前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第186回国会 衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会2014/02/25

前原委員 民主党の前原でございます。
 私も、個人的にも非常に思い入れの強い沖縄また北方問題について質問させていただきます。
 まず、山本大臣、沖縄の振興計画について二つ確認をさせていただきたいことがあります。
 まず一つは、昨年の十二月二十四日の閣議におきまして、安倍総理は、沖縄振興の取り組みを強化するため、現行の沖縄振興計画期間、平成二十四年度から三十三年度においては沖縄振興予算について毎年三千億円台を確保と発言をされている。これは事実でありましょうか。そしてまた、事実であれば、どういうふうに担保するのでありましょうか。

山本国務大臣 前原議員におかれましては、平成二十一年九月から一年間沖縄担当大臣を務められ、さらに、沖縄県から海外への留学生の増大を目指す万国津梁人材育成基金を実現するなど、きのうちょっと資料を読ませていただきましたが、沖縄振興に力を尽くされたというふうに認識をしております。
 今のお話ですが、毎年、現行の沖縄振興計画期間、平成二十四年から三十三年度において、三千億円台の沖縄振興予算を確保すると安倍総理が閣議で発言したのは、事実でございます。
 御指摘の発言についてはどう担保するのかというお話がありましたが、法的な効力があるものではありませんけれども、総理が、閣議において、平成三十三年度まで毎年三千億円台の沖縄振興予算を確保する、こう発言をしたということは大変重いと思っておりますし、その際に、沖縄振興の推進のために、関係各大臣への一層の取り組みと協力をお願いするというお話もありました。
 いずれにせよ、沖縄振興予算総額、これは、この総理の閣議発言を踏まえつつ、各年度の予算編成の中でしっかりと検討してまいりたいというふうに思います。

 

前原委員 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、現在の振興計画、これは、御承知のように、一九七二年五月十五日に沖縄が返還をされて、そして初めに十年間、そして累次四回、十カ年計画を行ってきて、今回は民主党政権下で五回目の振興計画をつくったわけであります。
 過去四回と大きく違うのは、沖縄県に計画を主体的につくっていただいて、私は政調会長をしておりましたけれども、小川淳也議員が政調筆頭副会長をして、彼は総務省にいるときに沖縄県に二年間出向していて、当時の上原副知事のもとで働いていたということもありまして、彼が中心となって、あとポスト軍転法もですが、つくり上げたものということでありまして、我々は、この振興計画、うまくいってもらいたいというふうに思っているわけであります。
 そのときに、先ほどの三千億の話にもなりますけれども、沖縄県の仲井真知事からは、これは仕上げの十カ年の計画だということの中で、とにかく仕上げの計画だから三千億円を確保してもらいたい、こういう要望が私にも何度もありました。
 ということは、私は、これは民主党政権下で確認をしたことで、現政権でも確認をされるのかどうか伺いたいわけであります。こういう十カ年計画というものは、これで十年たったら五十年になるわけですね、沖縄返還して。まさに知事がおっしゃっているように、この計画というものは最後の仕上げの計画だという認識で我々はつくったわけでありますけれども、どういう認識を今の政権では持たれていますか。

山本国務大臣 仲井真知事がおっしゃった仕上げの計画というその定義は、ちょっと私には正確にはわかりませんけれども、前原議員も沖縄担当大臣をやられて、その間、いろいろ沖縄振興について新しいイニシアチブを打ち出す等、大変貢献をされたわけです。
 少なくとも、おっしゃったとおり、戦後ずっと政府として沖縄振興に取り組んできた。それは、歴史的な理由、そして地理的な理由、あるいは社会的な理由、いろいろありましたけれども、きょう、ちょっと先ほどの表も見せていただきましたが、沖縄振興を振り返ってみると、これも本当に釈迦に説法なんですが、もう大臣も務められた前原議員にこういうのはちょっと失礼なんですけれども、本土との社会資本整備の差は縮まった、リーディング産業である観光やITも伸びてきている。
 しかしながら、やはり県民所得がまだ低いレベルだとか、あるいは失業率が高いとか、こういう課題もある中で、この十年間の中で、私は何度も申し上げているとおり、やはり沖縄は、今回の安倍政権の再興戦略、成長戦略でも位置づけられたように、国家戦略として、将来日本経済を引っ張っていくような、東アジアの中心にあるという地理的優位性等々を生かして、東アジアのフロントランナーになっていく、そういう道筋をつけるための十年ではないか、そんなふうに知事はお考えになっているのではないかというふうに推測をしております。

