前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第201回国会 衆議院予算委員会2020/01/28

○棚橋委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

 

○前原委員 会派を代表して質問させていただきたいと思います。まず、安倍総理、先ほど我が党の大西健介議員の質問のときにビザの緩和の話がございましたけれども、事実関係だけちょっと申し上げておきます。

我々が政権に着いたときに、私は国土交通大臣でありましたのでよく覚えておりますけれども、インバウンドの数は六百万人台でした。中国のお客さんが特に少なかったんですね。十三億人以上いるのに、日本に来ていたのは百万人いなかったんです。何でだろうということを調べて、そうしたら、いわゆる団体旅行しか来られない、個人旅行はだめだということと、所得制限がかかっている、そしてまた同時に、ビザを発行できる地域は三カ所、北京、上海、広州、これしかない。

こういうことの中で、団体旅行だけではなくて個人旅行も行えるようにビザを緩和し、そして所得制限も緩和し、ビザを発行できる箇所は三カ所から四カ所ふやして七カ所にしたということを行ったということは、さっき頭を振られていましたけれども、やったということは申し上げておきたいと思います。

その上で、中国の話をしましたので、本日午前中に閣議で、感染拡大が続く新型コロナウイルス、これにつきまして指定感染症に政令で定めるということを閣議決定された。このことによりまして、患者の強制入院、就業制限などができるようになるということでありまして、この指定については私は肯定的に受けとめたいというふうに思っております。

他方で、潜伏期間が最長で十四日間もある、こういうことでございまして、春節でたくさんの方が来られています。団体旅行は中止になったということでありますが、個人の方、あるいは今までもたくさんの方が来られている。これでいわゆる万全の対策ということになるのか、そしてパンデミックを防ぐことができるのか、これについて御答弁をいただきたいと思います。

 

○加藤国務大臣 今、私どもとして、新型コロナウイルスの発生状況、きのうの十二時現在ですけれども、中国で二千七百、全体でも三千近い感染者数が出ている、引き続き拡大傾向が続いている、そうしたことを踏まえながら、総理から指示もいただき、水際においてまずチェックをするということで、入国する人に対して、機内、あるいは、健康カードを配ることによって、例えば発症した場合の対応等を呼びかける、そして、医療機関を必ず受診してほしいということ、それからもう一つは、発症の疑いがある場合に、サーベイランスをして、医師から検疫の機関、感染研究所等に報告をしていただいてチェックをしていく、こうした仕組みを逐次強化をしております。今委員御指摘のように、これは感染の期間が、発症するまでの期間が長いということで、これまで国内での陽性事例を見ても、入国時点においては熱が出ていない、まさに発症していない、入国後発症しているということですから、水際における防止の限界ということもこれあり、したがって、入国をしたとき、入国後発症した人を確実にチェックをして病院でしっかり診てもらう、そういった意味で、今回、感染症の指定をさせていただきました。

更に加えて、指定をした以上、それぞれのチェックポイントですぐに感染のチェックができるような、こういった体制の強化もすることによって、水際それから国内での医療機関等々、幾重のステップを置いて感染防止をしていくということで、これに全力を尽くしていきたいというふうに思っています。

 

○前原委員 国民の皆様方も、戦々恐々とされている方々が多いと思います。危機管理は政府の極めて大切な仕事でございますので、感染防止、また、更に広がらないように御尽力をいただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。

ここから先は、基本的に総理にお答えをいただきたいと思います。総理との議論をさせていただきたいということであります。委員長もよろしくお願いいたします。

さて、施政方針演説の中身について少しお話を伺いたいと思いますが、施政方針演説で、総理大臣、以下のように述べられております。

日本経済は、この七年間で一三%成長し、来年度予算の税収は過去最高となりました。公債発行は八年連続の減額であります。経済再生なくして財政健全化なし。ということであります。

まず、お伺いします。公債発行は八年連続の減額ということですが、令和二年度は昨年度と比べて幾ら減額になりますか。

 

○安倍内閣総理大臣 済みません、比較で、幾ら減額になったかという質問通告を受けておりませんので、その数字は用意しておりません。

 

○前原委員 いや、総理が施政方針演説で八年連続減額となったということをおっしゃっていますから、幾ら減額になったかということを伺った。

私が答えましょう。千四十三億円ですね。千四十三億円でございますね。これは、当初ですか、何予算ですか。答えてください。

 

○安倍内閣総理大臣 当初予算であります。

 

○前原委員 補正を含めた決算ベースでは、八年連続の減額になりますか。

 

○安倍内閣総理大臣 決算ベースでは、そうはなっておりません。

 

