前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第190回国会 衆議院予算委員会2016/02/04

前原委員 民主党の前原でございます。
 きのうも質疑を見ていまして、きょうも質疑を見ていましたけれども、質問者がいないのに答弁をされているケースが見受けられますけれども、これは委員長、ちょっとおかしいんじゃないですか。やはりしっかりと議論ができるような形で采配をされるということが大事ですので、まずそれは申し上げておきたいと思います。
 金融政策について話をまずさせていただきたいと思いますが、黒田日銀総裁、お越しをいただいていますか。
 去年の六月十日に、衆議院の財務金融委員会で、私の質問に対して、黒田総裁はこう答弁されたんですね。「付利金利の引き下げは検討いたしておりません。」と。 その理由として、 現在、金融機関の日銀当座預金へ付利をしているわけですけれども、これは、年間約八十兆円に相当するペースでマネタリーベースが増加するような金融市場調節ということを円滑に行う、大量のマネタリーベースを円滑に供給するということに資するものであると考えておりますので、そういう意味で、当座預金への付利というのはメリットがあるというふうに思っております。逆に言いますと、付利をやめますと反対のデメリットが出てくるということかと思います。 こうおっしゃっていた。  本年に入っても、一月十八日の参議院の予算委員会でも同趣旨の答弁をされています。
 端的に聞きます。このデメリットとは何ですか。

 

黒田参考人 マイナス金利につきましては、欧州の四つの中央銀行が既に導入しておりまして、そのプラスマイナスということも相当に議論をされております。私どもの中でも、プラスマイナスについては検討をしておりました。
 今回のマイナス金利の導入に当たりまして、一番懸念されるところは、マイナス金利を導入したために、準備預金にマイナスの金利が限界的ですけれどもつきますので、金融機関の収益を過度に圧迫するのではないか、その結果、かえって金融仲介機能を損なうおそれがあるのではないかということが一番大きな懸念でございました。
 その点につきましては、御案内のように、三層構造という形で、これまで積み上げてきた準備預金については引き続き〇・一%の金利を付利する、これからふえる分についてマイナス金利を〇・一%でつけるということによって、この一番大きな懸念は相当程度回避されるというふうに思っております。

前原委員 しばらくちょっとやりとりしますので、私の質問にだけ答えてくださいね。
 六月の十日のやりとりの中でデメリットとおっしゃったのは何ですかということを聞いているわけですね。つまりは、その前段として、マネタリーベースをこれからも年間八十兆円買われるわけでしょう。それに対して、言ってみれば、付利を付しているから、金融機関は、国債を日銀に売って、そして当座預金に積んでおけば〇・一%の利ざやが稼げる。それが逆になるということの中でデメリットとおっしゃったと思うんですね。
 それで、そのデメリットについて、いろいろなお話をされましたけれども、つまりはこういうことじゃないですか。次の質問に行きますね、あわせて、今のことについて。
 一月二十九日の政策決定会合の後に、日本銀行がQアンドAを出しているんですね。「本日の決定のポイント」という紙の中でQアンドAというのを出されて、二番目にこういうことが書いてあるんですね。「長期国債の買入れが困難になることはないのか?」という想定問に対して、「マイナス金利分だけ買入れ価格が上昇することで釣り合うので、買入れは可能と考えられる。」と。
 先ほど申し上げたデメリットとあわせて、今の想定問に対して整合性があるのかどうなのか、その点、御答弁ください。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、そういった懸念がかつてあったことは事実であります。そのとおり答弁いたしました。
その後、欧州のECBは、マイナス金利を導入した後、量的緩和を導入して長期国債等を大量に購入しているわけですけれども、そのもとで何ら買い入れに対してスムーズに進まないという問題は生じておりません。
 それから、さらには、ECBは昨年の十二月にマイナス金利をもう一段下げたわけですけれども、そのもとでも特段の問題は生じていないということを分析して、確かに、〇・一%の付利というのは、包括緩和を始めて長期国債を買い入れ始めたときから適用して、それが長期国債の大量買い入れをスムーズに進める上で一定の効果があったとは思っておりますけれども、欧州の経験に鑑み、その点については十分国債市場は今後とも注視してまいりますけれども、〇・一%の限界的なマイナス金利のもとで、国債の買い入れがスムーズに進まなくなるというリスクは非常に小さいのではないかというふうに現在考えております。

