前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第189回国会 衆議院財務金融委員会2015/06/10

前原委員 お疲れさまでございます。民主党の前原です。
 まずは、現在の為替水準につきましてお話をさせていただきたいと思います。
 皆さん方にお配りをしております資料一枚目(配布資料)をごらんいただけますでしょうか。下の左側が二〇〇七年からのドル・円の為替レートでありまして、今日が先ほど見たら百二十四円の六十一銭ぐらい、こういうことでございまして、百二十五円台ではありませんけれども、円安水準が続いている、こういうことでございます。
 まず、黒田総裁にお伺いしたいと思いますが、午前中もお答えになっていたようでありますが、改めて。円安というよりはドル高だと思うんですが、この原因は何と考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 為替相場の水準とか日々の動きについて、私の立場から具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、為替相場はさまざまな要因によって動きます。その中に金融政策、金融状況の違いというものが影響するということは間違いないと思います。
 ただ、その他のさまざまな要因にも左右されますので、現在の為替相場、あるいは少し円安に進んできたわけですけれども、それが金融政策の違いによってそうなったというふうに断定することは難しいと思いますが、市場関係者は、日米の、あるいは米国と米国以外の国の金融政策の違いというものに目が向いているということは言われているということは確かでございます。

 

前原委員 私は、主に二つの要因があると思っていまして、一つは、アメリカの経済がいいということですね。アメリカの経済がいいということが大前提でありますし、それから、経済がいいからこそ、テーパリングから今度は利上げへと、イエレンさんが年内にも利上げかという話をされている中で、市場がそれを織り込んで、金利差を見越した形での円安というかドル高が進んでいる、こういうふうに私も考えているわけでありまして、もちろん、いろいろな要因はあると思いますけれども、私はこの二つが大きな要因ではないかと思います。
 麻生大臣にお伺いしたいと思いますが、この図一(配布資料)にも麻生大臣の発言を引用させていただいておりますけれども、荒い動きがある、こういうことでありますけれども、この荒い動きがあるというお言葉の意味には、ボラティリティーが大きいということはよくない、こういう意味でおっしゃっているんでしょうか。

麻生国務大臣 基本的に我々は為替の話については発言は差し控えることになっておるんですが、今、荒いというのは、足元において、少なくとも円安の方向にかなり荒い動きが、三日間で三円ぐらい行ったかな、あのときは、だと思いますので、そういった動きが見られておりましたというその現実の話を申し上げたということでありまして、引き続き市場の動向というのは注意深く見ておかないといかぬなとは思っております。

前原委員 質問は、ボラティリティーが荒いという言葉を使われた背景には、ボラティリティー、つまり変動幅が大きいということはよくない、こういう意味でおっしゃったんですかという質問をしております。

麻生国務大臣 為替というのは、市場に任せるという国際的なルールというか暗黙の了解でもありますので、これは、前原先生、為替というものが、円安になるにしろ円高になるにしろ、ゆっくり確実にというのが最も望ましい、もしくは安定しているというのが望ましいのであって、上がったり下がったりというようなのがこういった為替を扱う方の立場としては最も望ましくないということであります。

前原委員 そのお答えをいただければと思います。
 黒田総裁も、安倍総理とお話をされた後の、会談後の発言で、為替レートが経済のファンダメンタルズを反映し、安定的に推移することが望ましい、こういうことをおっしゃっているわけであります。
黒田総裁も、今、麻生大臣がお答えになられたように、こういうボラティリティーが大きいというか、変動幅が多いというものについては、この安定的という言葉を、推移することが望ましいとおっしゃったのは、そういう荒い動きをすることは望ましくない、こういう意味でおっしゃったのか、伺います。

黒田参考人 そういうことであると思います。
 ただ、為替市場の安定あるいは為替相場の安定自体は、御承知のように、米国等と同じく日本では財務省の権限と責任になっておりますので、金融政策でどうこうという話ではなく、為替が経済金融市場に与える影響を考えると、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい、これはある意味でG7等のコンセンサスでもあると思いますが、それを繰り返したわけでございます。

前原委員 それでは伺いますが、今の為替相場は、日本のファンダメンタルズを反映しているとお考えなのかどうなのか、その辺についてお答えください。

黒田参考人 この点も、私が具体的に相場の水準について、ファンダメンタルズを反映している、あるいは反映していないというふうにお答えするのは差し控えたいと思いますが、為替相場の動きだけを過去ずっと追ってみますと、現在の水準というのは、リーマン・ショック前の水準にある意味で戻った。ただ、リーマン・ショック前の水準が絶対的に正しい水準であるという根拠も別にあるわけではありませんので、リーマン・ショック後、急速に円高が進み、それがこの三年弱の間に是正をされたということではあると思います。

前原委員 図一(配布資料)の下の右のグラフをごらんいただきたいんですが、これは実質実効為替レートというものとドル・円を並べたものでありまして、今、黒田総裁がリーマン・ショック後とおっしゃいましたけれども、プラザ合意あたりからずっと、この実質実効為替レートとドル・円というものをグラフにしたものでございます。
 実効為替レートということは、下にも書いてございますけれども、特定の二通貨間の為替レートを見ているだけじゃなくて、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標ということで、これは日銀のホームページからとらせていただいたものであります。
 理論的に実質実効為替レートというものを考えたときに、インフレ率が高い国の通貨はインフレ率が低い国の通貨よりも安くなるということでありますので、緩やかなインフレが続くアメリカと、そしてバブル崩壊後以降長引くデフレを長らく経験している日本を比較すると円高に振れるというのは仕方がないわけでありまして、言ってみれば、バブル崩壊後、茶色の折れ線グラフと青の折れ線グラフがある意味で乖離してきているというところの背景がそこにあるということであります。
 実質、ということの意味においては、例えば同じ為替レートなら実質的に今のインフレ率というものを勘案すると円安になる、こういうことになるわけであります。
 この相対的な通貨の実力をはかるための総合指標ということを出させてもらったわけでありますが、この実質実効為替レートというものがある意味で一九八五年のプラザ合意前と同水準になったということについてどう評価をするかというところの議論をさせていただきたいと思います。この点について、黒田総裁のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 これはなかなか難しい問題でありまして、委員御指摘の通り、実質実効為替レートと申しますのは、二国間の為替レートでなくて、多国間のいろいろな通貨との関係を見た上で、普通は貿易ウエートでウエートづけしてやるものが実効為替レートであります。さらに、実質ということは、インフレ率の違いまで考慮したものでございます。
 したがいまして、ある意味でいいますと、価格面で見た競争力みたいなもののようにも見えますし、他方では、委員御指摘のように実力とも見えるかもしれませんが、いずれにせよ、この指標自体は、IMF等が開発して広く使われている指標ではありますけれども、そのときそのときの為替の安定をどのように図るかという問題とか、あるいはそのときそのときの金融政策についてどういう政策をとるべきかということについては、やや迂遠な指標であるということは御理解をいただきたいと思います。
 その上で、確かに、実質実効為替レートで見ますと、今はかなりの円安の水準になっているということは事実でございます。

