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前原誠司の『直球勝負!』

前原誠司の「直球勝負」(27)

〜 政令指定都市を抱える道府県の矛盾 〜

地方自治法の第 252 条は、政令で定める指定都市、いわゆる政令指定都市について書かれている。人口 50 万以上であれば、都道府県が行う教育、福祉、社会資本などの行政サービスを政令指定都市として行えるとされている。具体的には札幌、仙台、さいたま、千葉、横浜、川崎、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡の各市であり、4 月 1 日には新潟市と大阪の堺市も政令都市の仲間入りをする予定だ。また、静岡県の浜松市や岡山市なども、政令指定都市入りを目指している。

私は京都市選出の京都府議会議員を 1 期、務めたが、政令指定都市内における道府県会議員の役割はきわめて限定的だと感じている。 3 月 2 日の衆議院・予算委員会で、私は横浜市選出で横浜市議を経験された菅・総務大臣と政令指定都市について議論した(詳細は議事録を読んでいただきたいと思います)。菅総務相も警察、高校、市内にある県立病院などに限定されるのではないかと答弁があった。あと付け加えるとすれば 1 級河川の管理を国から道府県に委任されている場合が、それに加わる。つまり、極めて限られている。私は党代表を務めている時、政令指定都市選出の道府県会議員の数が多すぎると発言し、マスコミにも大きく取り上げられ、当該議員からは批判が、他方、政令指定都市の市会議員からは党派を超えて賛同が寄せられた。菅総務相もそのことを取り上げ、「前原委員が代表のときに思い切って発言されたことが大変波紋を呼びましたけれども、そのとき私は、違う政党ではありますけれども、心から見識のある発言だなと思いました」との答弁があった。

私は、政令指定都市選出の道府県会議員が悪い、と言っているのではない。仕組みがおかしいのだ。(表 1 )をご覧いただきたい。大阪の堺市を先取りして加えてはいるが、政令都市の人口が、それを抱える道府県の人口と比べて、どのぐらいの規模かをあらわしている。続いて(表 2 )をご覧いただきたい。道府県会議員の定数と政令指定都市選出議員の数、そしてその比率を表したものだ。北海道や宮城県、そして広島県は若干、人口比に比べて政令都市選出の議員数を減らしてはいるが、他の自治体は人口比にほぼ比例している。我が京都や横浜・川崎といった二つの政令指定都市を抱える神奈川は、政令指定都市から選ばれる議員の数が過半数を上回っている。

(表1)政令指定都市を有する道府県ごとの人口及び政令指定都市ごとの人口
(平成17年国勢調査結果   平成17年10月1日現在)
地域 人口
北海道 5,627,737 33.4
札幌市 1,880,863
宮城県 2,360,218 43.4
仙台市 1,025,098
埼玉県 7,054,243 16.7
さいたま 市 1,176,314
千葉県 6,056,462 15.2
千葉市 924,319
神奈川県 8,791,597 55.8
横浜市 3,579,628
川崎 市 1,327,011
静岡県 3,792,377 18.5
静岡市 700,886
愛知県 7,254,704 30.5
名古屋市 2,215,062
京都府 2,647,660 55.7
京都市 1,474,811
大阪府 8,817,166 39.2
大阪市 2,628,811
堺市 830,966
兵庫県 5,590,601 27.2
神戸市 1,525,393
広島県 2,876,642 40.1
広島市 1,154,391
福岡 県 5,049,908 47.4
北九州市 993,525
福岡市 1,401,279

(表2)道府県議会の議員定数と指定都市選出議員の数
平成19年3月1日現在
※ 指定都市の法令上の根拠:地方自治法第252条の19

地域 道府県議会
議員定数
うち 指定都市
選出議員数
北海道 110 28 25.5
宮城県 63 23 36.5
埼玉県 94 15 15.9
千葉県 98 13 13.2
神奈川 県 107 56 52.3
静岡 県 78 15 19.2
愛知県 106 34 32.0
京都府 62 35 56.4
大阪府 112 44 39.2
兵庫県 93 23 24.7
広島県 70 25 35.7
福岡県 88 40 45.4