前原委員 リスクは小さいのではないかということは、リスクはあるかもしれないと。欧州の例を挙げられたわけでありますけれども、欧州の例と日本の例が全く一緒にうまくいくかどうかというのは、わからないですよね。
 確かに、国債を日銀に金融機関が売るということになると、金利が下がっているということは価格が上昇していることですから、その分、よりもうかりますけれども、しかし、売った金額というものは、今度はマイナス〇・一%の金利がつくところに積まれるわけですよね。
 今までは、売ったときの利ざやは、金利が下がっていなかったので、それほどもうからなかったかもしれない。売った場合については、より金利が下がればもうかるということになりますけれども、しかし、今までは二度おいしかったわけですよ。国債を売ってもうかるということと、そして付利金利でもうかるということで、二度おいしかったのが、今回は、売ったときは利ざやは拡大をするけれども、しかし、たまったものについては、マイナス〇・一%のいわゆる付利金利で、言ってみれば目減りをしていく、こういうことですね。トータルで金融機関は考えなくてはいけないということになるわけですよね。
 それが本当にうまくいくかどうかということについては、ヨーロッパの例を出されましたけれども、それは、私は、後でお話ししますけれども、金融機関が、もう既に身構えて、いろいろな対応を打ち始めているということの中で、相当懸念があるということだけ、まず、この点は指摘をしておきたいというふうに思います。
 もう一つ聞きたいのは、今まで、この量的緩和の話を日銀総裁にしたときに、限界説については強く否定されていましたよね。まだまだ買うものはあるんだ、国債も三分の二以上あるし、買うものはほかに幾らだってあるということを豪語されていたわけでありますけれども、では、何で量的緩和の拡大ではなくて、マイナス金利のいわゆるミックスという形になったのか、明確な答弁をいただきたいと思います。

黒田参考人 量的・質的金融緩和について限界があるというふうには考えておりません。その上、昨年十二月に市場で言われておりました限界論について、それぞれについて、それが限界として働き得る可能性を除去するような補完措置を講じておりますので、量的・質的金融緩和について今の時点で限界があるとは考えておりません。
 他方で、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和というものにした理由につきましては、公表文でも示しておりますし、今後、金融政策決定会合の議事要旨等が出てきたところでより明らかになると思いますけれども、いわば金利面での緩和のオプションも加えた、量、質、金利という三次元で緩和手段が使えるということで、より金融緩和を抜本的、大胆に進められるようにしたということであります。
 経済動向等につきましても相当な議論をして、今回、マイナス金利を導入しようということになったわけでございます。

前原委員 量的緩和はまだまだできるということをおっしゃっていたわけですけれども、それぞれの金融機関は、国債を保有していて、一定程度の国債保有をしていくでしょう。例えば、ゆうちょなんというのは、融資ができないわけですから、そういう意味では、しっかりとある程度保有しておいて資産運用をしなきゃいけない、こういうことになるわけでありますね。
 今そういうことをおっしゃいましたけれども要は、市場の中には限界論というのがあって、恐らく、言われていたのは、量的緩和というものを例えば八十兆円から九十兆円に拡大したとしてもそれほどのサプライズはない。今まで二回サプライズ、今回もある意味のサプライズですから、サプライズではない、九十兆に拡大しても。
 しかし、九十兆に拡大すると、それだけ今度はリードタイムが短くなるということで、より限界論が強くなってくるという意味で、量的緩和の限界というものはないとはもちろん外では言いながらも、しっかりといわゆる金利を下げるということのオプションの中で延命措置を図ったというのが、私は本当のところではないかと思います。
 後で本音のところを少し話をしていきたいと思いますが、これからちょっとポイントを幾つか絞ってお話をしたいと思います。
 きのう、黒田総裁は講演されていますね。きさらぎ会ですか、講演をされて、読ませていただきました。
 その中では、日本銀行は、二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までマイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続します、また、今後も、経済、物価のリスク要因を点検し、物価の安定目標実現のために必要な場合には、ちゅうちょなく、量、質、マイナス金利の三つの次元で追加的な金融緩和を講じます、マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、これまでの中央銀行の歴史の中で、恐らく最も強力な枠組みですということを述べているわけですね。
 これは、今までの中央銀行というのは、日本でのことをおっしゃっているのか、世界のことをおっしゃっているのかちょっとわからなかったんですが、それはおいておいて。
 黒田総裁、物価の二%の達成目標を今まで何回先送りされたか覚えておられますか。

