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前原誠司の「直球勝負」(41)
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ダム建設は、一旦すべてを凍結すべきだ
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去る10月10日、衆議院予算委員会で質問に立った。70分という限られた時間ではあったが、税金の無駄遣いをなくすための具体的な提案と、対北朝鮮外交について、主に福田総理に質問した。税金の無駄遣いをなくすためのテーマは3点に絞った。一つは無駄な公共事業、二つ目は未だに解消されていない天下り公益法人に対する随意契約、そして多重行政によるコストの無駄だ。天下り公益法人に対する随意契約は次回に譲るとして、この稿では無駄な公共事業を取り上げたい。
今から約8年前の平成11年、民主党は初めて「次の内閣」という仕組みを作った。イギリスの「影の内閣(シャドーキャビネット)」を模した政策決定機関を作ることによって、2大政党の流れを作り、建設的な政策論争が与野党で行われることを目指したのだ。私は社会資本整備ネクスト大臣に任命されたが、初代「次の内閣」では最年少の「入閣」だった。社会資本整備ネクスト大臣は、今の国土交通省、当時の建設省と運輸省を所管とする。
私の大学時代の指導教官である恩師・高坂正堯(こうさかまさたか)先生は、私への遺言として主に3点のことを仰った。一つは、日米関係は色々と困難はあってもうまくマネージメントしなければならないということ。二つめは、集団的自衛権の憲法解釈は変えなければならないこと。そして、もう一つは、外交や安全保障の話ではない。増えすぎた公共事業を抑制しなければ、国力が大きく損なわれることになる、という点だった(先生曰く「膨らみ過ぎた公共事業費を減らさんと、大変なことになるぞ」)。その遺言を受けて、衆議院議員1期目から入札制度の見直しなど、公共事業改革に積極的に取組んできた。公共事業改革は外交・安全保障と共に、私のライフワークの一つである。
鳩山由紀夫代表(当時)の下で「公共事業を見直す委員会」を作った。鳩山さんが座長、私が事務局長を務め、公共事業に詳しい大学教授や市民運動家などに加わってもらい、2年近く議論を積み重ねた。その間、長良川河口堰、諫早干拓、川辺川ダム、中海干拓、吉野川第十堰など、問題視されていた様々な公共事業の現場にも足を運んだ。そして、出された答申を元にして、4本の議員立法を国会に提出した。「公共事業基本法案」「国の公共投資関係費の量的縮減を図る法律案」「公共事業一括交付金に関する臨時法案」「緑のダム法案」である。要は、道路整備、河川整備、土地改良事業、空港整備など、それぞれが中長期計画を持って既得権益化している公共事業費を一本化し、量的縮減を毎年図るとともに、一定期間の後、情報公開を徹底した上で再評価の仕組みを作り、本当に必要な公共事業のみ、行われるような仕組みを作ろうとしたのである。
公共事業は、一旦動き出せば、如何に状況が変わろうとも、止まらない。まさに役所の既得権益そのものなのだ。特にダム建設は、計画策定時から長い年月が経て、当初、想定されていた環境が大きく変わっても、国は方針を代えようとしない。国土交通省は現在、149基のダムを建設中だが、工期は延長され、実際の総工費(見込みも含む)は当初見積もりの約1.4倍(約9兆円)にまで膨れ上がっている。「緑のダム法案」では、現在建設中のダムを一旦すべて凍結し、必要性の再評価を行うことになっている。費用対効果、代替性、当該地域住民への影響、環境への影響などの観点から、ゼロベースで検討を加えるのだ。
今回の質問では、二つのダム建設を取り上げた。一つは球磨川水系の川辺川ダム、もう一つは淀川水系の大戸川ダムである。川辺川ダムは1976年に計画が策定されたが、当初の総工費見積もりは約350億円だった。しかし、30年以上経った今、未だにダム本体の工事には着手できていないにもかかわらず、移転費用などで現在までに約2043億円が費やされている(平成18年度まで)。しかも、当初は治水、農業利水、水力発電の機能を併せ持つ多目的ダムという触れ込みだったが、農業利水は受益者の賛同が法定の3分の2以上集まらず、農水省は死者の名前まで寄せ集めて強行しようとしたが裁判に負けて断念。水力発電を計画していた電源開発も今年、発電事業からの撤退を決めた。つまり、ダム建設の目的が大きく変わったのである。多目的ダムでなくなれば国の補助率も変わり、地元負担も大きくなる。地元自治体も、国が行うことだからといって、おいそれとは「イエス」といえない財政状況にある。
