前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第192回国会 衆議院財務金融委員会2016/10/21

前原委員 おはようございます。 まず、金融政策につきまして、黒田日銀総裁を主にお話をお伺いしたいというふうに思います。
 まず、黒田総裁、先般の予算委員会では、質問通告してお越しをいただきながら質問をすることがありませんで、申しわけありませんでした。きょうはたっぷりお答えをいただこうというふうに思っております。
 九月二十一日から日銀が導入されました長短金利操作つき量的・質的金融緩和、きょうが十月二十一日ですからちょうど一カ月たちまして、わかりにくいという意見がかなり多いわけでありまして、ぜひこの場を説明の場に使っていただきたいというふうに思いますので、まず、ちょっと技術的なところから幾つかお話を伺いたいというふうに思います。
 この長期金利操作、イールドカーブコントロールというのは、経済、物価、金融情勢を踏まえて二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブ形成を促す、こうされているわけでありますが、まず一点ですけれども、最も適切と考えられるイールドカーブというのは絶対的なものなのか、それとも状況によって変わるものなのか、どちらですか。

 

黒田参考人 これは、まさに経済、物価、金融情勢に応じて変わっていくものであるというふうに考えております。
 したがいまして、年に八回ございます金融政策決定会合におきまして、毎回、経済、物価、そして金融情勢を詳しく検討いたしまして、次回の金融政策決定会合までの間、そのときのイールドカーブのままでいいのか、さらに下げるべきか、あるいは上げるべきかということも含めて議論していくということだろうと思います。
 ただ、現時点で、九月に決定した時点と経済、物価、金融情勢が大きく変わってはおりませんので、すぐに何か変更があるというふうに考えることは難しいと思いますけれども、いずれにせよ、委員御指摘のとおり、経済、物価、金融情勢に応じて適切なイールドカーブというのが変わっていくということだと思います。

前原委員 総裁、私が用意させていただいた資料をごらんいただきたいんですが、一番ですね(配布資料)。
 色で区分けをしてあるのでありますが、黒田総裁が着任をされて、いわゆるバズーカと言われるものをされる前が赤でありまして、それ以降、累次追加緩和というものをされてきているわけでありまして、直近がピンクなんですね。このピンクの今のイールドカーブというのは、簡潔にお願いしたいんですが、これは最も適切と考えられるイールドカーブになっているかどうか、この点についてお答えいただけますか。

黒田参考人 前回の決定会合の際、適切なイールドカーブはどんなものかということについて議論いたしましたが、現状、このような形でおおむね適正だろうということでありました。
 ただ、委員の中にはいろいろな御意見がありましたので、もう少しイールドカーブは立ってもいいとかいろいろな議論があったことは事実ですけれども、前回決定の際にはそのときのイールドカーブでおおむね適切であろうということで、短期の政策金利マイナス〇・一%、十年債の操作目標をゼロ%程度というふうに決めたわけでございます。

前原委員 あと、金融関係者の中で幾つか意見がある中で確認をさせていただきたいのは、今回の金融市場調節の方針として、従来のマネタリーベース増加目標にかえて、短期政策金利と長期金利操作目標を決定する、こういうこととされていて、短期政策金利はマイナス〇・一%、これは据え置きですね。それから、いわゆる量から金利へということで、長期金利操作目標が、十年物国債金利でおおむね現状程度、ゼロ程度ということ、それから、加えて、買い入れ額は金利操作方針を実現するように運営、おおむね現状程度の買いオペレーション、保有残高の増加額年間約八十兆円をめど、そして、指し値オペなど新型オペレーションを導入するということとされています。
 事務方からもう私は伺っているんですが、改めて、議事録に残すためにお伺いしたいんですけれども、この長期金利操作目標というのはレンジは設けないんですか。
 つまり、今だったらおおむね現状程度、ゼロ程度から上下どの程度外れれば調整するという目安というのが私の申し上げるレンジなんですけれども、そういうものは設けないのか。設けないと聞いているんですけれども、なぜ設けないのか。そして、調整するときに、では、何を目安にされるのか。その点をお答えいただけますか。

