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◆「果敢な党運営で政権を奪取」(政策研究フォーラム刊『改革者』 2006年1月1日)◆

◆働く人々の目線で政策推進

民主党を再生させるべく前原代表が登場した。政策課題の路線を明確にして支持拡大をはかりつつ、問題先送りをしない党運営を進めるなど、リーダーとしての戦略を語っていただいた。

●インタビュアー 加藤秀治郎(東洋大学法学部教授)

政権交代を前提にした闘い

加藤 代表に就任されて(当時)「闘う集団」「闘う野党」という意味の決意を述べられております。それを聞いて、「五十五年体制」の時代の社会党を思い出される方もあるかと思いますが、もちろん別のことをお考えかと思います。相違がわかるようにお話しいただけますか。

前原 闘うと言いましても、例えば国会で審議拒否をしたり、牛歩戦術をしたりして闘うということではありません。次の選挙で必ず政権交代を実現するには、やはり政策の中身が大事だろうと思います。従って、重要な政策、主要な政策課題については、常に対案を出して、それで勝負をするという意味です。五十五年体制の「抵抗政党」という意味ではありません。

加藤 対案を提示していくという場合、方法として、アメリカ型、イギリス型の二つがあるかと思います。議会には二つの類型があり、アメリカは大統領の下、議員が具体的に法安を出し、修正していく「立法作業の議会」です。イギリスは、議院内閣制の下、内閣提出法案をめぐり討論する「討議の議会」です。この二つでは、野党の在り方が違います。
 アメリカのような議会運営ですと、対案を修正に生かすべく、法案の形をとった提案をしていくということになります。しかし、イギリスのように議院内閣制でしたら、我々が政権をとったならばこういう路線で行くのだ、ということが有権者に分かればそれで良い、ということになります。イメージとしてはどちらに近いのでしょうか。

前原 イメージとしてはむしろ後者のイギリス型だと思います。全ての法案に対案を出していると、我々も消耗もしますし、その必要性はないと思います。従って、重要な政策課題については考え方をまとめ、対案として提示するということです。場合によっては法案化するものがあるかも知れませんが、全てを法案にする必要はないと思っています。

加藤 日本の場合、与党ですと官僚集団がついていますが、野党がそういうレベルで与党と同じことをやろうとしても、難しいかと思いますので、私もそれで良いのだと思います。
 次ぎの質問ですが、与党の対案を示すという時、もう一つ、別のレベルの考え方があります。与党が手をつけないで放置している問題について、野党の側から問題提起をする、という形のものです。我々の政権ではこういうことにも手をつけていくという、そういう訴え方です。そういう点についてのお考えを教えて下さい。

前原 我々はいろいろ提案していきたいと思いますが。それについては与党側で放置する可能性があります。国会用語でいう“つるし”のケースです。審議に入らず、“つるされて終わり”というケースが必ず出てきます。そういう意味では、我々は政権を取ったら、こういう政策テーマについてどう考えるかということを、国会の中だけでなく、国民に示し続けるということが大事だと思っています。
 その中身をどう国民に伝えるかということも大事です。今度、広報戦略本部を作りましたが、そういう機関を中心に、国会で議論されずに棚上げされかねない問題を、どう国民に伝えていくかということも、しっかり考えていきたいと思っています。

効率的な政府と地域主権を目指す

加藤 自民党は「すれている」と言うか狡猾というか、そういう点ではたいへん上手な政党です。それに対抗するには、広報戦略をうまくやっていく必要があると思いますので、注目していきたいと思います。
 さて、小泉政権との相違をいろいろな形で出していかなければならないと思いますが、スローガン的に言われる「小さな政府」については、どういうスタンスで臨まれるのでしょうか。