前原委員 その前段の説明は私もしているわけですね。ですから、それを踏まえて、今の、プラザ合意前の水準になっていることについて、先ほど総裁は、私が後ほど使おうとした例えば競争力とか、あるいは実力という言葉を使われましたよね、そういう面からして、この円安に振れているということについてどう評価をするかということを聞いているわけです。

黒田参考人 為替の水準の評価ということについては、具体的な評価は私から申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、一般的、理論的に申し上げますと、実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れていくということは、普通考えると、なかなかありそうにないということかと思います。これは、最近、伊藤隆敏教授などもさまざまなところで触れておられます。
 ただ、これはあくまでも長期的な傾向から見てそうではないかという話ですので、これからのドル・円レートとか、これからの実効為替レートがどのように動くかということに対する確定的な予測を示すものとは思われないわけでございます。

前原委員 ある意味で、一つの方向性について、もちろん前提条件を置きながら発言をされたわけで、実質実効為替レートにおいて、これ以上の円安が進むということは考えられないということをおっしゃったわけであります。
 対象国を絞ったナローベースの実質実効為替レートと、少し対象国を広げたブロードベースの実質実効為替レートと両方あるわけでありますが、ちょっと複雑だったので、ややこしくなるのでほかの国は載せなかったんですけれども、これは、皆さん方、前に座られる方々は御存じだと思いますけれども、では、どういったところが近年上がっていっているのか、上がっているということは通貨として強くなっていっているかということを見ると、やはりBRICS、それから資源国、こういったところが通貨が強くなっていっている、こういうことであります。それから、他方で、先進国については若干弱目に出ているところがある、こういうことでありまして、そういう意味では、先ほど黒田総裁が競争力とか実力という言葉でおっしゃったところは、私は、ある程度的を射ているお考えだというふうに思っています。
 何を私が申し上げたいかというと、今円安になっていることによって、プラス、マイナス両方あります。つまりは、海外の方がたくさん来てくれている。こういうことが円安によって、たくさんの方が来られている。しかし、他方で、輸入物価が高くなっていて、二年間ずっと実質賃金がマイナスで、この間、二年ぶりにプラスになったといっても、〇・一ですから。これは、また原油価格が上がり始めて、そしてさらに円安が仮に進むということになればどうなるかわからない、こういう状況でありますし、プラス、マイナス両方ともあるんです。
 なぜ私が今回こういう実質実効為替レートを持ってきたかというと、やはりトレンドとして、強い通貨の方が、勢いのある国、競争力、そしてまさに、総裁がおっしゃった言葉で言うと、実力のある国だというふうにみなされているということを考えれば、手放しでこの方向性について、日米金利差が広がって、結果的にそれが円安を誘導して、そして株価が上がる、こういうことの中で、プラスの面ばかりが強調されていますけれども、日本として本当にいいのかというところを、私は、もう少し、近視眼的なことではなくて、株価の一喜一憂じゃなくて、こういう長いトレンドの中で今の円安というものが果たしていいのかという議論をしっかりさせていただきたいという意味でこれを出したわけでありますが、今の私の考えについて、総裁、どうお考えになられますか。

黒田参考人 私も、委員の意見はよく理解できるわけでございます。
 ただ、為替の議論は、御承知のように、委員御指摘の通りでありまして、プラス面、マイナス面とありますので、円安が仮に全体としていいからといってどんどん円安になって、一ドル何百円となったらいいのかと言われると、それはそうでないでしょう。他方で、円高のいい面、あるいはいい局面もあるかもしれませんが、それでは、一ドル七十五円とか一ドル五十円とか、そういう円高になったらいいかと言われると、それもそうでない。
 恐らく、そのときのまさに経済のファンダメンタルズと対応するような一定のレンジがあって、その範囲で動いているというのが望ましいので、それを余り大きく外れるということは望ましくないことではないかと思いますので、これ以上少しでも円安になったら絶対にだめとも言えないかもしれないし、しかし、そうかといって、これまで円安でプラスだったので、どんどん円安になったらもっとプラスになるというわけでもないということではないかと思います。

