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前原誠司の「直球勝負」(42)
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天下り公益法人の「悪知恵」を斬る
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去る10月10日、衆議院予算委員会の質問において、税金の無駄遣いをなくすためのテーマの一つとして、未だに解消されていない天下り公益法人に対する随意契約を取り上げた。各官庁は特命随意契約で天下り公益法人に仕事を発注し、中央官庁からの天下り官僚を「食わせて」いる。このことは、国民に二つの意味で不利益を与えている。一つは、競争入札が行われないため、予定価格に限りなく近い、極めて高い金額で仕事が発注されていることだ。このことによって余分な税金が使われていることになる。二つめは、民間でできる仕事も公益法人が奪ってしまっている点だ。自由主義経済において「民間でできることはできるだけ民間に」は基本となるべき原則だが、「官業」が「民業」を排除してしまっている。
昨年2月の衆議院予算委員会(平成18年2月6日)で、官僚の天下り先である公益法人が、会計法第29条の適用除外になっていることはおかしい、改めるべきだと私は当時の小泉総理、谷垣財務相に主張した。つまり各省庁が売買、賃貸、請負その他の契約を締結する場合は、一部の例外を除いて競争入札に付さなければならないと会計法第29条で定められているにもかかわらず、公益法人には会計法第29条が適用されない。だから特命随意契約が可能だという論理につながっている。
前原:「今、公益法人には会計法が適用されない。(中略)当然ながら、随契というものではなくて一般競争入札をやるべきだというふうに思われませんか」
谷垣財務大臣:「委員おっしゃるように、会計法では、あくまできちっと随意契約などは例外であると限定してあるわけです。今のように、公益法人のところが抜け穴になっているということがあるとすれば、もう一回会計法をきちっと、どういうものか議論、勉強させていただきたいと思っております」
この質疑を受けて政府は、平成18年6月に各府省において所管公益法人等(所管公益法人、独立行政法人、再就職者のいる民間法人等)との随意契約についての「随意契約見直し計画」を策定し、基本的に公益法人も会計法が適用されることとなった。本年1月には所管公益法人等に限らず、その他の者との契約においても特命随意契約を見直し、合計約2.1兆円の契約が、特命随意契約から一般競争入札等に移行されることになった。従って、平成19年度の公共契約から(一部は平成18年度発注分)、公益法人等には特命随意契約では発注できなくなったのだ。
本来であれば「良かった」ということになるのだが、「霞ヶ関」は一筋縄ではいかない。5月23日付の読売新聞朝刊(大阪本社)に、国土交通省8地方整備局が「公募は名ばかりで民間排除」という記事が一面に載った。つまり特命随意契約をやめて競争入札に移行させるという方針を「骨抜き」にしていたというのである。私は早速、8地方整備局から所管公益法人などへの発注状況を、国交省からヒアリングを行った。その時、国交省が私に持ってきた資料が(表1)である。8地方整備局にはそれぞれ、建設協会や建設弘済会といった公益法人を持っている。東北地方整備局は東北建設協会、関東は関東建設弘済会、北陸は北陸建設弘済会、中部は中部建設協会、近畿は近畿建設協会、中国は中国建設弘済会、そして九州は九州建設弘済会と九州地方計画協会といった具合だ。
| 建設弘済会等への発注実績調 |
| (表1) 17年度と19年度の比較 |
| (単位:件、百万円) |
| |
|
特命随意契約 |
競争性のある契約方式による契約 |
| |
|
弘済会 |
民間等 |
計 |
弘済会 |
民間等 |
計 |
| 17年度 |
件数 |
2,023 |
0 |
2,023 |
0 |
0 |
0 |
| 金額 |
73,046 |
0 |
73,046 |
0 |
0 |
0 |
| 19年度 (7.31現在) |
件数 |
0 |
0 |
0 |
965 |
520 |
1,485 |
| 金額 |
0 |
0 |
0 |
57,681 |
15,373 |
73,054 |
| (表2) 19年度の契約の内訳 |
| (単位:件、百万円) |
| |
合計 |
内訳 |
| 競争入札 |
企画競争 |
公募手続 |
| 弘済会 |
民間等 |
計 |
弘済会 |
民間等 |
計 |
弘済会 |
民間等 |
計 |
弘済会 |
民間等 |
計 |
| 19年度 |
件数 |
965 |
520 |
1,485 |
39 |
174 |
