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衆議院本会議議事録 2005/03/15

■ 議長(河野洋平君) 
  前原誠司君

■前原誠司君登壇
 前原誠司君 民主党の前原誠司です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、新防衛大綱及び次期防衛力中期整備計画について質問いたします。(拍手)
 まず、昨日、マラッカ海峡で日本船舶のタグボートが海賊に襲われ、三人が連れ去られる事件が発生しました。政府に一刻も早い三人の救出を要望するとともに、この海峡は日本にとっても大切な海上航空路ですが、以前よりこの海峡は海賊行為の多発地帯であることを考えると、再発防止のために、他国と強調をして、航海の安全を守るために何らかの取り組み、連携が必要だと考えますが、政府の考え方をお聞かせいただきたい。
 およそ国の安全保障ほど、中長期の見通し、戦略に基づいて政策を立案し、遂行しなければならない分野はありません。戦闘機や艦船などの正面装備は、選定、開発から実践配備まで、少なくとも十年の歳月を要します。その点から考えると、今回の防衛大綱の改定は、十年先の戦略環境を正確に分析しているとは到底思えません。また、なぜ今なのか、また、防衛の主眼を何に移すために変えるか、コンセプトも不明瞭であります。
 我が国の安全保障の柱の一つが日米同盟関係ですが、先月、ワシントンで2プラス2が行われ、共通の戦略目標を定めて防衛協力を強化させることが確認されました。同時に、アメリカが進める米軍再編に呼応する形で日本における基地の整理再編が行われ、日米間の役割分担も変わることが想定されます。ことしの秋ごろまでに結論を出すとのことですが、なぜ、大綱策定を一年待って同盟のトランスフォーメーションに合わせなかったのか、明快な説明を求めます。(拍手)
 そもそも、防衛大綱を見直さざるを得なかった真の理由は、ミサイル防衛システムの導入にあります。現に、現中期防を四年で打ちきり新たな五ヵ年計画策定を余儀なくされたのは膨大な費用を要するミサイル防衛を導入するに当って、陸海空それぞれの予算を削減すると財務省に約束させられたからにほかなりません。
 確かに、我が国の周辺には、我が国を射程距離におさめる国が複数あります。民主党もミサイル防衛の必要性は認識をしていますが、要は、財政の制約と通常戦力のバランスをどのようにとるかの問題であります。北朝鮮だけでも、日本を射程におさめる弾道ミサイルは二百基以上あると言われており、新大綱の別表に書かれているイージス艦四隻、ペトリオット部隊三個高射群だけでは、到底あらゆるミサイルを撃ち落すことはできません。
 政府は、国民に幻想を与えるべきではありません。ミサイル防衛には限界がある、すべてを撃ち落すことはできないとまずは認めるべきであります。その上で、何を少なくとも守ろうとしているのかを明確にすべきです。首都の中枢は当然のこととして、他の主要都市はどこを考えているのか、自衛隊や米軍の基地、重要港湾、空港、そして原発なども守る対象と考えているのか。あるいはまた、それらの施設は新大綱の体制でカバーできるのか、お答えをいただきたい。
 同時に、新大綱でおおむね想定している十年という期間で、ミサイル防衛にどれぐらいの費用を投じようと考えているのか。次期防の中ではどの程度なのか。また、さらに次の十年でもミサイル防衛をさらに進めるべきだと考えておられるのでしょうか。アメリカは、近い将来、エアボーンレーザーを実用化させようとしていますが、日本も導入すべきかも含めてお答えください。
 中国は、経済発展を背景に、十七年連続、軍事費の伸びは対前年比一〇%以上を記録しています。特に海軍力、空軍力の増強は目覚しく、このまま中国の軍事力増強が続くと、特に東シナ海における我が国の領土、領海及び排他的経済水域上空の制空権が維持できなくなるのは明らかであります。制空権が維持できなくなれば、海洋における支配権を行使できなくなり、制空権を握った中国が中間線の日本側でさらに天然ガスの探査、開発を行う可能性が高くなります。また、中国がみずから領土だと主張している尖閣列島や、島ではなく岩だと指摘している沖ノ鳥島及びその排他的経済水域を、中国が実効支配を試みる可能性も否定できません。
