前原誠司の「直球勝負」(14)
北朝鮮問題にどう取り組むか
(1)言語道断で絶対に認められない暴挙
10月9日、北朝鮮が核実験を行ったと発表した。地震波が観測されたのは午前10時34分ごろである。不思議なのは各国が発表しているマグニチュードがバラバラだということだ。M3.6からM4.9までバラつきがあり、日本でも気象庁はM4.9、気象協会はM4.0だ。恐らくM4.0前後であり、それほど大きな爆発ではなかったのではないかと推察される。ただ、長らく核実験かどうかも疑問視されていたが、14日(日本時間)になってアメリカが核実験に伴う放射性微粒子を採取・確認したと発表したことで、規模はそれほど大きくなくても核実験であったことはほぼ間違いないと考えられるに至った。いずれにしても、国際社会、特に東アジアの平和と安定に対する許しがたい暴挙・挑発であり、絶対に看過出来ない。北朝鮮は日本に到達するミサイルも有しており、核弾頭を搭載すれば日本は壊滅的なダメージを受ける。これほどの脅威は存在しない。戦後経験したことのない未曾有の危機だとの認識の下、冷静かつ毅然と党利党略を排して「オールジャパン」で解決に向けて取り組む決意だ。
この核実験を受けて日本政府は、北朝鮮に対し厳重に抗議するとともに、北朝鮮のすべての船舶の入港禁止、北朝鮮のあらゆる産品の輸入禁止、そして北朝鮮国籍を有する人物の入国禁止といった独自の制裁を決定し、すぐに実行に移した。また、国連安全保障理事会は14日夜(日本時間は15日午前3時)、国連憲章第7章・第41条に依拠する北朝鮮経済制裁決議案を全会一致で採択した。この決議によって、核関連物質の拡散防止などを目的とした船舶検査や金融制裁が実施されることになる。そして、国連加盟国を中心として、国際社会が一致結束して、北朝鮮の核放棄、核開発断念に向けて努力することになった。北朝鮮の最高指導者である金正日委員長は、自ら蒔いた種によって自らが直面する極めて深刻な状況を真摯に受け止め、破滅的な最後しかありえない「瀬戸際外交」を、直ちに放棄すべきである。
(2)「圧力」だけでなく「対話」を模索すべき
日本の独自の追加制裁と、国連決議に基づく金融制裁などには当然、賛成する。金正日は自らが行った暴挙に対し、自らその責めを負うべきだ。ただ、圧力だけをかけ続ければ良いというものでもない。対話の糸口も探さなければ、追い詰められた北朝鮮が暴発する可能性も十分考えられる。暴発を招かないリスクマネージメントも必要だ。その方策として次の2点の提案を行いたい。
一つは、米朝直接協議を同盟国であるアメリカに求めるべきだ。アメリカは米朝直接協議を頑なに拒否し続けてきた。これは、クリントン政権時に直接協議を行い、北朝鮮に裏切られたという苦い経験によるところが大きい。1994年、アメリカは北朝鮮の核関連施設の空爆も視野に入れて北朝鮮と対峙してきたが、北朝鮮が核開発の放棄を行うとの約束を取り付け、米朝枠組み合意にこぎつけた。その合意に基づいて、日米韓が中心となってKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)という北朝鮮に対する支援組織を多国間で作り、北朝鮮が核開発を放棄する見返りとして重油の提供や軽水炉の建設を行ってきた。しかし、北朝鮮は密かに核開発を継続し、その政策的失敗を当時野党であった米共和党は厳しく糾弾していたのである。その経緯もあって、ブッシュ政権は米朝直接協議には否定的だ。ブッシュ政権の内部にいた高官に聞いた話だが、現政権内にも直接対話の必要性を説く勢力はいるのだが、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領は決して、その意見に耳を貸そうとはしないようだ。イラクと違って石油という資源もなければ、特別の関係であるイスラエルにほとんど関係のない北朝鮮には無関心だったという面も往々にしてあるだろう。
しかし、北朝鮮には石油はなくても、北朝鮮の各関連物質が流出・拡散し、特定の国やテロ組織の手に渡ればアメリカにとっても深刻な脅威となる。同盟国として日本はアメリカに対して、米朝直接協議を説得すべきである。
もう一つは、六者協議のメンバーで、北朝鮮を除いた5カ国(日本、アメリカ、中国=議長国、韓国、ロシア)が早急に集まって、六者協議のテーブルに北朝鮮が一刻も早く復帰するよう知恵を絞り、北朝鮮に働きかけるべきだ。これに対して、議長国である中国は否定的で、あくまでもアメリカが北朝鮮と直接議論するべきだとの立場を崩していないが、5カ国協議を否定することの根拠にはならない。日本は各国に特使を派遣して、5カ国協議の実現に努力すべきである。
(3)船舶検査に日本は参加すべき
先ほど述べたように、国連憲章第41条をもとに、北朝鮮に対して経済制裁、そして核関連物質の流出を防ぐために船舶検査を行うことが国連安保理において全会一致で採択された。これによって、国連加盟国は実施に向けての各自の判断を行うことになる。核関連物質がテロ組織の手に渡ることを恐れるアメリカは船舶検査を積極的に行うことになるだろう。その時、当然ながら同盟国であり、米軍基地がある日本に協力を要請する。私は、日本の出来ることはむしろ進んで行うべきだと考える、北朝鮮の核実験で、どの国が最も具体的な脅威を感ずるか。もっとダイレクトに言えば、北朝鮮が暴発し、攻撃を仕掛けてくるとすればどの国か。その可能性が最も高いのは日本だ。だからこそ、日本は当事者意識を持って、船舶検査、主には後方支援に参加すべきだと考える。
ただ、そのような活動をしていて武力行使の一体化と判断される状況に至るケースは十分に考えられる。あるいは他の国の船舶が攻撃を受けた場合、日本は手助けせずに見過ごすのか。このような、いわゆる集団的自衛権に関する現憲法解釈の問題は避けて通れない。周辺事態、シーレーン防衛、そしてミサイル防衛については憲法解釈を変更してでも、集団的自衛権を行使すべきと、今まで持論として主張してきた通りだ。
一方で、国連決議が採択されても、それを根拠に船舶検査を行う法律は日本にはない。周辺事態と認定されれば船舶検査が出来る法律はある。従って、今ある法律を改正して、国連決議があれば船舶検査が出来るようにするのか、あるいは、経済制裁を含む国連決議が採択されれば、周辺事態と認定するという解釈を行うか、または特別措置法を今回限りで作るのかのいずれかである。
外交交渉も本格化していくだろう。「ポリシーチェンジ(政策変更)」から「レジュームチェンジ(体制変更)」に、金正日政権に対する考え方もアメリカを中心に大きく変わる可能性がある。他方、イラクの例を紐解くまでもなく、ただ金正日体制が崩壊すれば良いというものではない。ポスト金正日の「ブループリント(青写真)」も同時並行して考えることは、中長期的には必要不可欠だ。
いずれにしても、戦後、日本が直面する最大の安全保障上の危機だとの認識の下、しっかりと対応することを国民の皆様にお約束する。
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