213 |
39 |
344 |
383 |
887 |
2 |
889 |
| 金額 |
57,681 |
15,373 |
73,054 |
607 |
2,085 |
2,692 |
1,946 |
13,261 |
15,207 |
55,128 |
27 |
55,155 |
| うち発注者支援 |
| 件数 |
429 |
184 |
613 |
1 |
0 |
1 |
2 |
184 |
186 |
426 |
0 |
426 |
| 金額 |
33,650 |
8,768 |
42,418 |
12 |
0 |
12 |
66 |
8,768 |
8,834 |
33,572 |
0 |
33,572 |
| 競争入札の例:厚生福祉業務 |
| 企画競争の例:監督補助業務 |
| 公募手続の例:検査補助業務 |
(出典)国土交通省資料
(表1)によると、確かに平成17年度はすべての発注が特命随意契約で行われ、弘済会などが全件を受注しているが、平成19年度には特命随意契約は全くなくなり、競争性のある契約方式にすべて変わっている。しかも、民間企業等への発注も見受けられるようになった。一見、改善されたように見える。しかし、役所の持ってくるこのような資料に騙されてはいけない。(表2)を見ていただきたい。契約の内訳において、「企画競争」「公募手続き」は件数も金額も大きい。弘済会などが受注している件数も多く、単価も高い。何か臭う。「競争入札」と「企画競争」「公募手続き」はどう違うのか、実態を国交省の役人に聞いてみた。幾つかの質問をするうちに、全体像が見えてきた。「企画競争」「公募手続き」は、何とすべてが「随意契約」で行われていることが明らかになった。契約金額で見れば全体の約96.3%が相変わらず「随意契約」で発注されていたのである。国交省の説明はこうだ。「特命随意契約」はやってはいけないということでやめた。そして、様々な入札方式を導入したが、「企画競争」「公募手続き」はすべて応札者が一社しかなかったので、結果として「随意契約」になったというのである。
では、「企画競争」「公募手続き」の参加資格はどのようなものだったのか。同様の業務での実績のある者、あるいは従事できる技術者の条件も、地方整備局OBや公益法人職員経験者しか取得できない資格を新設していたのである。このような条件では、他の民間会社は手を上げたくても上げることはできないではないか。今まで「特命随意契約」で弘済会などの公益法人にすべて仕事を発注していたのだから、同様の業務の実績が参加条件であれば、公益法人しか参加できないのは当たり前だ。このような姑息な入札参加条件を作り、競争入札とは名ばかりで「随意契約」を続けていたのである。
私は福田総理に、こう指摘した。「国交省地方整備局の、このような骨抜きは氷山の一角かもしれない。全省庁を調査して、公益法人への発注状況を国会に提出してもらいたい」。福田総理は「各省庁に切り込んでいく」と答弁された。税金の無駄遣いを許さない。官僚の悪知恵を許さない。そして「民間にできるものは民間に」の基本原則を貫くためにも、この問題をフォローし続けたいと思う。
この問題には、さらに根深い「闇」が横たわっている。私は予算委員会で、冬柴国交相に「なぜ今まで公益法人に対して特命随意契約を続けてきたのか」という質問を行った。冬柴国交相は「専門性と保秘のためだ」と答弁したが、これは大嘘だ。(表3)をご覧いただきたい。8地方整備局の下にある各弘済会などは昨年末まで、民間会社から大量の出向者を受け入れていた。全職員の半数以上にも及ぶ。その多くが土木施行管理技士といった技術者だったのだ。つまり、民間会社から技術者を出向という形で大量に借りてこなければ、公益法人にはこれだけの仕事を行う能力がなかったことを示している。何が「専門性」だということになる。しかも、公益法人だから「保秘」が行えると冬柴国交相は言いたかったのだろうが、半数以上も民間会社からの出向者を受け入れていて「保秘」もあったものではない。要は、天下り官僚を食わせるためだけに公益法人を作り、自らだけでは能力が不足しているので、民間会社から技術者を大量に借りているだけなのである。
さらに問題なのは、出向者を出している民間会社が高い確率で地方整備局から仕事を請けている点だ。(表4)をご覧いただきたい。上の表は、国交省九州地方整備局が発注した事業で、公益法人である九州建設弘済会と九州地方計画協会以外の民間企業が受注できた数少ない事例だが、その多くを九州建設弘済会に出向者を出している企業が落札している。平均落札率(契約金額を予定価格で割ったもの)は何と約99.1%だ。出向者を出していた企業は、このような形で見返りを受けていたのである。もはや公正な発注という、あるべき姿とは程遠い「卑しい」現状が浮かび上がる。