黒田参考人 この点も、十分議論の余地のあるところだと思います。
 ただ、短期金利の場合は、銀行の日銀における当座預金の一部にマイナス〇・一%をつけるということですが、これはもう完璧に日本銀行としてコントロールできるわけですけれども、十年国債の金利をゼロ%程度という操作目標を決めた場合でも、完璧にぴったりとゼロ%にするということはなかなか難しいわけです。
 ただ、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の経験から、マイナス金利と大量の国債買い入れという組み合わせによって相当程度コントロールできるということはわかっていますので、それを踏まえてやるということですが、具体的に何ベーシスポイント上下に幅を持たせるとかそういうことは、為替レートの類推でいいますと、一種の固定相場制で、その上下にかつてはプラスマイナス一%の幅を設けるということになっていましたけれども、そういうふうに、十年債の金利についてきちっとした幅をつくるということは、やはり日々 金融情勢が動きますので、必ずしも適切でないし、また、経済全体にとって一番好ましいイールドカーブを考えるときに、そう細かく特定するということは現実的でないだろうということで、具体的なレンジのようなことは設けておりません。
 ただ、当然のことながら、毎回の金融政策決定会合において、それまでの十年債の金利の動きを勘案して、さらにどのような長短金利操作つき量的・質的金融緩和が適当かということで議論するということはあり得ると思いますけれども、レンジを設けるということは恐らく必要でないし、必ずしも適切でないだろうというふうに考えております。

前原委員 再度確認ですけれども、ということは、政策決定会合において、今のいわゆる目安と言われるものが適切かどうかということをその都度判断していく、こういう御答弁だったという理解でよろしいですか。

黒田参考人 そのとおりであります。実は、これまでの量的・質的金融緩和の際に、 八十兆円国債を毎年買い入れるということを述べておりますけれども、これも、八十兆円ぴったしと買い入れるということではなくて、やはり一定の幅を持って、八十兆円程度ということでありまして、そこはレンジを特定することなく八十兆円程度ということでやっていたわけですけれども、今回はイールドカーブコントロールにいたしましたので、金利について、十年債について現状〇%程度ということにしたわけでございます。

前原委員 後で物価の話をさせていただきたいと思いますけれども、物価上昇が思いどおりにいっていないわけですよね、正直申し上げて。そうなれば、言ってみれば、何らかの追加緩和というのをやらなきゃいけないということになろうかと思います。
 いわゆる二つですよね。いわゆる短期政策金利、そして長期金利操作目標、こういうものを組み合わせる中で、先ほどおっしゃった最も適切なイールドカーブにしていく、こういうことで、それで物価上昇というものを、後でその道筋についてはお伺いしますけれども、そういうものをやっていくということなんですけれども、今、思いどおりになっていないわけです。そうなれば、追加緩和として長期金利操作目標を下げることもあるという理解でよろしいですか。

黒田参考人 そのとおりであります。

前原委員 けさパソコンで十年物の国債、長期金利の金利を見ますとマイナス〇・〇六三でございまして、九月の二十一日にばっと上がって、それからずっとまたゼロ、沈み込んでいる、こういう状況でありますし、物価の基調は非常に弱い基調になってきているんですね、これは後で申し上げますが。
 ということになると、先ほども言われたように、長期金利操作目標を下げることも追加緩和としてあるということなんですが、プラス、要は、国債購入の減額をしていかなければもっともっと金利が下がってしまうということになると思うんですけれども、現状のトレンドの中では、国債購入、つまりは八十兆円のベースを拡大するということについての、減額傾向にあると私は思うんですけれども、そういう認識でよろしいですか。

黒田参考人 ここは、マネタリーベースコントロールから長短金利操作つきの量的・質的金融緩和の中でいわゆるイールドカーブコントロールにいたしましたので、当然のことながら、八十兆円の国債買い入れ額というのはめどにすぎないわけでして、それを上回ることもありますし、下回ることもあるということでありまして、仮に、政策委員会が決めております十年債の操作目標〇%程度をかなり下回るということになれば、当然、国債の買い入れ額を減らすということもあり得ると思います。
 ただ、今のところは、比較的予想したとおりのペースで進んでおりますので、直ちに八十兆円から大きく下がるということは予期しておりませんけれども、委員御指摘のような場合があれば、当然、実際の国債買い入れ額というのは年間八十兆円よりも下がるという可能性はあります。

