衆議院
衆議院外務委員会 2006/10/27
■山口委員長
次に、前原誠司君。
■前原委員
民主党の前原でございます。
麻生外務大臣に、きょうは少し大局的な議論を外交、安全保障でさせていただければというふうに思っております。
通告をしておりますように、まずは核の問題について議論させていただきたいと思います。
核保有の議論をすることがどうのこうのという次元で質問するつもりは全くありません。やはり、この外務委員会で、日本が核保有した場合のメリット、デメリットというものをしっかり議論する、あるいは現状の外交の流れの中でそれが果たしていいのかどうなのかということをしっかり議論して議事録にとどめておくということは、私は大変有益だというふうに思いますので、ぜひ大臣も、そういった大局的な観点から質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
さて、先般アメリカのライス国務長官が来られたときに、ライス国務長官はこのような発言をされておりますということが外務省からブリーフで伺いました。米国は抑止と安全保障についての日本へのコミットメントをあらゆる形で履行する、こういう発言をされました。あらゆる形というのはフルレンジという英語を使われたという説明を受けているわけであります。
これについては新聞等で解説がされておりますけれども、実際に日米外相会談で、このフルレンジ、あらゆる形でコミットメントということは、従来のいわゆる核の傘、核抑止力というものもアメリカはしっかり提供するということの意味だったのかどうなのか、会談をされた当事者からお話を伺いたいと思います。
■麻生国務大臣
今回のライス国務長官の訪日の主たる目的というのは、北朝鮮の核に隣国であります韓国、中国、ロシア、日本がどのような対応をするかということの調査の最初として日本を選んだというのがそもそもの背景。
それに対しまして、私どもの方は、この種の話というのは今までの状況とは違う。少なくとも、二極構造の世界が終わって一極構造になり、そしてその一極構造の状況の中で、日本、中国、韓国にとって、ロシアを含めて、隣国で新たに核保有国というものが登場するという状況というものは、これは明らかに今までとは新しい状況になった。
それに対して、アメリカとして一番大事なことは、米韓、日米、それぞれいろいろ安全保障条約、いわゆる条約を結んでいますが、この条約というのはいざというときにきちんと作動するのか、そこが一番肝心なところなんであって、日本はそれは疑わしいということになって、アメリカは確実に日本に核というものが落とされたときにそれに対して安保条約をきちんと履行するという、核の抑止力というものをきちんとそれに対応してくれるというギャランティー、保証がおれたちとしては一番肝心なところなんであって、それがないと国民の動揺が一番大きいということになるんだと思っておりますので、今言われましたように、フルレンジという言葉を使ったことも確かですし、その中に核の抑止力が含まれておる、その話をもとにしての答えがこの答えでしたので、今御質問の点については、間違いなく核の抑止力がその中に含まれていると思っております。
■前原委員
今回のライス国務長官の訪日というのが、北朝鮮の核実験、向こうが主張している、アメリカは一応認定をした、日本はまだそれについての公式なコメントは出されておりません。日本政府は出されておらない。
そういう中で、要は、北の核については、私は核抑止力というものについて二つ考えられるんではないか。
まず一つを申し上げると、アメリカには直接的な脅威はないわけです。七月のミサイル発射によって、七発発射をして、そのうち一発失敗している。それはちまたではテポドン2だと言われている。これはもう発射してすぐ失敗をして、これはもともとテポドンの改良型で大陸間弾道弾、つまりはアメリカ本土へ届くようなものではなかったかと。これは失敗している。仮に核実験が成功していて、弾頭の大きさ、積めるかどうかという議論はあります。ありますけれども、仮の議論として、積めたとしてもアメリカには届かない、しかし日本には届く。その場合には、私は核の傘というのは一つの議論としてはあり得るのかなと思いますが、一般論として、これは米ソ冷戦時代にもあったわけでありますけれども、米ソ両国においては、相互確証破壊、MADというまさにばかげた、気違いじみた議論があった。それで抑止が働いていた。