○前原委員  料の六枚目をごらんいただきたいわけですが、確かに、これは当初ベースでは八年連続減額なんですが、総理、財政赤字ってカウントされるのは当初予算だけですか。補正予算を出すことによって、どんどんどんどん財政規律が崩れていっているんじゃないですか。つまりは、この施政方針演説はうそじゃないですか。つまりは、決算ベースで本当にしっかりと公債発行を減額できるんだったら胸を張るべきですよ。

だけれども、当初ベースで言って、そして、毎年毎年補正をやり、財政規律をゆがめ、崩し、そして、今総理がおっしゃったように、決算ベースでは、これは八年連続じゃないですよね。何でこんな施政方針演説、うその施政方針演説を言うんですか。

 

○安倍内閣総理大臣 いや、前原委員、うそというのは言い過ぎだと思いますが、いわば当初予算において、各年度の財政運営の基本をなす当初予算において公債発行額を抑制していくことは、まさに財政健全化を進めていく上で極めて重要であり、これは政権の姿勢でもあるわけであります。

他方、決算ベースで見た場合、当初予算を上回る公債発行を行った年度が数回はありますが、これは、その時々の国内外の経済情勢や近年激甚化している災害への対応等、国民の生命財産、安全な暮らしや我が国経済を守るために必要不可欠な対応を機動的に行った結果であります。

では、公債発行額は、一体、政権交代後どうだったかということでいえば、決算ベースでも約十三兆円減少しているわけでありまして、着実に財政健全化を進めてきたということは重ねて申し上げたい、このように思います。

 

○前原委員 十三兆円上がった中の九兆円強は消費税ですから、消費税を上げたことによっていわばその分税収がふえたということは申し上げておきたいと思います。

私がこの点にこだわるのは何かというと、安倍総理の七年間のロジックというのは、経済が成長する、経済が成長すると税収がふえる、税収がふえるといわゆる財政も健全化するというロジックなんですよ。それで八年連続の減額でありますということですね。そして、経済再生なくして財政健全化なし。

しかしながら、先ほど申し上げたように、この公債発行八年連続減額であるということは、決算ベースでいうと、こういうことは言うべきじゃないんですよ。

もう一つのまやかしを申し上げましょう、これについて。今回、この補正予算の議論の中で、補正予算のいわゆる財源として剰余金を使いますよね、剰余金を使う。この剰余金というのは、二兆三千百五十億円の減収であって、前年度剰余金、これを使うんですね、一兆三千二百八十三億円。質問通告していますよ。つまり、今回、今、補正の議論ですよね、二兆三千百五十億円減収になっているんです。つまりは、予想されていた税収よりも落ちるということになっているわけですね。それだけ経済が落ち込んだということです。そして、前年度の剰余金を使うわけですよ、一兆三千二百八十三億円。

普通、剰余金というのはルールがありますよね。総理、イロハのイ、基本中の基本ですけれども、剰余金はどういうふうに使うか、そのルールを教えてください。

 

○安倍内閣総理大臣  答えする前に、先ほど私がうその答弁をしたと言ったんですが、施政方針演説では当初予算の話をするわけでありますから、来年度の予算については当初予算しかないわけでありますから、決算で比べようがない中においては、当然、当初予算としてどういう姿勢を示しているかということでお話をしたわけでありますし、そして、成果として十三兆円減額しているのも事実であります。ルールとして、二分の一は国債の償還に充てるということだと思います。

 

○前原委員 財政法第六条、二分の一以上は、いわゆる国債整理基金、借金の返済、国債の償還に充てるために使うということですね。

今回、特例法を使うということは、要は、半分以上は納められませんということなんですよ。だから特例法をつくっているわけですね。

そして、この一兆三千二百八十三億円から補正予算に充てる財源というのは八千十六億円、その差額五千二百六十七億円は何に使うんですか。

 

○安倍内閣総理大臣 経済対策に必要な財源として使うということになっております。

 

○前原委員 いつの予算ですか。

 

○安倍内閣総理大臣 済みません、個々について、一つ一つ通告をいただいておりませんので、一応確かめてから……(発言する者あり)いやいや、一つ一つの御質問については通告はいただいておりません。予算全般ということでございますから、そうした個々については直ちにお答えできないのでございまして、改めて確認をさせていただいたところでございますが、平成二年度の当初予算……(前原委員「令和ね」と呼ぶ)済みません、令和二年度の当初予算ということでございます。

 