前原委員 先ほどBRICSと資源国の話をしましたけれども、実は、韓国ウォンとかユーロ、それからイギリスのポンド、これもこの実質実効為替レートだと落ちていっているんですね。そういう意味では、逆に言うと、先ほど申し上げたようにドル高であって、円安というよりも、そういった国と考えると、それほど円安ではない。
 したがって、そういった国々あるいは地域とは輸出が競合してくるわけですから、なかなか伸びないということの理由の一つもあるということでありますし、逆に、通貨が安くなり過ぎると資産が買われてしまう、あるいは海外の資産が逆に高くて買えなくなる、さまざまなプラス、マイナスということが今おっしゃっているようにあるということの中で、その百二十五円がいいのか悪いのかというよりは、なぜこの実効為替レートというものを持ち出したかというと、ちょっと長い単位の中で、それでもやはりこれはかなりの円安水準に来ているといったところで、これはまさに、総裁がおっしゃった実力とか競争力という意味においては問題あり、私はこういう問題提起をさせていただいた、こういうことであります。
 次に、金融政策についてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 四月三十日、日銀が発表された展望レポートにおいての物価見通しでは、コアCPIが、二〇一五年度が〇・八%、一月時点、二〇一六年の一月については一・〇%、それから二〇一六年度が二・〇%、一月点では二・二%、二〇一七年度が、消費税を四月に引き上げということで、その引き上げ分の影響を除いて一・九%とされているわけであります。これは、図二(配布資料)をごらんいただきたいというふうに思うわけであります。
 二年で二%、これはもう余り詰めません。いろいろと総裁も理由をつけられると思いますので、ここはちょっと時間の無駄になると思うので詰めませんけれども。
 要は、私が申し上げたいのは、この展望レポートで示されたコアCPIというものについては、本当に実現可能なのかといったところをしっかりとここで総裁の口からコミットメントしてもらいたい。よろしくお願いします。

黒田参考人 委員御指摘の通り、四月末に公表した展望レポートでは、消費者物価の前年比が二%程度に達する時期が従来の見通しより若干後ずれしておるわけでございます。ただ、需給ギャップの改善、あるいは予想物価上昇率の上昇を背景にした物価の基調というものは着実に改善しているという見通しに変わりはありません。
 こうしたもとで、物価の基調が着実に高まっていき、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、消費者物価の前年比は物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくというふうに考えられます。
 二%程度に達する時期につきましては、展望レポートの文章の中でも詳しく書いてあります通り、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立つと、二〇一六年度前半ころになるというふうに予想しております。

前原委員 若干厳しい言い方をすると、二年で二%ということをおっしゃっていた、しかし、今回は、一バレル百ドルぐらいで計算をしていた原油価格が五十五ドル程度まで下落をした、こういうことですけれども、それでも、これは展望レポートに書かれていますけれども、原油価格下落による寄与度というのはマイナス〇・七から〇・八ポイントですよね。となると、今、コアはゼロですから、そういう意味では、二年で二%は達成できていないということですよね、結果的には。だって、これはプラスしたら一に行っていないわけですから。
 しかも、消費税引き上げの影響ということをよく物価とかあるいは経済でおっしゃいますけれども、補正予算を組んで、これについてはしっかりと乗り越えるようなものにするということで政府が手当てをされていたわけですから、余りその言いわけというのは通じないというふうに私は思っているわけであります。
 したがって、二%もできていないわけですよ、実際問題。原油価格の下落がなかったとしてもできていない、こういうことでありまして、本当にできるのかということについて、ここではっきりとコミットメントしてもらいたかったということで、これは議事録として残ったことにします。これ以上詰めたって、やりますということしかないでしょうから。
 そこで、それを前提に総裁にお伺いしたいんですけれども、原油価格の下落が始まったのは去年の夏以降ですよね。そして、下げ止まったのが、大体今年のお正月ぐらいですよね。ということは、CPI、これは総合にしてもコアにしても対前年度比ですから、これからCPIというのはしばらくは上がらない、この要因で上がりにくいと言った方がいいですかね。そういう意味では、そういうことが考えられて、ひょっとしたらマイナスになる可能性も、今おっしゃったような道筋でいくにしてもですよ。
 つまりは、景気が、経済が好転をしていく、これについてはいろいろ意見がありますけれども、今おっしゃったようなことで経済が好転していく、あるいは原油価格が上がっていっている、これは経済にとってはむしろマイナスだと思うんですけれども。そういったことの中で、先ほど申し上げたような物価上昇というものが着実にできるということをおっしゃっているわけでありますが、少なくとも、この一―三、四―六、七―九、こういったところまではCPIが上がりにくい、ともすればマイナスになる可能性というのはあるんじゃないんですか。

黒田参考人 おっしゃる通りだと思います。

前原委員 それで、去年の十月三十一日の追加緩和のときに、日銀からわざわざ御報告をいただきました。どういう趣旨なのかといった報告をいただいたときに私が驚いたのは、原油価格が下落をした、これは経済にとってはプラスです、国民にとってはボーナスです、しかしながら、ここで物価の上昇という機運がしぼんで、こびりついたデフレマインドというものに回帰してはいけないということで、ある意味でそういう意思から追加緩和を行って、そして物価上昇への道筋をつける、こういうことをやられたわけですよね。
 そうなると、今おっしゃったように、その通りですということをおっしゃった場合に、市場が、何もしないのか、本当に日銀というのはいわゆる二%のインフレ目標、デフレ脱却というものに真剣なのか、こういうふうに見られる可能性というのが私は出てくると思うんですけれども、それについてはどうお考えになられますか。

黒田参考人 いわゆる生鮮食品を除いたところの消費者物価指数の動きは、昨年の四月には一・五%というピークに達したわけですが、それが九月には一%まで低下しました。これは、原油価格の下落というよりも、消費税導入後の消費の弱さというものを反映したものだと思います。それに加えて、夏から石油価格が大幅に下落し始めましたので、私どもの分析では、今後さらに消費者物価上昇率が一からどんどん下がっていくということが見込まれました。
 そうしたもとで日本銀行が何もしないでそれを放置するということになりますと、物価上昇期待というものも緩やかに上がってきたものがまた下がってしまうということになると、二%の物価安定目標の達成が極めて遠くになってしまうということから、十月三十一日に量的・質的金融緩和を大幅に拡大したわけでございます。
 その結果として、これまでのところ、さまざまな指標がございますが、物価上昇期待自体は、現実の物価上昇率がゼロに向かって下がっていく中でさほど下がらず、おおむね維持されておりまして、これは量的・質的金融緩和の効果であると私どもは考えておりますが、もちろんそれ以外の要素もあったと思います。
 いずれにせよ、物価を二%に引き上げていく上で一番重要な需給ギャップと物価上昇期待というものの中で、需給ギャップの方は引き続き縮小していっていますが、物価上昇期待が落ちてしまうというのを避けるためにかなり思い切って量的・質的金融緩和を拡大し、その効果もあって、物価上昇期待自体は、現実の物価上昇率がゼロに向かって低下する中でも維持できたということではないかと思っております。

