前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第204回国会 衆議院本会議2021/02/10

○議長(大島理森君) 前原誠司君。
〔前原誠司君登壇〕


○前原誠司君 国民民主党の前原誠司です。私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、賃上げ及び投資の促進に係る税制、及び中小企業における所得拡大促進税制の見直しに絞って、菅総理に質問いたします。
(拍手)

日本の宿痾の一つが、上がらない賃金です。直近では日本の平均名目所得が最も高かったのは一九九七年ですが、この年の時間当たりの賃金を各国とも一〇〇とした場合、コロナ前の二〇一八年の日本の名目賃金は先進国で唯一下落し、八・二%減の九一・八となります。これに対し、イギリスは九二%、アメリカは八一%も上昇しています。
物価上昇率を割り引いた実質賃金で見ても、日本は一〇%のマイナス。イギリスは四一%、アメリカは二五%の増加となります。
第二次安倍政権誕生後、日本銀行が異次元の金融緩和と称する大規模な国債の引受けを行い、株価や債券価格は大幅に上昇しました。コロナ禍に見舞われる前の七年間で、企業の経常利益は六四%、内部留保は七三%上昇しましたが、名目賃金は五%しか伸びず、実質賃金は四%、むしろ下がっています。
政府が何もしてこなかったと言うつもりはありません。金融緩和や財政出動に加え、春闘では政府自ら官製の賃上げ交渉を行う。最低賃金も二〇一六年から四年連続の三%引上げ。同一労働同一賃金も制度化されました。そして、賃上げを行った企業への税制優遇措置、これも二〇一三年から行われています。
にもかかわらず、賃金はなかなか上がりません。
もちろん、日本のみならず、世界中が今はコロナ禍。需要が蒸発し、賃上げどころではない企業や個人経営者が多数存在しています。とにかく必要な財政出動を行い、生き残るべき企業を守り、雇用を守り、国民の生活と健康を守ることに専念すべきであることは論をまちません。その上で、菅総理に伺います。
世界の中で日本だけ賃金が上がらない主な原因は何だと考えておられるのか。その原因を列挙し、ポストコロナにおいて、それらを克服するための具体的対応策をそれぞれ示し、政府として、年度を区切って賃上げの目標を名目、実質共に明確に示すべきだと考えますが、答弁を求めます。
加えて、中小零細企業の再編によって生産性を上げることが日本の成長につながると主張されているデービッド・アトキンソン氏を総理は政府の成長戦略会議のメンバーに選ばれていますが、アトキンソン氏のこの持論に賛同されているのかもお答えください。
また、ポストコロナ時代には、世界の先進国と比べてもいまだ低い最低賃金を、現実的に、しかし着実に上げていくべきだと私は考えます。中小零細企業を経営される方々にとって、最低賃金の引上げは、非常に抵抗感の強いテーマであることはよく認識をしています。しかし、日本のGDPにおいて消費の占める割合は約五五%。賃金が低ければ購買力が上がらず、経済成長は見込めません。それによって苦しい経営状況が続くのです。負の連鎖を断ち切らなければなりません。コロナが収まれば、最低賃金の引上げを継続的に行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。


さて、賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直しですが、現行制度と異なるのが、継続雇用者給与等支給額、対前年度同月比三%以上という要件がなくなり、新規雇用者給与等支給額、対前年度増加率二%以上という新たな要件に変わったことです。国内設備投資額、当期の減価償却費の総額九五%以上もなくなりました。他方、雇用者給与等支給額、対前年度を上回ることという要件が残っていることから推察すると、コロナ禍において賃金よりも雇用を優先した、そして、国内設備投資要件は企業にとっては厳し過ぎるために削除したという理解でよいのか、お答えください。


時限措置は二年ですが、コロナが落ち着いた後は、従来の、賃金も設備投資もという組合せに戻すべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、中小企業における所得拡大促進税制の見直しについても、コロナ対応で継続雇用の要件を外していると考えてよいのか。さらに、適用期限を二年延長するとしていますが、これも、ポストコロナでは継続雇用要件を復活させるべきだと考えますが、答弁を求めます。


菅総理は、イノベーションの中核に、デジタル化、グリーン化を置いておられます。大賛成です。ただ、デジタル化、テクノロジーの発展に伴う寡占化の進展は、労働分配率の低下、つまり、賃金の低下を更にもたらす可能性があります。しかし、労働分配率の低下は、イノベーションによる宿命ではなく、例えばスウェーデンのように、持続的な賃上げ、円滑な労働移動、政府による能力開発の支援を行えば、デジタル化の進展は、むしろ賃上げの大きな武器になり得ます。労働流動性を高める必要性、そして、その前提として、政府による能力開発、再教育支援が不可欠だと考えますが、総理の答弁を求め、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)


〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕
○内閣総理大臣(菅義偉君) 前原誠司議員にお答えをいたします。
賃金の引上げについてお尋ねがありました。諸外国との比較は、労働者の年齢構成や雇用環境等の前提条件が異なることから、一概にこれを行うことは困難ですけれども、我が国の賃金の引上げは、新型コロナ感染症流行前においては、連合の調査によれば、六年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現しました。昨年末には、私から賃上げの流れを継続するよう要請をし、先般、経団連から、賃金引上げのモメンタム維持が望まれるとの報告が出されたところであります。
今後も、成長分野への民間投資を大胆に呼び込みながら、企業の生産性を高め、これまでの賃上げの流れを継続してまいります。
なお、賃上げの目標を示すべきとのお尋ねについては、感染症により雇用、経済の状況が厳しい現状を踏まえ、今は官民を挙げて雇用を守ることを最優先課題として取り組んでまいります。
成長戦略会議のメンバーについてお尋ねがありました。
まず、メンバーの中の特定の方の御意見に限らず、様々な方から話を伺い、政策の参考にしているところであります。


中小企業については、経営資源の集約化による事業の再構築やデジタル化など、生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを構築し、創意工夫する企業を応援してまいります。最低賃金の引上げについてお尋ねがありました。
日本経済全体の生産性の底上げや取引関係の適正化など、賃上げしやすい環境整備に不断に取り組みます。


私の内閣では、最低賃金については、より早期に全国加重平均千円になることを目指すとの方針を堅持しつつ、地方の所得を増やし、消費を活性化するため、雇用にも配慮しながら継続的な引上げを図り、経済の好循環につなげてまいります。


賃上げ及び投資促進税制についてお尋ねがありました。
新型コロナの中では、まずは雇用を守ることが政治の責務であると考えています。今回、賃上げ及び投資の促進税制については、新規の雇用に取り組む企業を後押しする仕組みへと見直すことにいたしました。
今後の本税制の在り方については、今回の見直しの効果などを踏まえて検討してまいります。
中小企業の所得拡大促進税制についてお尋ねがありました。中小企業についても、雇用を増加させる企業を下支えするために、雇用者全体の給与の増加を要件としています。今後の本税制の在り方については、今回の見直しの効果などを踏まえ、検討してまいります。


労働者の能力開発支援等についてお尋ねがありました。デジタル化の進展等により、求められるスキルが変化している中で、技術革新と産業界のニーズに合った能力開発を推進していくことが重要であると考えます。


政府においては、大学等による学び直しへの支援、IT、データを中心とした教育訓練への支援、人材育成を実践する企業への助成などを通じ、求められるスキルを身につけ、成長分野への労働移動と賃金の引上げが実現するよう支援してまいります。(拍手)


○議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

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