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衆議院本会議質問 2004/08/02

■対:総理大臣、経済産業大臣

(1) 参議院選挙とイラクへの多国籍軍派遣について

  民主党の前原誠司です。民主党・無所属クラブを代表して、小泉首相に質問します。

  先に行われた参議院選挙の終盤において、自民党は新聞各紙の朝刊に民主党の年金・イラク政策を誹謗中傷する一面広告を出しました。さぞ高い費用がかかったと思いますが、選挙結果を見れば、その費用が無駄であったことは一目瞭然です。事実を指摘しているのならまだしも、事実を歪曲して国民を欺こうとしましたが、賢明な国民はだまされませんでした。私はその広告を見て、正直悲しく、情けない思いをしました。官僚依存、利権体質、金権体質といった構造的な問題を抱えているにせよ、戦後復興、高度経済成長をリードしてきた、言わば横綱である、あの大自民党がここまでやるのかと。ここまで落ちぶれたのかと。貧すれば鈍するとは、まさにこのことであります。公明党も同じです。5年ももたないような年金制度を100年もつと豪語し、年金制度のみならず、三位一体や道路公団の民営化など、中身のない、看板倒れの改革を手がけたからと言って実現力ナンバーワンと言い切る。挙句の果てには、野党でマニフェストを実現できる立場にない民主党をつかまえて、執行部が声をそろえて「民主党はマニフェストを何一つ実現できていません」と絶叫。実際、公明党支持者からでさえ、「それは野党だから仕方ないでしょう」と言う言葉が聞こえてきました。

  イラク問題に関して、菅前代表がアナン事務総長に言及した国連決議とは、次のようなものでした。私もその場に同席していたので間違いありません。単に文書だけの国際合意ではなく、安保理常任理事国のフランスやロシア、そしてドイツやアラブの国々が、実際に人を出すような国際協調体制が確立される国連決議でした。しかし、現実には、そうなりませんでした。ブラヒミ特別顧問が行おうとしたイラク暫定政権の主要人事は、次から次へと横槍が入り、ブラヒミ構想は頓挫し、結局、CIAと深いつながりを持っているとされるアラウィ首相が誕生しました。結局は、アメリカの石油利権の確保、中東和平をアメリカ・イスラエル主導で進めたいという下心が露骨にあらわれているのが,今のイラク政策ではありませんか。菅前代表がアナン事務局長に付け加えたもう一つの前提条件は,憲法上の問題がクリアされることです。これは,先ほど岡田代表が質問されたことで尽きています。以上の諸点を挙げるまでもなく、民主党は多国籍軍参加の前提は整っていないと考え、当然の帰結として反対を表明しました。この考え方は首尾一貫しています。

  総理に伺いたい。民主党へのネガティブキャンペーンは、事実をしっかり調べずに見切り発車でおこなったのか、それとも、わかった上で捻じ曲げたのか。総理、どちらですか。どちらにしても自民党総裁として誠実に謝っていただきたい。また、イラク問題自体についても伺いますが、アメリカのみならず、イギリスの独立調査委員会も大量破壊兵器に関わる情報について「深刻な欠陥があった」と情報操作を認めており、米英両国の国内世論もイラクへの戦争は間違いだったと考える人の数が、正しかったと考える人の数を逆転しています。判断の根拠となった情報が間違っていても、まだ、あの戦争は正しかったと言い張りますか。説得力のある答弁を願いたい。先週、イラクの宗教指導者達が日本を訪れましたが、その中に、イラクで人質になった日本人5人の解放に大きな役割を果たしたイスラム法学者協会のクベイシ博士もおられました。我々との会談で、クベイシ博士はこう言われました。「我々の国を盗んだ泥棒から返してもらう時が来た。アメリカの占領を支持しているものは誰もいない」。博士の言を待つまでもなく、イラクを混乱の渦から建て直すためには、アメリカのオーバープレゼンスを是正し、アラブの国々も含めてより広い国際協調体制を築き直すことではないでしょうか。そのために日本が行うべき具体的な行動について、総理から取り組む決意を述べていただきたい。

(2) 米軍のトランスフォーメーションについて

  総理は、たびたび日米関係の重要性を指摘されていますが、そもそも、本当に日米関係は重要だと考えておられるのでしょうか。首脳同士が個人的に仲良くなれば、それで日米関係がうまくいくと、短絡的に、いや間違って考えておられるのではないでしょうか。また、その思い込みが、お互いの国益にとって重要なインフラである同盟関係を、脆弱化させることも往々にしてあるという事に気がついておられないのではないでしょうか。多国籍軍参加を、国連決議がまとまる前に、唐突にブッシュ大統領に約束するというのは、まさに象徴的な出来事でした。日米両国とも民主主義国家です。それぞれ国民の理解、支持がなければ、両国の友好・同盟関係は成り立ちません。本当に大切だと考えるのであれば、一つ一つの政策決定に対して国民への説明責任を果たし、真摯で、そして不断の努力を続けて国論をまとめていくという丁寧さと、日本としての国家戦略がなければなりません。反論があればお答えください。