黒田参考人 量的・質的金融緩和を導入いたしましたのは、二〇一三年の四月であります。その際、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現するということで導入したわけであります。
 その後も、展望レポートその他で物価の見通しを常に発表いたしております。その中で、確かに、二%の物価安定目標を達成する時期についての見通しを後ずれさせたということは事実であります。(前原委員「何回」と呼ぶ)三回後ずれさせたと思います。

前原委員 私の勘定で四回ですね。
 まず、二%の目標達成時期について、一五年度にということを言っていたわけですよ。それを二〇一五年度を中心とする期間ということにずらしたんですね、これが一回。次は、一六年度前半ごろに変えたのが二回。それから、一六年度後半ごろに変えたのが三回。それで、この間の政策決定会合は一七年度前半ごろですから、四回でしょう。四回変えているんですよ。
 確かに、原油価格の問題もありますけれども、原油価格というのは、これから恐らく長期低迷しますよ。シェールオイル、あるいは、サウジとイランの確執の問題、増産体制、そして新興国経済の減速、こういうことで、かなり私は原油価格は低迷すると思いますよ。そうすると、一年たったら、下落したものというのはなしになりますよね。そうすると、物価上昇について、原油価格の下落というものが言いわけにならなくなりますね。
 そして、何よりも、きのうの講演で、最も強力な緩和手段を三次元で見出したというのであれば、二%の物価安定目標は、一七年度ときのう言ったのであれば、一七年度の前半に達成できないと、オオカミ少年というかオオカミ壮年というか、これはもう先送りできないですよ。
 これだけの追加手段を得たのであれば、総裁のおっしゃるように、私は苦肉の策だと思いますけれども、でも、総裁いわく、強力な最強な手段を得たのであれば、必ず一七年度前半に二%は達成する、そのために何でもやるということをおっしゃったらどうですか。一番初めには二年で二%やると言い切られたんでしょう。どうですか、約束されたら。

黒田参考人 石油価格の動向については、いろいろな見方があることは事実でありますが、IMFといい、各国の中央銀行といい、日本銀行の場合もそうですが、市場の先物価格の動きを見て、それを経済見通しを作成する場合の前提として使っております。
 今回の見通しは、足元の一カ月の平均が三十五ドル程度で、これが二〇一七年度の見通し期間の後半にかけて四十ドル台の後半に上昇していくだろうという見通しを使っております。そのもとで推計いたしますと、足元で、今マイナス一%ぐらい物価上昇率を引き下げておりますが、委員も御指摘されたように、その効果というのは、今の前提に立ちますと、二〇一六年度の終わりごろまでには剥落してしまうということであります。
 そうしますと、今、足元でも、生鮮食品とエネルギーを除きますとプラス一・三%くらいになっておりますので、そういう状況を前提にすれば、二〇一七年度の前半ころには二%程度の物価安定目標が達成されるという見通しであるということでございます。

前原委員 見通しを聞いているんじゃないんですよ。私は意思を聞いているんですよ。何が何でもやると言って、それでマイナス金利まで導入したんでしょう。そして、最強のツールを手に入れたとおっしゃっているんだから。そして、先ほど私が申し上げたように、また総裁もおっしゃったように、原油の問題については剥落しますよ。であれば、必ずこういうものを、だって、政策決定会合は年に五回あるんです、やったらいいじゃないですか。やって、本当に二%が実現するという、五度目の正直をやったらどうですか。ちゃんと明言したらどうですか。そうじゃないと、総裁の決意をマーケットは疑いますよ。これだけのものを手に入れたのであれば、必ず実現しますと言われたらどうですか。

黒田参考人 二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するというのは、日本銀行としての強いコミットメントであります。それに従って、必要があればちゅうちょなく量、質、金利という三次元の追加緩和手段を駆使して、目標の達成に全力を挙げるということはお誓いいたします。