○前原委員 いや、簡単な話なんですよ、令和二年度に入れるんですよ。つまりは、本来であれば、剰余金というのは、半分以上は借金の返済のため、つまり財政健全化に使わなきゃいけない。だけれども、それを財政健全化に使わないように、特例で今回は法律を通してくださいねというのがこの補正予算の議論になっているわけです。そして、その使う予算というのは、補正に使うのが八千億円余りで、その残りは、借金の返済の国債整理基金に入れるのではなくて、今おっしゃったように、令和二年度の予算に入れるんですよ。つまりは、五千二百六十七億円分の新たな、本来借金に返すべきお金が、令和二年度の財源になっているわけですよ。

それで、先ほど申し上げたように、八年連続の当初予算、じゃ、安倍総理がおっしゃるように、当初だけにしましょうか、当初だけで千四十三億円、結果的に減らすことができた。

しかし、本来であれば、この五千二百六十七億円、あるいは一兆三千二百八十三億円の半分以上は借金の返済に回さなきゃいけないのに、財政健全化をおくらせて、そして令和二年度にそれを繰り入れて、そして結果的に公債発行を減らすことができましたというのは矛盾じゃないですか。これはうそをついていることになるのではないですか。粉飾ですよ、これは。いやいや、違う違う。総理にお答えくださいということを申し上げたでしょう。

 

○麻生国務大臣 おっしゃることはもっともですよ。(前原委員「もっともでしょう」と呼ぶ)はい。もっともですから。考え方が問題ですよ、これは。

だから、一千億円というものを、少なくとも当初予算では赤字発行額を一千億減らさせていただくということによって、八年連続減らすという姿勢をきちんと我々は示しておるということになります。事実なんです。

これはマーケットに与える影響は極めて大きいので、我々はマーケットと仕事をしていますので、野党と仕事をしているんじゃない、マーケットとやらなきゃいかぬと思うので。はっきりしていますから。

したがって、このマーケットが、これによって、財政再生、全然やっていないじゃないかという方向になったときの影響は物すごく大きいですから、そちらの方を優先させていただいたと御理解いただければ幸いです。

 

○前原委員 すごい答弁ですよ。つまりは、本来であれば財政健全化に回さなきゃいけないという財政法第六条のルールがあるのに、それを、言ってみれば特例で、しませんと。そして、補正予算に使った分の残りは、本来であれば借金の返済国債整理基金に入れないけれども、令和二年度の予算に使わせてもらいました、五千億円余り。そのことによって、体裁は八年連続国債発行、公債発行は減額できました、これはマーケットのためですと。全部手のうちを示しているんじゃないですか、これ。

これは、マーケットの方々、こんな国、つまりは粉飾決算している国、この国債、信用されますか。堂々と財務大臣が、そのことを、野党のためにやっているんじゃないです、マーケットですと言って、手のうちを示しているんじゃないですか。

 

○安倍内閣総理大臣 総理大臣として答弁いたしますが、御指摘の決算剰余金については、国債の発行を抑制するという観点から、今般の経済対策の実行に必要となった歳出追加に活用することとしたものであります。

 

○前原委員 何の答弁をしているのか、さっぱりわからなかったですね。つまりは、総理、読むところを間違えない方がいいですよ。質問しているところと全くずれた答弁をされるぐらいだったら、時間の無駄ですからされないでください。

先ほど麻生財務大臣が、そのとおりですよとおっしゃった方がよっぽど素直だ。でも、その後の答弁がいただけなかった。つまり、その後の答弁は、野党のために政策をしているんじゃない、マーケットのためですよと手のうちを示しちゃだめですよ、そんなのは。つまりは、本当の意味での財政健全化をどう進めるかということなんです。

つまり、こうなんですよ。この政権は、自分たちが七年間やってきた、この七年間のストーリーを絶対崩したくない。その崩したくないストーリーというものが崩れるものがあったら、一生懸命に粉飾してでもそのストーリーに合うものをつくるんですよ。そう、今、元さんがおっしゃったように、統計もそう。全てそう。つまりは、この総理のシナリオに合わせるために全てを合わせるということをやるから、こんな、言ってみれば粉飾をやり、麻生財務大臣がマーケット対策ですということをおっしゃるわけですね。

さて、総理、先ほど私が引用した施政方針演説、「日本経済は、この七年間で一三%成長し、」、つまりは成長が大事だ、成長したら税収がふえる、財政健全化もできる、こういうことですよね。七年で一三%の成長は、これは名目か実質か、そして、OECD三十六カ国の中で第何位ですか。

 

○安倍内閣総理大臣 まず、我が国経済は、七年間にわたるアベノミクスの取組によって力強い成長を続けてきたのは事実であります。

名目GDPは一三・四%、六十六兆円増加をしました。これは過去最大規模となっているというのも事実であります。また、潜在成長率、非常に重要なんですが、これも成長、改善をしてきているのも事実でございます。