前原委員 総裁、過去の話をしているんじゃないんです。
 先ほど申し上げたように、これから、CPIは対前年度比ですから、その通りですとおっしゃったように、一―三、四―六、七―九、こういったものが、CPIがなかなか伸びてこない、マイナスになるかもしれないということの中で、本気でデフレ脱却、おっしゃったように、ブレーク・イーブン・インフレ率はずっとプラスに転じていますよね。一二年からはプラスになっているということで、それはその通りだと思うんですが、では、このまま、先ほど図二(配布資料)でお示ししたようにコアはゼロですよね。〇・〇ですよね。そして、先ほどその通りですとおっしゃったように、これからは物価上昇がなかなか起こりにくいという状況の中で、本気で日銀がデフレ脱却のために、二%の安定的な物価上昇のために、それについて何もしなくていいと考えておられるのか。その後、急にCPIが上がって、大丈夫ですとおっしゃるのか。これは期待に働きかけているわけですから、マインドとして本当にそれでいいと思っておられるのか、その点を聞いているわけです。今後のことを聞いているわけです。

黒田参考人 まさにその点が最も重要なポイントでありまして、先ほど委員が指摘されましたように、政策委員会の委員の見通しの中央値が二〇一五年度、今年度〇・八%プラスとなっておりますので、これは、年度の前半はなかなか上がらないという状況が続くと思いますが、年度の後半にかけて物価上昇率がかなり加速していく。
 一方で、需給ギャップは改善が続きます、そして予想物価上昇率は長期的に見ると上方トレンドです、そうした物価の基調が変わらないという前提で見通しを立てますと、石油価格下落の影響が少しずつ剥げてきて、来年度の前半には完全になくなるという見通しでございますので、年度後半から加速していって、来年度の前半に二%程度に達する可能性が高いと見ております。
 ただ、これは物価の基調が変わらないという前提でございますので、もし、需給ギャップに大きなマイナスが出てきたり、あるいは物価上昇期待が大きく低下するといったようなその他の状況で物価の基調に変化が出れば、当然、躊躇なく政策を調整する用意がございます。

前原委員 そこで、仮にということで、もしそういう状況になれば躊躇なくということをおっしゃっているわけですが、どういったことが考えられるのかということについて、少し総裁と議論させていただきたいというふうに思うわけであります。
これは一度予算委員会でもやらせていただいて、総裁は覚えておられるというふうに思うのでありますが、図三(配布資料)をごらんいただけますか。
 この図三を見ていただくと、今、どういうペースで日銀が国債を買っているかということがおわかりいただけるグラフになっているわけでありますけれども、二〇一四年の末が二百七兆円、これは実績ですね。追加緩和以降は年八十兆円のペースで国債を買い続けるということですから、さらなる追加緩和がなくても八十兆円を買い続ける、こういうことになるわけですね。
 二〇一七年の四月が消費税八%から一〇%への引き上げ、こういうことになりますので、そうすると、二〇一六年度においては駆け込み需要が起きて、二〇一七年は反動減が来る可能性がある。
 だからこそ、この物価見通しもあるいは実質GDPも、展望レポートでは、二〇一六年度には、実質GDPは一・五%の伸びになって、コアCPIも二・〇。しかし、二〇一七年度は、実質GDPは〇・二%のプラス、つまり一・五から〇・二まで落ちる。そして、CPIもまた逆に、わずかでありますけれども、一・九に落ちる。こういう見通しをされているわけですね。
 躊躇なくやるということが仮になかったとしても、今のペースを恐らく続けることになるんだろう、それは日銀が決められることですから、私が決めることではありませんけれども、外形的に見たら、恐らくそういう見方をされている面が多いというふうに思うわけであります。
 そこで、幾つかの観点から申し上げたいんですが、二〇一七年度末、つまりは先ほどの実質GDPが〇・二%しか伸びないということになれば、その前とかあるいはその最中に、出口で金利が上がるようなことをやる、逆回転をするということはなかなかしにくいということになれば、二〇一七年末までは四百五十兆円になるんですね。このまま追加緩和されなくて続けられればということですよ、四百五十兆にまでなるということであります。
 私は今まで何度も議論をしていますし、また我が党の大久保議員の質問主意書に、政府で閣議決定された答弁書で、財政法第五条違反、財政ファイナンスじゃない、マーケットから買っているから大丈夫だ、こういうこと(配布資料)なんですが、しかしながら、発行されている国債の半分以上を日銀が保有するということは、外形的に見た財政ファイナンスとみなされるかどうかは、日銀が、あるいは財務省が財政法五条の違反ではないかどうかというのは関係ないと思うんですね。つまりは、国が借金をするために発行している国債を日本銀行がそれだけ大量に持つということについて市場がどう判断するか、こういうことだと思います。
 まず、この質問をしましょう。
 総裁は、これについて、今のいわゆる量的緩和というのはどのぐらいまでできる、つまり未来永劫はできないと思うんですね、未来永劫はできない。後で言いますけれども、買う量も限られてくるから買えない。どこまで続けられるものだというふうに、先ほど私が申し上げた観点、つまりは、マーケットに実質的な財政ファイナンスとみなされた時点で急激な国債下落、暴落、金利の上昇が起きるわけですよね。こうなるともう手がつけられなくなるわけでありますから、そういう危ない橋を渡られているという御認識はありますか。そして、どのぐらいまでできるという認識ですか。

