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第42回衆議院議員総選挙

◆「領土」二島返還論は誤ったイメージ(雑誌「選択」2001年4月号 WASHINGTON-TOKYO)2/2

 六〇年には日米安保条約が改定されますが、日米の同盟関係が強化されたのを受け、アメリカとの冷戦状態にあったソ連がグロムイコ覚書として「歯舞、色丹の引き渡しは、日本領土からの全外国軍隊の撤退」が条件とハードルを上げてきたのは当然のことでした。

 日ソ共同宣言の問題点は領土問題を歯舞、色丹の二島に限定させようとしたソ連の意図に、日本が乗ってしまったことにあります。(この二島の面積は四島全体の七%でしかありません)。日本政府も、この点を問題視し続け、九一年の日ソ共同声明では四島を明示的に言及し、また、ソ連崩壊後の九三年十月に両国が署名した東京宣言には領土問題は四島の帰属に関する問題であると位置づけ、言わば「領土問題イコール四島」というところまで引き戻すことに成功しました。

 九七年十一月には「東京宣言に基づき、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」とのクラスノヤルスク合意がなされ、翌年には「平和条約は四島の帰属の問題を解決することも内容とする」とした川奈合意もされています。

 ただ、ロシアのエリツィン前大統領のリーダーシップと意外性がここまでロシアを引っ張ってこれた最大の理由であり、KGB出身のプーチン大統領が冒険と言えるような決断を下せるかは森首相とのイルクーツク会談で、五六年宣言は「法的文書」と認めたものの、解決に溝があることを示しました。今さら嘆いても仕方ありませんが、エリツィン時代は最高のチャンスでした。 

 四島周辺の漁業資源は優れて豊富で、密輸によっても稼げる資金源になっていますし、北方領土返還が、独立を主張するチェチェン共和国との内戦やどさくさにソ連が併合したフィンランドのカレリア地方、あるいは未だ一部未確定の中露国境線の問題に、飛び火をする危険性を孕んでいます。余程の指導力がなければ実現は難しいでしょう。

 私は焦る必要は全くないと考えています。日本の立場を堅持しながら、原則論を曲げる事なく腰を落ち着けてじっくりと交渉すべきです。しかし、一部の自民党政治家と外交官僚が二島先行返還論を画策し、いわゆる二元外交が行われているのは残念です。四島一括返還のみにこだわるつもりはありませんが、二島先行返還がロシアに間違ったメッセージを与えている可能性は大です。

 つまり、日本は後の二島は継続審議だと言いながら、ロシアはこれで交渉は終わりだと考えている節があり、あたかも国対政治と同じレベルで外交交渉を行おうとすれば、大きく国益を損なうことになります。ただ、外務省内は、良識派が多数であり、その点は安心しています。 

 ブッシュ新政権は五十人のロシア外交官をスパイ容疑で国外退去させました。また、ミサイル防御構想で米露間の溝は深まりつつあります。日本は米露間の緊張、敵対関係を望んでいません。関係修復の努力と同時に、同盟国である日本の立場を十分理解し、色々な場面でのサポートを期待しています。