 政府はそもそも、日本の領土、領空、領海、排他的経済水域を実効支配し続ける意思を持っているんでしょうか。仮に中国が日本の主権を侵した場合、看過せずに毅然とした態度をとる確固とした意思があるのでしょうか。あるいは、現在の戦力と次期防、新大綱をベースとする防衛力整備で、制空権を今後も維持することが現実に可能と考えているのか。三点すべてに説得力のある回答をいただきたいと思います。(拍手)
 EUはこのたび、一九八九年の天安門事件以来続いていた対中武器輸出禁止を、実質解除しました。EUの対中武器禁輸解除は、中台間の緊張を高めるだけではなく、我が国の安全保障にも大きな影響を及ぼすことになります。EUの中で武器の売り込みに最も熱心なのがフランスですが、近々来日されるシラク大統領に日本の懸念を率直に伝えるべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。(拍手)
 2プラス2では日米で共同宣言が出されましたが、共通の戦略目標に、台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的な解決を促すという項目が盛り込まれました。この点に関して、日本は具体的にどのような行動、役回りを考えているのか、それは外交的なアプローチに限られるのか、それとも様々なシナリオを想定した軍事的なアプローチも排除しないのか、明確にお答えください。昨日、中国の全人代で採択された反国家分裂法の見解もあわせて答弁を求めます。
 私はそもそも、みずからの国はみずからで守るのが原則だと考えております。現在の日本は、歴史的な経緯からアメリカとの同盟関係を結び、核抑止力のみならず、敵基地攻撃能力、情報収集力など、防衛の枢要な部分の多くをアメリカに依存しています。したがって、今すぐ同盟関係を解消することは現実的ではなく、今後も日米同盟関係は必要だと考えます。
 ただ、自国の安全保障を他国に過度に頼ることが、日本の真の利益につながるのでしょうか。ある程度は、同盟国に頼らなくても自分の国は自分で守れる体制にする。そうでなければ、同盟国の行動が自国の利益につながらないときにまでおつき合いをせざるを得ず、国民の理解を得られずに、長い目で見れば同盟関係も弱体化していきます。健全な同盟関係を続けていく上でも、間合いは必要です。
 翻って、新防衛大綱に自衛能力を高める意思が少しでも感じられるでしょうか。ほとんどが現状追認。テロの脅威が高まっているという認識も、アメリカとの間合いが足りないからこそ、日本にもその脅威が連動して高まるというジレンマに陥っているにすぎません。
 官僚答弁ではなく、総理みずからの言葉で、自衛と同盟関係のあり方に対する考え方、あるべき方向性を語っていただきたいと思います。(拍手)
 最後にBSE問題について伺います。
 先日、ブッシュ大統領との電話会談で、アメリカ産牛肉輸入再開について強い要請があったと承知しています。政府の食品安全委員会の専門調査会でも、生後二十ヶ月以下の牛を全頭検査の対象外とする方向で議論が進んでいるようです。
 問題の要諦は、政府がいかに国民に説明責任を果すかです。NHKの調査によりますと、輸入再開賛成派は国民で十五%、反対は七五%に上っています。また、全頭検査支持は八四%に上っています。二十ヵ月以下の牛とそれ以外とをアメリカはきちんと仕分けができるのか、二十ヵ月以下の牛の感染確保は、ちまたで言われているように本当に低いのか、危険部位の除去をアメリカ国内では適切に行われているのか、アメリカの検査体制は日本の基準に合致しているかなど、これらの疑問に、政府は科学的根拠を示し、きちんと国民に答えると約束をしていただきたい。答弁を求めます。
 ゆめゆめ、ブッシュ大統領との人間関係を優先して、国民の食の安全をおろそかにされないことを心からお願いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

