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前原誠司の『直球勝負!』

前原誠司の「直球勝負」(35)

〜 民主党が果たすべき使命 〜

参議院選挙が終った。民主党は60議席の大躍進。他方、自民党は37議席と大敗を喫した。参議院では完全に与野党が逆転し、日本の民主主義は新たなステージ、未開の領域に入ることになる。ご支援を頂いた皆様に、心から御礼を申し上げる。

自民党は歴史的な大敗を喫したが、安倍総理は続投を表明した。「私か小沢さんか、どちらが総理にふさわしいか選んでもらいたい」と選挙前の公開討論会で安倍さんは言い切っていたはずだ。本来、参議院選挙は政権選択の選挙ではないが、自らが政権選択の選挙にしてしまったにもかかわらず、惨敗しても総理をやり続けるというのは如何なものか。しかも、安倍政権が再浮揚するのは、なかなか容易ではない。安倍さんの後継がいないから、安倍さんでズルズル引っ張るというのは自民党のお家事情以外の何物でもなく、国民にとっては大変不幸なことだ。対外的な信用、ひいては外交力に大きな影を落とすことは必至である。

今回の選挙の勝因は、「複合的な敵失」に因るものだ。決して、我が党が前向きに評価されて勝ち得たものではない。このことは、しっかりと肝に銘じなければならない。もちろん、長妻昭・衆議院議員が長年にわたって追求してきた「消えた年金」問題が大きく影響したのは言うまでもないが、初めは隠し通そうとして、問題が大きくなると、選挙前ということもあり次々と場当たり的な対応策を繰り出してきた政府の姿勢が、むしろ不信感を増幅させた。安倍総理や中川幹事長が、「消えた年金」問題を、10年前に厚生大臣だった菅さんの責任だと言ってみたり、あるいは社会保険庁の職員は民主党支持の自治労系だから、このような事態になったんだと指摘するに至っては、見苦しいとしか言いようがなく、宰相の器を疑わせるのに十分だった。

また、「女性は子供を産む機械」と発言した柳沢厚生労働大臣、アメリカによる長崎への原爆投下は「しょうがない」と発言した久間・前防衛大臣などの失言や、事務所経費・「政治とカネ」の問題で説明責任を果たさなかった佐田・前行革担当大臣や伊吹文部科学大臣、自ら命を絶った松岡・前農水大臣、顔に絆創膏を貼った赤城農水大臣など、国民が不信・不満を感ずる事案が余りにも多く起きた。

さらに、小泉前首相が進めた構造改革以降、公共事業は大幅に削減されたが代替策を採らなかったため、地方は大いに疲弊し、経済の堅調な都市との地域間格差が拡大してしまった。また、パートや派遣などの非正規雇用は増え、他方で正規社員が減ることにより、収入の上がらない国民も増えており、それが根強い不満として横たわっていることも大きな要因だろう。

そして、決定的だったのが強引な国会運営だ。2年前の衆議院選挙で3分の2を占めるに至った与党が数に物を言わせる国会運営に終始し、ザル法である「政治資金規正法」、天下りのなくならない「人材バンク法」、年金保険料の他への流用を認める「社会保険庁改革法」など、強行採決を繰り返し、次々と可決していったことが国民の不信感、不満を増幅させていった。

日本共産党は「確かな野党」でも結構だが、民主党は「確かな与党」を目指さなければならない。参議院で過半数を占めた今、次の総選挙で政権交代が実現する可能性が俄然、現実味を帯びてきた。しかし、参議院での多数という、数に物を言わせて国会を混乱させ、国民生活に不安を与えるとしたら、今度は民主党が国民に手厳しい判断を下されることになるだろう。国民・国家のために大所高所に立った判断を行い、むしろ建設的な提案を参議院で法案を提出するなどによって示していく。民主党が、本当に政権を担いうるかどうかが今後、厳しく問われるのだと自覚しなければならない。

その上で、民主党が実践をしなければならないのは以下の諸点だと考える。

(1)いたずらに政権を混乱させるだけの、反対のための反対は絶対にしない。

(2)ザル法である政治資金規正法の改正案や、天下り禁止法案、年金保険料流用禁止法案など、参議院選挙で訴えた公約を法律案にして参議院に提出する。

(3)対案・提案路線を定着させ、年金制度改革や行政改革、特別会計改革、地方分権などでイニシアティブをとる。

(4)来るべき総選挙に備え、政権戦略ビジョンを全党的な徹底した討論を経てまとめ、政権公約(マニフェスト)を作り上げる。

(5)政権獲得を睨み、党としての議員外交をより積極的に推進する。

(6)早期解散を想定して、300小選挙区の候補者を年内に決定する。

政権を担うことは、すなわち、国民の命と生活を預かると共に発展させ、併せて日本の主権を守ることを意味する。極めて重い任務だ。参議院選挙での大勝は「敵失」であることを常に認識し、驕らず、しかし着実に政権獲得への準備を進めなければならない。