一方で、二〇一三年から二〇一八年の、これは実質でございますが、実質成長率について、OECD加盟国全体の年平均は二%程度の成長であったのに対し、日本の平均成長率は一%程度とこれは低くとどまっているのも事実でございます。だからこそ、我が国において成長戦略を更に加速をさせて潜在成長率を高めていく必要がある、こう思っています。

そのために、今般、総合経済対策を組んだところでございまして、東京オリンピック・パラリンピック後も見据えて、5Gやポスト5Gといった通信のイノベーションを力強く後押しするとともに、人材への投資ということで、全ての小学生、中学生に一人一台のIT端末をそろえることなど、次代の競争力の源泉となる分野への大胆な投資を行っていく考えでございます。

 

○前原委員 時間稼ぎの答弁、私が聞いていない答弁は長々されましたけれども、私が聞いたところの話はおっしゃっていない。

つまり、実質ということをおっしゃったけれども、三十六カ国の中で第何位ですか、七年間のいわゆる成長率、何か、この施政方針演説の、七年間で一三%の経済が成長しましたということを聞いたら、ああ、伸びたんだなというふうに思われるかもしれない。しかし、OECDの中では何位かといったら、この表を見てください、一番目の表。第三十三位ですよ、名目と実質両方とも第三十三位。これが安倍政権の世界の中での今の状況ですよ。民主党政権の悪口を言い、民主党政権の比較を言い、ののしり、そして、結果的にコップの中のことだけにとらわれていて、世界を見たら取り残されている、そのとおりですよ。

では、この七年間で順位がどれだけ下がったか、わかられますか。上がったんですか、下がったんですか。では、この三十三位というのは、上がったんですか、下がったんですか、おっしゃってください。

 

○棚橋委員長 前原委員、恐縮です、通告はございましたか。はい。

 

○安倍内閣総理大臣 今、事前に質問通告を、何位下がったのかという質問はいただいておりませんので、先ほどのような、OECDと比べてどうか、全体と比べてどうかということで、平均値について、実質についてお答えをさせていただいたところでございまして、いずれにしても、実体経済で一番大切なのは雇用でありまして、これは雇用については顕著な改善が……(発言する者あり)

いや、関係なくないですよ。一番大切なのは雇用じゃないですか。雇用が改善をしているということを申し上げたい、このように思います。

 

○前原委員  は公平にやりたいと思います。雇用は改善していますよ、間違いなく雇用は改善している。失業率は下がり、有効求人倍率が上がっている。いろいろな要因がある、きょうはそれは言いません。それは私は認めます、評価します。だからこそ内閣支持率も高いし、いろいろな評価もあるんだと思いますよ。

ただ、私が今から申し上げるのは、世界の中で安倍政権がどういうことなのか、どういう状況になっているのかということです。

今は、OECDの中で、名目も実質も成長率は、この七年間、安倍政権の七年間で三十三位なんです。では、民主党政権が終わったとき、第二次安倍政権ができるときはどうだったかというと、実質の成長率は二十位だったんですよ。二十位から三十三位に落ちていったんですよ。(発言する者あり)そして、名目については三十二位から三十三位に落ちている。

山本幸三先生が、私が今から申し上げることを誘引するような発言をしてくださったので。デフレはいいのかって、デフレはだめですよ。我々の政権の中でも、いつもそのデフレのことをおっしゃいますけれども、GDPギャップというのはかなり圧縮したんです。

隣に麻生財務大臣おられますけれども、別に麻生さんを責めるわけじゃない。あのときは百年に一度というリーマン・ショックが起きた。世界全体で経済が落ち込んで、そして深刻な状況になった、日本も。その中で、我々もこのデフレ脱却のために手をこまねいていたわけではない。

現実に、民主党政権のときの実質GDP成長率は一・六%、安倍政権になってからの実質成長率は一・二%ですよ。そして、OECD平均と比べると低い状況の中で、どんどんどんどんと地盤沈下が続いていて、成長率が下がって、実質だと二十位から三十三位まで下がっているじゃないですか。

世界の中で日本はどうなのかということを、しっかりとやはり、総理、その中で仕事をしてくださいよ、前の政権と比較をするだけじゃなくて。

さて、その中で幾つかのことをお話をしたいと思います。私、この平成の三十年というものについて、安倍政権の七年間だけじゃありません、この三十年という平成の時代において、日本というのはかなり厳しい状況になってきた、もっと言えば、衰退の三十年間をたどってきたのではないか、そういう私は非常に危機感を持っているんです。