しかし、では今の時点においても、アメリカはみずからの本土に届くような国、これは特定しませんよ、第三国があって、それが日本が核攻撃にさらされた場合も、ひとしく北朝鮮の場合と同じように核の傘、つまりは核の抑止力を提供するということが本当に言えるんでしょうか。自国の国民を危機にさらしてまで同盟国を守るという義務を果たすのかどうなのか、その点について大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
■麻生国務大臣
これは、前原先生御指摘のあるとおりに、それこそが一番の日米安全保障条約におけるコア、一番の核だと思って、核というのは一番の肝心なところだと思っております。それが信頼性を、きちんとアメリカは日本というものを守った方がいい、それに対するある程度自国民の犠牲を覚悟してでも守った方がいいと思わせるほどのものをふだんのつき合いの間にやるというところが一番肝心なところだ、私どもはそう思ってまいりました。いわゆる商売で、契約はあるけれどもそのとおり履行するかどうかというのはよくある話ですから、条約があってもそのとおりやらない国はいっぱいあります。
そういう意味では、契約どおりやるかどうかというのは、契約に書いてあるからやるというのではなくて、これはやるという気持ちにさせるふだんのつき合いというのはやはり大事なんだと思いますんで、この五年数カ月の間、九・一一以降と言った方がいいのかもしれませんが、少なくとも、アフガニスタンの話にしてもイラクの話にしても東ティモールの話にしても、日本というのは結構頼りになる、一緒に価値観を共有してやっていくに足るそういった国民だというように、アメリカにこの五年間間違いなく思わせてきたことだけは間違いない。これは、この五年間の成果の一つとして評価しないと公平性を欠くかなと思っております。
そういう意味では、今回のライス国務長官との会談というのを見ますと、これまで何回来日しましたか、外務大臣になって五、六回、もう少し七、八回やったかと思いますが、公式、非公式にいろいろ会ったことがありますけれども、今回のも極めて明確にフルレンジというのはすぱっと言ってきましたので、渋々言ったんじゃない、ばんと最初から出てきましたので、そういった意味では、従来に比べて日米間の信頼関係はかなり高まっていると思っております。
■前原委員
外務大臣のお立場としては今の御答弁になるんだろう、当然だと思います。そしてまた、ライス国務長官が今回訪日をされて、今、大臣が五、六回お会いされた中で、向こうから極めて明確に言ってきたというのは、それはそれで私は評価をすべきことなんだろうと思います。
ただ、先ほど申し上げたように、北の問題が今回はメーンイシューであって、私が今質問いたしましたのは、今から核保有のメリット、デメリットというのを具体的に一個一個考えていきたいと思うわけでありますが、北の問題というのはひょっとしたら短期的かもしれない。しかし、核保有国というのはある。そして、日本を射程に置いているミサイルを持ち、そして核を保有している国もある。その国が意図しているかどうかは全く別の問題として、能力の問題として議論した場合にそういうものがある。
その場合に、本当に日米同盟関係に基づいて傘を差したときに破れていないかどうか、本当に傘というのはちゃんと差すことができるのかどうかというのは、まさに答弁されたように信頼関係の問題であると思いますけれども、やはりその都度しっかりと責任ある外務大臣のような立場の方が確認をしていくということは私は大事なことなんだろう、このように思っております。
そこで、もう一つのポイントを申し上げたいと思うんですが、米ソの冷戦時代については、先ほどMAD、相互確証破壊の話をいたしました。しかし、北朝鮮ですらノー・ファースト・ユースということを言っているわけですね。自分たちが先制攻撃に使うことはないということでありますけれども、しかし私は、ソ連の時代と大きく異なるのは、体制崩壊の危機というものがこれは想定される。そのときに、自暴自棄、暴発、さまざまなときに、果たしてその抑止というものが本当に働くのかということ。つまりは、やられたらやり返すということが抑止の一つの理論の根本にあるわけですけれども、もう自暴自棄、暴発というところでの核の使用というものについては抑止の議論そのものが成り立たないという議論はあると思うんですが、それについてはどう思われますか。
■麻生国務大臣
これは、その国が崩壊したときにどういうことになるかという一つの例として、ソ連邦崩壊の後に、かなりの部分の核の弾頭、もしくは核技術者、もしくは核技術が四散した。そのものの中がウクライナに行ったりグルジアに行ったり、いろいろうわさの出ているところではあります。