前原 無駄遣いをなくすための真の改革などは、進めたいと思っております。特に公務員制度改革、公共事業、特別会計、分権、省庁再再編、この五つのテーマを主要テーマとして、無駄遣いの多い今の行政機構のあり方を変えていかなければならないと思います。「無駄のない、効率的な政府」です。
 それは、そのままイコール小さな政府ではないと思っています。やはり「安心・安全のネットワーク」というもの、行政でなければできない事もありますので、必要なことについては税金を使っていくのに、国民の理解を得られると思っています。「小さな政府」という漠然としたものよりも、「安心・安全で人に温かみのある政府」「効率的で強い政府」です。強いというのは大きいという意味ではなく、しっかり責任を果たすという意味です。そういうことが必要かと思います。

加藤 政策研究フォーラムでも、政策提言で、「政府の大小を論ずるのでなく、“贅肉のない逞しい政府“を目指すべきだ」ということを提唱しています。代表(当時)のお考えとは、極めて近いものと考えます。是非頑張っていただきたいと思います。
 代表(当時)が主張されていることの中でかなり際立っているのは、地域主権かと思いますが、この点はいかがでしょうか。

前原 これが一番、今の自民党と民主党の国家像が違う点かと思います。官から民へ、中央から地方へと言いながらも、いわゆる「三位一体」では、なぜ三兆円の補助見直しなのか、よく分かりませんし、最終的な分権のゴールがないまま、とにかく手をつけているという段階です。また国が何を行い、地方が何を行うかという線引きがないまま、先ず額を決めようということで、いびつな形で分権の議論が進められています。総じて、中央省庁の力が強く、自民党は霞ヶ関支配を打ち崩せない、と私は思っています。
 我々は三十万人以上の基礎自治体に、政令都市並みの権限を与え、国の役割は外交やマクロ経済政策など、国の基本的な役割に限定して、分権型社会を作っていきます。紋切り型の地方都市を作るのではなく、権限も財源もある程度、地域に与え、自由な発想で、地域のニーズに機能的に対応できるような、分権型社会です。
二〇〇七年問題と言われるように、団塊の世代の方がいよいよ定年を迎えられますが、いまどきの六十歳の方は、若くて元気ですから、生き甲斐をもって地域社会でさまざまなボランティア活動をやっていただけるような、そういった地域主権の社会像を、しっかり提示していきたいと思っております。

「脱労組」の誤解を解く

加藤 この点も、政策研究フォーラムの「地方分権推進への提言」に近いお考えと思います。
 それと関連して、民主党に組織や運営のことでおたずねがあります。地方組織をどう考えるのか、今までの民主党でははっきりしていなかった面があると思います。
 今回の総選挙で、自民党は過度に中央集権となり、小選挙区の候補者を全部中央で決めてしまうというようなことになりましたけれども、民主党は民主党なりの工夫があって良いのではないかと思っています。例えば、盲点となっているのが衆議院のブロック名簿です。それを分権的に決めるにも、ブロック組織がどこにもないといった問題です。

前原 ご指摘のように、自民党は今回、過度に中央集権的な形になったと思います。我々も小選挙区の総支部長は最終的には党本部で決めることになっていますが、自民党は、今度は地方議員の公認権まで中央で持つということを決めるようです。我々はそれには与しません。地方の議会については都道府県連で決めていただいて、やはり地域の特性をだしてもらいたい。
 ただ民主党は、国会議員はある程度の数がおりますが、地方議員が非常に少ない政党ですので、党本部としては地方議員を増やすような働きかけを都道府県連と一緒にやっていきたいと思っています。ブロック名簿については、我々は同一順位にするというのが基本ですが、ブロック一位には女性や、地域で影響力のある方を持ってくることを考えるべきかと思っています。