例えば、企業の時価総額ランキング。平成が始まったときには、トップテン、七社、日本の企業でした。上位五十社の中では三十二社が日本の企業でした。今、トップテン、ゼロですよね。上位五十社、ようやく、トヨタ自動車の四十二位、一社入っているだけ。三十年前はトップテンに七社入り、トップ五十に三十二社入っていたのが、今や四十二位のトヨタ自動車だけ。これが現実ですよね。

そして、今後のことを考えた場合、これは一生懸命に前の世耕大臣が取り組まれているということもわかっています。わかっていますけれども、今の世界のユニコーン企業数、ユニコーン企業数というのは何かというと、十年たっていない、そして非上場で、評価総額が十億ドルを超える、こういった企業は、今直近で、世界で四百四十二社、日本はたった三社、アメリカは半分、中国はその半分。そして、見てください、お隣の韓国十、ドイツ十二、インド十九、イギリス二十四。

こういった状況の中で、言ってみれば、どんどんどんどん、日本のプレゼンス、競争力が下がっているんじゃないかというのが、私の今の大きな問題意識です。

さて、その中で、総理、お伺いしますけれども、施政方針演説の中で、「我が国は、もはや、かつての日本ではありません。諦めの壁は、完全に打ち破ることができた。」こうおっしゃっていますね。「諦めの壁は、完全に打ち破ることができた。」これはどういう意味ですか。

 

○安倍内閣総理大臣 まず一つは、先ほど、実質GDPについて民主党政権との比較をされたわけでありますが、その段階では名目と実質が逆転しているわけでありますが、その大きさは、デフレが大きければより大きくなるということになるわけでございますので、我々、この七年間では、デフレではないという状況をつくり出すことはできた、こういうことでございます。

それと、ユニコーンについて、まず御指摘なんですが……(前原委員「違う違う違う、答弁だけしてください、私が聞いたことに」と呼ぶ)まあ、それはいいんです。ただ……(前原委員「いいことないよ、質問だけ答えてください」と呼ぶ)ええ、済みません。(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。(前原委員「諦めの壁というのは何かと聞いている」と呼ぶ)

 

○安倍内閣総理大臣 諦めの壁の前に、御指摘にちょっと違いが、事実認識として違いがございますので、御指摘をさせていただきたいと思いますが、ユニコーンについては、確かに、比べて少ないというのはそのとおりでありますが、ユニコーンについても、政権がかわった後に、国際的に考えたときに、大企業を中心に、いわゆる自前主義の発想が強いという中において、ベンチャー投資等に資金が流れにくくなった面があるというのは事実であります。さまざまなベンチャー支援に取り組む中、我が国のベンチャー投資は、二〇一八年には三倍以上の四千五百億円まで増加をしておりまして、この流れに更に弾みをつけていきたい、こう思っております。

そこで、申し上げますと、我が国は、バブル崩壊後、大変低い成長率と長引くデフレによって、停滞の二十年を経験をしてきたわけであります。

企業は賃金を抑制し、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷をし、デフレを加速するという悪循環から抜け出せずにいたのは事実であります。

さらに、少子高齢化が進む中において、人口が減少する。当時は、確かに、人口が減少すれば成長できないという議論があったのは事実でありますし、また、成長しなくてもいいではないかという議論も結構これはあったのは事実でございます。

それがまさに、これは諦めの壁だということであります。人口減少、人口が減少すれば経済は成長できないという諦めの壁があったのは事実でございまして、その壁に私たちは三本の矢で挑んだのでありまして、人口が減少する中において経済を成長させることができた。

あるいはまた、例えば……(前原委員「ちょっと短くしてください」と呼ぶ)済みません、短くしますが、例えば年金財政についても、昨年の……(前原委員「そんなこと聞いていないじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、これは諦めの壁の中の……(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いします。

 

○安倍内閣総理大臣 いや、これは諦めの壁の中の大切な点だと思いますよ。

つまり、生産年齢人口が減少していくから、支え手もこれは減っていく、あるいは高齢化もふえる中において、年金の所得代替率は下がっていくのではないかという、これは当然、厚生年金の加入者は減っていくという見方であったわけでありますが、この七年間で、逆に加入者は五百万人ふえて、財政検証上もこれは改善がした。つまり、人口が減少していく、あるいは生産年齢人口が減少しても経済を成長させることができたということでありまして、それは、大切な社会保障の財源を確かなものとする上においてもプラスであったということを申し上げているところでございます。

 

○前原委員 だらだらと、いつもの壊れたレコードのような答弁、むなしく、恐らくテレビを見ている方には聞こえていると思いますよ。きょう私が申し上げているのは、総理の、国内での、コップの中でのいわゆる実績を全て挙げてくださいということを申し上げているんじゃないんだ。世界の中で、競争力が低下をし、一流国だと思っていた国が二流国になり、このまま三流国になるんじゃないかという不安を感じている、その中にあって、七年間総理をやって、そして結果的に、OECDの国の中では、実質GDP成長率は二十位から三十三位と下げているじゃないですか、実際、どれだけ自身がみずからの成果を自画自賛したとしても。世界の中で、どんどんどんどんと日本のプレゼンス、競争力、これが落ちているじゃないか、その危機感を持って、それを共有してもらいたいんです。

