前原誠司(衆議院議員)

日々是好日

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「賃金上昇なくして好循環なし」(後援会報誌 エバー2019号外より)2019/09/07

「賃金上昇なくして好循環なし」(後援会報誌 エバー2019号外より)

 

〜トリクルダウンからボトムアップへ〜

 

■「アベノミクス」の根本問題

 平素より、私・前原誠司の政治活動に多大なるご理解とご協力を賜り、衷心より厚く御礼申し上げます。

 参議院選挙が終わりました。自公勝利に、野党の不甲斐なさを痛感するとともに、ご支援・ご期待くださった皆様に心からお詫び申し上げます。私の置かれている状況も、野党の置かれている状況も、まさに「正念場」です。今こそ国民に「あるべき社会像」と「実現のための処方箋」を示し、その政策軸に勢力を結集させることによって、「正念場」の日本を変えなければなりません。

 

 なぜ日本を「正念場」と申し上げるのか。日本は以下の構造的な問題を抱えているからです。

①少子化に伴う人口減少

②止まらない地方の過疎

③持てる者と持たざる者の格差の拡大

④約4割にも及ぶ非正規雇用

⑤人生100年を迎えるにあたり、年金の目減りと老後不安の拡大

⑥莫大な財政赤字に遮られる新たな投資(図1

   これに対し安倍政権が行っている政策は、「今さえ良ければいい」というものです。経済成長を金融政策に頼りすぎており、その副作用が著しく拡大しています。金利を下げ続け、加えて日本銀行が毎年6兆円も株(ETF・投資信託)を買い続けることにより、円安と株高に誘導しました。為替効果もあり、確かに企業の利益は増えましたが、物価上昇率を差し引いた実質賃金は、減り続けています(図2)。

 年金も、マクロ経済スライドが採用されて、年金は毎年1.2%程度下がり続けています。

 

現政権の経済運営によって、以下の問題が生じました。

①資産を持つ者と持たざる者の格差の拡大(資産価値は上がり、一般国民の給与と年金は目減りし続ける)

②一般国民の給与と年金の目減り、将来不安による消費の差し控えなどにより、国内総生産(GDP)の6割を占める消費が伸び悩むという消費不況をもたらした(図3

 ③低金利政策が長く続くことによる金融機関の疲弊が、与信能力の低下により地場産業、ひいては地方への悪影響をもたらす

④日本銀行が大量の国債を保有(478兆円。国債発行残高893兆円の約53.5%。数字は平成30年末)することで、財政規律のゆるみが生じている

⑤日本銀行が株を年間6兆円を購入することによって、官製相場を生み出している。また、価格が下落した時の損失は国民が被ることになる

 

■「打ち上げ花火」に終わる政策目標

 第二次安倍政権が掲げた政策目標に、「合計特殊出生率1.8」「地方創生」「名目GDP600兆円」などがあります。政策目標自体、異論はありませんが、合計特殊出生率は1.8に近づくどころか安倍政権の6年間で下がり続け、今や1.42にまで落ち込みました。「地方創生」 も看板倒れで、特に若い世代の人口流出と地方の高齢化率進行は止まることを知りません。

ちなみに今後、最も人口が減ると言われている都道府県は秋田県で、2040年には今の人口の約3分の2になり、残った人口の約3分の175歳以上で占められることになります。誰が地方の経済を支え、誰が高齢者に対する医療・介護を支えるのでしょうか。

 

 日本の構造問題を解決するためには、国家戦略に基づいた息の長い取り組みと、国民の理解を得るための丁寧な説明責任を果たさなくてはなりません。日本の宿痾(しゅくあ・長い持病)を治すためには、時には口に苦い薬も必要です。負担増など、国民にとって耳障りなことも政治家は真摯に向き合い、説明することが不可欠ですが、今の政治は「国民のご機嫌取り」で、まさにポピュリズムの極致と言える状況です。財政が破綻して国民が「こんなはずではなかった」と塗炭の苦しみを味わわないように、責任を持つことが肝要だと感じます。

 

■まずは「最低賃金の全国一律引き上げ」から始めましょう!

 少子高齢化、人口減少、格差の拡大、地方の疲弊、潜在成長力の低下、財政赤字の拡大など、日本の抱える問題は山積しており、一朝一夕で解決できるものではありません。私は「All for All」(みんながみんなのために)という考え方をまとめ、皆様にお話をしてまいりました。みんなの税でみんなを支える。世代や所得の分断を乗り越え、共に支え合う社会を作る。そのためには国民負担率の見直しも行わなければならない。この考え方に変化はありません。

 

 今年101日から消費税が8%から10%に引き上げられます。軽減税率導入は将来に禍根を残す悪しき制度であり、いずれは撤回したいと思います。この増税だけでも反対論が多い中、さらに消費税を上げる議論はなかなか難しいのではないかと思います。国民感情として難しいだけではなく、GDP6割を占める消費がさらに冷え込み、名目GDPにもマイナスに影響し、結局、税収に悪影響を及ぼすだけではなく、名目GDPが大きくならなければ財政赤字問題のコントロールがより難しくなり、財政再建にもつながりません。当面は、20%の分離課税となっている金融所得課税を総合課税とすることや、マイナンバー制度をできるだけ早く全国民に普及させ、資産把握も行い、資産を持っている高齢者に医療や介護に対して応能負担を求めるなど、格差の縮小にも資する負担の見直しを行っていく必要があります。

 

 それ以上に大切なのは、賃金の引き上げです。(図2)でお示ししているように、企業の内部留保は466兆円の規模に達しているのに賃上げに結びつかず、実質賃金は下がり続けています。

政治ができる対策は最低賃金を上げることです。日本は他国と比べても、最低賃金は低い水準にあります(図4)。

 平均賃金の約6割を目指して、現実的に、着実に上げていくことが肝要です。そのためには、急激に上げてむしろ失業や倒産が増えた韓国の例も参考にし、あらゆる角度から検証を行わなければなりません。

 

 そして、大切なことは全国一律の最低賃金にすることです。日本は今、都道府県毎で最低賃金を決めており、一番高いのは東京都の985円、一番低いのは鹿児島県の761円、加重平均は874円です。全国一律にしていないことが、東京一極集中の原因にもなっています。「同一価値労働同一賃金」を全国で採用することが、「地方創生」の原動力にもなるのです(なお、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、731日、2019年度の最低賃金の目安を全国平均で時給901円にする方針を決定しました。目安通り引き上げた場合、東京都では1,013円、鹿児島県は787円となりますが、依然、低水準で、全国一律でないという課題は残ります)。

 

 「All for All社会」実現の前提として、以下の施策に取り組むことをお約束します。

①全国一律の最低賃金の引上げ(数年で1300円に)

②金融所得の総合課税化

③マイナンバー制度の全国民の普及と資産把握を行い、医療と介護の応能負担を広げる

④消費税の子供子育てと社会保障への全額目的税化と軽減税率の廃止

⑤二重行政の見直しや公の仕事で民間に任せられることは民間委託をさらに進めることなど、徹底した歳出の見直しを不断に行う(日本における公設民営化(コンセッション方式)は、私が国土交通大臣の時に関西空港と伊丹空港の共同運用化と仙台空港において初めて導入しました)。

⑥二世帯に一世帯が相対的貧困に陥っている一人親家庭への対策(養育費への国の関与)

⑦再生可能エネルギー普及による脱原発の推進

⑧安全保障の自立化の促進(日本独自の測位衛星である準天頂衛星7機体制確立と防衛装備の共同開発・生産を可能にする武器輸出三原則の見直しは私が主導しました)

 

 今後とも変わらぬご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します。

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