前原委員 現在は自公政権ですから、主体的に今の政権で御確認をいただきたいと思いますけれども、私の認識は、当時政調会長をしていた認識といたしましては、仕上げという意味は、こういう十カ年の振興計画は最後の十カ年の振興計画だ、こういう思いの中で、委員長である安住議員にも、財務大臣として六百億円上積みをしていただいて、沖縄振興予算、約二千四百億から三千億にしたわけです。
 それは、まさにその仕上げで、とにかくトータルで五十年の振興計画をやることになるわけですから、そういう意味では、今大臣がおっしゃったように、沖縄の特殊要因、これは我々も痛切に感じております。まず何よりも、一九七二年までは沖縄はアメリカの施政下にあったということ。それから日本に返還をされて、そこからのハンディを持ったスタートであるということ。それから、沖縄県というのは、日本の領土でいいますと〇・六%の非常に狭い土地でありますけれども、そこに米軍の施設・区域の約七四%が集中をしているということ。沖縄本島に至っては二〇%ですよね。嘉手納町に至っては八三%が基地によって占められている。
 こういった成長したくてもできないような制約要因があるということの中で沖縄振興というものがされてきて、そういう意味では、我々としては、六百億上積みをして三千億にしたということについては、この十年間でテークオフをしてほしいという思いの中でつくったものなんです。
 これについては、今後の沖縄のどういう道行きかということも含めてお考えをいただければ結構なんですが、それを前提にちょっとこれから議論したいというふうに思うんです。
 お配りをしている資料(配布資料)をごらんいただけますか。
 きのう、予算委員会で、安倍総理が我が党の議員の質問に対して、民主党政権では賃金が下がっているじゃないですかとおっしゃったそうなんですが、その議員も切り返しができなかったということで、歯がゆい思いをしているんですけれども、民主党政権の前の自民党政権でも、長らくずっと賃金は下がっているんですよね。平成八年から平成二十年の十二年間で、全国平均で八・四%賃金は下がっているんですよ。その中で伸びたのは、四十七都道府県で二つだけあるんです。東京都と沖縄だけなんですね。
 これは、一九九一年から二〇〇一年と、二〇〇一年から二〇一〇年度の県民所得の伸びを示したものであります。二〇〇一から一〇年までは、東京はマイナスに転じました。全県でいうと、マイナス〇・六からマイナス六・一ということで、リーマン・ショックがありましたので、これまた相当落ち込んでいるわけであります。
 沖縄県は、先ほど、平成八年から平成二十年では沖縄と東京だけだと申し上げましたけれども、これを見ていただくと、二〇〇一年から二〇一〇年で伸びているのは、沖縄と福岡と滋賀と、それから若干伸びている千葉と、四つだけなんですね。振興計画というのは、そういう意味で、ある程度の沖縄県の所得の伸びというものには寄与しているというふうに私は思っています。
 しかし、裏を見ていただいて、下、三番目のチャート(配布資料)を見ていただきますと、ただ、やはり四十七都道府県の一人当たりの県民所得を一位から並べた場合、残念ながら、ずっと沖縄県が最下位なんです。平成二十二年度までとった場合に、やはり沖縄県がずっと最下位なんですね。
 そういう意味を含めて、先ほど山本大臣がお話をされたように、歴史的な経緯、そして過重な基地負担を引き受けていただいているという制約要因を含めて、やはりしっかりとした手当てをすることが大事だというふうに思うわけです。
 その上で、先ほど、安住財務大臣にも御尽力いただいて、六百億円上積みしました。それは平成二十四年度の予算から反映されているわけでありますけれども、それで三千億、ずっと十年間やるということになると、恐らく沖縄は最下位から抜け出ると思うんですね。ほかのところが逆に、後で質問しますけれども、沖縄だけは一括交付金。先ほど伊東議員からは、何で北海道は一括交付金じゃないのかという話がありましたけれども、沖縄だけは一括交付金で、予算を三千億の丈にした場合、恐らくこれは変わりますよ、今の日本の財政状況を考えたときに。そういった場合に、本当に三千億、十年間というものを固定していいのかという観点が一つです。これは、ほかの都道府県の観点から。
 もちろん、沖縄が置かれている歴史的、あるいはほかの制約要因も含めて考えて、トータルで判断しなきゃいけませんけれども、こういう問題が出てきますねということなんです。
 それと同時に、あわせてお答えいただきたいんですが、仮に、知事がおっしゃるように十年間の仕上げのものとした場合に、しかも、安倍さんがコミットメントされているように三千億やるということは、逆に言うと、十年たったら三千億切れるということなんですよ。これは、むしろ沖縄の経済に大打撃になりますよ。
 つまりは、十年間、沖縄でずっと予算をとっていて、そして十年間は担保します、しかし、十年たったらそれはわかりませんよということです、逆に言えば。
 こういうことになると、やはり国の予算でつけたことによるプラスの面とマイナスの面、つまりは、他の県との県民所得一人当たりの兼ね合いの問題が出てくるということと、国の予算で経済の底上げをするのではなくて、まさに中身によって、いわゆる自立的経済成長というものをテークオフさせるようなところでしっかりと予算措置をしていかないと、この十年計画が切れたときは、むしろ沖縄は大ダメージを受けるという二つの意味から、私は本当に三千億というものを固定することはいいのかどうかと思うわけです。いかがですか。

