第155回国会6号 安全保障委員会 2002/11/26
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■河辺参考人
私も、いわゆるテロ問題と称するものとイラク問題は別な問題であって、それを一緒にしてしまいますとむしろ混乱をすると思いますが、さらにまた、いわゆるテロリストと称される者と特に中東に広く広がっている民衆の不満というものを一緒にすることもまたできないと存じます。
例えば、サダム・フセイン政権がどの程度民衆に、人々に支持されているかどうかはまたこれも大いに疑問がありますが、少なくとも選挙結果に見られたような100%ではないでありましょう。しかし逆に、武力行使が行われることによってサダム・フセイン政権への支持を喚起してしまう、先ほども申しましたが、そのことも否定できない。また、何よりも重要なのは、先ほども他の参考人の先生方もおっしゃっておいででしたが、ダブルスタンダードの問題であるということ、それからもう一つは、異議の申し立てが今できなくなってしまっているということであります。
特に、これはさっきも言いました、いわゆるテロリストと、中東諸国に広がる人々の不満というのは完全に分けていかなければいけないんですが、その不満の方で申しますと、いわゆるインティファーダ、子供たちが石を投げて武装軍隊に立ち向かっていくという、まことにもうほかに何とも言葉の言いようのない、絶望的な光景が出てこなければいけないような状態というのは、人々の不満というものが反映されない、異議の申し立てができない、そこにあるわけです。
先ほども触れましたが、テロ撲滅宣言が採択されることとパレスチナ暫定自治合意はセットであったはずなのに、一方だけがほごにされてしまうのであるならば、ますます絶望的な戦いをせざるを得なくなる、そういう形に人々を追い込んでしまうし、そこにまた人々の支持を与えてしまう。例えば、先ほども触れました国際刑事裁判所の問題、こういったものがきちんと整備されていくこと、それも一例であろうかと思います。
また、先ほど酒井先生が難民のケアの問題にお触れになりましたが、先生方も御存じかと思いますが、実は、パレスチナ難民は難民ではございません。難民条約に基づく難民ではございません。したがって、自分がもといた場所に帰還する権利というのを条約に基づいて保障はされておりません。あくまでも安保理決議によるのみでございます。そういう二重基準がある。世界には、難民である難民と、難民でない難民がある。
これについては、たった一例ですが、レーガン政権下の国連大使でありましたカークパトリックは、こういうふうに言っております。国連には二つの難民基準があるのである、その一方の難民基準、つまりパレスチナ難民にのみ適用されている基準、これはUNRWA、パレスチナ難民救済事業機関という機関がケアしておりますけれども、これを支持していくことはアメリカ合衆国にとって極めて重大なのであるなんということも申しております。
ですから、これはむしろ日米関係の問題になってしまうんですが、そこをどう対応していくのか。私は、いろいろなやり方があると思います。ノルウェーがやったやり方も一つでしょうし、スウェーデンがやったやり方も一つでしょうし、オーストリアや南アフリカがやっているやり方も一つであろうかと思います。
以上でございます。
■前原委員
さらに掘り下げた質問を、田中参考人、酒井参考人のお二人にお伺いをしたいんですが、先ほど酒井参考人がおっしゃった武力攻撃の事後の話、それは、そのケアというのは私も大切だと思います。先ほど田中参考人がおっしゃったように、平和的な解決だけでテロの根絶というのはなかなか難しいので、武力行使もやむを得ない部分もあるだろうという意見に、私は全く賛成です。
ただ、武力だけですべてが解決できるわけがないとする場合に、武力攻撃の事後ではなくて、武力攻撃をする前、あるいは並行して、テロの温床というものをいかに国際社会がスポットを当てて、そこをいわゆる解消するような努力をしなければいけないかというところを、もう少し突っ込んで議論をさせていただきたいと思います。
先ほど田中参考人がおっしゃった、貧困だけではない、社会構造などのいろいろな構造の問題があるんだということをもう少し詳しく言っていただいて、ではそれにどういうふうに国際社会が向き合うべきなのか、対処すべきなのかという話をお聞かせいただきたいのと、酒井参考人には、事後の話ではなくて、では、その温床にスポットを当てるために、今、国際社会、特に日本が何をすべきなのかということをお二人にお伺いをしたいと思います。
■田中参考人
多分、一九九〇年の湾岸危機以降九一年の湾岸戦争に至るまでの事例と重なるかと思いますけれども、少なくとも当時アラブ諸国に根深く存在していた不満、これはサダム・フセインがうまくそれを利用したとも言えますパレスチナ問題に関する国際社会の無関心あるいはその放置の姿勢、そして二重基準の適用、こういった問題を解決する必要に、ある部分国際社会も迫られ、最終的に、イラク攻撃の後にはなりましたけれども、中東和平に向けて、この問題の解決に取り組む姿勢が示されたわけであります。
現状におきましても、アルアクサ・インティファーダ以降、中東和平は完全に崩壊状態にあります。そして、この問題が直接のイラク攻撃等へ関連性はありませんけれども、少なくともこれがテロの温床となること、あるいはテロの温床として使う人たちにある部分口実を与えていることを考えれば、仮に対イラク攻撃が行われるのであれば、あるいはそれ以外の国に対しても、地域に対しても対テロ攻撃が行われるのであれば、中東和平問題、パレスチナ問題の解決に向けての国際的な努力を改めて喚起する必要があると思います。
■田中参考人
ただいまの田中参考人と全く私も同意見でございます。テロそのものの問題というよりも、むしろテロを惹起してしまうような社会的な環境、これはやはりパレスチナ問題に代表される不公正感、ダブルスタンダードの問題というものがイスラム、中東世界に非常に根強いということがございますので、やはり国連を中心とした公正な基準に基づく紛争の処理といったものに貢献していくことが一番の近道であろうと思います。