前原委員 総裁、可能性の議論をしているんじゃないんですね。つまり、今のトレンドの話をしているわけです。それは、総裁としては慎重に慎重に、市場との関係で上回ることもあれば下回ることもあるというような御答弁をされるのはわかりますけれども、先ほど申し上げたように、ゼロ近辺でいわゆる長期金利操作目標を置く、しかし、これは今ゼロを下回る状況ですね。そして、量的により多く買うともっと下回りますよね。そうすると政策目標と真逆になるので、今のトレンドは減額の方向じゃないですか。だから、それを私は今申し上げたわけです。
 ここは、大事なのは、私は実は今回の九月二十一日の政策変更は一方で評価して、一方で、評価をしていないと言うと言い過ぎかもしれませんが、リップサービスのところだけあるなというのが私の評価なんです。
 つまりは、前半の方はうまくやられたなと思っているわけです。つまり、量的緩和から金利目標に変えたということは、これはIMFでも、八十兆円のマネタリーベースを拡大するということを続けていたら、二〇一七年、二〇一八年には限界に来ると言われていたわけです。それを、いわゆる短期集中型から長期戦に切りかえるという形の中で、マネタリーベースというものに拘泥されない形にうまくシフトしたと私は思っているわけです。そして、そういうふうに見立てている方々も多いわけです。それを批判的に見る人も肯定的に見る人もいますけれども、私は、持続可能性を高めたと思っているんですけれども、その理解でよろしいですか。

黒田参考人 毎年八十兆円のペースで国債の買い入れを行ってきておりますので、既に国債発行残高の三分の一程度を日本銀行が所有しております。市場にはまだ三分の二残っているわけでありますので、八十兆円の買い入れ自体がすぐに限界に達するということはないと思っておりますが、他方で、どんどん買い入れていきますと、確かに、市場の国債残高が減ってまいりますので、ある意味でいうと、一単位当たりの国債買い入れによる金利の下押し圧力というのは、むしろ強まっていく可能性はあるわけですね。
 ですから、そういう意味で、八十兆円をずっと買い続けることは、物理的にはできるんですけれども、必ずしもそういうことをしなくてもよい、十分低い金利を、まさに経済に最も適切なイールドカーブを実現できるということはあり得るとは思うんです。
 だから、その意味では、将来的に、八十兆円も買わなくてもよいということになる可能性は高いと思うんですが、ただ、今の時点ですぐにそういうふうになるかと言われると、実際問題として、新しい政策を打ち出して以来、十年債の国債はほぼゼロ近辺で動いておりまして、その一方で、日本銀行は八十兆円ペースで国債を買い入れておりますので、何か、直ちに八十兆円の買い入れが縮小するというか、どんどん縮小していかないと、ゼロ%を保てなくて、どんどん大きくマイナスになるという見通しは、今のところ持っておりません。

前原委員 私の質問は、長期戦に備えるという、つまりは、シフトをしたんだという私の理解は、総裁から見て正しいですか、どうですか。

黒田参考人 今申し上げた意味で、経済、物価、さらには金融情勢に応じて、最も適切な金融緩和をするということで、金融政策の柔軟性が高まるとともに、持続可能性も高まったというふうに考えております。