前原委員 見通しをおっしゃったのから、全力を尽くす、お誓い申し上げますということで、若干前に行ったような気がしますけれども、本気で、本当に二%を達成するのであれば、あらゆる手段をやるんでしょう。それが最優先されるわけでしょう、総裁。あらゆるものを手に入れた、最強のものを手に入れたと言うんだったら、実現できなかったら、それは全くもってかけ声倒れ、まさにオオカミ壮年ということになるというふうに私は思いますよ。そして、市場の信頼を失うということになると思いますよ。
 そこで、今、一七年でとにかく二%を実現するために最大限の努力をするということをおっしゃった。では、それを前提に話を伺います。
 今、金融機関は国債などの債券を有価証券で主力の運用対象としていますので、今後さらに金利水準が低下すれば、金融機関の収益が低下しますよね。
 特に大変なのは、海外での運用についてはメガバンクほど精通していない地方銀行とか信用金庫、それから、先ほどちょっと言及しましたけれども、百五十兆円を抱えて融資業務ができない郵便貯金、しかも、四月から預け入れ限度額が一千万から一千三百万円に上がりますね。それから、もう既にインターネット支店での定期預金の募集を停止すると言っている地銀とか、あるいは、定期預金や普通預金の金利を引き下げたり、債券で運用するMMFといった投資信託の新規受け付けを停止するなどのさまざまな問題が出ていっていますよね。
 そして、先ほど、この質問をする前にちょっとチェックしたんですけれども、きょうの為替、どのぐらいか、御存じですよね。二円ぐらい円高になっていますね。円高になっているわけですね。つまりは、緩和の効果は、為替については剥落をするということでありますけれども、しかし、きのうの講演でもおっしゃっているのは、とにかくイールドカーブを下げるんだ、金利全般について下げるんだということをおっしゃっている。それが経済に好循環をもたらすんだということですから。
 端的にお答えくださいね。イールドカーブ全体は下がりました、実際問題。しかし、為替は戻っていますけれども、イールドカーブが下がったので為替の変動にはこだわらないという姿勢でよろしいんですか。

黒田参考人 ここは、FRBもECBも日銀も、主要国の中央銀行は皆同じでございますけれども、為替レートをターゲットにして金融政策を運営するということはないわけであります。あくまでも、金利を引き下げ、イールドカーブを下げて実質金利を下げる、それによって消費、投資を刺激し、経済を上向きにさせて、その中で雇用、賃金等が上がると同時に物価が上がっていくという好循環を実現していくということであります。

前原委員 為替水準にはこだわらないということをおっしゃいました。
 しかし、次の質問でいいますと、この三つ目のいわゆるマイナス金利というのは、いわゆる量的緩和ではなくて、量的緩和もイールドカーブを下げてという効果があったわけでありますが、ダイレクトに金利が下がるわけですね。そうすると、他国との金利差は広がりますね。他国との金利差が広がれば、これは通貨安政策と見られるんじゃないですか。 このマイナス金利政策というのが通貨安を誘引する政策と見られるということについては、どう思われますか。

黒田参考人 この点につきましては、先ほど申し上げたように、主要国の中央銀行は、そういったことを目的に金融政策を運営しておりません。したがいまして、そういう誤解が生じないとは思いますけれども、誤解が生じれば、それは適切に説明していくということでございます。