黒田参考人 ただいまの御質問に対しましては、幾つかのポイントがあると思います。
 まず第一に、何度も申し上げております通り、量的・質的金融緩和というのは、あくまでも二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続できるようになるまで継続するということでございますので、何か、無制限にやっていくとか、あるいは、あるカレンダーイヤーを切って、そこまでやりますというものではございません。
 それから、第二に、これまでのところ、国債買い入れというのは着実に進んでおりますし、先行きにつきましても、買い入れに支障を来すような事情があるとは考えておりません。
 もちろん、委員御指摘のように、論理的に言って、市場にあるものを全部買ってしまえばそれ以上は買えないでしょうというのは、それはその通りでありますが、まず第一点を申し上げた通りであり、また第二点としても、買い入れはこれまでのところ着実に進んでおりますし、買い入れに支障を来すような事情になるというふうには考えておりません。
 いずれにしましても、何らかのリスク要因によってその見通しが変化したという場合に、どういったことができるかということは、具体的な対応を事前に申し上げるのは非常に難しいと思いますけれども、二%の物価安定の目標を実現するために必要かつ最も適切な施策をその時点その時点で考えていくということになると思います。

前原委員 私が次に質問しようとしたことに答えられていて、私が今質問したことには答えられていないんですね。つまりは、買い入れが物理的に可能かどうかという話は後でしようと思っていたんです。その答弁を今されたんですね。
 そうじゃなくて、私は、財政法第五条に言う財政ファイナンスではないという答弁をされているけれども、しかしながら、マーケットがそういう判断をしたときには急激な国債暴落、金利上昇が起きるでしょう、そういうものについて危険性を認識されてやっておられるかどうなのかということも含めての未来永劫性と、それについての言ってみればおそれを持ってやっておられるのかということを聞いているわけです。

黒田参考人 これもまた従来から申し上げております通り、財政の信認を確保するということは極めて重要でありまして、日本銀行が国債を買い入れているのは、あくまでも金融政策、物価安定目標を達成するためにやっているわけですが、日本銀行が買い入れていようと買い入れていまいと、いずれにしても、政府は、財政の信認を確保し、委員が御懸念になっているような、国債価格が暴落したり、その結果として長期金利が暴騰するというようなことがないように、しっかりと財政の再建、財政の健全化ということをやっていただく必要があるということでございます。

前原委員 総裁がおっしゃりたかったのを私なりに解釈すると、国は借金をするために国債を発行している、そこは、どこが持とうが、実際問題、国の財政健全化に向けてちゃんとやってもらわないと、どこが保有しているかどうかというよりは、そこの柱が崩れたらだめなんだ、そういうことをおっしゃりたかったということだというふうに思います。
 さはさりながら、財政法第五条というものは直接引き受けではありましたけれども、日本銀行が大量に国債を買うことによって、今でもマーケットが非常に小さなものになっている。そして同時に、その安心感というものが言ってみれば政府に与えられるとすれば、それは財政規律が緩むことになるし、そしてまた同時に、マーケットメカニズムの中で財政規律というものを促す市場をゆがめているわけですよ、それだけ大きな国債の保有者となっているということは。
 したがって、発行している国債の量が変わらないから国の財政再建をしっかりやれというのは、それはその通りだと思いますけれども、外形的にはそうはなりませんよということを僕は申し上げているわけです。これはちょっと違う観点から後で質問いたします。
 もう一つは、先ほど御答弁されたんですけれども、もう一遍伺います。
 量的なものについてでありますが、図四(配布資料)をごらんいただきたいというふうに思いますけれども、どれだけ国債を今買っている状況なのかということをここに示しているわけであります。
これからどれだけ新規国債があるかというのはわかりませんので、既発国債のみをやっておりますので、毎年毎年これから国債が発行されるということについては入れておりませんけれども、それを前提として議論させていただきたいというふうに思っておりますが、全年限でいいますと、既発債だけで、七年で終わり。一年超五年以下、五年超十年以下だと、大体三・五年、三・六年で買うものがなくなるということなんです。
 実は、もう一遍三ページ(配布資料)に戻っていただいて、 下をごらんいただけますか。よく言われるGPIFの話でありますけれども、つまりは、GPIF、ゆうちょ、かんぽで異次元の金融緩和からどれぐらいの保有国債が減ったかということが書かれているわけでありまして、足して五十兆、保有国債が減っている、こういうことであります。
 そして、右を見ていただくと、上が買い越し、下が売り越しということでありまして、買い越しになっているのは、日本銀行と海外。海外が買っているんですね、この三ページの下の右側でありますけれども。あとは、先ほど申し上げたように、国内銀行、保険とか中小企業金融機関というものは売り越しているということで、吐き出していっているわけですね。
 では、物理的にはそうであるけれども、物理的ではない制約というものがあるというふうに思うわけであります。
 例えば、メガ三行は、ではこの二年間でどれぐらいの国債保有を減らしたかというと、四割減らしているんですね。六十七兆円まで、国債保有残高をこの二年間で四割減らしておりまして、これは後で質問するバーゼルとの関係もありまして、いわゆるリスクヘッジの意味で国債保有を減らしている、こういうことであります。
 ただ、他方で、海外が買っていますよね。この買い越しのところを見ていただくと海外は買っているし、あるいは、国債というものをある程度持っておかないと、国内の金融機関も、例えば金融取引の担保などは一定量必要ですよね。それから、では国債から外国債にかえようかということになると、外貨建てになって、外貨の調達も限界もある、あるいは為替リスクも考えなきゃいけないということになると、どうしてもある程度保有しなきゃいけないということになったら、物理的よりもかなり前に品薄になって買えなくなるということが来るんじゃないかというふうに思うんですが、今の私の考えに対して答弁をいただきたいと思います。

