プロフィール記事・論文活動写真館国政報告会行事のお知らせ議事録リンク開票結果直球勝負!質問主意書
前原誠司の『直球勝負!』

前原誠司の「直球勝負」(17)

教育を考える2
〜様々な取り組みを行う教育現場からの報告〜

「直球勝負」(16)で「コミュニティ・スクールの勧め」と題して私見を述べた。その際にも触れたが、教育基本法を約60年ぶりに改正したからといって、今の教育に関わる問題が解決するとは全く思わない。政策論や、ましてや観念論ではなく、地に足がついた、具体的な運動論でしか「現場」の問題点は解決しない。学校を変え、先生の意識を変え、親の意識を変え、地域を巻き込むことでしか、教育は変わらない。つまり、様々な試行錯誤の中からモデル校が生まれ、その成功事例を広めることによって、ボトムアップ型の教育改革がうねりの様に起こるのではないだろうか。そこで、私が今まで行った教育現場の視察からいくつかを選び出し、どのような点で面白く、効果が期待できるかについて触れてみたい。

(1)京都市立御所南小学校

「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」において、全国のモデル校と言われているのが、この御所南小学校である。コミュニティ・スクールは、簡単に言えば、保護者や地域の代表者で構成される学校運営協議会が、学校の運営に一定の責任を持つ学校のことだ。

コミュニティ・スクールのモデル校なので視察も多いようだが、子供たちは視察慣れしていて、ぞろぞろと入っていく見学者に気を取られる子供はほとんどいない。私たちが見学したのは総合学習の授業だったが、祇園祭のお囃子「コンコンチキチン、コンチキチン」を笛で練習をしていた。教えているのは先生ではなく、地元の鉾保存会の方々だ。他には、神社の宮司さんが京都のお祭りの話をしたり、保護者の知り合いという縁で著名な作家が「きれいな文章の書き方」と題して授業をしたこともあるそうだ。

総合学習の授業内容を決めるのは、学校運営協議会である。校長先生によると、総合学習の授業内容について、保護者や地域の人たちが、子供たちに関心を持ってもらおうと面白い知恵を出し合うので、子供たちが授業に集中する力が自然とつき、他の教科における理解度も高まるということだった。現に、御所南小学校の生徒の学力は他の公立小学校の平均よりも高く、その結果、御所南学区の地価・マンションの価格が高くなっているということだった。まさに、現代版「孟母三遷」が起きているのである。

(2)東京都杉並区立和田中学校

リクルートのトップ・セールスマンだった藤原和博さんが、和田中学校の校長先生になって、約6年が経過した。教師や地域の方々の既成概念などの抵抗を受けながらも、様々なユニークな改革を手がけてきた。例えば、学校の庭などの手入れは地域の人たちがボランティアで行うようになった。常に敷地の中を地域の人たちがスコップなどを持って出入りしている姿が見受けられる。「よのなか科」という授業の導入も、民間校長先生の取り組みの柱だ。私たちも、「ハンバーガーショップの店長になろう」という有名な「よのなか科」の授業を、参観というよりは、中学2年生の子供たちと共に参加させてもらった。

どこにお店を置けばお客さんはたくさん来るのか、どのようなお店は繁盛していて、逆にどのようなお店は廃れていくのか、ハンバーガーの原材料はどのようにして日本のみならず世界各地から集まってきているのかなど、子供たちが関心を持つテーマを題材に、社会の成り立ちや経済の動きなどを、ハンバーガーショップの店長になったつもりで「体験」していく。ちなみに、流行るお店とそうでないお店の比較は、近くのお店、例えば八百屋さんなら流行っている八百屋さんとそうでない八百屋さんを2店、喫茶店なら両極端な喫茶店を2店選んで、子供たちが直に観察して、なぜ流行るのか、なぜ流行っていないかを分析することが宿題だ。授業に参加して、子供に色々な観点から自ら考えさせることを、この「よのなか科」は目指しているのだなと感じた。とにかく、子供は楽しそうに、この授業に望んでいるのが印象的だった。

杉並区は中学校では学区制をなくしている。従って、学区を越えて子供たちが自ら行きたい中学校を選ぶことが可能となっているが、藤原先生が着任する前の和田中学校の全校生徒は 170 名弱だったが、今では 300 人近くにまで増えている。御所南小学校も同じだが、創意工夫を学校側が行い、子供たちが行きたい、保護者が行かせたい学校を作ることによって、学校の選択が自然と進むのだと感じる。