前原委員 建前と本音の世界だと思うんですね。後で安倍総理にお話を伺いますけれども、この政権がいわゆる好景気だと称しているものは、全て円安なんですよ。円安によってもたらされているものですから、これを演出しているのが、まさにこの量的緩和、異次元の金融緩和でありますので、為替にはこだわらないということをおっしゃったけれども、非常にこの為替の問題については、私は、本音の部分では通貨安政策というものになっている、あるいはダイレクトになるという問題で、そういう意味での問題点があるということは指摘しておきたいと思います。
黒田総裁、きのうの講演で、必要な場合、さらに金利の引き下げを行いますということですよね。そしてそれは、イールドカーブを下げて経済をよくするんだということですけれども、では、さらに引き下げる、先ほど二〇一七年度の前半については実現できるように最大限、できるだけ努力するということを、強いコミットメントをおっしゃったわけですけれども、そうであれば、さらに引き下げるということは可能性としてあるということを言われています。
そうすると、先ほど、金融機関はもう普通預金を下げたり、そして定期預金を下げたりしますし、例をおっしゃっているヨーロッパだと、お金を預けたら手数料を取られる、つまりはマイナス金利になる、そういったものも出始めています。日本でも、金融機関に一般の方々がお預けをしたものについて、みんなは金利がつくものが当たり前だと思っていますけれども、マイナス金利になってもそれは仕方がないんだ、そして、手数料を取られても、それは政策目標として、物価安定二%を実現するためには、さらに金利を引き下げることもあり得るんだということは言えますか。

黒田参考人 従来から申し上げているとおり、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和につきましても、二%の物価安定目標の実現のために、必要になれば三つの次元の緩和手段を駆使して、追加緩和等を当然検討するわけですけれども、今の時点でどのようなことを今後やるかというのは、あくまでも二%の物価安定目標に向けて、どのように経済が進んでいくかということを見てやるわけです。ですから、その可能性も当然否定はいたしません。
ただ、欧州では、欧州の中央銀行はかなりマイナス金利を大きくしているわけですね、〇・七五とか一%。その場合でも、個人向け預金はマイナス金利になっておりません。
したがいまして、現在の限界的にマイナス〇・一%をつける、これが将来引き下げられる可能性はあるとは思いますけれども、個人預金にマイナス金利がつくというようなことはないだろうと思っております。

前原委員 しかし、先ほど、二%の物価安定目標を二〇一七年度にやるために何でもやるとおっしゃったでしょう。そして、きのうの講演でも、追加利下げ、マイナス金利をさらに引き下げるということはあり得ると。
今、否定はしませんということをおっしゃいましたね、否定はしませんと。否定はしないということと、最後の答弁が食い違っているんですよ。どちらなんですか。
本当にそれは約束できるんですか。日銀総裁として、一般の金融機関の預金がマイナスになることはないということは言い切れるんですか。今の二つは矛盾した答弁をされているんですよ。どちらをとられるんですか。どっちかに絞ってください。

黒田参考人 全く矛盾していないと思っております。
 先ほど申し上げたように、欧州の中央銀行の中にはマイナス一%ぐらいの金利をつけている中央銀行もありますけれども、そこでも個人預金についてはマイナス金利になっておりません。
 我が方は、今マイナス〇・一%ということで、将来引き下げる可能性はありますけれども、今、いつ下げるとか、どのようにするということは申し上げておりません。これはあくまでも二%の物価安定目標の実現との関係で政策委員会で議論して決定すべき事項である。
 少なくとも、ヨーロッパの経験から見て、準備預金にマイナス一%の金利をつけても、個人預金についてはマイナス金利になっていないということでございます。したがいまして、我が国においても、個人預金についてマイナス金利がつくという可能性はないだろうと思っております。

前原委員 それは、可能性がないということは言えるわけですね。
 地方銀行とか信用金庫とかは、先ほど申し上げたように経営は大変ですよ、これから。それで、経営が大変になったときに、マイナス金利を、手数料をつけさせてもらわなきゃ困るということを言ったときに、日本銀行としてはバックアップできるんですか、今の答弁で。
 ヨーロッパの経験ばかりおっしゃるけれども、ヨーロッパと日本の金融形態はまた違うわけですから、その中で、マイナス金利幅が広がっていったときに、預金金利はマイナスになることはないということを言い切れますか。もう一遍答弁してください。

