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前原誠司の『直球勝負!』

前原誠司の「直球勝負」(11)

日韓フォーラムに参加して

8月の29日から31日まで、兵庫県の淡路島で日本国際交流センター主催の日韓フォーラムが開催され、参加させて頂いた。去年は同時期、韓国の済州島で開かれ、案内を頂いていたのだが、いわゆる「郵政解散」で残念ながら出席できなかった。日本側の代表者はキッコーマンの茂木会長、韓国側は孔・元外務大臣で、それぞれ政治家や学者、マスコミ、財界人などが約20名ずつ、計約40名が参加した。日本国際交流センターはNPOの草分け的存在で、理事長である山本正さんの人柄、バイタリティー、国際人としての鋭い着眼点、視野の広さなど、個人の力量によるところが非常に大きい。特に人間の安全保障の分野では、日本における第一人者の一人である。今まで、米、英、豪などとの議員交流に大きな役割を果たして来られた。

私は2日目の「東アジアの安全保障の課題と日韓協力関係」というセッションで、日本側を代表して約15分、基調報告をさせていただいた。まず、東アジアの安全保障の課題にはどのようなものがあるかという点で、次のようなポイントを列挙した。

(1)北朝鮮の核・ミサイル開発と拡散
(2)中国の軍事力増強
(3)台湾問題
(4)米軍のトランスフォーメーション(再編)
(5)日中間の海洋権益問題
(6)日韓間の領土・EEZ(排他的経済水域)問題
(7)テロ・海賊対策
(8)食糧安全保障とエネルギー安全保障
(9)人間の安全保障(人権、鳥インフルエンザやHIV等の感染症対策など)
(10)環境問題(特に中国・ロシアから生み出される環境汚染)
 
そして、あるべき日韓協力関係という点では以下のようなレジュメを用意し、サマリーをスピーチした。

*あるべき日韓協力 〜日韓米3カ国の連携強化が鍵〜

日韓関係は極めて重要な2国間関係であると、私は考える。距離的な近いということは重要な要件だ。第二次世界大戦後、高度経済成長を達成し、アジア地域の経済をリードしてきたのは、日本と韓国である。両国とも資本主義経済、民主主義体制、自由貿易体制を基本とし、基本的人権の重要性を認識するなど、根本的な価値観を共有している。朝鮮半島と中台といった、冷戦構造が残るこの地域においては、共通の体制・価値観を持つ国が連携することは極めて重要である。

さらに、朝鮮半島の非核化、北朝鮮の核問題の平和的解決、中国の安定した発展を望むという点においても、日韓両国の利害は本来、一致するはずだ。このような観点から、日韓協力は極めて重要であり、不可欠であると考える。

以上のような観点に立って考えれば、両国が同盟関係を結んでいるアメリカを加えた日韓米3カ国の連携強化は、両国の安全保障を考えた場合、基本に据えなければならない大事なポイントだ。北朝鮮の核問題を解決するための6者協議も、日韓米3カ国が一致結束して議長国である中国に努力を促し、ロシアも巻き込んだ形で北朝鮮を説得する。本来、北朝鮮が核開発を放棄し、具体的なプロセスに入るまでは、食糧や肥料といった経済的な支援は原則として行うべきではない。唯一例外は人道支援だが、アメリカが行っているように国際機関を通じ、厳しい監視・モニタリングが確保された上で行われるべきである。

去る7月5日に北朝鮮が7発のミサイルを発射したが、全会一致で国連決議が採択されたように、北朝鮮のミサイル発射を日韓両国で非難するとともに、毅然とした態度でミサイルは再発射をやめるように求めていかなければならない。

中国は18年連続して、軍事費が対前年度比10%以上の伸びを示している。アメリカ国防総省は、中国の軍事費は公表ベースの2〜3倍ではないかとの懸念を示し、イギリスのあるシンクタンクは実際の軍事費は公表の約1.7倍だと分析している。いずれにしても、いたずらに軍事費を膨張させ続けることは地域の戦略環境を不安定化させ、軍拡競争を生む要因ともなる。台湾や他の係争地域の武力併合には強く反対すると同時に、派遣国家とみなされないための透明性確保と軍事費抑制を日韓両国とも中国に求め続けるべきである。ちなみに、台湾問題については当事者間の問題であり、「一つの中国」という考え方を尊重すると同時に、どちらかによる武力統一には反対し、話し合いにおいて解決されることを日韓間の共通認識であるべきだ。