■前原委員
お二人にもう一点、さらにお伺いしたいんですが、パレスチナ問題、中東問題の解決というのがテロの根っこの部分にあるのはそのとおりだというふうに思います。
では、このパレスチナ問題、今なかなか難しい状況にあると思いますし、またテロ以降、風向きが変わってさらに激しくなっている、またイスラエルの政権が常に強硬と融和を繰り返していてなかなかまとまりがつかないという部分があると思うんです。では、そのパレスチナ問題をどのように解決していくべきなのか、また日本の役割は何なのかということについて、お二人にお伺いをしたいと思います。
■田中参考人
これは非常に処方せんが難しい問題だと思いまして、私もこの問題では必ずしも専門ではございませんので、ここで明確な指針を示すことは残念ながらできません。
ただ、国際的な関心、少なくともその取り組みが現在完全に後手後手に回り、そしてアメリカがほとんどクリントン政権の末期から中央に立って積極的に仲介はしておりましたけれども、それが崩壊して以降はほとんどたなざらしの状態、野ざらしの状態にもう置かれておりますので、それを今後の流れの中で改めて、関心が国際社会としてあるんだ、そしてその問題は全く忘れられているわけではなく、このイラク問題しかり、あるいはパレスチナ問題しかり、それ以外の問題しかり、同等に扱われるということを示していく姿勢は大事だと思います。
■田中参考人
パレスチナ問題の解決のためにということでございますけれども、一点だけ申し上げます。
このパレスチナ問題がなかなか解決がつかない理由の一つとしては、やはりアメリカがどうしてもイスラエルに対して偏った形の判断をせざるを得ないというような、これはさまざまなアメリカの内政的な要件もあるかと思いますけれども、そのような制約がございます。
それに対してやはり日本は、ヨーロッパ諸国と同様になるべく中立的な立場をもって、アメリカのようなダブルスタンダードではないんだというような形を明確に示していくことによって、解決の中心的な役割を果たすことが十分できるかと思います。
■前原委員
最後の質問をさせていただきたいと思うわけであります。
テロ特措法の基本計画に話を戻したいわけでございますけれども、私自身が少し政府の考え方あるいは取り組みに理解ができないというのは、これは政府というよりも与党三党の考え方なのかもしれませんけれども、どのような支援をするかという哲学が極めて不明確であるというふうに私は思っています。
先ほど田久保参考人がおっしゃったような、やはり外交上の理念というものを打ち立てた中で、その方針に従って何をやるか。つまりは、ここまでやったらアメリカは許してくれるだろうとか、あるいはここまでやれば顔が立つということも現実面では私は必要だとは思いますけれども、しかし、何か確固とした理念というものが必要ではないかというふうに思います。
その上で、アメリカ側から非公式的に、先ほどから話が出ておりますような、武力攻撃が終わった事後の内戦状態の収拾というものに対して、例えばPKOを自衛隊として派遣して、そしてアフガニスタンなり、あるいはひょっとしたらイラクの事後についてもそういう話があるのかもしれませんけれども、そういう事後の平和構築に人を出すべきであろうというような意見がありますけれども、それについてどう思われるかということを最後にちょっと、時間が来ましたので簡単にで恐縮でございますが、田久保参考人と田中参考人、酒井参考人のお三方にお伺いをしたいと思います。
■田久保参考人
簡単にお答えいたしますと、これは、法律的にできるかできないかというよりも、政治家として先生方の御判断で、これは中東に一つの大きな役割を日本はこれから果たすきっかけになるというふうにお考えいただきたいと思います。
それは恐らく、イラクが倒れますとサウジアラビアの地位が非常に低下する、イラクの地位が非常に大きくなる、ここに一定の期間アメリカの占領軍がいるだろう、これはサウジアラビアにいる米軍がイラクの方に移って、サウジアラビアの予期される大混乱をここから監視するということになる、中東に地政学的な大変化が起こる、そこで日本が一役、二役買わないということはないだろうというふうに、これはもう先生方の大きな御判断をお願いしたいというふうに思います。
■田中参考人
先生の御指摘のとおり、事後収拾にPKO派遣、あるいは平和構築に向けての自衛隊の役割あるいは我が国の人的な貢献、これはいずれも適切な場合において十分になされていくべきだと思います。
それがないと、やはり日本は、非常に後方ではあるかもしれませんけれども、戦うためには人と船艦を出したけれども、その後の収拾の問題では、事後収拾の問題ではどうも出てこないという部分を残してしまうと思われます。
■田中参考人
PKOを出すべきかという御質問でございますけれども、私は、PKO云々というよりも、むしろ日本に戦後一番期待されておりますのは、やはり経済再建への協力だと思われます。といいますのは、イラクは産油国でございますので、石油さえ出せればその後の戦後復興は非常に簡単だろうと思います、地方統治も含めてでございますけれども。
その場合、現在のイラクの石油施設などをつくりましたのは日本企業でございます。あるいは、かつては八〇年代に、丸紅さんでございますけれども、全国十三カ所の病院建設をしたというようなことがございます。そういう意味で、日本が戦後復興において真っ先にすべきことは、そうしたイラクが戦後復興に向けて土台づくりをしていく、その協力において恐らく真っ先に日本企業に声がかかるものかと思われますので、そういった面で十分機能を果たしていくことができるかと思います。
■前原委員
貴重な御意見、ありがとうございました。
質問を終わります。
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