しかし、そういったのと同じような形で、撃たないまでも、そういった技術がテロリストに拡散する、テロリストに渡るというようなことは、これは断固避けねばならぬところだと思っております。少なくとも、あれは搬送技術がよく言われるところですけれども、何せ自分が死ぬ覚悟で自爆するという前提に立てば、核をトラックに積んで、バスに積んでというのは十分に可能な話ですから、自分が死ぬ覚悟でやればそれはもうかなりなことができるということを意味しますので、十分にそこらのところに注意を払っておかねばならぬというのは、前原さん言われるまでもなく、全くその点は注意をしておかないかぬところだと思っております。
また、韓国も中国も、いわゆる体制崩壊が、革命というような形じゃなくて、本人の自暴自棄になったときが一番問題というのは韓国も最も意識しているし、中国も同様な意識をしております。二千数百万の難民が流れついてくるという話より、その前にボタンを押す可能性というものを考えないかぬとかいうのは、これは常に向こうの言う話の一つでありまして、果たしてそうかな、それほど体制の危機になっているだろうかと思わないでもありません。しかし、そういったものをネタにして我々に協力しない一つの理由に使っているんじゃないかという気持ちがないわけではありませんけれども、今言われたような点を、これは同じく韓国、中国はかなり懸念を表明しているというのも事実です。
私どもとして、そこのところは、どの程度までが限度なのかというその限界の見きわめ方は難しいとは思いますけれども、いずれにしても、そういった可能性は全く否定してかかるのは危険だと思っていますから、今の御意見には賛成します。
■前原委員
要は、核抑止力というのはその面では働かない点が出てくるということをお認めになった答弁だと思います。
その次に質問しようと思っていたことをもう大臣が言及されましたので、引き続きそういった議論をしていきたいと思います。
先ほどの相互確証破壊、そしてまた、対称的な核保有国というものから、これは九・一一テロの後でブッシュ・ドクトリンでも明らかにされていますけれども、アメリカ自身も、対称的な脅威から非対称的な脅威、あるいはユビキタスな脅威、そういうことをよく言われるようになりました。それで防衛体制というものを変えていかなきゃいけないということで、トランスフォーメーションなんかをアメリカがやって、日本に対してもそれに対する協力、あるいは日米安保の役割分担というのはその流れの中で生まれてきている。
では、その非対称的な脅威の中で、今申し上げたような小さな国、自暴自棄になったり暴発したりしたら抑止力が働かない。あるいは、きのうでしたか、インターネットのニュースを見ていますと、北京でプルトニウムを売ろうとしていたやつが捕まったと。中国人ですね。そういう話があって、これから、後で議論しますけれども、そういう核関連物質というものの拡散、そしてそれがテロに使われるという非対称性の脅威というのがますます大きくなっていくんだろう、このように思っております。
そこで、仮に日本が核を持つということになったときに、当然ながら今の核不拡散体制、NPTからは脱退しなきゃいけませんよね。今、我々が核を持つ持たないの議論をする前提として、今大臣とお話をしているように、核保有国で大国はある、これは理性が働く、核抑止力がある程度働く、しかし小さな国、これが何しでかすかわからぬという話。それからテロ、これに渡るとまさに手に入れた瞬間にやるかもしれない。これからの大きなポイントは、抑止もさることながら、核不拡散体制というものをいかにきっちりやっていくのかということが大事だと思いますが、もし日本が核を持つということは、みずからNPTを脱退しなきゃいけない、核不拡散体制の強化じゃなくて逆行することになる。
私は、その意味からも、やはり核を持つ議論というのは、今の世界が直面をする核の危機に対しての逆行する話になるのではないかと思いますが、その点について大臣の考え方を教えてもらいたい。
■麻生国務大臣
核の話は抑止より拡散の方に非常に問題点があるのではないか、これはアメリカも同じ意識だと思います。拡散体制になり得る、いわゆる核が無秩序に、テロリストが一番いい例だと思いますが、そういったものに散らばるというのは断固避けたい。特に、北朝鮮の核がイエメンに流れようとした過去の例がありますから、そういったものを見て断固阻止をしたいという気持ちがあります。
また、今言われましたように、NPTの話やら何やら強化せないかぬ、私もそう思います。ただ、アメリカも、このNPT体制があとどれぐらいもつだろうかということに関しては、こういった現実問題として、今北朝鮮に限らずいろいろありますし、ウクライナだって事実大量のものを持っているわけですから、これだって十分にあり得るであろうというようなことを含めまして、この種の話というのは今後検討せねばならぬところだろうと思います。