また、水質、水流など環境面での影響もさることながら、治水面でも新たなダムを作ることに、むしろ不安を感じる地域住民も多い。球磨川上流には市房ダムがあるが、下流の住民で、「ダムが出来た後、水の流れが変わった。ある時点を過ぎれば急に水嵩が増えるようになった」と証言する方も多い。ダムが満杯になれば、決壊を防ぐため、もはや水を貯めることはできなくなり、放流を始めるからである。もし川辺川ダムが出来れば、ある時点まで洪水調整はできるだろうが、仮に二つのダムが満杯になればもはや統合管理は出来なくなり、合流地点の人吉から下流は、一挙に球磨川、川辺川の水が流れてくることになる。ダムが結果的に、より甚大な洪水を引き起こす可能性もあるのだ。
私は、決してダムがすべて無用だ、無駄だといっているのではない。一定の洪水調整は出来るだろう。しかし万能ではない。そして、国土交通省の「ダム建設ありき」「情勢変化があろうが止めない」という姿勢ではなく、平成9年に改正された河川法の趣旨に則り、「環境への配慮」「水域住民の意見の尊重」といった点も考慮されなければならないのだ。片山善博・前鳥取県知事は、前任者が計画していた中部ダムの建設中止を2000年に決めた。「長い行政経験から、中部ダムの必要性を説く言葉には、どこかまやかしがあると感覚的に分かっていた。しかし、数字のトリックは私だけでは分からない。担当者に『本当のことを言って結論を出そう』と説得して、その気になってもらった」。片山・前知事の手法は、徹底的に情報公開条例を活用することだった。ダム建設の試算など、素人には分かるはずがない。しかし専門家は国民の中にも大勢いる。情報公開を行うことにより、行政の試算を白日の下に晒そうという手法を採ったのだ。当初、県の試算はダムが140億円で、ダムと同等の治水効果が期待される堤防強化などの護岸工事は147億円だった。試算をやり直した結果、ダムは230億円かかる一方、堤防強化などは78億円で済むことが明らかになった。とにかく徹底した情報公開が必要だ。行政の無謬性を突いて、税金の無駄遣いをやめさせるには、情報公開が大きな威力を発揮する。
淀川水系の大戸川ダムも、おかしな方針転換がなされた。たった2年で国土交通省は凍結から建設に梶をきったのである。一旦建設を中止したダムの復活例は、これが初めてである。平成17年7月に国土交通省近畿地方整備局が発表した「大戸川ダムの調査検討(とりまとめ)」には、こう記されている。「保津峡、岩倉峡の開削は、桂川、木津川及び淀川における水害の危険性を増大させるおそれがあるため当面実施することはできません。保津峡、岩倉峡を開削するまでは、天瀬ダム再開発実施後においては、大戸川ダムの洪水調節により宇治川及び淀川での洪水調節効果は小さいです」「大戸川下流においては、河道への土砂堆積の軽減も含め、大戸川ダムの洪水調節による効果は大きいですが、治水単独目的の事業となることで治水分の事業費が増加し経済的にも不利になり、河道改修等のダム以外の対策案のほうがコストの観点から有利です」。にもかかわらず、たった2年で方針は転換された。その理由は、中流域での新たな河川改修の影響を挙げている。改修で川底を掘れば下流へ流れる水量は増大するので、下流域の安全のためには上流で水を堰き止めるダムが必要だ、と。しかし、国土交通省のこの論理だと、河川改修をするたびに新たなダムや手当てが必要になり、事業が事業を生むという構図を浮かび上がらせる。淀川水系においても、ダムと河川改修に関する治水効果と費用を情報公開して、専門家に精査してもらうことが必要だ。
淀川水系には、改正河川法の趣旨に則り、淀川水系流域委員会が作られている。今本博健・京都大学名誉教授などが歴代委員長を務め、できるだけダムに頼らない治水を提言してきた。しかし本年2月、近畿地方整備局はダムの原則中止を提言していた流域委員会を休止し、半数の委員を入れ替えた。第3者委員会を「御用委員会」に変えるようなやり方は、改正河川法の趣旨に反する違法行為との批判を免れない。私は福田総理に質した。ダム以外の治水方法とそのコスト比較を、情報公開法の下で行うこと。さらに、改正河川法の趣旨に合致した「環境配慮型」「地元住民参加型」の治水対策を行うこと。総理からは明快な答弁はなかったが、私は徹頭徹尾、このような公共事業の見直しを国会で取り上げ続けていく。
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