日本は中国との間で、海洋権益に関する係争案件を抱えている。内政不干渉の原則に立って、韓国はこの問題には関与せず、中立的な立場で発言してもらいたい。日韓間の領土問題、つまり竹島(独島)問題、そして、それに関わる排他的経済水域の問題に関しては、お互い大所高所に立って戦略的に棚上げすることを提案したい。あるいは、竹島は歴史的・国際法的に見ても日本固有の領土だが、韓国側の主張も鑑み、国際司法裁判所に日韓両国から判断を求めることも選択肢の一つであると考える。いずれにしても、ことさらこの問題を取り上げ、お互いの反感を煽ることは、厳に慎むべきである。

日韓両国に共通している点は多いが、ともに資源に乏しく、海外に資源を依存していることもその一つだ。また、加工した製品を海外市場にその販路を求める点でも似通っている。つまり、海上輸送の重要性という点においてはお互い、利害が共通しており、平素からの海上航行路(シーレーン)の安全確保は死活的に重要なテーマなのである。また、テロを防止するためのPSIも今後ますます重要になることを考えると、ステークホルダー(利害共有国)を巻き込む形で、多国間シーレーン安全確保体制(ある種の地域的集団安全保障体制)を構築することも、日韓で率先して取り組むべきではないだろうか。

併せて、地球環境問題とエネルギー問題を考えた際の原子力の平和利用は不可避の政策課題だが、特に、念には念を入れた安全対策と、最終処分地の確保は日韓両国が直面する共通のテーマだ。原子力の分野でも、安全性向上と最終処分地などの国際的枠組みの構築などで両国は協力できる。
その他、先に列挙した様々な分野での協力が求められる。ただ、現在のノ・ムヒョン政権は、求められる協力の反対側にアクセルを踏んでいるような気がしてならない。

私は村山談話が発表されたとき、新党さきがけという与党の一員だった。日本が過去に侵略行為と植民地支配を行ったということはしっかり認めた上で、韓国を初めとするアジアの国々と未来志向の関係を構築すべきだというスタンスに立つ。無理やりA級戦犯が合祀をされた靖国神社には、総理は自らの大所高所に立った判断で参拝を自粛すべきだという考え方に立っている。日本には様々な国論があることを、韓国に伝えることも重要だ。
(了)

要は、日韓両国は民主主義、資本主義経済、基本的人権の尊重、法治主義などの価値観を共有しているだけでなく、経済も発展し、成熟した市場経済社会であり、いがみ合うのではなく、お互いもっと協力関係を結んでいくべきだ、韓国は同盟国であるアメリカとの連携を再確認した上で日韓米3カ国の協力関係を強化すべきではないか、などと述べた。しかし、現在のノ・ムヒョン政権は、どちらかといえば日本を敵視し、恫喝外交、瀬戸際外交を行っている北朝鮮に、あまりにも融和的、つまり甘い。靖国神社問題にしても、「仮にA級戦犯が分祀されても総理は参拝すべきではない」との発言は、もはや日本とは付き合わないとの宣言に等しいと、私は批判した。

面白かったのは、韓国側の出席者から、「この会議は日韓フォーラムではなく、日韓韓フォーラムだ」との発言があったことだ。つまり、韓国の中でもノ・ムヒョン政権に対する評価は大きく割れていることを意味している。

私は締めくくりの発言で、こう述べた。「日本に反発する人は、いかに自分たちが他国との関係、例えば中国やアメリカとの関係が良いかを誇示するが、日韓関係はゼロサムではない。他国との関係が良いことは、日本としても歓迎すべきことだ。要諦は、どう日韓という二国間関係を改善していくかだ。私の恩師である故・高坂正堯(まさたか)・京大教授は著書「国際政治」の中で、国際関係を規定する3つの体系に付いて言及されている。つまり、力の体系、利益の体系、そして価値の体系である。特に、利益をお互いが享受をするために、小異を残して大同につくという気概で両国の自由貿易協定(FTA)を早期に締結することが望ましい」。お互い、徒にナショナリズムを煽り立てて関係を悪化させるのではなく、「小異を残して」相互利益を高める。そんな、現実志向の日韓関係改善・強化に向けて、今後も一代議士として努力をしていきたい。今回のフォーラムに参加して、この思いを新たにした。