加藤 労働組合との関係については、代表(当時)は就任後いろいろ語られておりますが、誤解されている面もあるようですので、少し説明していただきたいと思います。

前原 私の方から“脱労組”と申しあげたことはございません。申しあげているのは二つのことです。
 一つは政策ですが、労働組合と政党が全て政策で一致出来るかというと、なかなかそうはいきません。我々は生活者、消費者、働く人たちの目線に立った政策を進める、という基本姿勢を貫きながらも、何割かは違いが出るでしょう。共通項は七割くらいで、相違が三割程度、そして互いがそれを理解しあう関係を作っていくのが、むしろ健全だと思います。支援団体ですから、相違点についてはしっかり議論しますが、政党として是々非々で判断させてもらうということです。
 もう一つは、小選挙区で勝つためには労組だけの支援では勝てないことです。従って労働組合も支援団体のワン・オブ・ゼムとなるようにしていかなければなりません。
私の皮膚感覚で申しますと、自民党の支持層の二〜三割を食い、無党派層については自民党候補よりたくさん取る、ということでないと、小選挙区で民主党は自・公の連合艦隊に勝つのは大変だと思います。そういう意味では、労働組合は応援して下さる、ありがたい団体ですが、それだけに頼っていれば選挙に強くなれません。「労働組合に頼るな」ではなく、「労働組合だけに頼るな」というのが本意なのです。

加藤 政策課題では、憲法改正への決意を表明されていることが、注目されています。長年この問題に取り組んできた私たちにとって、非常に心強い思いをしているわけですが、具体的にはどのように取り組んでいかれるお考えなのでしょうか。
 先日、枝野憲法調査会長のお話しをうかがう機会がありましたが、自民党にそのまま対抗して、民主党の草案というものは作らず、焦点が定まってきたところで、民主党の案を打ち出すというお考えでした。そのような姿勢で、とにかく実現を図るのだ、ということのように理解しました。代表(当時)はその点に関していかがでしょうか。

前原 枝野憲法調査会長を中心に基本的な考え方をまとめ、私どもの「提言」にまとめさせていただきました。やはり自・公と話をしていくには、ある程度、今の条文でここは良いが、ここは変える、といった整理は必要ですし、条文までいかなくとも箇条書きでの「まとめ」はしていかなければならないと思っています。枝野憲法調査会長と松本政務会長には、民主党の提言を更にバージョン・アップさせて、どの条文は残し、どの条文は変えるか、変える条文については、どういう考え方にしていくか、来年の通常国会中にはまとめたいと話しております。もう少しバージョン・アップしないと、なかなか議論にならないかと思いますので、その作業をお願いしているところです。

加藤 この点については政研フォーラムも関係団体ともに、長年取り組み、提言もしてきました。創憲会議の提言や草案なども、ぜひ議論に活用していただきたいと思います。

前原 はい、ぜひ参考にさせていただきます。

問題を先送りしない党運営

加藤 代表選挙の時期に私はたまたまある原稿で、「小泉さんが自民党の運営を変えはじめた以上、民主党も多数決型の運営を党の中に持ち込んではどうか」ということを書いていました。新代表が「なあなあはしないと」語られたのを知り、意を強くしました。日本的な意思決定は、問題の先送りに特徴がありますが、それを考える時、これは非常に重要な決意表明と考えました。その点を改めてうかがいたいと思います。

前原 議論は徹底して行い、後は意見集約をして、党全体の考え方としてまとめていくということです。そのためには徹夜をするというくらいの気持ちでしっかりとやっていただきたいと思います。
 これまではどうしても、党内に相違がある案件については先送りをし、結果的に時機を逸するというケースがありました。あるいは、野党なのだから法案に反対していればよいとの考えもありました。これは「闘う集団」とするには乗り越えていかなければなりません。政権交代を本気で言うには、そういった生みの苦しみを経験しておかなければなりません。
 議論することは大事なことですが、煮詰まらないときは多数決も辞さずということです。まだその刀を抜いたことはありませんが、大事な時にはそういう決断も必要だろうと思っています。

加藤 これが最後の質問になりますが、今度の総裁選で自民党と民主党の議席が開いたことで、二党制が遠のいたというような、誤ったことをいう人がいます。選挙制度は小選挙区制が中心ですから、このようなことは起こりうることでして、逆に次の総選挙で一気に政権交代も十分あり得るものと、私は思っています。
 そこで焦点になるかもしれないのが公明党との関係ですが、それをどうするのか、お考えをうかがいたいと思います。

