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前原誠司の「直球勝負」(49)
前原誠司の「直球勝負」(49)
予算委員会の理事を務めて
今年の国会は、1月18日(金)にスタートした。総理大臣や外務大臣、総務大臣、経済財政担当大臣の所信表明演説が初日に行われ、翌週の月曜日と火曜日が衆議院本会議場での代表質問、火曜日と水曜日は参議院で開かれた。その後、具体的な予算案を衆議院の予算委員会で議論することになる。
予算委員会は国会の花形委員会である。議論する委員会室は「第1委員会室」。しばしばNHKで国会中継が行われる、あの委員会室だ。第1委員会室を使う特別委員会もあるが、予算委員会だけは、本会議場と同様の名前立てが設置される。つまり、予算委員会だけは国会においても特別なのだ。「政治とは何か」を、時々聞かれる。正直言って、色々な答えがあると思う。要は、どのぐらいのタイムスパンで政治を考えるかによって、私の答えは変わる。ただ、主要な一つの答えは「国民から預かった税金の使い方を決めること」だ。その意味においても、予算委員会での議論が極めて重要であることは、改めて説明するまでもないだろう。
今まで、何度も予算委員会の質問者席に立ったが、今年の5回ほど、感慨深いものはなかった。質疑の中身だけで言えば、代表の時の小泉総理との議論や、イラク戦争直後の川口外相との法的根拠論も記憶に強く残っているが、質疑の内容というよりも、この1ヶ月のハードスケジュールが、そのような気持ちにさせている。昨年も予算委員会委員として、約1ヶ月間の議論に加わったが、あくまでも1委員としてであった。理事とは、これほど大変なものかを痛切に感じ、参議院に予算案が渡った今、嵐が通り過ぎた後のような脱力感を感じている。それ程、多忙な1ヶ月だった。
予算委員会の理事会は、委員長が1名、理事が9名、オブザーバーが1名、陪席が1名で構成される。衆議院は与党が3分の2以上を占めているので、理事会も同様の構成になる。委員長は当然、自民党。松下政経塾の1期生、逢沢一郎さんだ。与党の理事が7名(自民が6、公明が1)に対し、野党の理事は、筆頭理事の岡田克也さんと私の二人しかいない。共産党はオブザーバー、社民党は陪席だ。オブザーバーは、委員長が許可すれば発言することが出来るが、採決に加わることは出来ない。ましてや陪席は、発言すら許されていない。つまり、7対2の戦いを理事会で行い、質問時間の確保や早期採決の阻止、集中審議の獲得などを行わなければならないのだ。
基本的に与党は、テレビ中継以外の質問をしたがらない。出来るだけ早く、採決をして参議院に送ることだけを考えている。我々野党としては、出来るだけ質疑時間を確保して、予算案の問題点を炙り出し、世論に喚起することを考えなければならない。いつ、予算の質疑に入るかも大きなポイントになる。すんなり入ることを野党が認めると、総括審議や集中審議といった、総理を呼び、出来ればテレビ中継が入る日程を要求し、確保できなくなる。繰り返しになるが、所詮7対2の理事会で決定することだから、色々な理屈、屁理屈を並べて、質疑時間の確保を図らなければならない。こういった理事会が、予算委員会の審議が始まる前からジャブとして始まり、実際、予算委員会が動き出してからも朝、昼、夕と繰り返し行われることになる。
予算委員会は、基本的に月曜日から金曜日までの毎日、朝9時から正午までの3時間と、1時間の休憩の後、午後1時から5時までの4時間、計7時間行われる。理事会は8時40分から行われるが、その前に民主党の打ち合わせ会を8時20分から行う。昼も食事後、理事会。夕方も委員会終了後、先の日程を協議するための理事会が断続的に行われる。単なる委員は、他の委員との差し替えが可能だが、理事は差し替えが出来ず、委員会開催中は基本的にずっと席に座っていなければならない。突然、審議がストップして場内交渉などが必要になることもあるからだ。おかげで最終盤は、腰痛に悩まされた。予算委員会の最中、地元の京都市長選が行われたが、ほとんど応援に帰ることは出来なかった。民主党が応援した門川大作・前教育長が接戦の末、当選されたが、もしものことがあったら、大きな責任を感じていたに違いない。
予算委員会での決定は、随時、民主党の国対(国会対策委員会)に報告したり、相談したりする。予算委員会では、質問者が要求すれば、基本的にすべての大臣が出席しなければならない。従って、予算委員会の動向は、他の委員会にも影響するからだ。質疑時間が決まれば、誰をバッターに立てるかを決めなければならない。他の野党の質問時間の割り振りを決めるのも、民主党の理事の仕事だ。質問者の間で、取り上げるテーマの割り振りはどうするか。与党とのガチンコの折衝は主に岡田筆頭理事が行い、質問者の質問調整などは内容も含めて、松本剛明・前政調会長が精力的に行ってくれた。その分、私の仕事は随分、楽になった。特に、理事でもないのに理事並みに、いやそれ以上の役割を果たしてくれた松本議員には心から感謝している。
そのような舞台回しだけではなく、自分の質問も考えなければならない。もちろん、昨年の秋から予算委員会に備えて様々な勉強や調査は行ってはいたが、イージス艦と漁船の衝突事故のように突発的に起きる案件や、道路特定財源のように、戦略的に集中して質問する案件は瞬発力が求められる。今回の予算委員会では5回、計約4時間、質問に立った。昨年が3回だったから、今年はより多くのチャンスを頂いた。夜には勉強会や様々な会合が毎日、予定として入っているので、質問前日は、ほぼ徹夜状態になる。質問するまでは緊張感があるので睡魔が襲ってくることはまずないが、質問後は、まさに修行僧の苦行と同じ状況になる。
今年の審議では、道路特定財源が主要なテーマとなったが、私は成長戦略、外資導入策、改正建築基準法による混乱収集、医療制度の抜本的な見直し、外交・防衛問題など、幅広く議論することを心がけた。満足に行く点もあれば、納得の行かない点も多々ある。同僚議員の議論も大変、素晴らしかったと思う。スキャンダル物ではなく、これほど中身のある政策議論が行われた予算委員会は、あまりなかったのではないか。だからこそ、最後は強行採決によって、衆議院での議論が打ち切られ、参議院に予算案が送られたことは残念でならない。国民の皆さんのおかげで民主党が多数を占めた参議院で、より掘り下げられた素晴らしい議論が行われることを期待したい。
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