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◆ 日経新聞・夕刊文化面『こころの玉手箱5』(2007年4月27日) ◆

〜 高坂正堯先生の著書

京都の自宅マンションの自室。机に向かい、座ったまま手を伸ばせば届く本棚に先生の著書が並んでいる。高坂正堯先生。政策論で迷ったとき、ヒントが欲しいとき、ページをめくる。先生ならどう考えるだろうか。読み進むうち、懐かしい京都弁が聞こえてくる。

「前原はどう思うんや」

高坂先生との出会いは大学浪人中に本屋で立ち読みした「国際政治」。カントの恒久平和論とか理想主義的な議論にはついていけない。先生の現実主義が新鮮だった。迷わず京大法学部に入ってゼミを志望した。外交・安全保障政策をライフワークと定めた原点だ。

保守派の論客だった高坂先生は、ざっくばらんだが、間合いを取るのが難しい人だった。「研究室に何時に来い」と言われ待っているが、すっぽかされる。疎んじられているのかな、気に病んだ時もあった。ドタキャン魔だと分かったのはしばらく後のことだ。

本棚の中に真っさらな一冊がある。「日本存亡のとき」。 1993 年 7 月、日本新党から衆院議員に初当選した時、頂いた。当確のニュースが流れて選挙事務所で万歳。その時、先生が持ってきた本にサインをしてくれた。新品同様なのは、もう一冊自分で買い、そちらを読んでいるからだ。

代議士になった夜に−。この一言がどれほどうれしかったか。「おまえはそれほど頭がよくない」と学者になる夢を断念に追いやった先生。留年したせいで松下政経塾に入塾し損ね、二度も推薦状を書いてくれた先生。そんな先生が自分を認めてくれた。頑張れよ、との思いを込めて書いてくれたのだと思う。

先生が肝臓がんで亡くなったのは 96 年 5 月。見舞いのベットで「集団的自衛権を何とかしないと。憲法でどう整理するか。元気になったら考え方をまとめようと思う」。私にとっての遺言になった。

今改めて、自分を磨き直そうと思っている。外交安保、税財政政策・・・大胆で精緻なビジョンが日本の未来に必要だ。「おまえどう思うんや」。先生の問いかけに答えるためにも。