黒田参考人 実は、御指摘のような懸念というか議論は欧州でもございまして、ECBが量的緩和を開始するに際して、例えばドイツはもう既に財政は黒字ですから、ドイツ国債は市場にあるものがどんどん減っているわけですね。
 そうした中で、各国ごとの比率に応じてECBが国債を買っていくということになると、いずれ限界が来るのではないか。その場合に、特に、物理的な限界もさることながら、保険会社とか金融機関がどうしても国債を持っていたいという根っこの需要みたいなのもあるではないか、こういうことでございます。
 これに対しては、ECBも、理論的にはそういうことは否定しませんが、二%弱という物価安定目標に向けて来年の九月までは量的緩和をする、その中でそういったことは起こらないであろうと。
(前原委員「日本の話を」)はい。
 それと同様に、委員の御指摘のような理論的な懸念というのは否定しませんが、私どもが考えております二%の物価安定の目標の実現に向けてやっている量的・質的金融緩和、これは無制限にやっていくわけではありませんので、足元で考えている限りでは御指摘のような問題が出てくるということは考えておりません。
 他方で、これは、絶対的、物理的量というよりも、市場の金融機関の国債保有需要の見方でございます。ただ、需要の見方は、金利とかその他の要因にもよります、それから金融規制のあり方にもよりますので、事前にかっちり決め打ちするということは難しいと思いますが、委員御指摘のような点も我々としても十分考えながら、量的・質的金融緩和を進めていく所存でございます。

前原委員 先ほど申し上げたような、後で麻生大臣に伺いますが、政府が、財政再建についての取り組みというものが不十分であったり、あるいは、やはりどう見ても発行している国債の額の日銀が保有する割合というものが余りにも大き過ぎるということが見られたときには、私は、マーケットが特に小さくなっていますので、金利が急激に振れるということもあり得るというふうに思います。
 今、お認めに、ある程度可能性として、理論としてという前提はつけられましたけれども、物理的になかなか、これから買う国債というものが先細っていく、こういうこともあるわけでありますので、今、好循環に見えているものは全てが日本銀行がこれだけの量的緩和を行っている中で起きているものだ。
 つまり、先ほど一番初めにおっしゃった金利差の話、そして円安、株高、まあ為替誘導とは言いませんけれども、実質的にやはり非常にきいていますよね、このことは。そして、為替効果で企業が、言ってみれば利益が出ている、輸出はそれほど伸びていない、また法人向け貸し出しもそれほど伸びていない、内部留保が積み上がっている。こういうことの中で、消費は横ばい、そして株価は二・三倍、二・四倍、実質GDPは二年間で一・五%しか伸びていない、賃金もほぼ横ばい、実質賃金は二年間マイナスだった。
 こういうような状況の中で、さまざまなプラス面、マイナス面がありましたけれども、国民にある程度、何か経済はよくなっているんじゃないかというふうに、少なくとも企業経営者にとってはいい雰囲気にさせているということは、この量的緩和、異次元の金融緩和というのが前提にあって、これが先細ってくると逆回転を始める。金利が上がり、そして円が高くなり、株価が落ちる、そういうことの中で問題点が起きてくるということはこの二年間ずっと指摘をしていることでありますが、そういう状況というものがさらに煮詰まってきているということだけしっかりと申し上げておきたい、こういうふうに思います。
 その上で、もう一つの私の問題意識なんですけれども、付利金利(配布資料)ですね。
 さまざまな緩和策があるというふうに思います。国債をさらに買うとか、あるいはREIT、ETF、あるいは地方債、政府保証債、さまざまなもの、総裁も、買うものはいっぱいある、こういうことをおっしゃっているわけであります。
 この付利金利の引き下げのメリット、デメリット、両方あるというふうに思うわけでありますけれども、あえてデメリットを聞きます。総裁、付利金利を下げるデメリットというのは、どういうものが考えられますか。

黒田参考人 基本的に、現在、金融機関の日銀当座預金へ付利をしているわけですけれども、これは、年間約八十兆円に相当するペースでマネタリーベースが増加するような金融市場調節ということを円滑に行う、大量のマネタリーベースを円滑に供給するということに資するものであると考えております。そういう意味で、当座預金への付利というのはメリットがあるというふうに思っておりますので、逆に言いますと、付利をやめますと反対のデメリットが出てくるということかと思います。

前原委員 では、私が具体的に申し上げますので、それでいい、正しい、あるいは自分とも意見が同じかどうか、それだけで結構ですので、少し私の意見を申し上げます。
 付利金利を下げると、金融機関にとっては超過準備を持つインセンティブというのが薄れますよね。薄れるということは、日銀の資金供給に応じよう、つまり、先ほどから言っているように、これから国債を集めるのに大変苦労されるわけですよ。そういうような国債の売却に応じようとする金融機関が減る可能性がありますよね。これが一つ。
 それから、不利金利をゼロにすると、短期金利もゼロに近づいて、短期金融市場の機能が悪化をして、かえって資金が流れなくなるというおそれがある。これが二つ目。
 それから、付利金利を下げた場合、さらに日米金利差は広がって、為替操作あるいは円安誘導だというふうに見られて、また先ほどの話ですけれども、さらなる円安が果たして日本の経済にとっていいのか、こういう三つの問題点があるんじゃないかと私は思いますが、これについてどうお考えになられますか。

黒田参考人 委員御指摘の三つの点については、その重要性がどの程度かということにはいろいろな意見があると思いますけれども、基本的に御意見の通りだと思います。
 したがいまして、私どもは、不利金利の引き下げは検討いたしておりません。

前原委員 先ほどの量の話に戻りますけれども、付利金利を引き下げないとおっしゃったので、追加緩和をさらにされるとすると、この選択肢は消えたわけであります。
 図九(配布資料)をごらんいただけますか。これが日銀のバランスシートの推移であるわけでございますけれども、資産、負債、両方とも当然ながら拡大をしていっているわけであります。
 私が今日議論したかった大きなポイントの一つというのは、日銀券ルールを総裁はどう考えておられるのかということなんですね。
 つまりは、この図九(配布資料)を見ていただくと、長期国債というものが発行銀行券より下回っているということは銀行券ルールにのっとっているわけでありますが、それを外して異次元の金融緩和をされている、こういうことでありまして、二〇一五年の五月末ではかなりの長期国債が当然ながら積み重なっていっている、こういうことになるわけであります。
 さて、そこでなんですが、図八(配布資料)をごらんいただきたいと思います。日銀券ルールの話です。
 まず、ホームページにはこういう記載がまだされています。「「量的・質的金融緩和」の実施に際し、一時停止しています。」これがホームページに載っていることです。そして、導入直後の参議院の予算委員会において黒田総裁がおっしゃっているのは、「そのルールは一時停止すると。しかし、これは物価安定目標が達成され、金融経済が正常化した下においてはまた復活するという考え方でございます。」と明確に答弁されているんですが、この考えは変わっていませんか、変わっていますか。