黒田参考人 御案内のとおり、今回の日本銀行のマイナス金利というのは三層構造になっておりまして、根っこのこれまで積み上げた準備預金については、引き続きプラス〇・一%の金利をつけます。それから、その上で、ふえていく部分についてマイナス〇・一%になるわけですけれども、そのときに、必要準備とかあるいは貸出増加基金とか、その他、今後国債買い入れが進み、マネタリーベースがどんどんふえていく、準備預金がふえていく中で、ゼロの金利の部分を拡大しますと言っていますので、マイナス金利の適用されるものはあくまでも限界的に適用して、それが金利や相場の決定に影響を与える。しかし、平均的なところが金融機関の収益に一番影響するわけですから、そこは大きな影響がないような形にしているということである。
 ただ、委員が指摘しておられるような、イールドカーブが全体が下がっていきますと、預金金利と貸出金利とか、その他の利ざやが縮小するということは起こっております。これは、実は、量的・質的金融緩和を始めた後もずっとそういうことが起こっているわけですね。その中で、もちろん、貸出金利とか何かが下がり、ポートフォリオリバランスも進むというプラスがあって、そして、実は、金融機関の収益も、利ざやは減っていますけれども収益がふえてきたんですね。
 ただ、これも、あくまでも中長期的に見て経済が立ち直り、よくなっていく中でこそ金融機関の収益というのは拡大していくわけでして、デフレが続いている中で金融機関の収益が持続的に拡大するということはないと思います。

前原委員 今、名目の金利の話をされているんですね。
 実質金利というのは、名目金利から期待インフレ率を引いたものですね。これについてはマイナスですよね。
 つまりは、実質金利はもうマイナスなんです。マイナスだということは、資産を持っている人は目減りしているんです、もう既に。そして、国のような莫大な借金があるところは、借金が目減りしているんです。つまりは、国民の資産を、この低金利政策によって国の借金の返済、軽減に結びつけているのがこの政策なんですよ。
 つまりは、名目の預金の金利はマイナスになることはないだろうということをおっしゃったけれども、実際は、もう既に実質金利はマイナスじゃないですか。そうなると、今申し上げたようなことが起きている。それは認められますか、つけかえになっている、実際問題。イエスかノーか。

黒田参考人 実質金利はマイナスになっております。
 なお、米国でも、欧州でも、マイナス金利になっております。
 これはなぜそうなっているかといいますと、あくまでも経済の実態と合わせて実質金利を下げていった場合に、景気の回復を図り中長期的に物価の安定を図るためにはこういった政策が必要だということでやっておりまして、特に日本銀行が、あるいは日本だけがマイナス金利になっているわけではございません。