山本国務大臣 前原元沖縄担当大臣の今の御質問は、現職の担当大臣として大変参考になりました。これから沖縄振興をどういう視点で見ていくかということについては、いろいろと御示唆をいただいたと思います。
 ただ、三十三年まで三千億円台を続けるということは、いろいろ、今後の予算の状況や、あるいは、これは改正沖振法で、民主党政権の時代だと思いますが、きっかけをつくった沖縄一括交付金の話、それから今の沖縄の状況等々を勘案して、私は、三十三年まで、これは総理が決断されたわけですが、三千億円台の振興予算をつけるということは、妥当だと思っております。
 前原議員のおっしゃった、三千億円台を確保する、その後は一切知らないということではなくて、先ほど申し上げたとおり、沖縄振興をやってきたのにはいろいろな理由がある。前原議員おっしゃったように、基地の問題や、過去の歴史の問題や、あるいは東西千キロと四百キロメートルの海域に百六十の離島があるとか、いろいろな状況でやってきたということですから、三十三年までは三千億円台を確保するから、その次の年からゼロになる、そういう考え方はしなくてもいいのではないかと思います。
 一括交付金については、いろいろ御議論もあると思うんです。地域戦略自主交付金でしょうか、こういうものを切る中で、なぜ残したのかと。それは、先ほど、前原議員御存じだと思いますが、沖縄のさまざまな事情に鑑みて、この一括交付金というものを、全会一致だと思いますが、設けたということで、これは二年目になりましたけれども、私はかなり有意義に使われていると思いますし、やり方によっては文字どおり沖縄を羽ばたかせるために極めて有効に使えるのではないか、こんなふうに考えております。

前原委員 私も、十年たったら三千億がゼロになるとは全く思っていないです。
 しかし、日本の今の財政状況を考えたときに、対GDP比で二・三三倍の長期債務を抱えていて、平成二十五年度の予算では、税収と公債発行収入がほぼ同じですよね。こういった状況下において、恐らく聖域なき歳出改革をこれからやっていかなきゃいけない中で、先ほど懸念をしたように、他の県との見合い、しかも一人当たり所得が低い県との見合い、それと同時に、仮に三千億維持できたとしても、その後、減らすようなことになれば、後で御質問しますけれども、相当やはり落差のダメージを沖縄経済自体に与えるということの中で、私は、額というものは柔軟に考えて、中身をより重要視した方がいいのではないかということを申し上げているわけです。
 何かそれに対して答弁はありますか。

山本国務大臣 今の前原議員のおっしゃった、額というよりは中身を充実させるべきだというのはおっしゃるとおりだと思いますが、三千億円台を確保すると政権として決めた状況の中で、この三千億というものをできるだけ有効に活用する。
 おっしゃったとおり、十年たった後の沖縄経済のお話がございましたけれども、各県との落差という話は出てくるかもしれませんが、この十年間で、先ほど申し上げたとおり、沖縄に日本経済全体を引っ張ってもらうような、フロントランナーになってもらう、沖縄経済から日本経済が元気になってくれるような、そういう構造を振興担当大臣ではつくれるように、これから一括交付金の使い道についても、もちろん沖縄県主体でこの事業を決めるわけですけれども、しっかりと戦略的には国としても、沖縄県主体ではありますが、しっかり関与をして、おっしゃったとおり、額だけではなくて中身の方も充実させるように努力をしてまいりたいと思います。