黒田参考人 日銀券ルールは一時停止しておりますので、量的・質的金融緩和の必要性がなくなれば復活してくるということはその通りだと思いますが、ただ、その時点で、こういったルールが適切かどうかというのは当然議論になると思います。
 なお、ここの、委員の九ページの表(配布資料)にもありますように、実は二〇一二年七月末も、あるいは一三年三月末も、資産買い入れ等基金ということで、別枠といいながら、実際上バランスシートの中で長期国債の保有は既に発行銀行券を上回っておりましたので、量的・質的金融緩和になったから日銀券ルールがなくなったというよりも、もう包括緩和の時代から実は日銀券ルールをオーバーライドしていたということであります。
 量的・質的金融緩和のもとではこういったことは不可避でありまして、欧米の主要中央銀行もそうなっておりますが、正常化してきたときに、欧米もまたもとに戻るのか、あるいはその時点でどのようなルールにするのかという議論になると思います。

前原委員 その事実関係は、私も短い期間でしたが、ここにおられる古川さんの後に経済財政担当大臣をやらせてもらったのでよくわかっておりますけれども、答弁が変わられていますよね。
 つまりは、物価安定目標が達成されて、金融経済が正常化したもとにおいてまた復活するという考え方でございますで終わってしまっているんですよ、異次元の金融緩和を始められた直後は。だけれども、下に書いてあるように、この間の参議院の決算委員会では、今後検討するということをつけ加えられたんですね。つけ加えるのは、大きく答弁が変わったということですよ。
 つまりは、異次元の金融緩和が始まったときには、日銀券ルールに戻るという前提で答弁されていて、検討を加えるなんてことはおっしゃっていないんですよ、一言も。今の答弁でも、検討を加えなきゃいけないということは、変わったということですよ。それは認められないと不誠実だと思いますが、いかがですか。

黒田参考人 先ほど申し上げました通り、一時的に停止しているということに変わりはありません。したがいまして、量的・質的金融緩和が終了する、ノーマライズするという時点になりますとルールが復活してくることには変わりないんですけれども、その上で、欧米の中央銀行等を見ても、それからその時点で日本銀行としてどのようなルールが適切かということは議論しなければならないと思います。
 実は、政策委員の間でも、量的・質的金融緩和を導入した際にこのルールについてどう考えるかという議論がございまして、一時的に停止するということにみんなで合意したわけであります。その意味は、従来から申し上げております通り、ノーマライズすれば復活する。ただ、その時点で、どういうルールが適切かということは議論しようということでございました。

前原委員 復活する、その上で今後どうするか検討するということはどういうことですか。復活するということと検討するのは、検討したら復活しないかもしれないじゃないですか。
 二〇一三年の五月には、復活するということを言い切っておられるわけですよ。それしか選択肢はなく、言い切っておられる。だけれども、復活する、一時停止をしています、その上でということは、戻るかどうかわかりませんということで、二年で二%というときもそうなんですよ、変わったなら変わったとおっしゃった方がいいと私は思いますよ、そこは、誠実に。
 つまりは、何か中途半端につけ加えて、復活する、その上でとか、それは非常に不誠実だと僕は思いますよ。そこは、日銀券ルールを復活するという断言をされていたのを、しかし、今度は検討するということにしますというふうに言われた方が、私は誠実だと思いますし、いつも大事とおっしゃっている市場との対話でもその方が極めてダイレクトだし、私はいいと思いますよ。いかがですか。

黒田参考人 委員の御意見は御意見としてよく理解できるわけですが、そもそもこれを一時停止すると決めたのは、廃止するとかいうことではなくて、あくまでも一時停止ということですので、当然、ノーマライズしたときには復活するだろう。
 ただ、そのときに、全く同じ形で復活するのか、違うルールにするのか、あるいはそもそもそういうルールは要らないかとか、いろいろな議論があり得るということは、委員の中でも既に議論されていたところであります。
 ただ、一時停止という意味は、廃止じゃないんです、あくまでも量的・質的金融緩和を遂行するというもとで一時停止をしていますという趣旨でございます。

前原委員 繰り返すようですけれども、二〇一三年五月八日は、復活すると言って終わっているんですよ。その時点で、しかし、その上でどうするかどうかはまた考えますなんて一言もおっしゃっていないんですよ。だから、変わっているんですよ。それだったら、変わっているとおっしゃった方が僕は非常に誠実だと思いますし、その辺は、二%のずれもあやふやにしてこられているということも含めて、非常に不誠実だということを申し上げておきたいというふうに思います。
 時間がもったいないので、先に進みます。
 さて、十分間であと何をやるかという優先順位を私も決めなきゃいけないんですが、財務大臣にせっかくお越しをいただいているので、IRRBBもやりたかったんですが、財政再建についてやらせていただきたいというふうに思います。
 麻生財務大臣、いま一度、二〇二〇年、基礎的財政収支黒字化というものを実現するということが政府の方針であることには変わりありませんか。