前原委員 私の質問に答えていないんです。実質金利がマイナスだということは、国民の預金というものは目減りをして、ほかの国の例をおっしゃったけれども、借金のあるところについてつけかえをしているだけなんですよ。
 つまりは、この政策によって、将来は景気がよくなる、よくなるということをニンジンをぶら下げられつつ、結果的には、皆さんの預金は目減りしていって、そして国の借金というものがどんどんどんどん目減りするようなことになっているわけですよ。
この一番目のパネルをちょっとごらんください(配布資料)。  では、金利を下げるということについて、どういうことを目指したかということですね。日本銀行が国債を大量に購入するとか、マイナス金利を導入する。先ほども私が申し上げたように、金利を下げるわけですよ。そうすると、右に行きますと、銀行の貸し出しはふえるであろう、そうすると設備投資とか住宅購入がふえるということであります。
 では、皆さん方の手持ちの資料を見ていただくと、どういうことになっているかというと、まず、三番目の手持ち資料(配布資料)を見ていただくと、三年近くたっていても、法人向け貸し出しはこれぐらいしか伸びていないんですよ、六・七%。ブタ積みがこれだけ、五倍ぐらいになっていることを考えると、全然伸びていない。
 それから、四ページをごらんください(配布資料)。
 内部留保は、一二七、つまりは二七%ふえているんですね。設備投資は、三年近くたってようやく一二%ですよ。
 つまりは、こういうようにずっと今まで異次元の金融緩和をしてきた。金利を下げる、そして国民の預金が実質的に目減りをするということを強いてきて、そして、景気がよくなるから、好循環が生まれるからと言いながら、それが実際問題出てきていないんですよ。
 五番目をごらんください(配布資料)。住宅着工の件数。
 では、住宅購入がふえたか。ふえていないですよ。ふえていない。
 では、下の方に行きましょう(配布資料)。
 金利が下がると、日米金利差が拡大して円安、株高。これがまさに、アベノミクスに国民がだまされているわけですよ。円安になり、八十円から百二十円になって、それは為替効果、調べによりますと、一五パーから三〇パー、これはどういうふうなモデルによるかによりますけれども、つまりは、利益のそのぐらいは為替効果なんですよ。為替が低くなることによって利益がもうかる。そうすると、株が買われる。そうすると、個人の、株を持っている人たちは、言ってみれば資産がふえる。そうすると、所得税はふえますよね。企業の利益もふえる。法人税がふえますよね。
 これは、安倍さんが言っている上ぶれじゃないんですよ、底上げじゃないんですよ。上げ底なんです。
 つまりは、金利を下げて、株価を上げて、そうすると、株を持っている人たちのいわゆる資産のキャピタルゲインはふえる。そして、法人の利益がふえるから、本当に好循環になって税収がふえているわけじゃないんですよ。まさに上げ底なんですよ。底上げじゃないですよ、上げ底。
 つまり、こういうことを考えると、今の金利を下げていくということをやめれば、この上げ底の税収というものはどんどんどんどんまた落ちていくわけですよ。逆回転になるわけです。だから追加緩和されたんでしょう。
 総理、いつも底上げとおっしゃっているけれども、上げ底だと認められませんか。つまりは、これは、金利を下げて無理やり株価を上げて、そして所得税、法人税が上がっていることによって、これがアベノミクスの成果だ、安倍政権の成果だというふうなことを言っていますけれども、実際問題はまさに一本目の矢に頼っている。上げ底じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 我々は、三年前に政権を奪還した際、デフレから脱却をして力強く経済を成長させる、そこで三本の矢の政策を進めたところでございます。
 ただいま前原議員と黒田総裁の議論を聞いておりまして、実質金利の話、これは非常に重要な議論だと思います。
 まさに、実質金利が上がっていくことによって、現金を持っていればこれは一番いい、現金を持っていればその価値が上がっていく。これが続いていくことがまさにデフレでありまして、デフレ状況から脱出していくためには、まさに、借金をしても、投資をして利益を生まなければ経済が回っていかない。これが健全な経済であるということは前原委員もずっと主張していることでありますから、正しくこの方向に行くためにまさに黒田総 裁もあらゆる手段をとっているという中において、マイナス金利ということを実行されたわけでございます。
 そこで、いわばそれによって、実質金利が下がっていくということをもってこれが悪いということではなくて、むしろ我々は、こびりついたデフレマインドを払拭するために、しかし、それはそう簡単なことではなくて、これはまだ道半ばだということでございます。

前原委員 我々の政権でも、デフレを脱却しようということで、ただ、二%の物価目標は置いていなかったんですよ。一%以下のプラスの領域ということで、こんな異次元の、まさにやり過ぎの金融緩和はやっていなかったわけです。
 最後に、民主党政権の三年三カ月を、よく安倍総理は、安倍政権とこう違う、民主党政権はひどかった、こういう話をされますけれども、その前の三年間を少し調べました(配布資料)。
 前の三年間、もっとひどいですよ。民主党政権だと五・七%、三年三カ月で伸びている。安倍さんの一期目、福田さん、麻生さんはここにおられますけれども、四・二%下がっているんです、実は。
 時間がないので申し上げますけれども、我々のときも、リーマン・ショックの後を引きずっていた、千年に一度の震災があった。そして、ちなみに、安倍政権と福田政権の和で言うと、では、麻生さんのは外しましょう、百年に一度のリーマン・ショック。二つで言うと、年〇・六%しか実質成長率は伸びていないんですよ。つまりは、第一次安倍政権でも福田政権でもそうではないんですよ。だからどうのこうのということじゃないんですけれども。
 私が一番言いたいのは、この安倍政権の、二年九カ月しか統計は出ていませんけれども、二・四%しか実質が伸びていない。先ほどの、デフレマインドで追加緩和、追加緩和ということでカンフル剤を打ち続けて、いつかはよくなるだろう、いつかはよくなるだろうということを言われていますけれども、本当になるかどうかわからない。そして、それがひいては財政破綻にもつながるかもしれない。こういう危険を持ってやっている政策で、国民はいつまでもだまされてはいけない。
 この道しかないんじゃなくて、この道は危ないんだということをもう一度申し上げて、質問を終わりたいと思います。

(議事速記録より)
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