■ 内閣総理大臣小泉純一郎君登壇

 内閣総理大臣(小泉純一郎君) 前原議員に答弁いたします。
マラッカ海峡における事件でございますが、現在、事実関係の確認と関係者の無事な開放に向け、政府一体となって全力で取り組んでいるところであります。また、関係する各国政府に対し、被害者及び被害船舶の安全確保並びに関連情報の提供の協力要請を行ってきているところであります。
 今後とも、これまで進めてきているアジア各国の海上保安当局との連携をさらに強化し、マラッカ海峡の安全確保に向けた関係各国との協力を推進していく考えであります。
 新防衛大綱の策定と日米の共通戦略目標、米軍基地の再編計画の関係についてでございますが、新防衛大綱では、我が国への脅威を防止、排除し、国際的な安全保障環境を改善するため、多機能で弾力的な実効性のある防衛力を保持するという我が国自身の努力、日米安全保障体制を基調とする米国との協力及び国際社会との協力を組み合わせて推進することを基本指針としております。
 もとより、国民みずからがみずからの国はみずからの力で守るという気概を持つことが、国防の基本であります。最初から他国に自己の生存を依存しようとする姿勢では、どこの国からも相手にされないと思っています。
 他方、冷戦下のように大規模な武力侵攻の可能性は少なくなったものの、現在でも、テロや大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散といった新たな脅威への対応は、一国のみでは困難であります。
 したがって、新防衛大綱は、必ずしもトランスフォーメーション、いわゆる軍の変革を進める米軍との協議のために想定したものではありませんが、新防衛大綱では、米国との戦略的な対話に主体的に取り組むこととするとともに、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議に臨む基本方針として、米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍の軍施設・区域に係る負担軽減に配慮することを明示しております。
 ミサイル防衛システムの限界と防衛目的についてでございますが、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散システムは、弾道ミサイルによる攻撃から我が国を守る、現在では唯一の手段であります。
 我が国のミサイル防衛システムは、ほぼ我が国全域をカバーするイージス型護衛艦が装備するミサイルと、これによる破壊をくぐり抜けた弾道ミサイルに対して目的地付近上空での破壊を目的としたパトリオットミサイルによるシステムの二段階の防衛から成っております。どのような兵器システムでも百発百中を保証すること難しいと思っております。
 いずれにせよ、広く国民の安全を守るためのものであります。政府としては、現実的に想定される各種のケースに実効的に対応できるよう、ミサイル防衛システムの整備及び必要な法整備等を着実に推進してまいります。
 今後、弾道ミサイル防衛システムの整備に要する費用についてでございますが、政府としては、国民の安全を確保するため、弾道ミサイル防衛システムの整備を着実に進めてまいる考えであります。このシステムの整備に要する費用については、現時点で、おおむね十年間に八千億円から一兆円程度、うち次期防期間中に六千億円程度と見込んでおりますが、最終的には各年度の予算を通じて確定されるべきものと考えております。
 弾道ミサイル防衛の将来的な進め方と、米国で研究中の新たなシステムについてでございますが、一般論として申し上げれば、将来の弾道ミサイル防衛システムについては、その時点における国際情勢や防衛力のあり方全般を考慮しつつ、弾道ミサイルをめぐる技術の進歩に対応していくことが必要と考えますが、現時点で、現在進めている計画終了後のことについて、具体的に検討されているわけではございません。
 我が国の領土等の実効的支配及び我が国の主権が侵された場合の対応でございますが、我が国の領土、領海及び領空の保全並びに排他的経済水域、大陸棚における主権的権利等の確保は、我が国の外交政策上極めて重要な課題であると考えております。
 政府としては、我が国の領域の保全及び国益の確保のために、国際法に従って毅然とした対応をしていく考えであります。
 いわゆる制空権でございますが、今後の我が国の防衛力については、安全保障環境の変化を踏まえ、実効的にその役割を果し得る体制を構築してまいりたいと考えます。
 戦闘機部隊については、新防衛大綱において、領空侵犯等に即時適切な措置を講じる体制を維持することとしております。また、新中期防衛期間中には現有戦闘機の後継機を整備することとしており、今後とも領空の主権の確保に遺漏なきを期してまいります。
 EUによる対中武器禁輸解除の問題とシラク大統領訪日に関しての対応でございますが、政府としては、本件が我が国を含む東アジアの安全保障に及ぼし得る影響について懸念しており、地域を不安定化するような武器、機微な技術等がEUから歯どめなく中国に移転されないことを実質的に確保することが重要であると考えます。
 我が国は、米国とも緊密に連携しつつ、従来よりEUに対し懸念を表明してきており、引き続き責任ある対応をフランスを含むEU各国に求めていく考えであります。
 台湾海峡をめぐる問題及び中国の軍事力の透明性についてのお尋ねでございますが、台湾をめぐる問題については、我が国としては従来から一貫しており、当事者間の直接の話し合いによる平和的解決とそのための対話の早期再開を希望しております。我が国としては、引き続きその旨中台両方に働きかけていく考えであり、そのような我が国の取り組みにおいて、軍事的なアプローチを考えている、現在想定しているということはございません。
 また、中国の軍事分野の透明性向上についても、引き続きさまざまな対話の場を通じて働きかけていく考えであります。
 中国の反国家分裂法についてでございますが、反国家分裂法においては、台湾が独立の動きを示せば、最後の選択肢として、非平和的手段の行使を行わなければならないとされており、台湾海峡の平和と安全の観点から、日本としても懸念を有しております。他方、同法においては、中国は中台問題の平和的解決のために最大の努力を尽くすとしていることに留意しております。
 我が国としては、武力行使には一貫して反対しており、平和的解決のため、当事者間の対話の早期再開を強く希望しております。
 
BSE問題でございますが、米国産牛肉の輸入再開に当っては、種々の論点があることは承知しております。国民の食の安全、安心の確保を大前提に、科学的知見に基づき、適切に対処してまいります。(拍手)