あなたの今の自分の実績を強調するんじゃなくて、日本の中にあって、本当にこのままで大丈夫なのか、こういう意識を共有してもらって、だからこそ、それを変えるという意思を総理大臣が持たないと、この国は復活できませんよ。

日本財団で、去年、十八歳の意識調査というのをやったんです。諦めの壁は完全に打ち破られたということは、この意識調査を申し上げたら、総理は二度と使えないと思いますよ、この言葉を。

十八歳の方、九カ国でこの意識調査をしたんです。日本、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツ、この九カ国の中で千人ずつ日本財団が調査をしました。

まず、「自分で国や社会を変えられると思う」、十八歳の人に。日本は最下位です。一八・三%。

五人に一人も自分の国や社会を変えられると思っていない。ちなみに、インドは八三・四%。そして、インドネシアは六八・二%。中国は六五・六。

アメリカが六五・七。これだけの多くの子供が、十八歳の子供が、ほかの国では自分の国や社会を変えられると思っているのに、十八歳の日本の子供は変えられると思っていない。その背景にあるのは何か。

二つ目の調査。自分の国はよくなるかという調査、将来はよくなるかという調査。

日本は、またこれも最下位。九・六%ですよ。十人に一人もよくなると思っていない、この将来について。悲観をしているんですよ、若い人たちが。ちなみに、中国は、何と九六・二%の十八歳がこの国がよくなると思っている、自分の国がよくなると思っている。こういうような状況をどう判断するか。

総理、自分自身の、言ってみれば今までの、私、これをやったよ、これもやったよ、だから僕は偉いんだ、そういう話を今聞きたいんじゃないんです。将来に向けて、これだけの子供たちが将来不安を感じている中で、あなたが日本のリーダーなんだから、それをどう変えていくかという話をしたいんです。

その中で、先ほどからお話をしているように、総理も、まあ総理大臣になられたのでなかなか難しいかもしれませんが、大学に授業に行かれたり、あるいは学園祭に行かれたりされたことがあると思うんですね。

実際、総理から私、御紹介されて、ある大学で授業を半分半分持たせていただいたことがありましたよね。最近も、学園祭、また大学の授業にも行かせていただいて、驚くことがあるんですよ。若い子供たちが質問のときに何を言うか。私たちも年金もらえるでしょうかと聞くんですよ。

つまりは、人口が減って、そして長寿化が進んで若い人たちが少なくなってきていて、そして借金が多くなって、財政の自立性について、持続可能性について不安を漠然としたまま持っている、こういう人たちが非常に多いわけですね。

そして、私はぜひきょう総理に申し上げたいのは、先ほど、いろいろなことをやられているということをおっしゃいました。五枚目のパネルですけれども、これは平成の初めと今の予算。これは下は令和二年度の当初予算です。総理、いろいろなことをやられて、いろいろなことに取り組んでいるということをおっしゃいました。そうでしょう。それは、総理大臣というのはすごい風圧で、すごい重責で、一人で何でもできるスーパーマンではない。だけれども、一人しかいないんです、総理大臣というのは。そして、みずから望まれて七年やられている。

その中で、ぜひ総理、このことについて一緒に考えてもらいたいのは、三十年たって、上が平成二年度、下が令和二年度の予算なんですけれども、税収はほぼ一緒なんですね、六十兆ぐらいで。大幅にふえている予算というのは、社会保障と国債費なんですね。そして、ほかの予算というのは余りふえていないんです。公共事業も一兆ふえていない。そして、一番私が総理と認識を共有してもらいたいのがこの文教、科学技術費。いろいろやられているとおっしゃっても、約四千億しかふえていない。防衛は一兆ですね。そして、交付税交付金もほぼ変わっていない。三十年間、新たな投資が実はできていないんですね。特に、この科学技術、文科。そのことでどういう状況が生まれているかということをぜひ、まず。

三枚目の資料をごらんいただきたいと思います。先ほど総理は、5Gの話とかいろいろなこと、ユニコーンの企業のときにもおっしゃいました。何もやっていないとは申し上げない。だけれども、全て政治は結果責任です。そして、総理は七年やっておられるんだから、七年の結果責任がだんだんだんだん積み重なっていっているわけです。