いろいろな意味で、アメリカも技術の進歩を使わないととてもうまくいかない。したがって、船にこっちからあれを当てると中に核が積んであると一発でわかるような機械の発明は不可能か、これによってNPTをきちんとやれるのではないかというような壮大な絵を、今研究をしようとしてみたり、いろいろあの国はそういったことを考える国なんですが、今そういった形でやろうとしていますので、核の話に関しましては、やられたらやり返すという面と拡散の話と二つ考えておかねばいかぬというのは、全く私もそう思います。特に後半の部分の方が今問題になりつつあるのではないかという前原先生の指摘も、私もそれも正しいと思っております。
ただ、今、意識の問題として、日本の場合は、核をつくる能力はある、しかしつくらないという方針でこれまでやってきて、キャン・バット・ドントと言っているわけですから、できるけれどもやらないということを言っているのであって、そういった意味では一つの日本のやり方だった、だけれども、おれたち、つくろうと思えばつくれるのよというのをきちんと向こうに言って、そこはちゃんとある程度抑止になり得る部分もあろうというのがいろいろ言われている話の背景でもあろうと思っております。
ただ、今言われましたように、拡散の方が大きな比重を持ちつつあるな、非対称性という話が大きな状況になりつつあるなというのは、私も同じような感じを持っております。
■前原委員
私も、東海村、それから、この間アクティブ試験が始まった六ケ所村、両方とも視察に行かせていただきましたけれども、今大臣がおっしゃったように、恐らくプルトニウムだけで日本は国内外に四十トンぐらいのプルトニウムを持っている。しかし、プルトニウムだけで持っていると転用できるということで、わざわざまぜ物をして、そして核に転用できないよというような厳しい管理体制をしている。しかも、東海村でも六ケ所村でもIAEAの査察官が常駐をしていて、そして至るところに監視カメラがある。そして、IAEAの封印をしていて、IAEAしかあけられないような計器類もいっぱいある。
それぐらい日本というのはしっかりとこのプルトニウムの管理をして、そして、やはり生産過程、再処理過程で若干、どこかに取り出すんじゃなくて、その過程で、中にたまって量が足りないということになったら、大掃除でもして微量でもプルトニウムをしっかりと探し出す、それだけ厳格なことをやっている。
その一方で、先ほど申し上げましたように、大臣の本音がちょっと聞かれたと私は思うんですけれども、能力はあるよ、しかしやらないということが抑止になるんだろうと。そのことについては、メッセージには私はなると思うんです、それについては否定はしません。その議論はそれまでにしておきますけれども。
私が大臣から答弁をいただきたかったのは、抑止と同時に核不拡散、PSIというものをきっちりやって、不拡散というものをこれからしっかりやらないと、だれかの手に渡ったら、そいつが、スーツケースか、さっきおっしゃった、船に乗せて土手っ腹にぶつけてくるかわかりませんけれども、そういった状況が生まれてくるということになれば、日本がNPT体制を脱退してまで、いわゆるNPT体制を脆弱化させるようなことを日本は私はすべきじゃないと思うんですが、その点については、大臣、どういうお考えですか。
■麻生国務大臣
NPTというか、核をつくれるという部分が、今、つくれるけれどもやらないという話をさっき申し上げましたけれども、こういうのがテレビに出ると、つくれるという話だけで切られてばあんと表に出るのが大体マスコミという人たちの手口ですから。ですから、私どもとしては、そこらのところは十分に注意していかなきゃいかぬ。
今言われましたので、事実として、そういった点は、私どもとして、十分にプルトニウム等々のことを考え、ロケット、衛星、いわゆる情報衛星、偵察衛星、いろいろなものができる能力があることは間違いありませんので、そういったものは知っている人たちはみんな知っているわけで、そういったものを考えますときに、それはきちんとして、日本としては、こういったものが拡散しないように、これだけおれたちは管理しているのよと。これを盗まれないようにするために、盗まれっこないと思っているんでしょうけれども、つまり、東京電力は多額の金を払って警備保障をやり、何をし、日本海沿岸側にも大量のいわゆる警察官を配備し、何をしというのを今やって、そういったものが盗まれるとかとられるとか拡散するというのを防ぐのにかなりの労力を費やしております。