  その意味で、今回の米軍のトランスフォーメーションに関わる政府の迷走ぶりは、お粗末の一言に尽きます。政府は、アメリカから要望される基地機能や司令部機能の移転を、そのまま受け入れるつもりだったのですか。それとも、日本としての具体的な案を持っていたのですか。案の有無だけではなく、持っていたのであれば示して頂きたい。日米間で正式合意がなされる前に具体的な地名が出れば、どのようなリアクションが起きるかぐらい、政府はわかっていたはずです。普天間の海兵隊の一部を富士へ、キティホーク艦載機の基地を厚木から岩国になどとの報道がなされています。受け入れる側の自治体は基地機能強化に当然、反対するでしょう。出ていくと報道された地域は当然、期待し、しかし、実際それが実現されなければ失望、不信へと変わり、より「基地がなければ」との思いが強くなるという「パンドラの箱」を開けてしまうことになります。そしてアメリカも、日本への打診案が日本政府のマネージメント能力の不在で一向に前に進まない、と不信感を募らせる。今のやり方は、すべてを敵に回してしまう最も稚拙なやり方ではありませんか。一体、誰が日米同盟のマネージメントをしているのですか。この稚拙な交渉は誰に責任があるのか、お答えいただきたい。

  そもそも、政府は日米同盟関係の将来像を、どこで、誰が、どのように描いているのか、伺いたい。これからも、冷戦期のように基地を提供し、お金をそれなりに出していれば同盟関係は維持できると考えているのですか。基地とお金の提供だけでは同盟関係が維持できないとすると、日本としてどのような新たな役割を果たすべきだと考えているのでしょうか。それは、国際貢献なのか。集団的自衛権の行使なのか。それによって憲法改正の議論も自ずと変わってくるはずです。本来、トランスフォーメーションの議論とは、基地の問題だけに特化させずに、日米の役割分担の見直しまで含めて議論すべきではありませんか。そのような観点から日本としての同盟の将来ビジョンを示せば、普天間の代替基地なき返還は、それほど難しいことではないでしょう。それをアメリカに投げかけるつもりはありませんか。総理が日米同盟関係は重要だと考えているのであれば、ご自身の言葉で、あるべき日米同盟の将来ビジョンを語っていただきたい。

(3) 中国の海洋調査について

  戦略なき日本の外交は、中国との排他的経済水域、大陸棚の問題にも現れています。中国は日本からの再三にわたる問題提起を無視する形で、東シナ海や太平洋の日本の排他的経済水域、大陸棚において海洋調査を行ってきました。日本側の抗議により設けられたはずの事前通告制度も、中国は全くと言っていいほど無視を決め込み、今や形骸化しています。挙句の果てには、東シナ海における日中中間線付近で中国による石油・ガスの試掘、そしてアメリカのメジャーなどとの共同開発契約が行われ、本格的な採掘施設の建設が始まり、春暁鉱区は来年から操業開始、天然ガスを生産する予定です。採掘現場は中国側だとはいえ、ほぼ中間線の上に位置し、地下構造はつながっているとみられています。従って、本来は日本に権利のある石油・天然ガスといった地下資源が、このまま放置すれば中国に吸い上げられてしまうことは明らかです。このような状態に至るまでなぜ政府は放置をしていたのか。放置をしていた日本政府の責任は極めて重大です。政府は中国によるこの権益侵犯を、どのようにやめさせるつもりなのか明らかにして頂きたい。

  東シナ海の海底に石油や天然ガスが存在することは、かなり以前から指摘されていました。現に1960年代後半から日本企業4社が鉱業権を申請し、探査の許可を政府に求めていましたが、30年以上も外務省と通産省をたらい回しにされ、結局は現在まで、何も出来ずじまいです。なぜ、申請を30年以上もたな晒しし続けたのか。なぜ、決断できなかったのか。その責任の所在を明らかにしていただきたい。