麻生国務大臣 その通りにしております。

前原委員 さて、その上で、いわゆるどういうシナリオを描いているかということで、麻生財務大臣のお考えも承りたいなと思っているわけであります。
 内閣府が出している中長期の経済財政に関する試算(配布資料)ということで、今日は西村副大臣もお越しをいただいているわけでございますけれども、二つのケースがございますね。経済再生ケースとベースラインケース、こういうものであります。
 まず、先ほど黒田日銀総裁は、政府の財政再建はしっかりやってもらわなきゃ困る、自分たちがどれだけ買うどうのこうのじゃなくて、それはやってもらわなきゃいけないんだ、こういうことをおっしゃいましたけれども、日銀の九名の審議委員の方々の平均値と経済再生ケースにおける実質GDPの成長率というのは乖離していますよね。
 この内閣府の試算というものを前提に、言ってみれば基礎的財政収支の黒字化というものを実現しようということになっているわけでありますが、今の経済見通し、日銀の黒田総裁、この内閣府どおりにいくと思われますか。経済再生ベースでいかれると思いますか。日銀の展望レポートとは乖離していますよ。

黒田参考人 私どもの展望レポートの見通しというのは、基本的に三年間の見通しでありまして、それはあくまでも経済見通しとして提出しているものでございます。
 他方、私の理解するところでは、内閣府の出しておられるのは長期的な財政収支見通しをつくるために一定の前提を置いてやっておられるということでありまして、その時々、その年その年の経済見通しというのは、これまた内閣府が毎年出されるものであるというふうに理解をしております。

前原委員 先ほどから議論しているように、かなりリスクを背負っていわゆるアベノミクスというものの柱をつくっておられるのが日銀の異次元の金融緩和ですよね。その対をなすのが財政再建、そこがアンカーで、しっかりといかりがおりていないと異次元の金融緩和というのは吹っ飛びますから、そういう意味では、もっと厳しくおっしゃれる立場だというふうに私は思いますよ。そのことだけを言っておきます。
 その上で、麻生財務大臣に伺いたいんですが、一部のリフレ派議員あるいは経済財政諮問会議の民間議員が、私は、名目三%、実質二%の経済再生ケースでも、なかなかこれは大変だな、こう思っているわけでありますが、これで足りないのが九・四兆円ですよね。これでも大変だと思うのに、五、六兆円を歳出削減で捻出する一方で、さらなる経済成長で、税収増で四兆から五兆見込む、こういう案が出ているわけでありますが、財務大臣として認められますか、こういう考え方について。

麻生国務大臣 今のいわゆる経済の再生ケースというのは、例の、二〇一三年度から二〇二二年までの十年間の平均で名目三%、実質で二%程度を目指すというのが大まかなところなんですけれども、二〇一五年から二〇年にかけて、国、地方合わせて二十二兆円、国と地方と両方合わせて二十二兆円の税収増が見込まれる。これだけでもなかなかのものだと思うんですね。それプラスさらに数兆円乗っけようというのは、そんな簡単にいくかね、私自身は率直にそう思いますから、これはかた目に見積もっておかぬといかぬものだ、私は基本的にはそう思っております。
 その上で、これ自体が相当野心的なことであるということを考えますと、抑える方はともかくとして、伸ばす方をこれ以上というのはちょっと、税収が上振れしているところはありますけれども、これがずっと上振れのままでいくという保証なんというのは全くありませんので、今年はよくても、数年するとまたというのは常に考えておかないかぬところだと思います。そういうところは、経済成長率を上回る税収の伸び、今後とも伸びることが可能だという、税収弾性値一・一とか二とか三とかいろいろありますけれども、そういったようなものの議論というのが少々混在しているというような感じがしますので、私どもとしては、これはもうちょっとかた目に見積もらぬと、我々財務省なんというお金を預かる立場としてはなかなかさようなわけにはいかぬと思っております。
 したがいまして、これは経済再生ケースにある程度織り込んであるところだと思っておりますので、したがって、私どもとしては、税収弾性値というものが一程度と見込まれる中で、繰越欠損が解消したり、景気循環による短期的な増収というものは今後どこまでできるのかよく見きわめた上でないとなかなか簡単なことではないと思っております。
 いずれにしても、私どもとしては、市場から見てこれは信頼性が高いというように思ってもらえるような計画をこの六月に出すことにしたいと思いますので、私どもとしては、これがどうかと言われれば、この六月末までにはお出ししたいと思っておるんです。抑えるものはきちっと、歳出の約三割以上になります、三分の一にもなります福祉等々のものをどれだけということ、毎年一兆円伸びるなんという話を含めまして、そういったものも考えながら、それをどれくらい低く抑えられるか、また、その他いろいろな公共工事等々含めまして、そういったものも抑えながら、その差額の九・四というものをどれくらいまで差を詰められるかをきちんとして、ゼロというものを目指してやっていかねばなりません。
 私どもとしては、決して無理だと思っておるわけではなくて、二〇一五年に半分になりますということを出しました二〇一〇年、たまたまその当時は総理大臣をやっていたころでしたけれども、あのころ、出したときに、いくなんと思った人はほとんどおられませんから、みんな。半分なんかいくわけないじゃないかとよく言われましたよ。だけれども、結果としては半分にほぼなりつつあるところまできますので、私どもとしては、あのころに比べて景気がよくなってきているというのは間違いないと思っておりますので、そういった意味では、希望を持って、きちっと、二〇二〇年までにはゼロにという目的に向かってやらねばならぬと思っております。

前原委員 二〇一五年の半減も、補正予算でかなり粉飾的なものをやっているというのは何度も指摘をされてきたことでありますし、私は、先ほどの民間議員のさらに経済の上振れということについてはもっとかた目に見なきゃいけないというのは、それは御見識だと思いますよ。ただ、私は、経済再生ケースでも、かなり楽観的だと思いますね。
 ですから、ベースの成長率がかなり低いことも含めて財務省としては考え方をまとめておかないと、それでも楽観シナリオだと私は思っていますから、そういう意味では、もう少しかた目のものを常に、最後のとりでである財務省としては、しっかりと考えていただきたい。この中身については、また機会を得て議論させていただきたいと思います。
 西村副大臣、来ていただいたのに、申しわけありませんでした。
 終わります。

(議事速記録より)
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