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◆「マニフェストのブラッシュアップと実効性確保のための党内改革」(社団法人 日本経済調査協議会『マニフェストによる政治ガバナンスの確立−大文字のマニフェストを書け−』2006年6月、第8章)◆
1.マニフェスト型選挙の定着
私たちは、何とかマニフェスト型選挙を定着させたいと考えている。マニフェストは「政権公約」をさらにバージョンアップさせて、数値目標、達成期限、財源などを盛り込んだものである。今までの「公約は「おおやけのやくそく」というより、「口約束、言いっぱなし」という感の強いものであり、これを「検挙可能なものにしていく」ということが大事だと思う。後で、専門家や国民が「言ったことをちゃんとやっているのかチェックできる」ことが重要である。
2.2005年衆議院総選挙とマニフェスト
今回の選挙のマニフェストはイレギュラーなものであった。民主党も正直なところ、「今年選挙がある」とは思っていなかった。従って、基本政策の羅列のようなものになっており、われわれにも反省点がある。一方の自民党・公明党のマニフェストは今までの公約の域を出ないと考える。
突然の解散だったが、マニフェスト選挙が空洞化しないようにしていかなければいけないと思っている。次の選挙に向けた、マニフェストの切磋琢磨、検証、定着させていくための運動というのがあって、極めて重要であると考えている。
3.基本選挙とマニフェストの差異
私は基本政策とマニフェストは違うという認識を持っている。安全保障政策で言うと、「集団的自衛権の行使については、限定行使すべきである」という問題について、来年の通常国会で、憲法提言の中身に具体化して入れる作業をしていきたい。基本政策、あるいは、憲法改正の中に「集団的自衛権の部分行使」という考え方をしっかり入れていきたいと考えている。基本政策の中に入れれば、党としての考え方になり、それをマニフェストに落とし込むと、「〇〇の考え方を盛り込んだ憲法改正を〇〇までにする」ということになると思う。おのずと基本政策とマニフェストの違いは出てこなければいけないし、選挙を前にして基本政策として積み上がったものを、「〇〇までにやる」ということが、マニフェストの柱になってくると考えている。
4.マニフェストの有効期限
また、「今回の選挙におけるマニフェストは一旦白紙になった」という認識を持っている。「政権をとれば〇〇をやる」とマニフェストで言って、政権を取れなかったのであるから、基本政策については、変更することもあれば踏襲することの方が多いと思うけれども、マニフェストについては一旦白紙になったと考えるべきである。マニフェストに書かれた数値目標や達成期限はもう一度しっかり議論しなければいけない。
5.マニフェストの作成時期
また、今からマニフェスト作りをするつもりはない。基本政策の積み上げを行っていく中で選挙になれば「どこを選挙戦術として取り上げて、達成期限や数値目標を入れなおして、選挙の争点として戦うのか」ということになり、今は基本政策・マニフェストの見直しを行っていくが、マニフェスト作りは選挙が近くなったときで良いと思っている。
6.参議院選挙におけるマニフェスト
政権選択を国民にお願いするのは衆議院選挙であって、マニフェストは政権とったときに「〇〇という政策を、数値目標・達成期限をつけてやる」というものなので、参議院選挙にマニフェストがなじむかどうかは、大いに疑問を持っている。マニフェストを定着させたいと思っているが、「すべての選挙に何が何でもマニフェストを出す」ということが、「マニフェストの定着のためにいいことなのかどうなのか」ということについて精査しなければいけない。マニフェストを政権選択のためのツールとして考えると、参議院選挙には基本的な考えかたを記した「公約」出せばよいのではないか。
7.ローカル・マニフェスト
ローカル・マニフェストを首長選挙について定着させていかなければいけないと思っている。地方自治体は「大統領制」であり、首長は直接選ばれる。議会は予算案や条例案を通すという強い権限を与えられているが、かなりの権限が首長に与えられていることを考えれば、都道府県議会選挙や市町村議会選挙といった統一地方選挙にマニフェストはなじまないが、首長選挙のローカル・マニフェストは極めて意味があると思っている。民主党が推薦をしたり、応援したりする首長候補については、ローカル・マニフェストを求めていく。その検証を2期目、3期目を応援する際の基準にしていかなければいけないと思う。