前原委員 私は、その意味においては、僣越ながら評価をしているわけです。
 ただ、わかりにくいのは、このオーバーシュート型コミットメントに代表されるように、今また総裁がお答えをされたように、八十兆円というものにこだわるような発信をし続けないといけないというところが残っている。
 オーバーシュート型コミットメントというのは、二%を超えた場合においては、安定的に超えるまではマネタリーベースの拡大方針を継続すると。二年で二%をするとおっしゃっていたのに、これは今マイナスですよ、三年半たって、コアCPIは。ですよね。こんなこと書いたって、誰がこんなの実現するんだろう、何でこんなことを逆に書いてあるんだろう、まさにリップサービス以外に何物でもないんじゃないかというわかりにくさが 出てきているというふうに思いますし、そうしないと納得しない方々が、それは政策決定会合のメンバーの中にもおられるのかもしれません。
 そういうことかもしれませんが、ただ、先ほどから申し上げているように、二%は達成していない、そして、今は自然利子率も低いし潜在成長率も低い中で、また、先ほど総裁がおっしゃったように、発行している国債の三分の一程度、四百兆ぐらいをもう日銀が買っているということの中で、極めて金利は安定しているわけですね。
 安定しているということの中で、なかなかこれが上がるということはないだろうということなんですけれども、このオーバーシュート型コミットメントに書いてある、安定的に二%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するということと、今申し上げたように、これから私は、八十兆円というものにはこだわらない方がいいと思うんです。
 先ほどおっしゃったように、持続可能性を高めるわけですから、ここについては余りむしろ注目しないでね、注目してもらいたいのはむしろ金利なんですよという転換を図るのがこの政策の目玉だと私は思っていて、そういう意味では、うまい変更をされたと私は思っているんです。
 このわかりにくさというのは、達成もしないようなことについてコミットメントをしているために、ずっと拡大方針を継続すると書いてあるんですけれども、しかし他方で、先ほど申し上げたように、これから国債購入が減額されている可能性は今のトレンドでは大きいわけですよ。その場合に、日銀が持っている国債の満期自然償還も含めて、マネタリーベースそのものが減少し始めるということはないのかどうなのか。
 つまりは、金利をちゃんと安定させて、安定させながら、実はマネタリーベースが減少するということも可能性としてはあるのに、このオーバーシュート型コミットメントというところには「マネタリーベースの拡大方針を継続する」と書いてあれば、まさに日銀の考え方の中で相反するようなところが来るのではないかというふうに私は思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 今回の新しい金融緩和の枠組みの要素としては二つありまして、一つはイールドカーブコントロールという長短金利操作でありまして、もう一つはインフレーションオーバーシュート型のコミットメントであります。
 このインフレターゲットというか物価安定目標に対するコミットメントの仕方につきましては、国際的にもいろいろ議論があるところであります。現在、かなり多くの学者、それから一部の中央銀行の方が言っておられるのは、実は欧米もみんな二%に達していないんですけれども、むしろインフレ目標を三%とか四%に引き上げるべきだということを言っているわけですね。
 私どもは、二%の物価安定目標というのはしっかり堅持して、それをできるだけ早く実現するということも堅持しつつ、ただ、これまで予想物価上昇率がどうしても過去の物価上昇率に引きずられるという、いわゆるアダプティブというか、適応的な期待形成が強いものですから、それを少しでも和らげて、フォワードルッキングな形で予想物価上昇率が緩やかに上昇していくということを期待して今回のようなオーバーシュート型のコミットメントをしたわけであります。
 これについては、委員御指摘のとおり、その過程で当然マネタリーベースが拡大していくという方針を堅持するということは言っているわけですけれども、八十兆円というのは、御承知のように、ネットの話でありますので、もともと、償還があっても、仮に二十兆円償還があればグロスで百兆円買うという話ですので、八十兆円のネットが仮に七十兆円になっても六十兆円になっても、それは依然としてマネタリーベースが七十兆円、六十兆円ふえていくということですので、私どもの予想では、二%の物価安定目標を一旦超えて、上から二%の目標にソフトランドしていくという過程を想定しても、恐らくマネタリーベースは拡大し続けるであろうと。
 ただ、そのペースは年間八十兆円よりもだんだん低下していく可能性はあると思いますけれども、委員御指摘の点も含めていろいろ議論した上で、今回のようなオーバーシュート型コミットメントという形で新しい枠組みを構築したわけでございます。

前原委員 七ページ、七のグラフをごらんいただきたいんです(配布資料)。これが今おっしゃった、つまり、ずっとおっしゃっているのは、期待に働きかけるということで、マネタリーベースを拡大していくということが期待に働きかけるんだということをずっとおっしゃっていて、確かに、前半については、サプライズ、それからアメリカの景気の好転、円安、こういうものの中で輸入物価も上がっていくだろうということの中で緑のインフレ予想は上がっていった、こういうことでありますけれども、それ以降、だんだんだんだん下がっていっているわけですね。インフレ予想というのは下がっていっている。ただ、実質金利を下げると一貫して黒田総裁はおっしゃっておりますので、名目金利、イールドカーブで下げる、そしてインフレ予想率は下がっているけれども、名目金利も下がっているので実質金利は横ばいで、ある程度下支えをしているということについては変わっていないわけでありますけれども。
 では、そのオーバーシュート型コミットメントということを言っていく中で、インフレ予想、あるいは八ページのグラフ(配布資料)で見ているようなBEI、ブレーク・イーブン・インフレ率というものが本当にこれだけで上がっていくのかというと、そんなに甘いものではないというふうに思っています。
 ただ、今の御答弁では、今の日銀総裁、あるいは政策決定会合の中での議論としては、今からちょっとお話ししますけれども、二%の物価上昇というものを安定的に超えるまではマネタリーベースの拡大というものは続くだろう、縮小することはないだろう、こういう見立てをされているということだったというふうに思います。
 では、その大事なポイントですけれども、ちょっと意地悪な質問をします。
 ことしの二月三日に都内で講演をされて、一月二十九日にマイナス金利つき量的・質的緩和を導入されて、このことについて、中央銀行の歴史の中で恐らく最も強力な枠組みであるということをおっしゃっているんですね。
では、今回の政策決定で最も強力なのがどうなったのか、その点について御答弁いただけますか。