前原委員 二つ質問させてもらいたいと思うんですが、我が政権のときは、全国一括交付金をやったんですよ。ほかのところは一括交付金をやめて、なぜ沖縄だけ残したんですか。

山本国務大臣 先ほど申し上げたとおり、沖縄振興については、歴史的、地理的、社会的等々の特殊事情を抱えているということで、沖縄振興特別措置法を制定して、全会一致だったと思いますが、国の責務として各種の政策を実施してきたということでございます。
 このため、沖縄振興交付金については、沖縄県からの要望を最大限に尊重して、ハード事業に加えてソフト事業も対象とした独自の制度も設ける等々、改正沖振法に基づいて創設された、法律に基づいて創設されたものであり、地域主権戦略大綱等に基づいて創設され、投資補助金のみを対象としていたと思いますが、地域自主戦略交付金とは政策的な位置づけが異なるのではないかというふうに考えております。
 今後とも、沖縄の未来につながるような戦略的な事業に、沖縄振興交付金、この一括交付金がしっかりと活用され、先ほども申し上げたとおり、沖縄を日本経済のフロントランナーにしていく、モーターにしていくべきだろうというふうに考えております。

前原委員 沖縄担当大臣にこれを聞くのは酷な話だというのはわかっているんですけれども、やはり一国二制度ですよね。これは私は整合性がとれていないと思いますよ。本当に沖縄に対して意味があるということであれば、全国でも意味があるはずなんですよ、一括交付金というのは。その地域地域で創意工夫をしてもらって、そして自由に使えるお金をふやしていくということは大事なことであるし、だから沖縄には残したんでしょう。今の答弁だと、裏返したらそうなりますよね。
 ですから、これは山本大臣にきりきり詰めても仕方がない話なんですけれども、そこは安倍政権として整合性がとれていないということははっきり申し上げておきたいというふうに思います。
 その上で、先ほどから、十カ年計画が終わった後の沖縄がむしろ心配だというふうに申し上げましたけれども、この一括交付金は相当厳しくチェックしてもらいたいと思うんです。
 もちろん、これは知事がチェックすることに一義的にはなるわけでありますけれども、予算を一挙に六百億ふやして、そして、一括交付金の割合がかなり高いですから、初め、沖縄は予算を組むのも大変だったんですよ、これは聞かれていると思いますけれども。相当いろいろな事業が紛れ込んでいますよ。したがって、そこは、やはり担当大臣が沖縄県知事としっかり話をされて、丈はとったけれども、中身をしっかりしてほしいと。
 そして、別に私の名前は出さなくていいですけれども、私が質問している、つまりは、仕上げとおっしゃった。私は、仕上げという意味は、やはり、こういう十カ年計画というのは最後だという思いを恐らく仲井真知事は持っておられると思うんですよ。
 そうであれば、逆に、そういった一括交付金、ソフトもハードもつくって、自立的な経済の成長に資するようなものに使っていかないと、ただ単に、それぞれの市町村の今何とか間に合っている事業に一括交付金が使われてしまえば、これが打ち切られたときは、本当に地域も、持続的な経済の成長性がない中で予算が縮小されるということになると、不満だけが残ると思うんですよ。よかれと思ってやったことが、不満だけが残るんですよ。
 そういう意味では、この一括交付金、ソフト、ハードを含めて、やはりしっかりと、一義的には沖縄県知事が見られるものでありますけれども、担当大臣としても厳しくチェックしていただくということが大事だと思いますが、いかがですか。