こういったものに関しては、今後とも私どもとしてはきちんと対応をするということ、対応するというのは、不拡散ということに非常な労力を割く、注意を払っていかなければならぬというのは、これははっきりしていると思います。特に、近くで何となく危なそうなのが出てくれば、それに対応して警戒を高めるというのは当然なんであって、それは不拡散という部分が一番大きな要素だと思いますので、今後とも、この不拡散の部分に関しては、相互破壊という話とは今時代が違っておりますので、小さな国に拡散していくというのを断固防ぐという態度は私どもとしてはきちんとしておかねばならぬと思っております。
再三申し上げるように、日本として、今、原則というか、NPTを脱退するとか、それから、非核三原則をやめるとかいうような話を政府の中でしているわけでは全くありません。
■前原委員
先ほども冒頭に申し上げたように、やはりちゃんと議論しておいて、メリット、デメリットを総合的に判断する中で、核保有の議論というのは、私は、非現実的だというところで結論づけるというのが一番健全なんだろうと思うんです。
核を持つということになればNPTは脱退する、そうすると、国連安保理なんかで制裁決議も含めて出てくるでしょう。そうすると、さまざまな経済制裁というのが行われる可能性があって、当然ながら日本の経済というのが混乱する要因になってくると思うんですね。株は下がったり、為替は下がったり、あるいは金利は暴騰する。あるいは、日本に対する投資が減る。こういうようなことが当然ながら起きると思います。経済的な混乱を引き起こすという大きなポイントがある。
もう一つ、細かなことでいえば、では、核を持ったとして、日本の狭い国内、どこで核実験をやるんだと。そんな、自治体が、私のところでどうぞというようなところがあるわけがないわけですよね。最終処分地すら今は手を挙げるところがないような状況でありますから、そういった意味では非常に非現実的だと思いますが、仮の議論として今しているわけでありますが、経済的などういう打撃が、核を保有した場合に日本に対して起こると思われるか。私は自分の考え方を申し上げました。あるいは、核実験についても自分の考え方を申し上げましたが、その二点について麻生大臣の見解をお伺いしたいと思います。(麻生国務大臣「影響」と呼ぶ)経済への影響、つまりは、核保有をするということはNPTも脱退する、そうすると、さまざまな国が制裁をしてくる、経済活動にも混乱が起きる可能性があるということを私は私の意見として申し上げたんです。
もう一遍申し上げましょうか。為替、株、金利それから日本への投資、さまざまな経済にも影響が及んできて決して得策ではないと思いますし、核実験の場所の問題、その二点、お願いします。
■麻生国務大臣
一部、まだ時間が少しずれておりますのですが、日本時間の本日未明ということになりましょうけれども、これは日本が国連総会に提出をいたした核軍縮決議案というのがあります。「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」、これは日本が出しているんですからね。それに対して、国連総会におきまして、圧倒的多数、正確に言うと百六十二票対三票、反対三。反対の班は北朝鮮、アメリカ、インド、これが実態です。したがって、こういう実態を見た上で話を私どもはしているんであって、百六十九票、済みません、百六十九対三票ということでなっております。
したがって、日本として、政府として、こういった形で、いわゆる核の廃絶の方向できちんと対応しているというのが政府の態度だということは、何となく、皆、おもしろおかしく話が広がらないように、これは日本の国益を損ないますので、今、そこの点だけはぜひきちんとしておいていただければと思います。
また、今言われましたように、日本の経済的なデメリットというのは、たった今、きょうという前提に立った場合は、今おっしゃったような状況、いわゆる株の話とか、また為替の話とか、いろいろなものが直ちに影響が出てくるということは容易に想像のつくところだろう、私もそれはそう思っております。
■前原委員
核の議論はこれで最後にしたいんですけれども、この最後が一番、実は私は核心の問題だと思っておりまして、アメリカとの同盟関係ですね。
大臣の方がお詳しいと思いますけれども、歴史的な経緯を申し上げると、佐藤栄作首相が一九六四年の十二月に、当時の駐日米大使であるライシャワーさんと話をされたときに、日本の核保有は常識だという発言をされた。それでアメリカはびっくりして、翌年の一月に当時の大統領であるジョンソン大統領が、まさに先ほど議論した核の傘の提供をしますということで、日本のいわゆる核保有というものを必死になって打ち消しにかかるということになったと思います。