前原 自公連政権が続き、かなり選挙も経ちましたから、初めは違和感のあった公明党支持者も、自民党を応援することを自然に受け入れるようになっていると思いますし、また自民党候補者も、公明党の組織が無ければ小選挙区で勝てない人がたくさん出てきています。このように自・公は、融合化が進んでいます。
 そのような中で、我々の基本方針は、単独政権を目指すということです。公明党はもう、自民党の支援団体の一つになっている、という思いで、自・公を乗り越える努力をしなければいけないと思います。
 我々が取った票が小選挙区で約二、五〇〇万票、自民党が三、二〇〇万票強です。公明党の組織票を除くと、今回のような“風”の中でもかなり互角に戦うことができた、という部分があります。小選挙区というのはまさに、こういう票差でありながら、議席ではドラスティックな結果を生むものです。
 「逆も真なり」ですので、公明党の力を借りるという前提条件なしに、政権交代への実現に向けて、しっかり頑張っていきたいと思っております。

加藤 お話しの中に広報戦略のことがでてきましたが、日本では二党制についての誤解など、メディアが報じるべきことをきちんと報じてくれないので、アピールが難しい点もあると思います。その点に留意しながら活動し、ぜひ政権交代を実現していただきたいと思います。今日はお忙しい中ありがとうございました。

(文責=編集部)


〈講演〉 前原誠司
■ 「民主党のめざす国家像と外交ビジョン」(抜粋)■

(2005年12月8日、米戦略国際問題研究所での講演より内政部分を抜粋)

 まず、民主党が取り組む内政課題についてお話します。

 日本経済を強く信頼していますが、今、企業であれば日本はとっくに倒産している状況にあります。GDPが約5百兆円の日本にあって、国全体の債務は、長期・短期を合わせて1000兆円を超えています。今、日本が抱える最大の課題の一つは、巨大な財政赤字なのです。しかし、これは氷山の一角に過ぎません。急速に、少子・高齢化が進展をしており、今後、税金を納める人口は少なくなり、それに対して年金・医療・介護などの社会保障費は自然に増えていきます。

 今日、改革の言葉が先行していますが、民主党ほど改革に真剣な党はありません。我々民主党は「行革なくして増税なし」と主張し、今、使われている税金の無駄遣いを徹底して無くすため取り組んでいます。政府・与党内では増税の議論を行っていますが、これだけの借金大国にしてしまった自民党政治の責任は重大です。給料が高く、数が増え過ぎた公務員制度、談合体質で高コスト体質が定着し、何よりも不要な事業が見直されない公共事業、国が補助金という仕組みを使って過度に地方政府に関与し続ける中央集権体制、そして官僚の無駄遣いや天下りの温床となっている特別会計―これらによるコストを自民党は増税でまかなおうというのです。民主党は、これらの問題のツケを払わされるのは間違っていると主張しています。「行革なくして増税なし」です。これは具体的にどのような意味でしょか?

 1.無駄遣いをなくし、税金を有効な道に使う
 2.規模の縮小―肥大化した行政と公務員のコスト削減
 3.無駄で不必要な公共事業の廃止
 4.権限を財源の地方への移譲

郵政改革も重要です。民主党は一貫してそのように主張してきました。しかし、それだけでは十分ではありません。我々は、政府による無駄を駆逐する闘いに自民党も加わるよう呼びかけていきます。

最後に、私は日本の高齢化問題を、わが国の財産であり責任であるとみなすべきだと考えています。中央政府との協力のもと、地方自治体は、60歳以上が働く機会を与えられ、受け取るべき年金などの権利を行使できるようにしなければなりません。2007年には、日本では団塊の世代が定年を迎えますが、いまどきの60歳はまだまだ元気です。大幅に権限・財源を移譲された基礎自治体が、元気な高齢者を教育や介護、農業や間伐、環境美化、観光案内などのボランティアに参加してもらう受け皿をしっかりと整え、生き甲斐を持って老後を元気に過ごしてもらう社会を実現したいと考えています。民主党は人間中心の政治を行いたいと考えます。


以上