これをごらんください。研究開発費、アメリカと中国がずば抜けてふえていっていますね。日本は横ばい。そして右は、ほぼ同じようなカーブになっている、これは論文数。

これを考えたときに、先ほど、三十年たって結果的に四千億円ぐらいしかふえていない、そしてアメリカや中国はどんどんどんどんこういった、言ってみれば科学技術、教育に対するお金を使っている。

さて、総理、対名目GDP比で教育に対する公的支出、OECDで日本は何位ですか。

 

○安倍内閣総理大臣 OECD内で何位かということについてあらかじめ御質問をいただいておりませんので、直ちにお答えできません。資料を調べれば出てきますが、ちょっと時間をおかりすることになる、このように思います。

先ほど、しかし、青少年の意識調査についてお話をされましたが、ほかの調査においてもこれはもう随分昔から、例えば米国と中国、自分の国に誇りを持てるかというのは非常に高い数字が出やすくて、日本の場合は非常に低い数字が出るという傾向もある、そういうことも勘案しながら見る必要があるわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても、若い皆さんに自分たちの努力によって将来が変わっていくと思っていただけるように努力をしていく必要がある。

また、危機感については共有させていただいております。そのためにこの七年間も努力をしてまいりましたが、もちろん足りない部分は多々あるということは十分に承知をしております。

済みません、こちらにあるものは国際比較についてなんですが、国民全体に占める子供の割合が異なるわけでございますので、それを勘案する必要があると考えておりますが、我が国の公的教育支出とGDPを、そのまま比較すれば比率が低いということにはなるんだろうと思いますが、子供の数の違いを反映するため在学者一人当たりの教育支出と国民一人当たりのGDPとの比較で見ればOECD平均並みとなっているもの、このように思います。それで見ると七位になっているということでございます。

 

○前原委員 先ほど、一枚目のものに入っているわけでありますが、二〇一六年、教育機関に対する公的支出の対GDP比、これはOECDで最下位のはずですよ。最下位ですよ。OECD平均は四・〇で、そして日本は二・九であります、対名目GDP比で。ですから、経済規模に比して、そして教育支出は低いと。今、総理は、一人当たりという話をされましたね。当然ながらそれも調べております。高等教育機関における学生一人当たりの公財政支出というもの、これは質問通告していませんので、何位か、大体何位ぐらいだと思われますか。質問通告していないので答えられなくていいですよ。何位ぐらいだと思いますか。

 

○安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたのは在学者一人当たりの教育支出でございまして、当然子供の数は日本は少ないですから、当然、いわば比率で見れば、高齢者が多い中において子供の数が少ないとなれば、公的支出において少ない子供の数、GDP全体で見れば少なくなるのは当然でありますが、いわば子供一人当たりにどれぐらい支出をしているかということで見れば七位であったということを申し上げているところでございまして、高等教育について御下問いただいたんですが、通告がございませんので、私から今軽々に順位をお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 

○前原委員 大体そういう答弁に今までもなるんですね。つまりは、子供が少ない、これも問題なんですよ。そして、先ほど申し上げたように、でも、三十年間、教育とか科学技術に対しての予算は変わっていないわけですね。そして、今や、対名目GDP比でいうとOECD諸国の最下位であります。

一人当たりの、高等教育機関における学生一人当たりの公財政支出、三十六カ国の中で下から数えて六番目ですよ。非常に低いわけですね。つまりは、私は全ての子供が四年制大学に行くべきなんということは思っていません。中学を出て、高校を出て、あるいは専門学校を出て、手に職をつけ、専門性を身につけて立派に世の中のために働いている方々はいっぱいおられる。そういう方々がおられないとバランスの悪い国になることは間違いありません。しかしながら、年収が四百万円以下の世帯の子供の四年制大学進学率は三一・四%。それに対して、一千万円以上の収入のある世帯の子供が四年制大学に行く比率は六二・四%。ほぼ倍なんですね。そして、四年制大学に行った子供の方が生涯年収というのは多くなる傾向にあるんです。

つまりは、親の支出によって子供の機会が失われて、格差が生じて、結果的に親の収入格差が子供の収入格差につながっている状況というのは改善されていないんです。これが日本の現状なんですね。

この現状をどう変えていくかということを考えたときに、一つは、この教育の無償化というもの、これは前回の総選挙のときに我々が、教育の無償化をすべきだ、こういう考え方を申し上げてまいりましたけれども、それを、消費税の使い道を変えるということの中で、まだ入り口だと思っていますよ、教育の無償化ということを始められた。