非核三原則というのは、そのおよそ三年後、一九六七年十二月、これは国会で佐藤栄作首相が答弁されている。これは、沖縄返還を控えておりましたので、そういった交渉的な部分もあって非核三原則というものを打ち出された。そして、今国是としてそれが営々と続いているということであります。
私が議論させていただきたいのは、アメリカは反対するだろう、簡単に言えば。しかも、日本の今の安全保障体制というのは、六十年間かかって、あるいはもっと短いですね、旧安保条約が一九五一年、そして新安保が六〇年ですから、五十六、七年ですか。その経過の中で、アメリカとの関係は、安全保障においては極めて緊密に、特に海上自衛隊、米海軍においては、一体化と言ってもいい状況が生まれてきている。
今回のミサイル防衛導入にしたって、情報をアメリカからもらえなければ、あるいはそういうシステムをアメリカから購入しなければ、ミサイルを日本独自で撃つことはできない。あるいは装備体系にしても、最新型の次世代戦闘機というのはアメリカから購入をするということ。これは、武器輸出三原則がありますから、コスト面も含めてなかなか独自に開発することにはならない。あるいは、日本の海上自衛隊の持つイージス艦もアメリカから購入をしている。
装備体系、それから情報、あるいは今までの流れの蓄積の中での日米安保体制において、トータルとして日本の安全保障を守っている、それが大きな意味での抑止力になっている、こういうことを考えたときには、アメリカがうんと言うか言わないかということは極めて大きな話。これは本質的な話だと思うんですが、ざっくばらんに伺います。
私は、アメリカはうんと言わないと。今まで私も、大臣から比べると短い議員経験でありますけれども、アメリカというのは同盟国に対しても極めてシビアな国だ、比較優位は絶対に崩さない、そういう意味でのシビアな交渉相手だと私は思っておりますけれども、アメリカは認めるか認めないか。質問としては極めて簡単です。外務大臣というお立場でうまく答弁してください。
■麻生国務大臣
今アメリカがそれを、日本が核を持つことを期待していない国の一つが、アメリカ、中国、ロシア。日本近隣にあります核保有国はいずれも期待をしていないと思います。それは、北朝鮮に核保有を期待していないのと同じだと思います。
したがって、北朝鮮に核を保有されるとという話になって、中国も真剣に動かざるを得なかったというのが今回の背景だと思いますし、アメリカもフルレンジだということを最初から振り込んできたのは、間違いなくそういったような、どういう連鎖反応が起きるかというイマジネーション、想像力というものを働かせたら、この種のことに詳しい人ならだれでもそこに行き着く結論になったんだ、私どもはそう思っております。
また、今言われましたように、濃縮ウランの話を先ほどしておられましたけれども、こういったものに関しましては、これは平和利用に限っておりますので、ああいったものに関しては約束が。いろいろな意味で、極めて制限をされておるという状況ですから、私どもはきちんと北の部分に関して、こっちが影響力を受けるという部分に関しては、きっちりやるという約束を履行してもらわなければ、こっちはこっちでしかるべき対抗措置を持たない限りは国民の安全は守れない。
相手は普通の人じゃないと思ってかからないかぬわけですから、そういった普通の人じゃない人に常識の話をしても始まりませんから、そういったときにどうするかという状況に置かれているという上でどうするかというのをこれから考えないかぬところなんだと思っております。
ただ、今言われましたように、アメリカの場合は、いろいろこのところ意見が佐藤内閣のところと変わってきたのは、やはりアメリカもかつてほどの力がなくなってきたということが一つ。
二つ目は、日本の経済力が猛烈な勢いで出てきて、特に製造技術やら品質のいいものに関しては、これは一九七三年のオイルショック以来、量の拡大から質の向上というのに日本の経済は全部切りかえていますので、そういった意味では、明らかに品質のいい、民生品で軍需品に勝てる、そういったようなものまでつくり上げる能力というのを持った日本というものを最も信頼が置けるパートナーとして置いておきたいと思わない方がおかしい、また思わせるように我々は努力をしてきたわけです。
そういったやり方で、日本は、少なくとも軍備費に金をかけずして、歳出を抑えて、その分だけをいわゆる経済に回し、その他に福利厚生に回して、この国の繁栄をかち取ってきた。結果、アメリカよりいろいろな面ではいい部分が出てきた。となると、今度は逆に、アメリカの中では別の意見がまた出てくるというのも、これは自由な国ですから、いろいろな意見が出てくるという状況になっているんだと思います。