| (表3) 各建設弘済会等の元出向者の状況等一覧 |
| 07.10.09作成 (単位:人) |
| |
全職員数
[出向職員含む]
(06.1.1) |
出向者数
(06.9.30) |
出向元会社へ
戻った人数等
(07.4.1) |
出向元会社から新規採用
(07.4.1) |
弘済会全体の職員数
(07.4.1) |
| 計 |
正規職員 |
契約職員 |
計 |
正規職員 |
契約職員 |
| (社)東北建設協会 |
1,276 |
469 |
405 |
64 |
61 |
3 |
828 |
415 |
413 |
| (社)関東建設弘済会 |
1,415 |
963 |
885 |
78 |
73 |
5 |
547 |
459 |
88 |
| (社)北陸建設弘済会 |
790 |
291 |
242 |
49 |
0 |
49 |
569 |
201 |
368 |
| (社)中部建設協会 |
1,299 |
625 |
509 |
116 |
103 |
13 |
716 |
563 |
153 |
| (社)近畿建設協会 |
817 |
90 |
46 |
44 |
0 |
44 |
657 |
206 |
451 |
| (社)中国建設弘済会 |
934 |
320 |
293 |
27 |
6 |
21 |
662 |
375 |
287 |
| (社)四国建設弘済会 |
671 |
397 |
315 |
82
(81) |
0
(60) |
82
(21) |
347 |
133 |
214 |
| ※ 07.10.1に82名の契約職員のうち、60名を正規職員化、契約職員1名は退職 |
| (社)九州建設弘済会 |
788 |
421 |
324 |
97 |
0 |
97 |
458 |
109 |
349 |
| ※ 契約職員97名については、一年間の勤務状況をみた上で正規職員化を検討 |
| 合計 |
7,990 |
3,576 |
3,019 |
638 |
303 |
335 |
4,784 |
2,461 |
2,323 |
(注1)10月4日付けでご報告した06.1.1現在での全職員数に対応する出向者数が不明であったため、06.9.30現在の出向者数の記載している。
(注2)「出向元会社へ戻った人数等」欄の人数については、出向元会社に戻らずにそのまま引退した方等も含まれると考えられる。
(出典)国土交通省資料
ちなみに、大量の出向者の受入は職業安定法に抵触すると厚生労働省から指摘を受け、(表3)のように出向者は出向元に帰ったり、公益法人に正規社員として採用されるか契約職員に形を変えて残っている。このことからも明らかなように、弘済会などの公益法人は存在意義そのものが無いとしか言いようがない。民営化もしくは廃止が当然の選択だ。
民主党が行った調査によると、各省庁所管の公益法人は約4500あり、その公益法人に約28000人の天下り官僚が「棲息」している。そして、これらの公益法人には半期で約5兆9000億円もの補助金が投入されているのだ。天下りの受け皿としての公益法人はなくし、税金の無駄遣いを無くす。これからも、この分野に徹底的にメスを入れていきたい。
| (表4) 平成19年 支援業務(現場資料作成)一覧 |
| |
負担行為件名 |
契約型式 |
契約年月日 |
予定価格 |
契約金額 |
会社名称 |
参加表明者 |
| 1 |
遠賀川河川事務所飯塚出張所現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
37,065,000 |
36,750,000 |
日本総合コンサルタント(株) |
5 |
| 2 |
平成19年度 福岡外環状道路現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
83,517,000 |
83,475,000 |
(株)アース・エージェンシーコンサルタント |
3 |
| 3 |
平成19年度 有明海沿岸道路現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
83,937,000 |
82,950,000 |
(株)エスケイエンジニアリング |
2 |
| 4 |
北九州国道事務所管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
75,789,000 |
75,600,000 |
(株)ティーネットジャパン |
1 |
| 5 |
松浦川出張所現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
24,885,000 |
24,675,000 |
日本振興(株) |
5 |
| 6 |