山本国務大臣 前原議員御存じのとおり、一括交付金は、一義的には沖縄県側が決めていくということですけれども、今おっしゃった、政府としてもしっかりチェックをし、評価をしていくということは、そのままアドバイスとしてきちっと受けとめさせていただきたいと思います。
 沖縄一括交付金、もう言うまでもないことですが、御存じのことですけれども、観光や産業の振興、例えば国際物流拠点、施設の整備、また、これまで必ずしも行政のサポートが行き届いていなかった離島振興とか福祉、例えば、高校のない離島出身者のための寄宿舎等の設置とか、離島住民等の交通コストの支援、離島における人工透析施設の整備、幅広い分野に活用されておりまして、県内の経済面に好影響を与える旨、報道もされておりますし、沖縄振興には私は大きく寄与していると認識をしております。
 昨年十一月の沖縄振興審議会でさまざまな議論がなされましたが、今、前原議員の御指摘も踏まえて、やはり本交付金制度をよいものにしていく、中身をきちっとよくしていくために、制度の初年度であった平成二十四年度事業の事後評価の中身も平成二十六年度事業に生かして、PDCAサイクルをきちっと確立していきたいと思います。
 もう一度申し上げますが、やはりこれだけの規模の交付金を残したわけですから、もちろん、沖縄の自主性に委ねる部分もありますけれども、そこは中身がきちっとなっていくように、政府として、今の御指摘を踏まえてきちっと評価をさせていただきたいと思います。

前原委員 私は、沖縄担当大臣とあわせて国土交通大臣をやっていて、やはり一番大きな沖縄からの要望は、那覇の二本目の滑走路。私が大臣のときに、これの認可をおろし、調査を始めました。これについては、やはり律速段階になっているんですよ、一本しか滑走路がないということは。南西航空師団がありますから、スクランブル発進もあるわけですね。
 そういう観点において、やはり二本目の滑走路が非常に必要だということで、その認識は持っていただいていまして、これも、十二月二十四日の閣議において、平成三十一年度までに確実に工事を完了すると述べていただいていることは、大変ありがたいことだと思います。これは必ずやってください。一言お願いします。

山本国務大臣 これは、沖縄担当大臣としては全力で取り組ませていただきたいと思いますし、もちろん、安倍内閣も五年十カ月ということで決めているわけですから、必ずその方向で実現できるというふうに考えております。

前原委員 基地問題は時間があれば後でさせていただいて、北方領土の問題、特に外務大臣にさせていただきたいと思います。
 まず、山本大臣、北方領土はロシアによる不正占拠ですか。

山本国務大臣 北方領土は法的根拠のない占拠でございます。

前原委員 お互い与野党を経験して、野党議員の山本さんが私どもに大変しつこくそのことを聞かれましたよね。こういった領土問題を本当に解決して平和条約を結ぼうというときは、ぜひこれからは、建設的な議論をしていくという意味で、お互いそういったことについては時間を無駄に費やさないということで確認をしたいというふうに思います。
 その上で岸田大臣にお伺いしたいんですけれども、私は、安倍さんがこの一年余りでプーチン大統領と五回会っておられる、岸田外務大臣もラブロフ外務大臣と三回ですか、お会いいただいている、大変いいことだと思います。私は、平和条約締結はタイミングがあると思いますし、特に、今のロシアの大統領、プーチンという人の個人的な性格も考えれば、やはり首脳間の信頼関係を高めて政治決断をするしかないと思っていますので、そういった頻度で会われて、そして信頼関係を強められているということは、大変重要なことだと思います。
 早く決まればいいですけれども、決まらなかった場合において、しかし、これは日本固有の領土ですから、我々としては、平和条約締結運動、北方領土返還運動というものの灯を消さないように努力をしていかなきゃいけない。
 そのために、私は、大切なことは二つあると思っているんですね。一つは、北方領土を含む極東のロシア人と我々が良好な関係でいるということが大事だと思うんですね。それから、もう一つは、先ほど伊東議員からの質問にもありましたけれども、旧島民、二世、三世、四世の方々のモチベーションをどうやって維持するかということが大事で、この二つを考えた場合、大事なことは、やはり、もちろん、さまざまな広報、啓発、啓蒙活動というのも大事ですけれども、隣接地域がいわゆる北方領土との経済交流によって恩恵を受けるということが、返還された後はもちろんさまざまな開発がされますでしょうから、そういう意味ではプラスになるわけでありますけれども、される前でも、北方四島との経済交流による地域経済への波及、つまり恩恵を受けるということは私は大事だと思うんです。
 三年前に、ちょうど二月に、私はモスクワに行きまして、ラブロフ外務大臣と外相会談をやったときに、十五分間だけ二人だけで通訳のみ入れて議論したときに、この交流をやらないかということを言ったわけです。それは当然ながら、言ってみれば、双方の法的立場というものを損なわない前提で、両国間での四島での経済協力活動ができないかということを私は提案したわけですね。ラブロフ外相は、それはいいということで、お互い事務的に詰め合おうという話をしたわけです。
 政権がかわりました。だけれども、先ほど申し上げたように、四島でのお互いの法的立場、特に、そういう活動をする場合において、日本人がロシアの法的管轄を受けないということが極めて大事なことなんですね、管轄権を行使されないということが大事なことなんですけれども、そういうようなものをやる必要性はあると思われませんか。