ただ、今言われたように、得か損かという話だけで考えたら、それは軽武装の方が得に決まっております。ただ、そのときには保障がありませんと、国家として、政府として国民の安全を担っておる立場としては、いわゆる安全保障という問題からいきますと、きちんとそれが作動するという保障と、やはり最低限、通常兵器によります攻略ということもありますでしょうから、その通常兵器に対しては、日本の通常兵力をもって一応対応できるものをきちんと備えておくという必要性は、我々は常に心がけておかねばならぬところと思っております。
■前原委員
核の議論はこれぐらいにさせていただきたいと思いますが、結論として、最後のアメリカのところは、核武装を主義主張でおっしゃる方は、それは私はいいと思うんです。主義主張まで立ち入るわけにいきませんから。しかし、先ほど申し上げた経済的な影響とか、核拡散のいわゆる蓋然性を高めてしまうということとか、あるいはアメリカとの安全保障の体制を根本的に見直す意思というものがなければ、大臣がおっしゃるように、日本の国民の安全を守れないと思うんですね。
もしそれを、アメリカとの関係は、将来的に解消を含めてある程度自立をしていくという意思を本当に持つのかどうなのか。私は、その腹構えがあってこそ、本当の核武装議論というのはできるんだと思いますし、それを今私は優先順位を高めてやる話ではないし、しかも、先ほど申し上げたように、六十年近くかかってこの体制ができてきて、もし変えようとしたって、それは何十年かかる話。
ですから、今の北朝鮮の危機に対応するということを考えれば、外交、そして今の安全保障、同盟国としての信頼関係、そしてNPT体制の強化を図る、そして対外的には唯一の被爆国としての日本の訴えをしていくということが私は大事だというふうに思います。それについて同意されるかどうか。
■麻生国務大臣
最初から申し上げてきましたし、政府としての立場も申し上げましたし、言論弾圧の話も全部御存じの上で話をされておられますので、これまでいろいろな方に質問されましたけれども、さすが党首経験者は違うものだと思って、改めて敬意を払います。きちんと整理はしてあると思いました。
私の考えと基本的に差異は、細かいことを挙げれば幾らでもありますが、大目差異はないと存じます。
■前原委員
次に、安倍内閣で集団的自衛権の見直しというものを内部でやっていこうということを聞いております。私は、集団的自衛権の行使については、フルレンジではないけれども認めるべきだという考え方に立って、今までもそのことについては主張をしてまいりました。ただ、観念論でこの議論をしたって余り意味がないと私は実は思っております。
そこで、具体的な事例に即して幾つかお話をしたいなというふうに思うのでありますが、例えば、認定するかどうかは別にして、周辺事態というものの場合に、日本が行動できる法律というのがありますね、周辺事態法という法律がある。これについては、二つの内容が書いてあるわけです。一つは後方地域支援、もう一つは後方地域救助活動、そして別法律で船舶検査。この三つが法律として周辺事態においてやれるということになっているわけでありますが、これはいずれも今までの政府答弁の中で、日本に飛び火がするかもしれない。周辺事態というのは、まさに放置しておけば日本が有事に巻き込まれるかもしれないという状況の中で米軍は活動をしている。
それについて、しかし、武力行使の一体化になった場合、一体化というものが認められる場合は、さまざまな米軍に対する支援というものは中断しなきゃいけないという項目が法律の中には入っているわけです。これは、私も議論したのでよく覚えていますけれども。だから、これは集団的自衛権という今までの解釈の中で、憲法上、主権国家として持っているけれども行使は認められないという政府見解を持っている。そして、それのいわゆるエキスとして、武力行使の一体化というところに集団的自衛権のポイントを置いている。
しかし、一番リアルに想定される事案として、周辺事態として仮に認定するような状況になった、そのときに、しかし、それは日本に飛び火がするかもしれない状況でアメリカが活動している。しかし、一体化をしたときには救助ができない、あるいは支援ができない。これはやはり私は、日本の国益に背く話なんだろうというふうに思うんですね。
一つの事例を申し上げましたけれども、この点、私は、例えば武力行使の一体性という政府見解には疑問を持っているわけでありますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
■麻生国務大臣