8.マニフェストの検証
公明党自身の検証では「99%は達成、もしくは実現」という言い方をしている。一方で、われわれから見ればマニフェスト違反というように思っている。自己採点ほど怪しいものはない。厳しい基準を作って自己採点をする必要はあると思うが、客観評価をどうやって担保していくかが重要である。言ったもの勝ちでマニフェストを形骸化させていく動きは阻止しなければならない。
これも、公明党の問題であるが、「民主党はマニフェストを何ひとつ実現できていない」といことを平気で言っている。政権をとっていないのでできるわけがないのであり、仕組みを理解しないマニフェストをだめにするような議論が行われることも、定着させるために厳に慎まなければいけないことだと思う。
マニフェストの客観評価を様々な人にしてもらって、それをオーソライズすることがきわめて重要である。経済団体連合会や経済同友会や様々なシンクタンクで評価されており、もちろんその評価に対して言いたいこともあるが、マニフェストを出した政党自身が客観的に評価するのが難しいという意味で、客観評価を様々な人に行ってもらうのが重要である。
9.2005年総選挙時の民主党マニフェスト
「日本刷新8つの約束」ということで約束しているが、まず1番目で、「衆議院定数80の削減、議員年金廃止、国家公務員人件費2割削減等、3年間で10兆円のムダづかいを一掃します」と書いている。この実現のために法案を提出しようと考えている。参議院については、マニフェストではないが、参議院の定数削減についての公約を掲げようと考えている。議員年金の廃止については法案を提出しており、与野党間で議論しているところである。これについては、来年の通常国会で処理されることになると思う。
国家公務員人件費2割削減ということに関して、マニフェストの効用について2点挙げたい。「マニフェストを一旦白紙に戻す」と述べたが、それは、「政権をとれなかったので、もう一度しっかりしたものを作り直す」ということである。基本的には、基本政策として積み上げたものを書いているわけなので、踏襲すべきものが多いと思う。政治的な話になるが、「再検証する」と言った途端に、この項目について、自治労出身の議員たちは、「これも見直す」という話をする。一昨日の「次の内閣」の閣議で「変えない」と押し切ったが、再検証作業に入ると見直したいものがたくさんある。しかし、踏襲することについても確認していかないと、マニフェストに掲載されることを良くないと思っている議員たちが、「ゼロベースで戻すべきだ」という主張をして、積み上げた議論を維持するのが極めて難しくなる。このハンドリングが政治の問題としては大事なことである。
「3年間で10兆円のムダづかいを一掃します」ということについては、岡田前代表が、「3年間は行革なくして、増税なし」と言っていて、「3年間で17兆円の歳出カット」と「7兆円予算の付け替え」をして、「トータルで10兆円のムダづかいを一掃する」と主張した。次の選挙の時には、日本の経済状況・財政状況が変わっていると思うので、「17兆円のムダづかいを削る」という方向性は変わっていないが、次のマニフェストに載せる時にこのような文言にするかは再検証が必要であり、白紙に戻しても良いと思う。一方では「歳出を削る」という積み上げてきた議論について、中身を大事にしなければいけない。
今、党内に5つの分野で真の改革競争をするための分野を設けている。特別会計改革、公共事業改革、公務員制度改革、分権改革、省庁再々編の5つである。私は分権が行財政改革の本丸だと思っていて、これがまとまってきた段階で、国と地方合わせて、どれくらいの規模でやっていけるのかが形に出てくる。その場合は、もう少し深堀りをする可能性がある。次の選挙のときにはさらに踏み込んだものになる可能性がある。そういう意味での再検証もありうる。
財政再建については、OECDが成功例として発表したのは78%が歳出削減、22%が増税ということなので、7割は歳出カット、3割は増税という感覚で、プライマリーバランス黒字化の方向性が出せるように党の案を作成するようにお願いしている。