 

岸田国務大臣 まず、日本とロシアの関係につきましては、御指摘いただきましたように、昨年来、五回の首脳会談、三度の外相会談、さらには、そのほかにも、歴史上初めての2プラス2など、テンポよく意思疎通を図ってきております。
 こうした意思疎通を図りながら、日ロ関係、経済のみならず、安全保障、文化、スポーツ、こうしたさまざまな分野全体を底上げして、そして、その雰囲気の中で、北方領土の問題、平和条約締結問題、この問題につきましてもぜひしっかりとした結論を出していこう、こうした大きな方針のもとに取り組んでいるところです。
 ですから、北方領土問題について結論を出す際に、それ以外の日ロ関係、経済の問題あるいはエネルギーの問題、こういった分野においてもしっかりとした協力関係の進展、こういったものはしっかりと実現していきたいと考えております。
 そして、今御指摘の、日ロの間で共同して経済活動を行う、こうした協力の枠組みをつくるべきではないか、こういった御指摘についてですが、今委員の御質問の中にもありましたように、基本は、我が国の法的立場を害さない、これがまず大前提だと考えています。そういった大前提のもとにこうした取り組みが考えられないか、これは一つの考え方として当然あるとは存じます。
 ただ、その後、ロシアのこうした問題に対する取り組み、例えば、二〇一二年のラブロフ外相のインタビューの中でも、ロシアの法令のもとで行う、こういった点を主張している、こういった発言も見ることができます。こうであると日本側としてはなかなかすぐには受け入れられない、このようにも感じているところでございます。
 我が国の法的立場を害さないことを前提としながら、こうした考え方についても検討するというのは一つの考え方でありますが、今言った点が、我が国としましてはしっかり考慮しなければいけない点であると思っております。

前原委員 全体の絵姿としては、入り口戦略に立たずに、出口に行き過ぎると、いいところだけとられる可能性があるので、経済協力をある程度進めながら、平和条約を締結するための、北方領土問題を解決するための努力を行うということが、私は一番立ち位置としていいんだろうと。その中での資源の協力とか経済協力とか医療の協力とか、それはもちろんやっておられるし、我々もそれは進めてきました。
 私が申し上げているのは、その中で、隣接地域が疲弊をしている、そして旧島民の方々は高齢化をし、二世から四世の方々にもモチベーションを持っていただくということになれば、北方領土四島との経済活動が必要ではないかという提案をして、そして、私もラブロフが言っていることはよく知っていますよ。大臣も何度も話をされているでしょうから、向こうの交渉術というのは、当然ながらそうなんですよ。それで既成事実を積み重ねて自分の立場をよくしようというのは、ある意味では向こうの常套手段ですから。別にそれに乗れと言っているわけじゃない。
 私の前提は、先ほど申し上げたように、双方の法的立場というものを損ねない、そしてロシアの法的管轄下には乗らないという中で考えられないかということを申し上げているわけです。
 具体的に、日ロで枠組みはもうあるんですよ。例えば、一九九八年に締結された四島操業枠組み協定というのがあるんですね。これは、四島周辺水域における養殖または栽培漁業協力というものの可能性はないのか。それからもう一つは、一九九一年に交換された四島交流に関する日ロ外相間往復書簡というのがあって、例えば、そういうもので、四島住民ニーズの高い医療面に着目をした遠隔地医療、こういったものをやるということの中で、先ほども申し上げているように、もう時間が余りないので、繰り返し長々と御答弁は要りません。ピンポイントでお答えください。そういう前提は、お互いの共通認識の中でそういったものも模索し、ひいてはそれが隣接地域の経済にプラスになって、そしてモチベーションを高めていただくというためのエンジンにすべきではないかということを申し上げているんです。