今、具体的な例をした方がわかりやすいという御意見は私も賛成です。
今の例をさらに具体的にすると、例えば、朝鮮半島で仮にアメリカ艦船の給油をしておった。御存じのように、給油というのは並行して走りますので、いわゆるディフェンスの上からいきますと、最も弱い状況になります。動けませんから。
そういう状況の中で、アメリカの艦船が攻撃を受けた、ミサイルでねらわれた等々の状況が起きたときに、そのときに、日本は逃げるかと言われると、それは個別自衛権ではないか等々、いろいろな問題を現実問題として考えないと、少なくとも、やはりちょっとそれをほたって逃げるというのは同盟関係でいかがなものかというようなのが、通常の観念としても、いわゆる一般論として申し上げても、そういったところで逃げちゃうというのはいかがなものかというのが私も同様な気持ちがあります。
したがって、これをどういうように法解釈を変えるのか。いわゆる個別自衛権、集団自衛権、正当防衛、いろいろな範疇の話だと思いますけれども、今言われたような話は、具体論としてこの場合はできるようにするというような形の話ができてもおかしくないのではないかと思っております。
■前原委員
時間がもうわずかになってきましたので、もう一事例、私の集団的自衛権の憲法解釈の中で、日本の国益を損ねているという点をお話をしたいと思います。
これは、厳密に言えば、集団的自衛権というよりも、マイナー自衛権の集団的自衛権版。マイナー自衛権というのは、つまり部隊の自衛権ということなんですね。
例えばPKO、あるいはこの間のイラク特措法でもいいんですが、海外に自衛隊の部隊が出ている、そうすると、部隊の自衛権というのは基本的に認めないわけです。なぜならば、部隊の自衛権という、自衛権という言葉を使った途端に、いわゆる自衛権発動の三要件に満たされなければいけないということで、基本的には、警察官職務執行法の準用で正当防衛とか緊急避難とか、あるいは自衛隊法第九十五条の武器等防護という中でしか武器使用ができない。こういう体系になっているわけですね。
これだと、どういう問題点が出てくるかということになると、イラクの場合は、サマワというところで自衛隊が活動していた。我々はそれについて反対の立場でしたけれども、自衛隊の方はよくやられたと思うんです。無事に帰ってこられてよかったと思います。そのときに、日本の自衛隊の安全確保をしていたのはイギリスでありオーストラリアでありオランダですよね、同じ地域で活動している。日本が仮に攻撃された場合は、そういった国々が助けてくれるけれども、逆の場合、つまりは日本が同じ場所で活動していて他の国の部隊が攻撃をされたときには、日本はできないという仕組みに今なっているわけです。
これは、マイナー自衛権的な集団自衛権の話だと思いますけれども、これは本来の国際貢献の議論からすると全くおかしな話であって、まともな国際貢献活動にはなり得ないと私は思うわけでありますが、その点については、大臣、どのようにお考えになられるか。
■麻生国務大臣
これは今のままですと、あくまでも現行憲法の枠内で考えていかなきゃしようがないという答えにしかならないんですが、これは常識的に言って、隣にいた部隊がいきなりぼんとランチャー、ランチャーというのはロケット弾を食らって、いきなりこちらも撃たれるかもしれないという状況のときには助けちゃいかぬ、向こうは、敵はそこはわかっておるわけですから。
こちらが撃たれたときには、オーストラリア軍もアメリカ軍も一生懸命日本のためにやってくれているというような状況のときには、それは、そこに置いてある武器やら何やら盗まれる可能性がないからやるなとかなんとかかんとか、いろいろな細かいことは決まっていますけれども、これはやはり国際的な一般常識としては、何だ、おまえ、おれたちがやってやるのに、おれたちがやられたら助けてくれないのかというと、それは、パートナーとか同盟とかアライとかいうような対応になるかといえば、国際常識的にはなかなか通らぬのではないか。常識的な範疇からいって、そういう感じが私もいたします。
■前原委員
とにかく、こういった安全保障、外交の議論というのは、現実論の中で建設的な議論をしっかりしていくということが私は大事だと思いますし、それから、集団的自衛権の議論を閣内あるいは政府部内でされる場合には、余り形而上学的な議論ではなくて、具体的なニーズという国民にわかりやすい議論というものをしっかりやってもらいたいし、我々もそういった観点からしっかりこういった国会の場で議論させていただきたいと思います。
終わります。
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