるということなんですね。

さて、これから米中の貿易摩擦、私は覇権争いだと思いますけれども、長く続く可能性があるということの中で、先ほどからお話をされているように、物価の安定、二%という物価の安定目標に向かってやられるということでありますけれども、今までのようなやり方、あるいはさらに、FRBやECBあるいはほかの中央銀行が今までとは違うやり方、FRBも完全に考え方は変わりましたよね。そういう中にあって、放置しておくと、まさにリーマン・ショックの後の日銀、私はあのときはむしろ金融緩和をもっとすべきだと、白川さんはそれまでに金融緩和をしていたから及び腰だったわけですよ。だけれども、ほかの国が金融緩和をやったために、その差で、先ほど麻生大臣がおっしゃったように日本は急激に円高になったわけですよ。そういう苦い経験があるわけですね。

ということになると、黒田総裁としては、やはり、FRB、ECB、あるいは他の国の中央銀行の動向を見ながら、必要以上の円高にならないような金融緩和というものは当然ながら視野に入れていかなきゃいけない。他方で、今までやってきた金融機関でこれだけ地方銀行は特に傷ついている、体力が落ちているということの中でどういった策を、こういうものを前提にしてとられますかということをお答えいただけますか。

 

○黒田参考人 まず、御指摘のFRBあるいはECBの金融政策、昨年まではいわゆる正常化プロセスをたどっていたわけですが、ことしに入って、いずれもそれを中断というか、世界経済の減速の状況、それからマーケットが若干混乱したということなどを踏まえて正常化プロセスをストップさせているわけですね。ただ、更にここで金融を緩和するということの時点ではありませんので、まあ将来ですから何が起こるかわかりませんが、リ

ーマン・ショック後のような状況とはかなり違うとは思っております。

ただ、その上で、いずれの、いかなる事由であれ、米中の貿易摩擦が長期化するとか、その他いろいろなリスクが顕在化して日本経済にも影響が出てくるというようなことで二%の物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるというようなことになれば、当然、追加緩和を検討していくということになります。

緩和の手段としては、既にイールドカーブコントロールを導入にしたときにも明らかにしておりますように、短期政策金利の引下げ、長期金利操作目標の引下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などさまざまな対応が考えられるわけですけれども、その際には、やはり、その効果とともに金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響などもバランスよく考慮する必要があるというふうに思います。この点は委員の御指摘の点も十分理解できるわけであります。

そうした上で、日本銀行としては、やはり、政策のベネフィットとコストを比較考量しながらさまざまな手段を組み合わせて対応することも含めて、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していくという方針でありまして、まだ今の時点で、何か仮定の問題に対して、こういうことをします

とか、そういうふうに申し上げる状況にはありませんが、先ほど申し上げたようなオプションがあって、それらの組合せとかその他も含めて、モメンタムが損なわれたという状況が起これば当然、適切な追加緩和を行うということになろうと思います。

 

○前原委員 それは、今まで何度もおっしゃっていることはよくわかっているんです。その上で聞いているわけです。つまりは、マクロとしての金融政策ということは、先ほど申し上げたとおり、私自身も、リーマン・ショックの後の日銀の対応については問題あり、それが急激な円高を生んだ、そして、輸出企業を含めた極めて大きな影響を与えたということを申し上げているわけです。したがって、マクロとしては、総裁もおっしゃったように、私も申し上げているように、追加の金融緩和ということについての可能性についてはわかるわけです。

しかし、今までの六年間の金融緩和の中でこれだけ地方銀行が傷んでいます、それは認識されているわけですね。傷んでいるということは、今数字をもって申し上げたわけです。そして、さらに、先ほど個別の長短金利の話もされたし、さまざまなことをおっしゃいましたけれども、そういう追加緩和というものが、金融仲介機能を、大事な地域の仲介機能を有するこういった地場の金融機関を更に傷めることになるんじゃないか。そうなる

と、マクロは理解できても、ミクロでは、まさに地域経済というものがおかしくなるという可能性というのが出てくるわけですね。

ですから、今のお答えだと、地方の金融機関にとっては、何だ、更にまた金利を下げるのか、それが追加緩和かというふうなこと、そして、自分たちはまだまだこれから傷められるんだというふうにしか聞こえませんよ。

つまりは、グローバル、マクロと、それから地場の金融機関の立場に立った、地場の金融機関を全て守れと言っているわけではないですよ、それは、経営改革もしてもらわなきゃいけない、コストカットもしていただかなければならない。だけれども、そういうものをあわせたやり方というのを今の答弁では感じられませんが、もう一度お答えいただけますか。

 

○坂井委員長 黒田総裁、申合せの時間は過ぎておりますので、御協力をお願いします。

 

○黒田参考人 はい。二点ほど申し上げたいと思うんですけれども、日本銀行の金融システムレポートでも、累次のレポートで指摘しておりますように、確かに、低金利環境の長期化、さらには、もっと構造的な要因としての地方における人口減、企業数の減、こういったものが業務純益に対して影響を与えている、しかも、それが五年、十年と長く続いた場合の影響というのも分析しているわけですね。現状、地方銀行は三%ぐらいの融資の増加をしていますし、仲介機能が損なわれているわけでもありませんし、十分な資本も流動性も持っているわけですけれども、仮にこういったトレンドがずっと続きますと、そういうことにも影響が出てくるおそれがあるということであります。

ただ、それでも、何か、我々がやったところですと、例えば五年後にリーマン・ショック並みのショックが起こったという場合でも、かなりの銀行は十分な資本を持っているというようなストレステストもやっておりまして、現時点で非常に大きな問題があるということではないということは御理解いただきたいとともに、そういう将来のことも、五年、十年という長期的な展望も見据えて、金融庁とも十分連絡をとりながら、対応を考えていかなければならないと思っています。

他方で、そういうことも十分考慮しながら金融政策の運営は当然やっていきますけれども、二〇二〇年、二一年度を見ましても、物価上昇の見込みというのは一%台半ばということでまだ二%に到達しませんので、やはり当面、強力な金融緩和を続ける必要があるということは御理解いただきたいと思いますし、それから、それに伴う副作用をできるだけ減らすための措置もこの間決定したところであります。

委員の御指摘はよく理解できるわけですけれども、やはり、すぐに物価安定目標が達成されるという状況ではないので、もうしばらく強力な金融緩和を続けていくことになる。ただ、追加緩和の話は、先ほど申し上げたように、モメンタムが失われるような状況になったときの話でありまして、今すぐ追加緩和を検討しているということではありません。

 

○前原委員 もう時間が来ました。終わりますけれども、この六年間でかなり地場の金融機関は弱っているという認識はお持ちだと思います。そういうことの中で、更に米中のこういった経済摩擦の中で、そしてそういう可能性もあるということになると、トータルとしての理屈はわかるんですが、地域地域を本当に小まめに見ていただかないと、ストレステストをやっているから大丈夫だというよりは、かなり私は悲鳴に近いような声というものは届いているということを申し上げて、質問を終わります。

 

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