佐賀国道管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
74,151,000 |
73,500,000 |
日本振興(株) |
1 |
| 7 |
嘉瀬川ダム工事事務所管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
61,246,500 |
60,900,000 |
(株)ティーネットジャパン |
2 |
| 8 |
平成19年度 長崎管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
74,770,500 |
74,550,000 |
(株)エスケイエンジニアリング |
3 |
| 9 |
熊本管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
85,291,500 |
85,050,000 |
日本総合コンサルタント(株) |
3 |
| 10 |
八代河川国道事務所管内道路現場資料作成業務 |
簡易公募型プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
50,673,000 |
49,350,000 |
(株)コバルト技建 |
4 |
| 11 |
大分河川国道事務所管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
49,276,500 |
49,035,000 |
(株)エスケイエンジニアリング |
2 |
| 12 |
佐伯管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
37,978,500 |
37,800,000 |
日本振興(株) |
3 |
| 13 |
東九州自動車道(佐伯〜県境間)現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
72,460,500 |
72,345,000 |
日本振興(株) |
1 |
| 14 |
東九州自動車道(清武〜日南間)現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
83,181,000 |
82,950,000 |
(株)オリエンタルコンサルタンツ |
3 |
| 15 |
延岡管内河川現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
85,732,500 |
85,050,000 |
日本振興(株) |
2 |
| 16 |
延岡管内道路現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
49,119,000 |
48,825,000 |
日本振興(株) |
2 |
| 17 |
東九州自動車道(県境〜北川間)現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
24,958,500 |
22,050,000 |
(株)横浜コンサルティングセンター |
3 |
| 18 |
大隅河川国道事務所管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
25,210,500 |
25,200,000 |
(株)エスケイエンジニアリング |
2 |
| 19 |
東九州自動車道(志布志〜末吉財部間)現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
61,824,000 |
60,375,000 |
(株)エスケイエンジニアリング |
2 |
| 20 |
鹿児島国道事務所管内現場資料作成業務 |
簡易公募型
プロポーザル方式 |
2007/4/2 |
73,699,500 |
73,185,000 |
日本振興(株) |
3 |
| (出典)九州建設弘済会 |
| ※表4の関連資料 |
| |
会社名 |
同弘済会への出向者数(人) |
| 1 |
(株)エスケイエンジニアリング |
53 |
| 2 |
日本振興(株) |
51 |
| 3 |
(株)コバルト技建 |
50 |
| 4 |
(協)クローバー工業写真センター |
28 |
| 5 |
(株)ティーネットジャパン |
26 |
| 6 |
日本総合コンサルタント(株) |
25 |
| 7 |
西日本コントラクト(株) |
19 |
| 8 |
近代技建(株) |
15 |
| 9 |
(株)西日本建技 |
12 |
| 10 |
(有)マホコンサルタント |
12 |
| 計 |
10社 |
291 |
(出典)九州地方整備局 |
|