前原誠司(衆議院議員)

日々是好日

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毎日新聞・政治プレミア・前原誠司の直球曲球③「みんなが負担、支えあう~オール・フォー・オールとは」2018/08/31

毎日新聞「政治プレミア・前原誠司の直球曲球」(2018820日)より

「みんなが負担、支え合う~オール・フォー・オールとは」

■社会の分断をなくす

 オール・フォー・オール(All for All)とは、一言でいえば、みんながみんなを支え合う社会のことだ。

 国民の不安を解消するための政策であると同時に、一人では乗り越えられない課題、例えば結婚したいのにできない、子どもが欲しいけれど持てない、老後の不安などを、みんなで乗り越えられるようにする。

 そして、社会の分断をなくす政策でもある。

 まずは、若い人と高齢者の世代間の分断をなくす。たとえば、年金などで高齢者だけに手厚くする施策をとれば、若い世代は不満に思う。逆に、若い人だけが受けられる住宅手当だけを実施すれば、高齢者は不満に思う。

 もう一つは、所得間の分断をなくす。いわゆる持てる者と持たざる者の分断をなくしていく。中流意識が強い日本では、批判のまなざしは生活弱者である生活保護の受給者に向かう。生活保護の不正受給はあるが、一方で、生活保護がもらえる所得水準にもかかわらず生活保護を申請していない層が8割を超えている。つまり、批判を恐れてやせ我慢をしている。こういう状況を放置したまま貧困対策をすると、中間層は自分たちの負担で、自分たち以外に対して貧困対策が実施されていると考え、感情的なものも含めて反発が出てしまう。

 だから再分配政策を作る時に、一部の世代、階層に手厚くするのではなく、すべての世代、階層にいきわたることを前提とした政策パッケージを作らなければならない。

■全員で負担し、全員で受益

 ただし、財源が必要になる。

 財源を考える際に、今までは、私自身もそうだったが、とにかくムダを削って財源を出すと言ってきた。削ることが改革だと思ってきた。

 もちろん、ムダを削ることは大切だ。しかし、そうした発想になると、科学技術、人材育成など戦略的分野への投資ができなくなる。そうなると成長につながらず、負の連鎖に入ってしまう。

 国民の生活が崩壊しかかっているなかでは、発想を転換して、国民負担率(国民所得に対する国民全体の租税負担と社会保障負担の合計額)を思い切って見直す。

 どれだけ所得が低くても負担はしてもらう。みんなが負担する。その代わり、再分配を手厚くして、全員が受益者になる。

■負担だけでは納得されない

 税と社会保障の一体改革を進めた野田内閣で私は政調会長だった。野田佳彦前首相と「社会モデルとしては反省すべき点があった」という話をしたことがある。

 消費税率を2段階で5%引き上げるとしたが、そのうち機能強化、すなわち国民に還元されるのは1%分で、残りは財政再建に使われる。しかも最初の5%から8%への引き上げの際にはほとんど還元がなく、国民は増税分が自分たちのために使われたという実感を持てなかった。

 5%引き上げるならば、感覚的に半分ぐらいは国民に還元しなければ、理解は得られない。

■増税しても見返りがあれば理解される

 そのうえで、消費税率を引き上げる、国民負担率を引き上げることが、最終的には負担減になるという理解をしてもらわなければならない。

 税率は上がっても、その分行政サービスで返ってくるならば納得できる。たとえば教育無償化が実現すれば、子どもの教育費は負担減になる。

 国民負担率が高いことで知られる北欧諸国では、痛税感は必ずしも高くない。それは税負担の重さに見合う行政サービスがあるからだ。

■財政再建だけでは成り立たない

 こうした仕組みを国民に理解してもらうためには、具体的で魅力的な政策パッケージを国民に見せる責任がある。

 たとえば、保険の範囲のなかで医療や介護を受けるが、上限を超えた部分については、国が面倒をみる総合合算方式のようなものを導入する。

 同時に、若い世代が結婚しやすいような住宅手当を導入する。18歳までの教育費は基本的に無償にする。高等教育については、給付型奨学金を拡充する。働く世代のためには、職業訓練や再就職支援を充実する。

 財政再建のために消費税率を引き上げるという財務省の主張では、景気も失速するし、国民も負担をするだけだという嫌悪感を抱く。社会を変えていく前向きなビジョンを示さなければならない。

 

<出典:毎日新聞「政治プレミア」http://mainichi.jp/premier/politics/

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