私、総理、七年やってこられて、そしていろいろなことをやってこられたのはわかっている。だけれども、先ほど総理もおっしゃっていただいたように、日本がこの平成三十年間で、企業の言ってみれば競争力の低下、そして、新たなユニコーン企業数も含めての言ってみれば国際的なおくれ、そして、教育に対する支出、ボリュームも一人当たりも非常に低いということを考えたときに、この教育の無償化というものをやはりしっかりと国のベースとしてやる。つまり、今入り口ですよね、まだ。教育の無償化というものをやはり国是にして、そして底上げを図るということをまさに国家百年の大計として考えるということが今総理が、私は、やられること。

先ほどのインバウンドの話じゃないけれども、対策をとってすぐに結果は出ないですよ。しかし、十年先、二十年、三十年先、あのときに教育の無償化というものを全面的にやるということを決めた内閣は安倍内閣だった、その内閣によって、どんどんどんどん競争力が低下していたけれども、人材も含めて、そして底が打って、そして日本がもう一度立ち上がれるような国になったということになるためには、ベースになるのは、教育の無償化ということをしっかりと全てにおいて、野党との争点を相対的になくすということじゃなくて、国家百年の大計として教育の無償化ということをやるんだということが私は大事だと思いますけれども、総理、いかがですか。

 

○安倍内閣総理大臣 基本的な考え方としては前原委員と同じでございます。まさに、大学を出ているかどうかで生涯年収が大きく変わるわけであります。その御家庭の方が、お父様があるいはお母様が大学を出ておられないということで経済的に不利になった子供は、大学を出られないのでまた生涯年収が低くなる、そういう中において、給付型の奨学金あるいは無利子の奨学金を拡大するということをやってきた。これは二〇一六年でありますから、その後そういう努力をしてきておりますし、この四月からは、真に支援が必要な子供たちの高等教育の無償化を行います。

将来的に更に拡大をしていくべきであろうというふうに私も考えておりますし、自民党の例えば憲法改正草案の中にも、教育を国がしっかりと責任を持って無償化の方向というか、国が責任を持つ、教育については、という原案について提議をしているというふうに考えております。

 

○前原委員 今総理がおっしゃったことで、自民党の憲法改革草案の中に教育の無償化というのが入っているということをおっしゃいましたよね。ただ、今総理が、前国会で私と憲法についてやりとりをさせていただいたときに、四つのテーマというものをおっしゃっていましたね。四つのテーマの中には教育の無償化は入っていませんね。

自民党の根本的な原案には入っているけれども、四つには入っていませんよ。教育の無償化というものを憲法改正でやられますか。憲法改正をして、憲法に教育の無償化ということを国是で書くんだということを本気でやられますか。私、それだったら、本当に、憲法改正というのは更に違う国民の見え方になると思いますよ。いかがですか。

 

○安倍内閣総理大臣 自民党がお示しをした改憲四項目の中において教育の充実が掲げられて……(前原委員「充実でしょう」と呼ぶ)充実。いわば、無償化ということではなくて充実でありますが、私自身はその方向性として、例えばドイツなんかは実際に実行しているわけでありまして、ただ、私自身がもう既に自民党から四項目の提案を出しておりまして、その中に教育の充実が入っております。

あとはしっかりと、委員も、その中で、御意見を今述べられたわけでございますので、憲法審査会等においてしっかりと御議論をいただければ、このように期待しております。

 

○前原委員 総理の政治家としての僕は意思を聞いているんです。つまり、憲法改正が大事だとおっしゃっているんでしょう。九条だけですか。九条も大切だと思いますよ、私は、議論することは。だけれども、全ての根本の問題は、まさに日本の人材育成。これは少子化にもつながるんです。なぜなら、教育の無償化をするということになれば、基本的には、それはいわゆる親の負担は減るわけですから。そういう意味では、しっかりとそういった少子化対策になる。もう一遍答えてください。憲法改正で教育の無償化ということをやるつもりはないですか。

 

○安倍内閣総理大臣 憲法改正において、いつも私は、ビデオ等で、各会合において私の考え方を伝えているわけでございますが、もちろん九条について詳しく説明をしておりますが、今申し上げましたように、ちょっと、無償化ということではなくて教育の充実でありますが、この教育の充実と九条について、あるいは緊急事態について、あるいは合区と地方自治体、地方行政についてということを、いわば合区等について、この四項目についてお話をさせていただいているわけでございますが、当然、これは自民党が既に出しておりますので、この四項目についてしっかりと御議論をいただければ、党としてはそう願っている、こういうことでございます。

 

○前原委員 これで終わりますが、とにかく、国家百年の大計に立って、七年やってこられて、何をなすべきか。私は人材だと思いますよ。教育だと思いますよ。科学技術だと思いますよ。そういったことをしっかりとやってもらいたいということを申し上げて、質問を終わります。

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