繰り返しになるが、私の趣旨は当該議員を批判することではない。そもそも政令指定都市とは、都道府県が持つ権限の多くを委譲された「都道府県並みの市」なのである。その地域の道府県会議員は、他の地域の道府県会議員と比べて、自ら関わることのできる権限の多くが市に委譲されており、極めて少ないのだ。であれば、人口比でそのまま、道府県会議員を選ぶのは政令指定都市の趣旨に反しており、税金の無駄遣いと言わざるを得ない。

もう一点、大いなる無駄が存在する。(表 3 )と(表 4 )を見比べていただきたい。(表 3 )は直近、政令指定都市になった3市の職員数を、移行前・移行後数年、調査したものだ。権限が大きく県から委譲されたにもかかわらず、職員数の増減はほとんどない。これは褒められるべき事柄だ。他方、(表4)を見ていただきたい。政令指定都市が県内に生まれたにもかかわらず、県庁の職員は大幅に減るどころか、宮城県や埼玉県は職員が増えている。多くの権限、仕事を市に譲ったにもかかわらず、県庁の職員が減るどころか増えているのである。これも、多大な税金の無駄遣いと言わなければならない。

(表3)政令指定都市移行前後の市の職員数推移(単位:人)
移行年月日 移行2年前
職員数
移行1年前
職員数
移行1年目
職員数
移行2年目
職員数
移行3年目
職員数
移行4年目
職員数
移行5年目
職員数
仙台市 平成元年
4月1日
10,629 10,721 10,890 10,913 11,032 11,153 11,187
千葉市 平成4年
4月1日
7,902 8,036 8,065 8,093 8,115 8,118 8,111
さいたま市 平成15年
4月1日
9,131 9,718 9,713 9,643 9,574 9,494

(表4)政令指定都市移行前後の県の職員数推移(単位:人)
移行年月日 移行2年前
職員数
移行1年前
職員数
移行1年目
職員数
移行2年目
職員数
移行3年目
職員数
移行4年目
職員数
移行5年目
職員数
宮城県 平成元年4月1日
(仙台市
指定都市に)
29,610 29,740 29,903 30,328 30,517 30,584 30,670
千葉県 平成4年4月1日
(千葉市
指定都市に)
67,008 68,118 67,531 67,196 67,060 66,538 66,183
埼玉県 平成15年4月1日
(さいたま市
指定都市に)
63,861 63,577 63,883 64,161 64,370 64,526

以前、政令都市を抱える知事二人(一人は前職、もう一人は現職)に同じ質問を投げかけた、「今の役所の職員は、どのくらい減らすことが可能ですか」と。二人の知事からは、図らずも同じ答えが返ってきた、「今の半分から3分の2は減らせるね」。実際に仕事に携わった知事の皮膚感覚では、職員の数は多すぎる、3分の1から2分の1で仕事をこなすことが可能だと言うのだ。

地方公務員法第28条には、分限免職に関する規定が書かれている。「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、または免職することが出来る」「一〜三(省略) 四 職制もしくは定数の改廃または予算の減少により廃職または過員を生じた場合」。つまり、行政機構を変えて過員が生じたときに、民間企業と同じようにリストラは可能だと法律に書かれているのである。

もちろん、働いている人たちのことを考えて、その後の再就職の世話は責任を持って行うことが大切だ。しかし、税金の無駄遣いは絶対によくない。行政機構の矛盾をこれからも指摘し続け、「行革なくして増税なし」を実践していきたい。同時に、国、国の地方支分部局、都道府県、政令指定都市、中核市、特別市、市町村という多層的な行政機構はスピードとコストの多大な無駄を生んでいる。あくまでも政令指定都市の問題は過渡的な問題に過ぎず、基礎自治体、道州、国といった3層構造に「国のかたち」を変えていく過程で、今まで指摘した問題点などは解消されなければならない。