岸田国務大臣 我が国の法的立場を損ねないという前提に立った上で、隣接地域の発展ですとか、関係者のモチベーションをしっかり維持するためにさまざまな工夫をしていく、こういった考え方は当然あっていい考え方であると存じます。具体的にはそういった考え方のもとに何ができるのか、これは考えていきたいと思います。

前原委員 今私が申し上げた具体的な二つの事例の中で、検討してもらえませんか。

岸田国務大臣 御指摘の点も含めて、今申し上げた目的のために何ができるのか考えてみたいと思います。

前原委員 沖縄北方の問題じゃないんですが、日本の外交の問題で一つ、どうしても外務大臣にお伺いしたいことがありますので、お伺いしたいと思います。
 先般の予算委員会で、石原信雄元官房副長官が参考人として来られまして、そして、河野談話をまとめたときのいきさつについて陳述をされました。その中には、十六名の慰安婦の方の発言について、裏づけ調査をしたことはない、こういうことを石原参考人はおっしゃったわけであります。それを受けて菅官房長官が、内々に調査をするということを言われましたけれども、大臣、二つ、端的にお答えください。
 まず、そういった調査をやる必要があると思われるのかということと、河野談話そのものは見直すべきだと思われているのか、この二つについてお答えください。

岸田国務大臣 まず、二月二十日の予算委員会でのやりとりですが、御指摘のように、河野談話をめぐりまして、石原元官房副長官を参考人として招致して議論が行われました。その中で河野談話について菅官房長官が答弁をしているわけですが、あのやりとり、私もその場にいて、聞いておりました。
 そのやりとりとしましては、要は、慰安婦の聞き取り調査の結果については、非公開という前提で行われたものである、そして、そうした機密ということを保持する中で何ができるかを検討していきたい、こういった答弁をしたと承知をしております。
 ですから、河野談話、これは官房長官談話ですので、菅官房長官のこの答弁が全てであると私は思っております。
 そして、見直しをする必要があるかどうかという御質問ですが、私自身、この河野談話の見直しということについては、申し上げたことは一度もありません。
 私自身としては、かつて筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた多くの方々がある、そういった方々の思いに思いをめぐらすときに、本当につらい思いを感ずる、こうした歴代の内閣の考え方を引き継いでおりますし、かつて多くの戦争があり、その中で多くの女性の方々の人権が損なわれてきました。二十一世紀こそは、こうした女性の人権がしっかり守られる、大切にされる世紀にしなければならない、こういった思いで外交に取り組まなければならない、日本外交としてもそういった思いで国際貢献をしていかなければいけない、こういったことで努力をしております。
 河野談話についての私の思いは以上でございます。

前原委員 要は、見直すべきでないということですね。イエスかノーかでいいですよ、時間もありませんから。明確に。

岸田国務大臣 今申し上げたとおりでございます。

前原委員 イエスかノーかでいいんですよ。これは、官房長官談話だけれども、外交を所管するのは岸田大臣、あなたですよ。その中で、いわゆる河野談話というものがどういうふうに扱われるかということについては、それは外務大臣としてしっかり、明確に言わなきゃいけないんですよ。見直すべきか見直すべきでないのか、どちらですか。

岸田国務大臣 河野談話の見直しについての御質問ですが、私としても、そして政府としても、河野談話の見直し、一度も申し上げたことはありません。

前原委員 今、慰安婦の方々、御存命の方は五十五名、平均年齢が八十七、八歳だと思いますね。十六名の方々の裏づけ調査が行われていないといったって、では裏づけ調査をどうするのか。言った言わないになる可能性がありますよね。
 そして、何よりもやはり、さまざまな経緯はあるでしょうけれども、一旦、政府として考え方をまとめて、そして官房長官談話ということで世に出したわけでして、それを見直して、また変えるというようなことがあれば、歴史の修正主義のような懸念に捉えられる可能性があるというふうに私は思っていますので、私はぜひ、外交をつかさどられる外務大臣として、今のような姿勢というものをしっかりと保っていただく中で、うまく戦略的に外交を行っていただくということが大事だと思いますので、これからもその姿勢というものを貫いてもらいたいというふうに思います。
 終わります。

(国立国会図書館ウェブサイトより)
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