  7月7日に、中間線の東側において、ようやく日本も物理的探査を開始しました。中川経済産業大臣は試掘を前提とすべきだと発言されていますが、政府の統一見解と考えていいのですか。また、物理的探査をして、中国が確認しているように地下資源の存在を日本も確認した場合、開発を認めることになるのかどうか。明確に示して下さい。2009年には国連海洋法条約に基づき、大陸棚の限界申請の期限がやってきます。中台紛争を前提とした軍事的な調査のみならず、中国が血眼に海洋調査を行う最大の理由はここにあります。中国は尖閣諸島の日本領有権を認めていません。日本が提示する排他的経済水域の日中中間線も認めていません。大陸棚は沖縄トラフまであると主張しています。また、わが国の最南端の領土である沖ノ鳥島については、領有権は認めるものの200海里の排他的経済水域と大陸棚は認めないと主張し、この周辺海域でも日本政府の許可を得ず、最近とみに海洋調査を活発化させています。莫大な人口を抱え、急激な経済発展を遂げる中国は、エネルギー開発を長期戦略に基づいて行っています。対する日本は、エネルギー戦略、海洋戦略を持って対応してきたでしょうか。どう贔屓目に見ても,場当たり的な対応としか言いようはありません。抗議しても無視して続けられる海洋調査を、このまま看過するつもりですか。中国が日本と領有権で対立している領土、領海,排他的水域、大陸棚において、さらなるエネルギー開発などの権益侵犯を防止する為に,どのような対応を取るべきだとかんがえているのか。外交ルートでの抗議・警告が無視されつづけた場合,政府はどうするつもりなのか。明確にお答えください。

  それにつけても、このような重要な懸案事項がありながら,日中間の首脳交流が全く行えないのは極めて異常です。この期に及んでも、まだ、小泉首相は首脳交流が出来ていなくても、特に支障はないと強弁されるのでしょうか。中国は、6者協議の議長役として、さらにリーダーシップを発揮してもらわなければなりません。FTA,EPAを視野に入れた、さらなる経済連携強化も必要です。ましてや、東シナ海の石油や天然ガスを日本が開発したとしても、その地理的条件から、販売先は中国にならざるを得ないでしょう。つまりは、中国とは、対立する問題では毅然と日本の姿勢を貫きながらも、総合的な判断の中でうまく日中関係をマネージメントしていく、政治トップのリーダーシップが必要なのです。日中首脳交流は必要だと考えられているのか、もし必要だと考えるのであれば、どのようにそれを再構築するつもりか、聞かせていただきたい。

(4) プルサーマル計画について

  エネルギーに関連して、核燃料サイクルについても質問します。今まで、原子力発電から生じる高レベル放射性廃棄物処分の処理費用については、政府は国会での数次にわたる質問に対しても、再処理しない場合のコストを試算したものはないと答弁してきました。しかし実際は、再処理費用と共に直接処分した場合のコスト比較を行ったものを平成6年2月に作成していたことが、先月、明らかになりました。政府が発表したとたん、今までそのような資料はないと言っていた原子力委員会や電気事業連合までもが、直接処分コストと再処理コストの比較資料を持っていたことを次々と明らかにしました。いずれも再処理ではなく、直接処分のほうが安いという試算になっています。つまりは、プルサーマル計画を進める上で,直接処分のコストのほうが安いと世間に知れるのはまずいとの判断から、経済産業省のみならず原子力委員会,電気事業連合会も共にグルになって、ウソをついて情報を隠しつづけてきたのではありませんか。経済産業省の職員3名が内規に基づき処分されたということですが、職員3人の処分で済む話ではありません。国家プロジェクトであるプルサーマル計画を進めるために、意図的に不利な情報を隠していたのであれば、まさに担当大臣が責任を取るべき問題ではありませんか。総理,ならびに経済産業大臣の見解を求めます。

(5) 政権交代でなければ日本は変わらない

  今回の参議院選挙は、与党にとっては逆風の選挙でした。抜本改革とはいえない年金制度、説明責任が十分に果たされなかった自衛隊の多国籍軍参加、そして「人生色々」発言に見られる小泉首相のおごり。そういった批判票が民主党にプラスに働いたのは事実でしょう。しかし今日、指摘した諸問題は一過性の問題ではありません。構造的な問題です。国家が外交・安全保障の戦略ビジョンを持っていない。アメリカや中国との関係をうまくマネージメントする能力も、意志もない。エネルギー確保の長期戦略を持ち合わせていない。対応は全て場当たり的。そして、都合の悪い事は隠す。責任論はお茶を濁す。これほど経営感覚がなく,いい加減な人たちに,日本の国家経営をこれ以上任せるわけには行きません。政権交代でなければ日本は変わらない。私達はマニフェストをさらに進化させ、与党に対するアンチテーゼではなく、まさに積極的に政権政党に国民の総意として推挙されるよう、次の総選挙までに内容、陣容をさらに充実させ、次の選挙で必ず、日本再生の為に政権交代を成し遂げるという強い決意を申し上げ、私の質問を終わります。