黒田参考人 委員が配付されたイールドカーブの推移をごらんになっていただきますとわかりますとおり、QQE、いわゆる量的・質的金融緩和を導入した後、名目金利、イールドカーブは下がったわけですけれども、さらにはそれを拡大した後も下がったわけですが、このマイナス金利を導入したところ、マイナス金利のところというのは、御承知のように、日本銀行における当座預金に従来プラス〇・一%の金利をつけていたのを、ごく一部ですけれども、マイナス〇・一%、二〇ベーシス下げたわけですね。ですから、一つのあり得る予想としては、平行移動的に二〇ベーシス下がるというふうに考えられたかもしれませんが、実際は、このグラフにありますとおり、長期、超長期のところがむしろ大きく下がったわけであります。
 そういう意味で、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、マイナス金利と量的・質的金融緩和の組み合わせというのは相当強力な名目金利の引き下げ効果があるということはわかったわけであります。その意味では、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和というのは極めて金融政策として強力であるということは立証されたと思うんですが、他方で、この超長期のところがこれほど下がってフラット化するということが実体経済にそれほど大きなプラスがあるかと。
 他方で、保険会社や年金等にかなりマイナスの影響が出るということになってきますと、極めて強力な枠組みであることは事実なんですけれども、他方で、イールドカーブを見るとややフラット化し過ぎたということも事実だったものですから、それを考慮して、まさに総括的検証の中で、量的・質的金融緩和の効果、影響とそれからマイナス金利の効果、影響を十分検討した上で、今回新たにイールドカーブコントロールとオーバーシュート型コミットメントの組み合わせの新しい金融緩和の枠組みを決定したということでございます。

前原委員 私が伺いたかったのは、私も、このマイナス金利つき量的・質的緩和というものについては、そのときは強力だと思ったわけです。つまり、どういう意味かというと、八十兆円、マネタリーベースを、まさに先ほど総裁がおっしゃったようにネットで拡大し続けるということのコミットメントはやり続けながら、マイナス金利も一部導入すると。そして、マイナス金利については、そのときはかなり下げるということも含めて、幾らでも、幾らでもとは言いませんけれども下げられますよということの中で、最強の枠組みであるということについてはある程度説得力はあったかなというふうに思うわけであります。
 しかし、マイナス金利を一部導入したことによって、金融機関の経営が悪くなった、株価が下がった、あるいは非常にそのことについて批判も出ている。そしてそれが、まさに金融機関の与信能力というものにもかかわってきて、経済に悪影響を及ぼすんじゃないかというふうに言われてきているということの前提もありますし、そして同時に、今回の政策決定変更で八十兆円にはこだわらないということになったわけですから、そういうふうにおいては、短期集中でぎゅっとやるような最強の仕組みではなくなったと私は思っているわけですね。
 これが最強の仕組みでなくなったことを、答弁を引き出すことが、何か、私は質問の勝利だと全く思わないんですが、ただ、最強とおっしゃったので、最強ではなくなったという意識は持っておられる。
 だから、先ほど私が申し上げた短期決戦から持続可能性に変えた、その意味において、この最強の意味も質的に変わったんだというふうに言われた方がいいと私は思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 私自身、委員の考え方はよく理解できるわけであります。ただ、一月に導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和が極めて強力な緩和の枠組みであったということはやはり事実であろうと思っております。
 そのもとで、名目金利、イールドカーブは大幅に低下し、フラット化したわけですが、御指摘のような金融システムに対する影響というものもわかってきたわけでありまして、総括的な検証を踏まえて新しい枠組みにした、その新しい枠組みは、より柔軟であり、持続性があるということであろうと思っております。

前原委員 もう一度図六(配布資料)を見ていただきたいんですけれども、二年で二%というものがだんだん、何回か先送りされてきて、国会においては二〇一七年中に消費者物価上昇率を二%にとおっしゃっていたと思うんですが、ブルームバーグのインタビューで二〇一八年にずれ込むことを示唆されたようでありますけれども、されていませんか、読みましたけれどもね、記事を。
 これは、真意はどうなんですか。二〇一七年中にちゃんと二%を実現するんですか、それともブルームバーグだけの特別な発言だったんですか。どちらですか。