マニフェスト4ということで、「地域の工夫を引き出すため、ヒモ付き補助金18兆円を、地方の財源に切り換えます」と書いている。政府の三位一体改革については、私は全く評価していない。分権の最終像を示すなかで、民主党のマニフェストでも、まだ弱いと思っている。三位一体改革の3兆円、4兆円というのは論外だと思っているが、民主党案の補助金の一般交付税化も分権改革の一里塚であって、最終像ではない。今、憲法調査会長の枝野幸男氏に分権の調査会長にもなってもらって、分権の将来像とあるべき姿を議論してもらっている。これがまとまった段階で、分権の最終像を示すようなマニフェストにしていかなければいけないと思っている。
マニフェスト5では、「12月までにイラクから自衛隊を撤退させ、日本にふさわしい復興支援策に取り組みます」と書いている。これは、すでに12月になっているし、今後、イラクの状態がどうなるかわからないが、おそらく来年には自衛隊が引き揚げるということになると思う。こういうものは当然、白紙に戻って考えるべき話だと思う。ただ、今、聞かれる場合には、この考え方を踏襲して、アメリカでは民主党の考え方として言ってきたし、その時その時で考えるべき話だと思う。
マニフェスト7では、「官製談合を根絶し、道路公団廃止と高速道路無料化を実現します」と書いている。これは党内においても非常にセンシティブな話である。菅直人代表のときに「是非これをやりたい」ということで、私が道路公団民営化問題の座長をしていて、民営化案を道路公団改革派のグループ議員とまとめていた頃であるが、菅代表の意向として過去2回の衆議院選挙のマニフェストになった。
しかし、いくつかの状況が変わった。1つは道路公団そのものが民営化されたということ。公団の借金の返済にと考えていた道路特定財源の一般財源化を行った場合、40数兆円の債務を45年で返すとしても、毎年2兆円程度償還しなくてはならず、「辻褄が合うのか」という議論がある。この項目については、是非見直したいと思っているが、2回選挙をして、良い意味でも悪い意味でも政策として定着してしまっている。「バラまきだ」という批判もあったが、「大変結構」という評価もあった。状況が変わった、代表が変わったということだけで、民営化という考え方を出すことがどのように受け取られるのかということについて、民主党内でもかなり慎重に議論しているところである。
マニフェスト6では、「10年後の自給率50%実現のため、『直接支払い制度1兆円』をスタートします」と書いている。これにはいくつかのポイントがあり、経済同友会と話をしていて、自給率の達成目標を掲げることはマニフェストには適合するが、「競争力のある産業として農業を再生させる」ことが先で、「自給率50%」ということを出すことにより、保護的な考え方になって、WTO・FTAとの整合瀬の問題が出てこないか、問題提起があった。
もう一つは、出生率の数値目標を入れていくのかということについても、相当議論が分かれている。今、1.288人であり、「人口減少が始まった」ということがニュースとして入っているが、ジェンダーフリー・男女共同参画を進めている女性議員からすると、「数値目標を決めることがけしからん」という意見がある。つまり、「女性を子供を産むための道具と見ているのではないか」ということである。私が、「1.8にすると決めた上で、どうやって実現するか議論すべきだ」と言っても、「いろいろな政策をとって、少子化に歯止めをかけることには賛成だが、数値目標を決めて、女性を子供を産む主体として誘導しているような思いを持たざるを得ない」というように相当な対立がある。
農業問題にしろ、人口問題にしろ、数値目標を持ったほうがわかりやすいが、「政策の結果として上がることがよいのであって、数字目標を置くことが問題である」という議論が起こっている。
民主党は野党であり、野党が物事を実現していくためには、「今の法律でやれること」、「法律を変えなければやれないこと」、「法律を変えるにしてもどのくらいのタイムスパンでやるかということ」というような、政策の中身だけではなくて手順をマニフェストに示すということが極めて重要であると思っている。
工程表は岡田克也代表のリーダーシップですばらしい形になっていると思う。どういう具体的なプロセスで、マニフェストを実現させていくのかを細かく見ていくと、500日プランのように、細かくタイムスパンを区切って、具体的な項目を落とし込んで説明をすることが重要である。政策とプロセスは車の両輪だと思う。今後の民主党のマニフェストの中でプロセスについても出し続けていきたいと思う。
(2005年12月22日 第10回委員会)
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