黒田参考人 御案内のとおり、毎回、展望レポートにおいて見通しを、実質GDPの伸び率とそれからコアの物価上昇率の見通しを示しております。
 最新の展望レポートでは一七年度中というふうになっておりますので、それが現時点での政策委員会としての見解であり、実は、今月末の金融政策決定会合において新しい展望レポートを議論することになっております。これは、従来は年二回でしたけれども、全四回展望レポートを出すということになっておりますので、これから政策委員の方々といろいろ議論していくということであります。
 ただ、IMFの見通しであるとかOECDの見通しであるとか、それから政府の方々のお話とか、それらを見ておりまして、私自身として、来年度の成長率は恐らくことしよりも上昇するだろうと。新興国を中心に世界経済の見通しも少し上向いております。それから、政府がかなり大規模な財政刺激策を打ち出して、補正予算も国会で承認をされたということでありますので、来年の成長率はことしよりも加速するということは確かでありま す。
 そういった面では、物価の方にはプラスにきくわけですけれども、足元で、今年度の半分は既に過ぎているわけですけれども、コアの物価上昇率が小幅ですけれどもマイナスに陥っているというとを考えますと、二〇一七年度中というような見通しになるかどうかということについては修正もあり得るというふうに思っております。
 ただ、これはあくまでも、いろいろな方々の見通しを踏まえて私が現時点で個人的に考えていることでありまして、あくまでも日本銀行の政策委員会としては、最新の展望レポートでは二〇一七年度中、それがどういうふうに、成長率も物価見通しもどうなるかというのは、月末から来月初にかけての金融政策決定会合で十分議論して決められるということであります。

前原委員 展望レポートを出されるということで、今までちょっと口汚く願望レポートだというふうに言ってましたけれども、今度の展望レポートはまた先送りを示唆されたような、願望よりも何か悲観レポートのような感じになるような、ちょっと弱気の答弁だったなというふうに私は思っております。
 私は、先ほど、持続可能性を高められたということでよかったということを申し上げて、と同時に、やはり金融政策が前面に出過ぎるのはよくない、別に前面に出ておられるつもりはないのかもしれませんが、やはり、金融一本足打法という形で金融政策に過度に頼り過ぎているというのは、これは間違いないと思うんですね。
 それで、ちょっと時間がなくなってきたのであと一問だけにしますけれども、私はやはり、例えばこれを見ていただいて、二ページをごらんください((配布資料)。金利が下がったら、貸し出しがふえるだろう、設備投資がふえるだろう、そして耐久消費財の消費がふえるだろうといって、ですけれども、法人向け貸出残高というのは、三年半たってこれだけしかふえていないわけですよね。伸びていないわけですよ。そして、三ページに行っていただくと(配布資料)、輸出ですよね。左上は金額、右下は数量ですけれども、これだけ円安になって、今また円高に振れてきていますけれども、輸出が伸びていない、こういうようなこと。それから、四ページを見ていただくと(配布資料)、やはり人件費なんですよ。つまりは、株価も高くなったし、企業はもうけたんです、確実に。経常利益はふえた。円高で若干また経常利益は下がり部分はありますけれども、しかし内部留保はどんどんどんどん積み上がっていって、その割には設備投資はふえていない、人件費はふえてきていない。だからこそ、例えば五ページを見ていただくと(配布資料)、名目賃金、実質賃金というものが低迷している、GDPの六割が消費ですから。
 だから、こういったところがあるわけでして、金融政策だけで何か全てを魔法のつえのように解決するというのは無理なんですよね。
 それで、一つ、最後、黒田総裁に伺っておきたいのは、これだけ金利を下げて経済をよくしようとしている中で、事もあろうに、財政規律を緩めるようなことが起き始めているというふうに私は思うわけです。
 例えば、この第二次安倍政権の中で、補正予算は初めて建設国債の発行ですよ。そして、後で質問しますけれども、リニアの問題だって、それは大阪まで全部延伸するということはあるかもしれないけれども、三兆円の財投を発行するということで、これは黒田総裁のまさに求めたことですか。低金利だからといって国債を発行する、建設国債を発行する、あるいは財投債を発行してインフラをやるというのは、黒田総裁が求めたことですか。違うでしょう。実体経済をよくするということが日銀としての大きな目的だったんじゃないですか。一言お願いします。

黒田参考人 私どもの金融緩和政策は、もとより経済を回復して、そして二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということであります。
 そのために、累次の金融緩和政策によって名目金利を引き下げ、また予想物価上昇率を引き上げることによって実質金利を引き下げて、それが経済に対してプラスの影響をもたらすということを期待していたわけです。
 私どもも、それがかなりの効果を持ったということは自信を持って言えると思いますが、これは総括的検証でもそう言っていますけれども、ただ、御指摘のように、例えば企業収益が大幅に増加し、失業率が三%、足元で三・一%ですけれども、ほとんど完全雇用と言われるもとで、賃金が、上昇はしているわけですけれども、それらから予想されるものに比べますと賃金の上昇がやや鈍いということは事実でありまして、その背景に労働市場の特殊性があるのかということも十分考えていかないといけないと思います。
 財政につきましては、これは委員に申し上げるまでもなく、あくまでも政府と国会によって決定されるものでありまして、日本銀行としては、常日ごろから申し上げているのは、二〇二〇年にプライマリーバランスを回復するという政府の財政健全化目標というのはしっかり達成してくださいねということは申し上げていますが、具体的な財政政策につきましては、あくまでもこれは政府及び国会で決定されるものというふうに理解をしております。

前原委員 ただ、日銀と政府の間で協定を結んでいるわけですから、そこはしっかり守ってくれということはもっと強く言わないといけないということは私は申し上げておきたいと思います。
 根本国土交通大臣政務官、お越しをいただいておりまして、ちょっと時間もなくて恐縮なんですが、一点だけ、では質問させていただきたいと思うんです。
 来年、国鉄民営化、分割・民営化三十年ですね。それで、きょうの話にもかかわるんですけれども、いわゆる分割をして、三島、それから東、東海、西、それから貨物という形で七つの会社に分割をして、そして三島についてはなかなか鉄道事業だけでは経営は難しいだろうということで経営安定化基金というのをつくって、そのときの予想利回りというのは七・三%だったわけですね。それが今、こういう状況で非常に低い状況になっているということと、まあ、人口減少も含めてなんですけれども。
 端的に一つだけお伺いしたいのは、特に今私が心配しているのは北海道なんです、JR北海道。ここについては、今回、台風の被害にも何度も見舞われて、そしてまた、不通になっている日高本線とかございますよね。しかし、地元の方の、特に御高齢者あるいは通学の方々の貴重な足であることに変わりないわけでありまして、やはりこういったものはしっかりと維持をしていかなくてはいけないというふうに思っているわけであります。 国土交通省として、運用利回りが下がったということもありますけれども、やはり、ほかの企業努力、例えば東なんかにしても、上場しているところにしても、駅ナカビジネスということで鉄道事業以外でしっかりともうけて、そして全体で内部補助という形をしっかりやっているという形で、何とかトータルで経営努力をしているというのがあって、やはり、北海道は鉄道事業だけでは絶対無理だと思うんですね。
 そういう意味では、政務官に御答弁いただきたいのは、JR北海道は、やはりしっかりとこういう鉄道外事業においてもうかることについてはしっかりやる、それについては国土交通省を含めて政府でしっかり応援をするという形をとるべきだと私は思うんですけれども、いかがですか。

根本大臣政務官 今委員からありましたように、国鉄改革から約三十年が経過する中で、平成十八年までにJR本州三社が完全民営化して、来週二十五日にはJR九州が上場を予定するなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつある一方で、今ありましたJR北海道、さらにはJR四国及びJR貨物については、いまだ完全民営化のめどが立っていない状況であります。
 特にJR北海道については、厳しい経営状況にあることから、国としても、経営安定基金の実質的な積み増しや設備投資に対する助成や無利子貸し付けなどの支援措置を講じてきているところであります。
 JR北海道においても、これまで、駅ビル、ホテル、キヨスクなど関連事業による営業収入の拡大を初めとしてさまざまな経営努力に努めているものと承知をしていますが、完全民営化の前提となる安定的な経営基盤の確立が図られるよう、引き続きこうした経営努力に努めていただきたいと考えているところであります。

前原委員 ありがとうございました。終わります。

(議事速記録より)
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